Devils front line   作:白黒モンブラン

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─Summer vacation!!─


Act242-Extra Memories of a summer Front story Ⅱ

遠く、遠くへと広がる青い空。

燦々と太陽の光が降り注ぎ、空に昇った雲が流れるその下で海がさざめく音が澄み渡る。

まるで過去へとタイムスリップしてしまったのではと、つい思ってしまいそうになる平和な一時。

お気に入り、或いはこの為だけに新調した水着へと着替え、海へと駆け出して、はしゃぐ彼女達の姿があった。

平穏なバカンスを過ごす彼女達を見守りつつ、ビーチパラソルが作り出した日陰の中でビーチチェアに腰かけていたシーナは傍に置いてあった氷と冷たい水で満たされたバケツからある物を手に取る。

一見すれば瓶。だが真ん中辺りがわざと狭められているといった特徴的な形をしている。

 

「昔はこれが当たり前だったんだろうなぁ…」

 

プラスチックで出来た突起の付いたキャップを取り出し、容器の口へと乗せる。

 

「ふっ!」

 

そして力を入れて勢いよく押し込んだ時。

海のさざめく音と共にプシュッと炭酸が抜ける音が鳴った。

数秒程度飲み口を抑えた後、シーナは容器に口を付け、一口飲んだ。

 

「くうぅ~…夏に飲むコレはいいねぇ」

 

年頃の少女が言う様な台詞だろうかとついつい言いたくなるも、それを口にするものはいない。

だが夏の海で飲むソレは確かに格別とも言えよう。

 

「ほう。良いモノを飲んでるな、シーナ指揮官」

 

「酒ではないのを知って、若干残念そうな声をするのはどうかと思いますが?」

 

そこにシャマールとLAFIが歩み寄る。

お互いに涼しげな服装に身を包んでおり、バカンスを楽しんでいることが伺える。

 

(誘いを無視してたってヘリアンさんから聞いてはいたけど……誘って正解だったね)

 

誘って正解だったと内心思いながら、シーナは水と氷で満たされたバケツから先程まで飲んでいた同じモノを二本取り出し差し出す。

 

「夏の海で飲むラムネ。それも昔ながらのですが…お一ついかがです?」

 

「まぁ昼間から酒というのもどうかというものだしな…一本貰おう」

 

「どうぞどうぞ。LAFIさんも一本どうぞ」

 

差し出されたラムネを受け取るシャマールとLIFE。

炭酸が抜ける音が二つほど鳴った時、シーナはある事を思い出し、ある物をバックから取り出した。

出てきたのは紙で包装された一升瓶と外観からして高級そうな木箱。

一体何の為にそれを取り出したのかというと…

 

「ある人から貴女へ、と言われております」

 

シャマールに渡す為だった。

突然それを渡され、一瞬茫然とするシャマールを見てシーナはそれを渡した理由を説明する。

 

「タリンでの一件。そちらは輸送列車制圧へと赴いたというのは聞いています。これはその報酬として…グリフォン本部直轄諜報部所長、ダレン・タリオンからシャマール指揮官へと渡すようにと言われています」

 

「…"悪魔"にしては律儀だな」

 

「確かに」

 

そう言って肩を竦めるシーナ。

ダレンに関しては悪魔らしくないと思う事は多々ある。

だがそれは普段の様子を見たからの感想である。

シーナ…いや、S10地区前線基地に所属する者らだけは知っている。

ダレン・タリオン…またの名を『ダンタリオン』がいかにとんでもない悪魔だという事を。

 

「それに今渡したソレ、今じゃお目にかかる事すらないかなり貴重な物らしいですよ?」

 

「と、言うと?」

 

「その一升瓶のは…日本酒です。しかも清酒。値段は分からないですけど…かなりするみたいで。理由としては生産数が100どころか、50ほどしか生産されなかったとかなんとか。そして、そっちの木箱にはダレンさんが趣味で集めている煙管の中で特に少数しか生産されなかった煙管を収めてあります」

 

「……マジ?」

 

「マジのマジです。ま、ともあれです。お酒は飲兵衛に、そして煙管は健康を管理してくれている相棒に奪われないように気を付けて下さいね?」

 

そう言って、チラリとシーナは笑みを崩さずシャマールを見るLAFIを見た。

普通であれば一対一で渡せばいいのだが、何故わざとLAFIが居る場でこのような事をしたのか。

それはごく単純。ダレンがそうしろと言ってきた為である。理由としては面白そうじゃったからとの事。

 

「あ、そうだ!LAFIさん、写真とかどうです?折角だし一緒に取りませんか?」

 

「ええ、構いませんよ。こっちの薄い方も一緒にしましょうか」

 

何に対しての薄いと言ったのか、何故か笑みを浮かべるLIFEの言う事に首を傾げるシーナ。

LAFIはその姿を見ての通り立派なモノを持っているがシーナも19歳にしては立派な胸部装甲をお持ちであるとだけ言っておこう。

 

「LAFI…貴様ぁ!!!」

 

そしてLAFIの発言の意味をしっかりと理解していたシャマールは叫びながら涙を流し、LAFIが愉悦の笑みを見せる中でシーナは暇そうにしている面々を呼び集めた後、記念すべき一枚目となる夏の思い出を撮るのであった。

この後にだが、シーナはLAFIとツーショット写真を撮ったりなどしていたのだが、それは彼女達だけの話と留めておくのが良いだろう。

 

 

一方、ギルヴァは他の者達らから距離を取って、一人静かに海を眺めていた。

これこそ見たかった幼き頃からの夢。

本来であれば自身の両隣に立っていてくれたであろう義母と義妹さえ居れば、その夢は叶ったと言っても良いかもしれない。

だが彼の隣には義母の姿も義妹の姿もない。彼だけがずっと奥まで続く海を前にしていた。

 

「悲しい顔してますよ、ギルヴァ」

 

「そう見えたのなら目を直してもらえ、シリエジオ(代理人)

 

いつもの服装ではなく、メイド服に水着を合体させた水着という何処でそんなものを得たのかと言いたくなる様な水着を着たシリエジオがギルヴァの隣に並び立つ。

 

「何か用か」

 

「大した用はございません。…ただ折角の水着を貴方に見てもらいたかったので」

 

軽やかなステップでギルヴァの前へ出るシリエジオ。

以前までは髪を後ろへと一つにまとめていた彼女だが、今回はまとめていた髪を解いており、それも相まって綺麗の言葉しか思いつかない。

だがそんなありきたりな感想では相手が満足する訳でもなく、世の男たちは他の感想も考えるだろう。

 

「どうですか?似合っています?」

 

「そうだな。よく似合っている」

 

だがこの男は普通の感想しか言わない。

寧ろこれが平常運転なので、あれこれ言っていたら熱でもあるのかとシリエジオは疑いかねないだろう。

 

「ふふっ、ありがとうございます」

 

彼がこういう性格のは初めてデビルメイクライへと訪れた時から知っていたのでシリエジオは大して気にせず、似合っていると褒めてくれたことに礼を述べる。

見てほしい相手に見てもらえた。それだけの為にここに来たシリエジオは軽く一礼し、踵を返す。

そのまま立ち去るのかと思えば、ふと何かを思い出し再びギルヴァの方へ振り向いた。

 

「お昼はバーベキューですので。逃げずに来て下さいね、ギルヴァ?」

 

「善処しよう」

 

「善処ではなく、必ずと言って下さい。でないと周りの方々の前で大泣きしてある事ない事を周りに言いふらしますので」

 

見知った顔が居る中、そんな事をされてしまえばバカンスどころでは無くなるであろう。

 

「…分かった。必ず向かうと約束しよう」

 

珍しくシリエジオの軽い脅しに負けたギルヴァは必ず向かう事を約束する。

言質が取れた事により、シリエジオは楽しみにしてますねと伝え、その場から去っていく。

去り行く彼女を見送った後、ギルヴァは視線を再び海へと向けた。

皆の元へと戻る気がない訳ではない。ただこのバカンスに参加する事になった切っ掛けを作った本人に海を見せてやる為である。

 

―青い空に大きな雲…砂浜から見る海はこんなにも綺麗なんですね

 

―世界がこんな風になってなきゃ、今頃この時期はバカンスにしゃれ込む団体様で溢れてるだろうな

 

―ええ…そうですね。妹達にも見せてあげたかったなぁ…

 

―妹……あぁ、成る程な

 

エラブルの口から出た『妹』という言葉に蒼は納得した様に頷いた。

どういう訳か崩壊液に対する耐性を持ってしまい、成長していったアイソマー『エラブル』。

崩壊液の耐性を持たず、変わらずの姿を維持し続けるアイソマー達からすれば、エラブルは姉の様な存在だったかもしれない。

そしてこんな自身を慕うアイソマーらの事をエラブルは妹と思っていたに違いない。

最もエラブルという少女を知るのはもういない。

エラブルを慕っていた妹達は衰弱により、その命を散らしてしまったのだから。

そしてエラブルもまた体に起きた異変により、苦しみながら命を落としてしまった。

そのまま天へと召されると思えば、どういう訳かこの世界で所謂『精神体』のみとなってしまい、そしてギルヴァの中へと潜り込み、今に至る。

 

―そう言えば私が初めてギルヴァさんの中に潜り込んだ時、もう一人、私に似た方が居た筈ですが…

 

そいつ(フラーム)の事なら心配いらん。リヴァイルの所で元気にしている。今回のバカンスにも参加している」

 

―そうなんですね。お話してみたいですけど、流石に無理ですよね…

 

「方法はある。だがそれは向こうがこちらに話しかけてきた時のみだ」

 

―はい。もしその時は来たらお願いしますね?

 

「ああ。分かった」

 

波のさざめく音が静かに響き渡る。

三人で見ようと思っていた夢を叶える事が出来なかったギルヴァをそっと慰める様に。

 

 

その頃、ネージュはある人物を探して歩いていた。

この時の為に購入した白のビキニに薄手のジャケットを羽織っており、彼女自身が有する美貌と体つきもあって海辺を歩くその姿は一種の絵にも成り得よう。

 

「あれ?もしかしてネージュさんですか?」

 

「確か貴女はS07基地のM14だったか」

 

海辺を歩く彼女に声をかけてきたのはS07基地のM14。

彼女と共に来た他のメンバーはどうしたのだろうかと思い、ネージュが辺りを見渡すとサクラ指揮官はシーナと談笑、AUGパラはS10地区前線基地所属の一人、AUGと会話していた。

03式、Mk48、ジン、トビー、ハクらは久々の休暇を最大限まで楽しむつもりなのか、海水浴を楽しんでいる様子であった。

 

「皆、楽しめているみたいだな」

 

「そうですね。滅多にない機会ですし。皆、思い思いに羽を伸ばしているんだと思います」

 

「それは良い事だ」

 

羽を伸ばす彼女らにネージュとM14を笑みを浮かべる。

そしてネージュは隣に立つM14をチラリと見やると口を開いた。

 

「貴女とM16A4には感謝している」

 

「それはどういう…?」

 

突然の事に戸惑うM14。

それに対してネージュは平然としていた。

それもその筈で、先ほどまでネージュが探していた人物とはS07基地のM14だったのだから。

 

「S11地区での作戦。貴女とM16A4が参加していたと聞いている」

 

「はい。義勇兵としてですけど…それが何か?」

 

「そのS11地区後方支援基地に私は居たんだ」

 

「!」

 

ネージュ…旧名ノーネイムはS11地区で展開された大規模作戦にて対象となったS11地区後方支援基地の隠された地下に眠っていた。

ギルヴァによって発見された後は、ギルヴァの娘兼便利屋『Devil May cry』所属兼S10地区前線基地にて発足された独立遊撃部隊『ブラウ・ローゼ』の予備隊員となった訳であるが、S11地区での作戦に関しては目覚めた後にシーナの口から作戦に関しての詳細を耳にしている。

礼を伝えたくても今の今まで会う事すらなかった。

だからこそ今回のバカンスに参加したM14にせめてと思い礼を伝えたかったのだ。

 

「二人が参加してくれたおかげで今の私がある。その事について礼をしたかったんだ」

 

「大した事はしていませんけどね」

 

「それでもだ。二人があの作戦に参加した事は変わりない」

 

微かに微笑んだ後、ネージュはM14に背を向けて歩き出した。

言いたい事をしっかりと伝え、それ以外を口にしないのは偶然にもギルヴァに似ているのかも知れないが、それを知る者はいる筈もない。

 

「M16A4に会う事があれば伝えてくれ。S11地区での作戦では世話になったと。…それと、またいつか会う事があれば一杯奢らせてほしいと伝えてくれ」

 

そしてお礼の代わりに一杯奢ろうとするのも、ある意味ギルヴァに似てきているかも知れない。




遅くなって申し訳ございません!
夏休み明けの仕事の疲れと暑さによってくたばっておりまして…本当に申し訳ない。

次回は Memories of a summer Front Ⅲ
この話の最後辺りに裏編に繋がる展開を盛り込もうかと考えております。
但し未定なので、あまり期待はしないでください。
またこちらから参加メンバーに接触してますが…表編の展開は基本的自由ですので、皆さんのお好きなように描いてくださいませ。

それと活動報告に、このバカンスに参加しているS10地区前線基地側のメンバーを表記しております。軽い参考程度にどうぞ。

ではでは次回ノシ
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