Devils front line   作:白黒モンブラン

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バンバンと投稿していく他の作者様達に触発されて、気づけば書いていたと言う…

さて「Act8 大物狩り」どうぞ



Act8 大物狩り

そいつは突如として現れた。

一つ歩く度に地響きが起きる。巨大な体軸に幾ら撃ったとしても弾かれる堅牢な装甲と直撃しなくてもかすっただけでも大怪我は間違いない機関砲。私達を踏みつぶそうと、破壊しようとする鉄の巨兵がいた。

 

「くっ…弾が…。ドラグノフ、そっちは!?」

 

「これで打ち止めだ。すまんな、私はここまでらしい」

 

「あんたにしては珍しく弱気ね…。けどまぁ無理はないか…」

 

私はそれを眺める。

悠然と立つ姿はまさしく破壊と蹂躙の象徴と言っていいだろう。

動きは決して速くはない。だがそれを補うかの様な堅牢さと火力。鉄血の連中もよくもまぁあんなものを持ち出してきたものだ。

 

「それで?どうする?FAL。こいつは私達ではどうにもならんぞ」

 

「増援は呼んでいるわ。けどそれを待っている暇なんて与えてくれないでしょうね」

 

「…だろうな」

 

グレネードが一発。弾倉は残り1。そしてドラグノフは弾切れ。故に後方からの狙撃は不可。

しかしこいつをどうにかしないといけない。放置していれば何が起きるか分かったものじゃない。

けど…出来るのか?今の戦力。不安を重圧となって圧し掛かってくる。…一度距離を置いて戦力を立て直すか?

いや…そんな暇があったら苦労はしない。今の所あれはこっちを見失ってはいるが、動き出せばあの巨砲でバラバラにされるのがオチだ。どうする…考えろ…今出来る最善の手段を…!

 

「…ん?…何だ、この音は?」

 

「ドラグノフ?どうしたの?」

 

「遠くから音が聞こえる。段々近づいてくる……この音はバイク?」

 

「バイク?何でこんな所に?」

 

ドラグノフが言っていた様に響き渡るバイクの音。確かに段々と音は大きくなっている。

もしかして…

 

「まさか!?」

 

「そのまさかだ!あのバイク、こっちに向かっている!狂っているのか!?」

 

正気じゃないわ!?

何でバイクに乗った民間人がこんな所にいるのよ!!

ドラグノフに接近するバイクを止める様に指示しようとした瞬間、接近していたバイクが私達の前に現れ停車した。黒く塗装されたバイク。シートには黒いコートの男と……え?後ろに乗っているのって…

 

「95式…?」

 

「あぁ…あれは95式だな。しかし何故…」

 

増援ではないのは分かるが…それでも何故彼女が男と共に行動しているのか。そこに疑問が尽きない。

部隊とはぐれた人形という事も考えられるが…。

そんな事は知らず、二人は「あれ」を目の前にしながらのんびりとバイクから降りている。そこで私は気付く。

黒いコートで手に刀を持っている男…どこかで見た様な…。駄目ね…思い出せない。

取り敢えずその事は後だ。バイクから降りている二人に向かって、フラッシュライトを用いて手招きする。

それに二人は気付いたのか、こちらへとやってきてくれた。

 

「何とかなったか…。にしてもあなた達、馬鹿なの?あれが居るのに頭おかしいんじゃないの!?」

 

「あれ…?あぁ、あの四つ足の事か。そんなにやばいのか?」

 

こっちは色々やばいというのに男から緊張感すら感じられない。

その姿にイラっと来るが、後ろにいたドラグノフが私の肩に手を置いて制し、代わりに彼女があれについて話し始めた。

 

「やばいだけでは済めば楽なのだがな。あれはマンティコア。足は遅いが、硬い装甲と人形を平然と吹っ飛ばせる火力を持っている。鉄血の連中が持ち出した質の悪い玩具でな、あれを仕留めるにだいぶ苦労する」

 

「ほう…」

 

マンティコアの事について男が知った途端、彼の雰囲気が変わった。

 

「それならば…少しは楽しめそうか」

 

そう言って男は立ち上がり、マンティコアへと向かおうとしていた。

それを見ていたドラグノフが急いで彼を引き留める。あれを向かうとか自殺行為に等しい。

 

「死ぬ気か!?あれは人間でどうこう出来るものじゃない!私達でさえ苦労するものを貴様一人で何とか出来る筈ないだろうッ!!」

 

「どうだろうな。やってみないと分からんぞ」

 

「ッ!…馬鹿か!命が惜しくないのかッ!?」

 

ここは私もドラグノフに加勢すべきと判断し割って入ろうとすると、先程まで黙っていた95式が私より先に二人へと割って入った。そこで彼女の口から衝撃的な言葉が飛び出した。

 

「行かせてあげて下さい」

 

その言葉に私もドラグノフも目を見開いている。

私が知る95式はそんな事を言う人形ではない事ぐらい知っている。一体どうしたというのか。

 

「…95式、それは本気で言っているのか…?」

 

「はい。彼の事は知っていますので。恐らくあれを斬り伏せる位は簡単にやってのけますよ」

 

ね?ギルヴァさんと彼女の顔がギルヴァと呼ばれた男へと向く。

彼は口角を少し吊り上げるとその問いに頷く。どこにそんな自信があるのか正直全く理解できない。あれを人間がどうにか出来るのなら、私達人形など必要なくなる。それ程までにあれは強力で厄介なのだ。

 

「何を言うかと思えば…。FAL!お前も何か言え!」

 

だが…本当にあれをどうにか出来るというのなら…。

それがこの状況をどうにか出来る最善の策というのであれば…

 

「信じて良いのね?」

 

「FAL!?」

 

信じてみる価値はあるのではないだろうか。

 

「…」

 

私もどうかしてしまっているのだろう。

だがどうもこの男があれをどうにか出来てしまいそうで仕方ないのだ。普通の人間なら恐怖であんなのに立ち向かうとか考えないだろう。しかし目の前の男はどうだ。そんな様子は一切見受けられない。

それにこの男に関して思い出した事がある。もし噂通りであるのであれば…。

 

「正直な所、私達も詰みに近い状況なの。ここから離れようとしてもあの機関砲もあって中々動けない。けど…貴方が本当にあれをどうにか出来るのなら…。…やってみせて」

 

「…良いだろう。すぐ終わらせてくる」

 

それだけを残して男はマンティコアが居る大通りへと向かっていった。

彼が去っていくとドラグノフが怒りを混ぜた表情で私の肩を力強く掴んだ。少し痛かったが、彼女の怒りも間違ってなどない。

 

「メンタルモデルにバグでも起きたのかッ!?何を考えているッ!!」

 

「落ち着きなさい、ドラグノフ。…もしかすれば彼、「黒コートの悪魔」かも知れないわ」

 

「! あの男が…?」

 

「ええ…」

 

黒コートの悪魔。

鉄血の人形を狩り続けていると言われる正体不明の人物。倒された鉄血の人形は全て鋭利な物で斬り伏せられており、一か月前にその者の捕獲作戦が実行されたが驚異的な身体能力に翻弄され取り逃がしてしまうという結末となった。最近は鉄血と交戦したという情報もなく、今は大人しくしていると思われるが…。

 

「黒いコートに日本刀…ここまで似ている奴が彼以外居るとは思えないわ…」

 

「…しかし」

 

「似ているだけかも知れない…その気持ちは分からなくもないわ。でも…」

 

確証はない。しかし…

 

「囁くのよ、私の中の何かが。あれに任せれば大丈夫って」

 

 

 

響く巨兵の歩く音。一歩動き出す度に駆動音と地響きが周辺に響く。

四つの脚部が特徴の機動兵器 マンティコアは獲物を探してゆったりと歩いていた。マンティコアが向いている方から一人の男が歩いてい来る。黒いコートを揺らし、手には日本刀を手にしている。

 

「成程。確かにデカいな。だが…」

 

それだけだ、とギルヴァは刀の鯉口を切る。

その瞬間マンティコアの機関砲がギルヴァに向けて放たれる。だが弾は彼に直撃する事はなく真っ二つに斬り捨てられた。二つに分かれた砲弾の破片は彼の後ろへと飛んで行き爆ぜる。

爆風は吹く中ギルヴァは無銘を一端納めるとマンティコアへと駆け出す。機関砲が彼を仕留めようと連射されていくが右へ左へ回避して、一気に巨体を支える足元へと滑り込むと右前脚を斬り落とす。中ほどから脚を斬り落とされたマンティコアはバランスを崩し、轟音を立てて右へと傾く。これでまともな走行は出来なくなった。だが脚が動かなくなっただけであり堅牢さと火力は未だ実在している。

そこでギルヴァは胴体の下側へと移動。腕を引きつつ身を低く屈めた。

すると彼を中心にわずかながら風が吹く、そして勢いよくその装甲へと拳を叩きこんだ。

あろう事かその一撃はマンティコアを宙へと打ち上げる程の威力、蒼がその技名を叫んだ。

 

―Real impact‼—

 

「「は…?」」

 

その様子を後方で見ていたFALとドラグノフを啞然とした。たかがアッパーカットであの巨兵を宙へと打ち上げたのだから。厳密には初撃に叩き込まれたアッパーカットと飛びあがった際に追撃として放たれた膝によるものだがそんな事は二人共知らない。只分かるとするのであれば、素手による一撃があれを空高く打ち上げた事とギルヴァという男が普通ではない事だけである。

そして戦闘はいよいよ大詰めを迎える。マンティコアと共に宙へと舞い上がったギルヴァ。その巨体に足を付けて跳躍。更に上へと飛びあがり上空で刀の柄に手を添えて降下。自重で地へと落ち始めた鉄の塊に近づいたタイミングを見計らい、体全体をきりもみ回転しながら抜刀。回転しながら刃が装甲を何度も斬り落としていく。纏う装甲はまるで紙を裁断しているかの様にいとも簡単に刻まれ、マンティコアは成す術もなく切り刻まれていく。

 

「ふっ!」

 

そしてとどめと言わんばかりに先程よりも速い回転で勢いよく踵落とし、月輪脚を叩きこむ。叩き込まれた一撃はマンティコアを一瞬にして地面へと叩きつけ、大きな轟音を響かせた。だが堅牢さに自信があるのだろう。巨兵は体をがたつかせながらも立ち上がろうとするのだがそれをギルヴァは許さない。マンティコアの頭に目掛けて刀を振り下ろし胴体ごと縦に一刀両断。真っ二つに分かれた巨兵は崩れ落ち、彼は背を向けて刀を納めると背後にて大きな爆発が起きた。爆風でコートが揺れる中ギルヴァは静かにその場から後にするのだった。

 

 

 

マンティコアを撃破した後、三人が身を潜めていた場所へと向かうと二人の戦術人形がこちらを有り得ないものを見るような目で見てきた。まぁそう見られてても仕方ないと言えば仕方ないが。

するとライフルの戦術人形だろうか?彼女が恐る恐る問いかけてきた。

 

「本当にあれをやったのか…?」

 

「そうだが…。気になるなら見てきたらいい。残骸が転がっている筈だ」

 

「いや…先程の爆発で確認した…。だがあれを潰すなど…お前は一体何者だ…?」

 

「…」

 

沈黙が支配する。向こうはこちらを睨み、こちらも向こうを睨む。

そこに95式と同じアサルトライフルの戦術人形が割って入ってきた。

 

「そこまでにしておきなさい、ドラグノフ。気持ちは分かるけど、助けられた身なのだから」

 

「……分かった」

 

その一声もあってかドラグノフと言われた戦術人形は引いてくれた。代わりにサイドテールが特徴の彼女が自分の目の前に立った。戦場に立つには少々薄着だが…まぁ気にする必要はないか。

 

「礼を言うわ。おかげで助かった」

 

「気にするな。偶然通りかかったものでな」

 

「通りかかった上に助けてくれる。随分と優しいのね?」

 

「…人形には少し思い入れがあってな。お節介だったらすまないな」

 

「大丈夫よ。おかげで助けられたのだから」

 

ふと、何かが近づいてくる音が響いた。

外へ出てみるとこちらへと向かってくる一機のヘリの姿が。もしや彼女達が呼んだヘリだろうか。

後ろからついてきた彼女が言った。

 

「来たみたいね。戦闘は終わってしまったけど」

 

「…」

 

「行くのでしょ?今回ばかりは見逃してあげる」

 

「ほう?てっきり捕まえるかと思ったが?」

 

「そんな余裕はないと言う事よ」

 

「成程な…。行こう、95式」

 

95式にそう伝え、バイクにまたがりエンジンを掛ける。

彼女が後ろに乗ったのを確認して走り出そうとすると彼女が待って、と呼び止めてきた。

 

「最後に貴方の名前聞いても?」

 

「ギルヴァ」

 

「ギルヴァね、覚えたわ。私はFAL。また会いましょう?ギルヴァ」

 

「その時があればな」

 

そう言い残してバイクを走らせるのだった。

 

 

 

 

 

走り去っていくバイクを見つめる。

まさかとは思ったが彼が例の人物で間違いないのだろう。

 

「黒いコートの悪魔、ね…。誰かの為に戦ってくれる悪魔なんて居るのね、この世の中」

 

「どうした?FAL。行くぞ」

 

「了解」

 

ドラグノフに呼ばれてその場を後にする。早く帰ってさっぱりしたいわ。

 

 

この数日後、私とドラグノフが遭遇したギルヴァの事、また彼はある特殊部隊と共闘したという事もあり、グリフィンは大規模な作戦を発令することなる。その名も…

 

 

 

operation Devil hunt(オペレーション デビル ハント)

 

 

 

とある市街地。

そこは数日前にギルヴァによってマンティコアが撃破された場所。

月明かりだけが頼もしく、夜風が冷たい市街地にて一人の女性がいた。

その女性はマンティコアの残骸を見つめると、そっと装甲が何かよって斬られた跡を触れた。

 

「やはり彼が…ここにいらっしゃったのですね」

 

風で月にかかっていた雲が流れていく。そして月明かりが彼女を照らした。

かつては二つ分けていた黒髪は今となっては長く伸ばされ、メイド服は変わらずのまま。

そう…彼女の名は…

 

「これなら数日でお会い出来そうですね」

 

代理人(エージェント)。現在は放浪者。どうやったのか鉄血から離反している元鉄血所属の人形である。




動き出すグリフィン。そして現れる代理人。
さてギルヴァさんはどうなる事やらか。

では次回お会いしましょうノシノシ
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