Devils front line   作:白黒モンブラン

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─魔訶不思議、異常…そこはまるで異界のようだ…─


Act245-Extra M.O.S back story Ghost ship in the sea Ⅱ

灯り一つない暗闇に支配されたそこは、まるで異界の様であった。

遠くから響いてくる船体が軋む音さえなければ恐らくそこは無音の世界と化していたに違いない。

だがそれを破るが如く、この異界に踏み入れた者達の歩く音によって長らく保たれた世界は静かに崩れ去った。

 

「…」

 

奥へ、更に奥へ。

まるで導かれる様に集団の先頭を歩くシリエジオの隣でギルヴァは船内に入ってからは言うものの沈黙を保っていた。

悪魔の気配はあるにはある。だがこの船から発せられる何か、何処からか感じられる悪魔とは異なる気配が混ざってしまい元凶が潜んでいる位置を掴みかねている状況にあった。

それはギルヴァと同等の探知能力を持つ蒼も同じであり、全員を連れて闇雲に動くのは得策ではないと判断した彼はギルヴァにこう提案していた。

 

―一旦落ち着ける場所を探して、そこから何グループに分けて各個で悪魔どもをぶちのめした方が良いかもな。全員を連れて動いているとフォローも出来かねるし、元凶はお前が何とかすりゃいいさ

 

(…ふむ)

 

蒼の提案に一理あると判断した為、今回の騒動を解決する為に来てくれた協力者らにそう提案した後道中見つけた船内の地図をシリエジオに記憶してもらい、彼女のナビゲーションの元、一先ず集団はこの船の中央にあるメインホールを目指していた。

只々そこへと目指していく中、ギルヴァの視界に扉を失った部屋の中が映った。

 

「…」

 

あのボロボロの船にしては、異常とすら思えるほどに整った部屋。

無機質であるが荒らされている様子すら無ければ、家具が破損している訳でもなく倒れてすらいない。

外と中の違いが余りにも顕著に出ているとも言っていい状態だった。

 

「何か気味が悪いですね…こんなにも整っていると。船は余りにもボロボロだというのに」

 

「ああ」

 

たまたまギルヴァの隣に立っていたマテバグリフォーネが部屋の状態を見てそんな感想を口にした。

確かに彼女の言う通り、船があの有様だというのに部屋は何故か整っている。

気味が悪いと思うのは何ら可笑しい事ではないと言えよう。

 

「ここだけ奇跡的に大丈夫だったという考えは?」

 

ギルヴァが歩き出した事により、その後に続く集団。

その時、二人の会話を聞いていたのか、周囲の警戒に当たっていたM1887がギルヴァへと尋ねる。

 

「ありえんな。あの有様で部屋だけ何事もなく無事だったとは到底思えん」

 

「まぁ…そうでしょうね。ということは悪魔の仕業という事で良いのかしら、デビルハンターさん?」

 

「いや、違うな」

 

ギルヴァから返って来た答えにM1887はん?と訝し気な声を漏らした。

シーナから聞いていた情報からは恐らく悪魔が今回の騒動を引き起こしていると聞いている。

ではこの違いが悪魔によるものでは無ければ一体誰の仕業なのかなど場にいる全員が思う事であろう。

 

「悪魔とは異なる気配がある。それによる仕業かも知れん」

 

悪魔とは異なる気配。

彼から告げられた言葉に、やはりと言った表情を浮かべた者が居た。

 

「やはりギルヴァさんもこの気配を感じていましたか」

 

「ワレ モ ソノ ケハイ ヲ カンジトッテイタ」

 

それがアナと蛮族戦士であった。

二人の証言が悪魔とは異なる存在を明らかなものへとなっていく。

だがそこで怖気づいてしまう訳にはいかないのも事実。

それにだ。第三勢力が現れるのはよくある事。今更増えたのを騒いだ所で体力の無駄遣いでしかないのだ。

 

「そろそろメインホールです」

 

ギルヴァの隣で歩いていたシリエジオが最初の目的地となるメインホールに近づいている事を告げる。

そしてその言葉通り、古びたドアを開いた先にはこの船の中央となるメインホールが集団を出迎えた。

 

「こっちはあの部屋と違って、荒れてるみたいッスね」

 

アヤトルズの一人、ハクの言う通りメインホールは分かりやすい程に荒れていた。

カウンターは破損し、渡り廊下は中ほどで崩れ落ちて渡る事も不可能となり、タイルは所々剥がれている状態だった。

傍から見れば寧ろこの状態が普通だと思って当然と言えよう。

魔訶不思議、或いは不気味とも言える船内のメインホールで訪れた一時の休息に何人かが肩の力を抜く。

その近くでネージュは周囲の警戒を当たっていた。

敵の姿が見えないとは言っても油断は出来ない。それに自身は大して疲れてはいないのと何もしていないのはどうも落ち着かないという理由もあっての行動だった。

 

「嫌な感覚だな…」

 

周囲を見渡しながら、ネージュは静かに呟いた。

彼女の内部骨格には魔界の素材が使用されており、ギルヴァ程では無いにしろ悪魔の気配を感じ取る事が出来、同時にギルヴァやアナ、蛮族戦士が言っていた第三勢力の気配も感じ取る事が出来ていた。

それ故か悪魔の気配と第三勢力の気配が嫌な感じに混ざってしまっているこの気配はネージュにとっては良いものとは言えなかった。

だがそれは仕方ないこと。慣れるほかないと気持ちを切り替えて後ろへと振り向いた時だった。

 

「!!」

 

視界に映るは、上から集団の傍にあるカウンターへと目掛けて降下してくる大きな影。

敵だ。それを理解するまで一秒もいらない。

あからさまに味方ではないと判断すると同時にネージュは全員に向かって叫んだ。

 

「全員、カウンターから離れろ!!!」

 

「「「「!!!」」」」

 

ネージュが警告を知らせた甲斐もあってカウンターの傍にいた者達は前に飛び込む形でカウンターから距離を取る。

刹那、大きな影がボロボロのカウンターに砲弾の如く着地。

破砕音と共に長い間蓄積された埃を周囲へとまき散らした。

それが集団の視界を奪うものへと変貌するも、邪魔だと言わんばかりに蛮族戦士が片腕の大剣の様な爪を埃目掛けて横へと払う。

鋭き一閃が舞っていた埃を一瞬にして霧散し、カウンターに降り注いだ影の正体が明らかになる。

 

「…」

 

人間の倍はあるであろう大きな体。

顔を髑髏の仮面で覆い隠し、その身に纏う外殻は鎧の様だ。

右手には髑髏の装飾が施された一振りの剣。そして背には合計六振りの長剣を浮かばせ扇状に並べて展開。

両肩の分厚く弾力性を感じさせるマントの様な存在も相まってまるで騎士を彷彿とさせるが、黒と赤と言う色合いから高潔さなど無く、寧ろ禍々しい印象を抱かせる。

何よりもこの敵から発せられる気配そのものが、言うまでもなく悪魔である事を指していた。

 

「…」

 

突然として現れた悪魔。

しかし妙な事にその悪魔は動く気配がなく只々ギルヴァらを見つめていた。

まるで品定めをするかのように。

一触即発寸前の沈黙に包まれる中、髑髏の騎士はギルヴァと何故かアナを見た瞬間、僅かに小さな声で呟いた。

 

ス……■―……ダ……

 

「「!」」

 

二人には髑髏の騎士が僅かに小さな声で言った誰かの名を決して聞き逃さなかった。

間違いない。この悪魔は2000年以上に起きたあの戦いを知っている。

一方で何故か髑髏の騎士が出てきてからはというものの蒼はずっと黙っていた。

いや、黙っていると言うよりかは信じられないと言った所だろうか。

ギルヴァの視界を通して、蒼へと伝わる髑髏の騎士の姿。

先ほどからずっと彼の視線はその騎士の背に展開された六振りの剣へと向けられていた。

否、六振りの内の一振りの剣へと向けられていた。

その剣は何故か他とは違い、柄の先端には髑髏の装飾が施されている以外、シンプルな形をしていた。

それが一体何なのか。

知るのは蒼だけであり、彼からすればここにある事自体可笑しいと言えるほどの剣だった。

 

―見間違える訳がねぇ……あれは、あの戦いで封印の為に使われた筈だ。なのに何故ここに…

 

蒼の視線が髑髏の騎士が右手に持つ長剣に向けられる。

次の瞬間彼の目を見開かれ、そして隣にいたエラブルがつい怯えた声を出す程の怒気が放たれた。

 

―テメェか…ああ、テメェしかいねぇよなぁッ!!!!その剣を持つのはテメェしかいねぇなぁ!!!

 

(叫ぶな、五月蠅いぞ)

 

―んな事は分かってんだよ!

 

ギルヴァに咎められても蒼の興奮は収まらない。

そして蒼が髑髏の騎士の名を…否、髑髏の騎士へと変わり果ててしまった、とある魔剣士の名を口にしようとした時、事態は動いた。

 

「オオオォォォッ!!!!!」

 

雄叫びをあげ、背に浮かんだ剣を集団へと目掛けて射出する髑髏の騎士。

槍の如く飛来するソレをまともに食らえば、一発でお陀仏であろう。

全員が攻撃を食らうまいとその場から飛び退き、回避する。

 

「手荒い歓迎だな、全く!!」

 

「愚痴るな、リバイバー。あれが何もしてこないと思っていたのか?」

 

「そんな事を俺が思うか、リヴァイル!」

 

そんな軽口を叩く両者。

とは言えその表情は険しかった。

いや、悪魔という非常識な存在を初めて敵対した者ら全員の表情は険しかった。

飛来する剣は地面に突き刺さるどころか、地面に大きな穴をあけるほど威力を誇っている。

撃ったとしても剣の動きが鈍る訳でもない。現状回避するのが精一杯にも関わらず、ソレを難なく回避し、時には愛用する得物で弾き返すギルヴァやアナ、蛮族戦士はマジでどうなっているんだとつい思ってしまっても不思議でないだろう。

 

「これじゃ埒が明かねぇな!」

 

「けど今は回避が精一杯だって!!」

 

M16の言葉に叫ぶようにして答えたアーキテクトの言う通り、メインホールは荒れ狂う剣の嵐が出来上がっている状態だ。

不用意に攻撃すればどうなるか分かったもんじゃない。

どうにかして攻撃の手を止めなくてはならない。誰しもがそう思った矢先だった。

 

「オオオオォォォ!!!」

 

またしても髑髏の騎士が雄叫びを上げ、飛ばしていた剣を自身の元へと引き寄せた。

再び射出するが、今度は剣を上空へ飛ばすと、剣の切っ先を下へと向け円状に展開。

そして集団へと目掛けて、剣を雨の如く勢い良く降下。

降り注いだ剣の雨。全員が回避に徹した時、試験者 支援型が叫ぶ。

 

『不味イ!地面 ガ 崩レルゾ!』

 

しかし時すでに遅し。

剣の攻撃に限界が訪れた地面が崩壊。

崩れ落ちていく地面に咄嗟に反応したネージュとアナ、アーキテクト、M16、M1887は後ろへ跳躍し、そのまま船のデッキへと飛び出す。

シリエジオは傍にいたリヴァイル、リバイバーが着ている衣服の掴むと近くにあった食堂らしき所へと二人を放り込み、後に続く様に中へと飛び込むことでその場から退避。

M14、AUGパラ、アヤトルズの三人は試験者 支援型に捕まり、蛮族戦士と共にその場から脱出し、船の船尾部分へと撤退。

だが蛮族戦士と一緒にいたアイソマー、M4、マテバグリフォーネ、そしてギルヴァは反応に遅れてしまいそのまま下へと落ちてしまう。

落差がどれ程あるのか分からない。だが、これだけ大きな船から下へと落ちてしまえば幾ら彼女達でもひとたまりもない。

 

―ギルヴァさん、三人を!

 

「言われなくても分かっている」

 

エラブルの声に答え、ギルヴァは己の内に眠る魔の引き金に指をかける。

体が集まり出す光。しかし次の瞬間、光は周囲にへと爆発するように弾け飛び、蒼い悪魔が翼を広げて姿を現した。

現在進行形で落下している三人を瞬く間に抱えると、ギルヴァはそのまま下へと降下していき、暗闇の中へと消えていった。

そして先ほどまで熾烈な攻撃を浴びせてきた髑髏の騎士は何故かメインホールから離脱していていった者達を追う事もしなかった。

 

ス……■―……ダ……

 

また誰かの名前を呟くと、髑髏の騎士は静かにその場から姿を消した。

幽霊船の調査は突如として現れた髑髏の騎士の攻撃によって分断されるという最悪な形で始まるのであった。




はい、という訳で突如として現れた髑髏の騎士によって各々が分断されました。
一応こちらの方で分けさせて頂いた訳ですが…出来ればこの人と組みたいとかあれば仰ってください。書き直しますので。

さてはて、突如として現れた髑髏の騎士。
どうやら蒼は何か知っている様で…?

ではでは次回ノシ
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