Devils front line   作:白黒モンブラン

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とある日の事。
それは夏の誘い。


Act238 Summer invitation

早期警戒基地での一時から早数日。

外の気温が以前と比べて嘘の様に上昇し、最早真夏日と言っても過言ではない日々の中で稼働しているS10地区前線基地。

気力を削ぐような暑さが続く毎日。一部の戦術人形がサウナの様な外に出たがらず、冷房がついた部屋でだらけ始めた時、それは突然という形で起きた。

 

「無人島の調査ですか?」

 

冷房のついた通信モニタールームにて、大型のディスプレイの前に立つシーナは、まるで尋ねる様な感じでその言葉をした。

対する相手、ヘリアンはその問いにそうだと頷き肯定を示し言葉を続けた。

 

『遠方に出ていた調査部隊からの報告で、偶然にも発見された無人島でな。事前に行った汚染状況を調べた所、汚染率は最早ゼロに等しく、周囲を囲む海も汚染されている状況が全く見受けらなかったらしい』

 

「…何というか、最早そこまで来ると奇跡としか言いようがありませんね」

 

『そうだな。今や世界はこの状況なのだ。お前の言う通り、その島は奇跡といって良かろう。しかし汚染を受けてない無人島と言えど、何があるか分からん。その為、S10地区前線基地にはこの無人島の調査を命じる。…と言うのが建前だ』

 

「と言いますと?」

 

無人島調査命令が実は建前である事にシーナは首を傾げる。

ではこの通信は何なのかと思う彼女にヘリアンは本命を明かす。

 

『これまでS10地区前線基地は多くの作戦に参加、他の基地との共同作戦にも参加し、同時に技術提供も行って来た。また鉄血とは異なる敵との対処にも当たっている。その事から一部から、ある意見が出てきてな』

 

「?」

 

良からぬ噂だろうかと予想し始めるシーナ。

もしそれなら、ダレン辺りに何とかしてもらおうと考えるもヘリアンの口から出たセリフはシーナが予想していたものとは違っていた。

 

『S10地区前線基地を統べるシーナ指揮官はまともな休暇を取っているのかと、そういう声が上がっている』

 

「え、えぇ…?」

 

悪い噂どころか、寧ろ心配されるような意見に苦笑いを浮かべるシーナ。

だが基地の指揮官となれば多忙の毎日を極める。

そう易々と休むわけにはいかないのだが、それでもシーナの休みの少なさは他の基地の指揮官と比べると異常とも言える。

まとまった休みを取った日は、大分前に展開された大規模作戦『operation:777』を無事終えた後に休むを取った時ぐらいであり、それ以降は全く取っていない。

下手をすれば今から倒れてもおかしくない程、休みを取っていない。それほどまでに異常なのだ。

仕事熱心なのは良い事なのだが、流石にこればかりはヘリアンからしても看過出来るものではなかった。

因みにシーナの教官を務めたという戦術人形のパイソンは、シーナがまた適度な休みを取っていないと聞いた時、「誰かあいつを気絶させてでも休ませろ」とコメントしたとか。

 

『無人島調査は簡易的に行ってもらうと同時にシーナ指揮官及びS10地区前線基地、そして便利屋『Devil May Cry』には数日間の休暇を命ずる。…無人島で一時の夏を楽しんでくるといい。それぐらいやった所で誰も文句は言わんだろう。どうせなら他の基地を呼び掛けてみると良い。S10地区前線基地以外にもまとまった休みを取っていない所もあるからな。大規模作戦の報酬代わりになるか分からんがたまには良いだろう』

 

「流石に他が乗ってくるとは思えないんですが…」

 

『そうだった時は、それでも構わん。それと、もう一つ報告しておくことがある」

 

その時、備え付けの通信端末に通知音が響く。

それがヘリアンからであると判断するとシーナは送られてきた情報に目を通す。

そこには今度S10地区前線基地に異動する事となる戦術人形のリストが表示されていた。

 

『そこに記載している通り、S10地区前線基地に異動してくる戦術人形らのリストになる。彼女らにも今回の無人島調査に参加してもらう予定だ』

 

「来て早々、バカンスってのもアレな気がしますけど…って、ん?」

 

画面をスライドさせていく中、一つだけ異動してくる戦術人形の詳細が伏せられている事に気付くシーナ。

その事を問おうとした時、聞かれる事が分かっていたのかヘリアンがそれに対する理由を明かした。

 

『その戦術人形に関しては本人の希望もあって合流当日まで伏せさせてもらう』

 

「それは何故と言っても答えてくれないのでしょうね」

 

『当然だ。だが心配する必要はない。その戦術人形は以前からそちらの基地への異動願いを出していたからな』

 

「以前から異動願いを…?」

 

この基地に異動願いを出すなど正直言えば余程の物好きとも言えるだろう。

或いはこの基地に何らかの関わりを持っていた人形か。

どちらにせよ今のシーナに、その答えは分からなかった。

 

『報告は以上だ。無人島への移動手段は、お前の事を良く知る人物が協力を申し出ている。詳しい話は本人から聞け』

 

「私を知る人物…?」

 

『詳しい事は話せん。これも本人から隠していてほしいと頼まれているからな。…これにて通信を終了する。一時の夏を楽しんできたまえ』

 

「え、あ!ヘリアンさん!?」

 

呼び止める声も虚しく、通信モニターからヘリアンの姿が消える。

しかしなってしまったものは仕方がない。やれやれと軽くため息をつくシーナの元に、昼食が出来た事を伝えにネロが通信モニター室に入って来る。

 

「飯の準備が出来たってよ。…って、どうした?シーナ」

 

「…ネロ」

 

「ど、どうした?」

 

先ほどまでの会話を聞いていない為、シーナから感じられる雰囲気につい身構えるネロ。

そんな彼女を他所にシーナはゆっくりと振り向き、苦笑いを浮かべながら伝える。

 

「バカンスに行こっか」

 

生まれる沈黙。

彼女の口から発せられた台詞を一つ一つ読み取り、その台詞を理解しようと努めるネロ。

そしてその台詞を数十秒かけて理解したネロは一言。

 

「…は?」

 

たったそれだけしか言えなかった。

 

 

昼食を食べ終えた後、シーナは基地に所属する人形らと独立遊撃部隊『ブラウ・ローゼ』のメンバー、そして便利屋『Devil May Cry』を経営するギルヴァら、及び『Devil May Cry 第一支店』の運営を任されているブレイクを呼び出し、会議室に集まっていた。

そして無人島調査というバカンスを行く事になったのをシーナの口から伝えられると、余りの突然の事に会議室はざわついていた。

 

「で、皆を呼んだのはバカンスに行きませんかという誘い。強制じゃないしから安心して」

 

ざわつく室内を静かにさせる為、少々声を大きくしながら伝えるシーナ。

ざわつきは収まったものの、困惑する人形達。

だがこの男は違った。

 

「参加しよう」

 

「分かった、って…えっ!?」

 

そのままスルーしそうになって、声の主を見た瞬間、シーナは驚きの声を上げた。

それどころか周囲にいた者達も驚きを隠せずにいる。

それもその筈だろう。バカンスに参加すると言ったのは、この中で九割の確率で参加しないであろうギルヴァであったのだから。

 

「何だ」

 

向けられる視線に動じる事もなく、伏せていた目を開き視線をシーナへと向ける。

 

「え、あ、いや…。ギルヴァさんが参加するとは思わなくて」

 

「だろうな」

 

そう答えるギルヴァ。

最初から参加する気などなかったのだが、彼の中にいるエラブルが発した台詞が彼の考えを変えさせる切っ掛けとなっていた。

 

―私…海を見てみたいです

 

普段から我儘を言わないエラブルが初めて言った我儘。

肉体はなく精神のみという存在である為か、外に出るなど滅多にない。

そんな彼女が言ったのもあるのだが、普段から窮屈な思いさせてしまっているのではないかというギルヴァとしても思う事があった為に参加という決断に至ったのだが、それを知るのは本人のみである。

 

「海を見たことないのではな。丁度いい機会と思ったまでに過ぎん」

 

海を見た事がない。

彼の台詞にそういえばと思う所があったのだろうか。参加しようかと思い始める面々。

 

「ギルヴァが参加するのでしたら、私も参加いたします。ネージュ、貴女はどうします?」

 

「折角の機会だからな。父とシリエジオ母さんが参加するのなら私も参加しよう」

 

ギルヴァに続く形でシリエジオとネージュが参加を表明する。

そして自分もと参加するを表明する人形達が現れ、それに乗じてブレイクも参加を示す。

 

「ストロベリーサンデー食いながら、美人美女の水着姿を拝めるのなら是非とも参加だ」

 

「そのストロベリーサンデーを作るのは誰なんでしょうね」

 

「そりゃお前しかいないだろ?ローザの水着姿も目に焼き付けておきたいからな」

 

「全く…」

 

参加を表明した訳ではないが、ブレイクによって参加が決定してしまったグローザはやれやれとため息を付くも、まぁ良いかと思う事にした。

こういう事は早々ない。ならば折角のバカンスを楽しもうと意気込むグローザ。

そういったやり取りをしている隣で独立遊撃部隊ブラウ・ローゼの一人であるヘルメスはネロと会話を広げていた。

 

「お前はどうする、ネロ」

 

「シーナも行くみてぇだしな。護衛も必要だし、俺は参加する。…そっちはどうすんだ、ヘルメス」

 

「ギルヴァが言っていた通り、この身で海を見た事がないからな。どうせなら見てみようと思う」

 

「そりゃ良いな。折角のバカンスを楽しもうぜ」

 

「ああ。そうだな」

 

戦場であればお互いに悪意を含めた軽口をたたき合うネロとヘルメス。

だがこういう場ではそう言う気にはなれなかったのだろう。

お互いに楽しもうと言う程に二人の間は和やかであった。

 

「ねぇ、指揮官一つ良いかしら?」

 

参加するメンバーが次々と決まっていく中、同じくバカンスに参加を表明していたUMP45は手を上げシーナへと話しかける。

 

「何かな?」

 

「今回のこれって他の基地にも誘いをかけるつもりなんでしょ?」

 

「そうだね。参加するしないは相手次第だけど」

 

「成る程。…だったらさ。何時もみたいに作戦名でも考えたらどうかしら。それがなかったら始まらないでしょ?」

 

何か派手な作戦を行う度にシーナが作戦名を考え、それが号令となっているのは事実。

思考を巡らせ、今回の作戦名を考えるシーナ。

そして数分も経たぬ内に作戦名が思いついたのか彼女はUMP45へと伝える。

 

Memories of a summer(ひと夏の思い出)。それで行こうかな」

 

その言葉の元、operation Memories of a summerが始まりを告げるのであった。




という訳で…。

今まで派手なドンパチがメインだった大規模作戦と打って変わり、今回は只々夏を楽しむだけのコラボ作戦「|Memories of a summer」の参加募集をしようかと思います。

活動報告にて『コラボバカンス Memories of a summer 参加募集』という題名で投稿いたしますので、ご興味ある方はぜひ見ていってください。

では次回ノシ
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