剣戟の音が鳴り響き、火花が散る。
剣を交える二人の間に会話はない。
その技が、その覚悟が答えとなって返ってきているのだから。
(RFB…どうやら勝てたようですね)
ルージュに勝利し室内の端で戦いを見つめているRFBを見てアナは安堵する。
特殊な力を持たないRFBがあのルージュに一本取ったのは彼女からすれば素直に喜ぶことだった。
だがいつまでも安堵している訳にはいかない。
戦いの最中に気を抜くなど相手をしてくれているギルヴァに失礼なのだから。
(あとは─)
イグナイトトリガーを発動させたにも関わらず、素の状態で渡り合ってくるギルヴァ。
容易に勝てる相手ではない。
加えてギルヴァの中には『蒼』が居る。
何らかのサポートをしているとはどうかは分からずとも居ると事実は変わりない。
ギルヴァだけではない。蒼も相手にしているという事をアナだけは気づいている。
(私が勝つだけッ!!)
それでも彼女には負けられない理由があるのだ。
だからこそ手にした刀…絶刀『天羽々斬』を振るい続ける。
「…ッ!」
突進。
まさしく『消えた』とも言えるほどの速さでギルヴァへと迫るアナ。
振るうは神速の一撃。ぶつかるは刃。散りうるは火花。
目にも留まらぬ速さで攻撃を繰り出し、最低限の動きのみで回避。
呼吸、太刀筋、動作…それら全てを予測し最大の一手をぶつける瞬間を見出す。
今、それが戦術人形という身でありながら、宿した『力』も相まって行えているアナという人形は最早戦術人形の枠組みに収まらない。
「「!」」
地を蹴り、得物を振るう両者。
二振りの刀がぶつかり火花を散らすと押し退けようと鍔迫り合いへ持ち込む。
拮抗する力。お互いに押し退けようとして動かない状態が続いたのも束の間、アナを押し退けたギルヴァが攻撃を仕掛けた。
無銘の持ち手を握り、素早く抜刀。横薙ぎを見舞うもアナは後ろへとバク転し回避から天羽々斬を構える。
その動作から何処に向かって攻撃を仕掛けてくるのかと瞬時に察したギルヴァは跳躍と同時に身をひるがえしながら無銘の刀身を振り下ろすも攻撃は弾かれ後ろへと吹き飛ばされるも軽やかな身のこなしで着地。
その着地した瞬間を逃さないと言わんばかりにアナは駆け出し地面を勢いよく蹴り飛び上がるとまるで流星の如く降下しながら蹴りを放つ。
向かってくる一撃をエアトリックで躱し、アナの背後へと回り込むギルヴァ。
(逃がさないッ…!)
ギルヴァに攻撃させる瞬間を与えない。
その考えからアナは素早く身体を反転させ、天羽々斬を突き立てる様にして構え突進した時だった。
「ッ…!?」
得体の知れないナニカがアナを襲った。
体の不調を知らせるものではない。
では一体何か?
(やられる…!?)
それは死の報せ。
このまま突撃すれば確実にやられてしまうという最早直感に等しいものがアナへと知らせる。
視線をギルヴァへと向ければ、居合の態勢へと移行しており右手が持ち手へ伸ばされている。
不味いと思い、知らせてきた直感に従い急制動をかけるアナ。
「終わりだ」
冷たく放たれた終わりを告げる一言が響く。
居合の態勢から繰り出される不可視の抜刀。
次の瞬間アナの眼前で歪みが生じたと同時に無数の斬撃が奔った。
寸での所でアナは斬撃に巻き込まれることなく後方へと跳躍し着地する。だがその表情は険しいままであり、理由はギルヴァが放った技にあった。
(ここに来て、あの技を使うとは。…ブレイクさんみたいな言い方をすればギアを一つ上げたという事でしょうか)
ギルヴァを相手にするにあたって、警戒すべき事は腐る程ある。
その中で、彼が先ほど放った技はアナの中では上位に入る程、脅威とも言えた。
その技こそ『次元斬』。
神速の居合で次元の狭間を切り裂き、離れた相手を無数の斬撃の渦へと巻きこむ技であり、ギルヴァが得意とする技であり、代表とも言える技。
これまで何度も大規模作戦にて共闘してきた訳であるが、使用した回数はそう多くない。
故にだろうか。険しい表情を浮かべるアナがいる一方で観戦室ではちょっとしたどよめきが起きていた。
特にレイとオートスコアラーの面々は驚きを隠せずにいる。
「え、ちょっ…は?なに今の…」
「斬撃を飛ばし、た…?いえ、あれではまるで──」
レイとスユーフは顔を見合わせる。
そしてその口から、二人が想像していた通りの言葉が飛び出る。
「「空間を切り裂いた…?」」
「そのまさかってやつだ。正直原理や理屈は俺にも分かんねぇが、ギルヴァだからこそ出来る技と思っていた方が良い。…イグナイトトリガーを有したアナでも、空間を切り裂く事は出来ねぇ」
レイとスユーフに答えを告げるのは静かに見守っていたノアだった。
答えを告げ、固まったままの二人を放置する事に決めると彼女は腕を組みアナを見つめた。
(こっからだ。ギルヴァがあの技を使ったという事は恐らく──)
──マジの
ノアが内心呟いたその台詞。それは数秒も経たぬ内に現実となった。
「少し本気を出すとしよう」
次元斬を放った後に紡がれた言葉。
それを指し示すかのようにギルヴァの姿が消え、アナはその直後に襲った衝撃に目を見開いた。
回し蹴りによる一撃。気付けば体は吹き飛ばされており、痛みが襲う。
地面に激突しながらも素早く立ち上がり、痛みに耐え歯を食いしばりながら、視線をギルヴァへと向けた時彼の両手足に何かが装着されている事に気付く。
(籠手に具足…そしてあの金色の雷は…!)
雷撃鋼『フードゥル』。
魔帝によって造られし白狼の姿をした悪魔『フードゥル』が魔具へと姿を変えたもの。
雷撃鋼の名の通り、雷の力を持つそれは如何なる敵であろうと砕く。
無銘と比較して絶大な破壊力を誇る魔具を装備したギルヴァがそこに立っていた。
「流石に気づくか」
振り上げた足を下ろし、ファイティングポーズを取るギルヴァは静かに呟く。
フードゥルの存在は既に知られている事。
分かり切った事だったにしても、そう言わずにはいられなかった。
『であろうな、我が主よ。…さて、娘の覚悟が如何なものか、我も見定めさせてもらおう』
「出力は最低限で頼むぞ」
『分かっておるとも。我とてあの娘を死なす事はしたくないのでな』
「それが分かっているならいい」
地を蹴り、突撃。
態勢を立て直したアナに向かってギルヴァは攻撃を仕掛ける。
最低出力とは言え、無傷では済まない雷を纏った拳を放ち、そこからボディブローを見舞う。
受け流される攻撃。しかしギルヴァは気にする事もなく二連回し蹴りを放ち、防御に徹するアナの態勢を崩しにかかる。
放たれるは回し蹴りの乱舞。次々と繰り出される回し蹴りの嵐に最初こそは受け流せていたが、次第に態勢を崩れ始めていた。
そしてその態勢を崩しにかからんと言わんばかりに強烈な蹴り上げがアナの態勢を完全に崩した。
手にした天羽々斬はその手から離れる事はなくとも、切っ先は後ろへと飛び体が仰け反る。
「オマケだ」
体を捻りつつ飛び上がり、アナを宙へと蹴り上げながら追撃にもう一撃見舞うギルヴァ。
両者共に宙へと舞い上がりながらも、ギルヴァの攻撃は止まらない。
ギルヴァが体全体を回転させたと同時にアナは素早く天羽々斬と魔力で錬成した刃を自身の前に展開。迫りくる攻撃をどうにかして防ぎ切ろうとし始める。
次の瞬間、体全体を高速回転させてながら突進してくるは『月輪脚』。
「ぐううぅぅぅッ!!!」
一撃、一撃が強烈でありそれを物語るかのように両者の間で火花が散りばめる。
散りばめる火花に視界を奪われそうになるのを耐えながらアナは攻撃に耐えるのも束の間、振り上げられた踵落としが叩きつけられ、アナは地面に激突。
叩きつけられた衝撃で一度バウンドするが、素早く起き上がり上を見上げる。
「寝ていろ!」
「ッ!!」
アナへと目掛けて降り注ぐは群青色の斬撃。
地面を蹴り、その場から飛び退くアナ。
そして天羽々斬を構え直し、ギルヴァが手にしているのを見つめる。
「ツムガリノタチ…」
魔力で錬成された大太刀。
アメノハバキリを参考しギルヴァが扱いやすいに調整した群青色の大太刀。
それを見て、成る程とアナは思う。
(本気なのですから、様々な武器を用いるのは当然と言うべきですね)
自分も何か用意しておくべきだったかと内心苦笑いを浮かべながらも、正眼の構えでギルヴァを見据えるアナ。
無銘、フードゥル、ツムガリノタチ…特性異なる三種の武器を持ち出してきたギルヴァに隙の一つない。
だが脅威は残っている。
それらの武器に加え、幻影刀、ドッペルゲンガー…そしてデビルトリガーがあるのだ。
全てを使い始めた時、生み出されるその力は最早相手にとって悪夢と言えよう。
だが分かっていた事だ。あのギルヴァを相手にするという事はそういう事なのだと。
(それでも私は─)
痛みを、悲しみを、別れをこれでもかと言うほど知った。
多くの者達の支えがあって、『力』を得た。
その『力』を以って大切なものを守り抜き、これから生まれてくる『命』の為にも、この世界を仲間達と共にかつてあった姿へと戻すと決めた。
己と向き合い、もう一人の『自身』を受け入れ、今に至った。
(『力』を欲しているんでしょうね。あの時、幻影に伝えたように…人形としての枠を超えようとしている。しかし…)
その結果、欲した『力』に飲まれるのではないかという不安も無い訳ではなかった。
だからこそほんの僅かに迷いがアナの中では存在していた。
だがこの迷いに答えを出してくれるものはいない。
考える事を止め、戦いに集中しようとした矢先──
―お困りごとかい?嬢ちゃん
突如として彼女の内で声が響いた。
(蒼!?)
その声の主がギルヴァの中で居る筈であろう蒼だった事にアナは驚きを覚えた。
一体どういうつもりなのか。それよりもいつの間に自身の中に潜り込んだのか。
疑問が尽きない中、蒼はいつもの調子でアナへと話しかける。
―よう、嬢ちゃん。見た感じ、調子良さそうな上に前にも増して力が増してんじゃねぇか。…もう一人の『自分』と仲直りしてきたのかい?
(仲直りって…強ち間違ってはいませんが。それよりも何故ここに?)
―そりゃあギルヴァに頼まれたんでね。まぁ俺の意思でもあるがな
(ではギルヴァさんに頼まれなくても、私の元に来るつもりだった、と?)
―正解。他にも色々あるが、今は横に置いておこう。…嬢ちゃん、一つ聞くが嬢ちゃん自身に起きている異変には気づいているか?
(異変?)
そう言われたに対しアナは蒼へと聞き返す。
異変と言われても何らかの不調がある訳でもない。
だが蒼は自身の中で異変が起きている事は分かっているのだから、疑問に思うのもおかしくない。
―その感じだと気づいていない感じか。ま、この戦いが終わった後、この基地の女医さんに確認してみな。完全な答えを出さなくても何らかは知ってるはずだからな。さて…前置きはいい加減にして、答えを明かそう。良いか、よく聞けよ?
(…)
蒼が言う異変。
アナは僅かに生まれている一周の静寂の中で、蒼が告げようとする異変の正体に耳を傾ける。
―半分とは言わねぇが…嬢ちゃんの体を流れる人工血液の一部が悪魔のモノにすり替わっちまってる。いわばネロの様に人形でありながら右腕の影響もあって、流れる血の半分が悪魔になっちまった存在…明確な名称はないが、名付けるとしたら『半形半魔』ってのになってるんだ、今の嬢ちゃんは
(え…?)
二度目の驚き。
蒼から告げられた異変の正体にアナは言葉を失う。
まさか自身が気づかない内に、そのような異変が起きていたとは思わなかったからだ。
―どういう理屈でそうなったのかは分からん。幻影か、或いはイグナイトトリガーに願ったか…それとも嬢ちゃん自身が『力』を求めたが故に、それが起きたのかも知れねぇが。兎も角だ、そうなってしまっている事は事実として受け止める事だ
(そう、ですね…)
―おいおい…声が沈んでるぜ?まぁ戸惑いを隠せないのは分からなくねぇが、いずれ知ってしまう事なんだ。早いうちに知っていた方が良い。…で、だ。そうなっちまった嬢ちゃんに一つ聞きたい。大事なコトだ、真面目に答えてくれ
人形という枠から出てしまった。
否、そうさせてしまったという事実に蒼は表に出さずとも内心では思うところがない訳ではない。
であれば、全力で支える。彼女の異変に気付いたギルヴァと自身で決めたのだから。
―今から嬢ちゃんに託すのは疑似的なものでもなく、科学的なもんでもない。正真正銘の異形の『力』だ。扱い方次第で闇に堕ちるってこともなくはない。正直そんなことになってほしくねぇ。だから問う…
──その『力』を得たとしても、その心は悪魔ではなく『ヒト』であり続けられるか?──
その問いを口にしながらも、蒼は思い出す。
初めてギルヴァと会った時もこんな問いかけをしたことを。
そしてその時も彼は…ギルヴァはこう答えた。
──流れる血が悪魔であろうと、心は『人間』のままであり続ける──
そう断言した。
だからこそ、蒼はアナの口からこの問いに対する答えを聞きたかった。
迷うことなく、ハッキリと。自身を納得させるほどの『覚悟』を見せてほしいのだ。
(私は…)
己の内から湧き上がる想い。
それを形に、言葉にしようとして中々出てこない。
けれども溢れんばかりの想いは、止まる事を知らない。
さぁ叫ぼう。
(私は…!)
想いを!
(私はッ!!!)
覚悟を!
己の内に居る蒼に向かってアナは叫ぶ。
(欲するのは闇に堕ちる為の力じゃない!欲するのは大事なものを守り抜く力!)
(だからこそ誓う!)
(その力が魔であろうと!)
(我が心は!)
(我が魂は!)
──人であり続ける!──
それは魂の叫び。
決して堕ちぬという揺るぎない覚悟を以って放たれた証明。
それだけの覚悟があるのであれば、最早心配する事は何一つない。
彼女の
ここまで言わせたのだ。ならば託すべきものは今託さなくてはならない。
―良い覚悟だ!なら託すぜ、俺とギルヴァから嬢ちゃんにこの『力』…
今この時をもって力は託された。
その証拠にイグナイトトリガーを発動しているにも関わらず、アナの周囲には暴風が発生。
荒ぶる風に乗って向かってくるは『赤』ではなく、『蒼い霧』。
突如として発生した現象に誰しもが驚きを隠せない中、ギルヴァだけがそれを理解していた。
(漸くか。時間が掛け過ぎだ、蒼)
―でも託すことが出来たんですね。私でも分かります、この力は静かで、そして何よりも力強く感じる
エラブルの言葉にギルヴァはそうだなと答える。
『蒼い霧』から感じられるソレは決して禍々しいものではない。
アナ自身を体現しているとも言え、この様子なら堕ちる心配はないだろうとギルヴァは思った。
蒼い霧が突風と共に霧散し、託された新たなる力『デビルトリガー』を発動させたアナが姿を見せる。
「これが…」
その姿は悪魔らしさを有しながらも人の形を成していた。
髪は長く伸び、その色は透き通った白へに染まり、頭には一対の角が生えていた。
上半身を纏うソレは鱗で覆われながらもコートの様に揺れ、両手足は異形のモノへ変わり、足の爪先には魔力で具現化した鋭き爪を宿していた。
特に左腕はデビルトリガーを発動させた影響か、天羽々斬と一体化を果たす。
─悪魔の力さ。しっかし昔のあいつに似てると来たか。これも運命ってやつか?
(どういう意味です?)
―その姿はかつてギルヴァが初めて魔の力を発動させた際の姿に一部似てんのさ。託した訳だがここまで似る必要はあったのかねぇ?
(私にそう言われましても)
―そりゃそうだな、悪い悪い。んじゃ試運転と行こうぜ、嬢ちゃん。サポートとこの姿になった際に出来る事は教えてやるから
(ええ、頼みます)
驚きの連続がこれでもか起きていたためか、たった僅かにしか経っていない時間が一時間以上経ったのではないかという錯覚を覚えるアナ。
左腕と一体化した天羽々斬の柄へと手を伸ばし、引き抜くアナ。
鞘は左腕と一体化している為、提げる必要ない。腕を引きながら刃の切っ先をギルヴァへと向ける。
「続けましょうか」
「そうだな。…来い!」
直後、ギルヴァの体が光が発せられる。
その光は逆流するかのように彼の体へと集まり、暴風となって炸裂。
そして姿を現すは人から魔へと姿を変えたギルヴァ。
アナが得たモノとは違い、そこに立つのは完全な悪魔そのもの。
何度も見たその姿を相手にしたとしてもアナは決して刀を下ろさなかった。
寧ろ歓喜していた。ここからが本番であるという事実に。
「行きます!」
地を蹴る。
しかして残像は残さず、最早神速とも言える速さでアナは突進し、それと同じぐらいの速さでギルヴァも突進。刀はぶつかり、火花を散らすもそこに二人の姿はない。
影と影が踊っているのではないかと思えるほどの速さ。もはや目を追う事すらままならない。
(これが悪魔の力…!凄い…)
―これだけで満足すんなよ、嬢ちゃん!隙を見て左手を横に出しな!俺ともう『一人の嬢ちゃん』からプレゼントがあるんでな!なに、嬢ちゃんなら出来るさ!
(はい!)
蒼の指示通り、凄まじい剣劇を繰り広げる中、僅かな隙をついて左手を横に出すアナ。
左手に集う魔力。やがてソレは形を成していき、もう一つの武器へと変えていく。
そして現れたのは長大な大剣。それもタリンでの大規模作戦時に蒼がアナに記念にと称し渡した魔力で錬成された大剣。
基本は大剣、しかし用途次第で槍にも大鎌にも変形するという例の大剣。
渡された後、何処かへ消えてしまっていたソレが彼女の手に握られていた。
(これは…!)
―幻影に収納されているってどういう原理だ?って言いたいがそんな事はどうでも良い。これはあん時、嬢ちゃんにやった記念品さ。自身で振っても良いが、一番はぶん投げてみるだ!
(投げる!?しかしどうやって!?)
―難しく考える必要ねぇ!兎に角、投げてみな!あとはもう一人の『嬢ちゃん』の仕事さ!
(簡単に言ってくれる!)
蒼に対して文句を言いながらも、ギルヴァの攻撃を回避し後ろへと下がるアナ。
そして左手に携えた大剣を勢い良く下から放り投げる様にして投擲。
投げされた大剣は縦に高速回転しながらギルヴァへと切り刻もうと襲い掛かっていく。
飛ぶチェーンソーと化した大剣を身を逸らして躱すギルヴァ。そのまま壁に突き刺さるかと思えば、大剣をまるで意思を有したかのように、ギルヴァの背後に目掛けて襲い掛かった。
―ギルヴァさん!後ろ!
「分かっている」
エラブルが危険を知らせる声に対して冷静に対応し、ギルヴァは後ろから飛んできた大剣を容易く回避。
彼の横を通り過ぎた大剣を主たるアナの元へと戻っていく。
まるで自我でも有したかのように、ギルヴァへ二度襲い掛かり自身の手元に戻ってきた大剣にアナは目を見開く中、蒼が説明する。
─な?言ったろ。ぶん投げた後の操作はもう一人の『嬢ちゃん』に任せた。…この戦いで言っていた様に『我ら』なんだろう?なら、頼ったって何らか問題ない筈だ。寧ろ仕事くれてやんなきゃ、拗ねるぞ?
(いつの間にそんなことを…)
―ついさっきさ。ま、細かい事は置いておこうぜ。このまま詳細まで話してるともう一人の嬢ちゃんに色々言われそうなんでね
(これは後で貴方がどんなことを言ったのか聞かないといけませんね)
―人の話聞いてたか?頭の良い脳筋娘?
(…絶対に聞かないといけませんね)
―おっと…こりゃ、お説教間違い無しコースみてぇだ。どうにかして逃げ出さねぇとな。…いや、嬢ちゃんみたいな美人さんに追いかけられるのならアリかもな、ハハッ!
呑気に笑い声をあげる蒼にアナは呆れた様なため息をつく。
そんな状況にも関わらず、強烈な一撃を見舞う両者。
振り払いから斬り上げ。そして何度目かになる鍔迫り合いへと持ち込む。
お互いに譲り合う中、ギルヴァが口を開く。
「流石に付いてくるか」
「ええ、この通り。今の私なら貴方に勝てるかもですね?」
「なら勝って見せろ。言っておくが勝ちは譲らん」
「その台詞を言った事、あとで後悔しないで下さいよ!」
模擬戦は何処へ行ったのやか。
まるで戯れを演じているかのように、二人は刃をぶつけていた。
模擬戦が開始してからはというものの、時間は既に二時間は経過している。
長い様で短い様にも感じられる戦い。
このまま力の拮抗が続くのだろうかと思われた矢先、ギルヴァが動いた。
「ふッ…!」
居合の姿勢から神速の居合から連続して放たれる次元斬。
それら全ては容易く回避される。だがギルヴァの技はこれで終わる事はなかった。
「全て──」
空間が揺れ、色褪せる。
居合の態勢から静かに無銘の柄へと手を伸ばし始めるその様子にアナも、そしてアナの中に潜り込んでいる蒼もギルヴァがしようとしている事に気付く。
不味いと思い、すぐさまギルヴァとの距離を取ろうとするも、時既に遅く。
「断ち切る!」
抜刀、突進。
超高速から生み出される分身。
直後、色褪せる世界に次元の狭間を切り裂く無数の斬撃が奔った。
切り裂かれた世界。目に映る視界はずれ堕ち、目に映る全ての時が止まっている。
唯一動けるのは、片膝をつきながら刀を鞘へと納め始めるギルヴァのみ。
鯉口と鞘がかち合う音。その音が高らかに響いた時、色褪せる世界がガラスの破片となって砕け散り、辛うじて攻撃を防ぎ、斬撃を受けなかったものの砕け散った世界と共にアナは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられちてしまう。
だがすぐさま立ち上がり、刀を構えるもアナですら想像していなかったことが発生した。
「…合格だ」
「え?」
ギルヴァが呟いた言葉にオウム返しの様に口するアナ。
突然の事に困惑する中、デビルトリガーを解除するギルヴァ。
何が何なのか分からない状況。にも関わらずギルヴァはアナへと告げる。
「合格といった。休憩に入るぞ」
「え…あ、はい…」
もっと凄まじい戦いになると思われた矢先の出来事。
一体どこで合格を判断したのか、その理由すら明かされることもなく模擬戦は終了を告げる。
困惑が広がる中でアナの中に潜り込んだ蒼だけは理解していた。
―ま…これ以上やっちまったら大怪我じゃ済まねぇからな。この辺りが丁度いいだろ。後はマギーの予定に合わせて、特訓しねぇとな
模擬戦と言えど、殺し合いをしている訳ではない。
それを思い出しながらも蒼はこの後行うつもりである特訓メニューを考えるのであった。
遅れて申し訳ございませんんんッ!!!!!
プライベートや夜勤終わりの合間を縫って執筆はしていたのですが、ここまで遅くなってしまいました。本当に申し訳ございません。
次回ではRFBに与える力&アナさんに渡した新たな力『デビルトリガー』の説明+αを展開しようかと思います。
と言う訳で模擬戦【覚悟証明】は合格となりましたが…もう少しお付き合いくださいませ。
では次回ノシ