Devils front line   作:白黒モンブラン

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―母を名乗る者―


Act251-Extra M.O.S back story Ghost ship in the sea Ⅷ/Ⅰ

作り出された神聖な空間で己の身を、己の命を守るために手にする武器を整備する者達はゼーレの話を聞き、どのような感情をその胸に抱いたであろうか。

それを知るためならば問う事は出来るだろうが、そんな余裕がある筈もなく静かな時間は終わる。

ギルヴァ、ネージュ、アナ、グリフォーネ、蛮族戦士、アイソマーの五人は『モデウス』を討つべく、セイレーンが作り出した教会から出ていきその場に残ったメンバーで『お母様』を討つという形となった。

 

「さて、我々もご挨拶に向かいましょうか」

 

榴弾を装填したシルヴァ・バレトを背負い、シリエジオは残ったメンバーへとそう告げた。

全員が静かに頷き、歩き出そうとした時セイレーンは待ったをかけた。

 

「向こうから出向いてもらいましょう。"親"の言い訳を聞かせてもらう為にも」

 

そう告げるとセイレーンはその場でバイオリンを弾き始めた。

先程とは違い、バイオリンの音色によって彩られる曲調はまるで相手を誘うかのような雰囲気を醸し出す。

どこか聴き入ってしまいそうになった時、亀裂が奔る音が小さく響いた。

それを合図に曲は止まり、入れ替わるようにして空間に亀裂が奔る音が大きくなっていく。

また一段と、また一段と空間に奔る亀裂が大きくなっていく光景を見つめる一行に驚きはない。

寧ろこうなる事は分かっていたと言わんばかりの様子だった。

そして次の瞬間、亀裂は破砕音へと変わり、血のような赤黒い空間から船の主が姿を現す。

巨体に白い肌の女体部分、背中は保有する魔力によって生成された禍々しい色をした光の翼が放出されていた。

だが両腕と両足はまるでこの世のモノとは思えない程に醜悪なものへと化しており、頭上にはまるで天使の輪を彷彿させるような紋章の様なモノが浮かんでいる。

神々しさと禍々しさを混ざり合ったかのような存在…それがゼーレが言う『お母様』の姿であった。

緊迫した状態が広がった時、『お母様』の視線がセイレーンへと向けられる。

 

「この不快な音を奏でる者を始末しに来てみれば……ああ、何ということ。まさか貴女だったとは」

 

「お久しぶりです、我が同胞よ。最後にお会いしたのは私が魔界を去る前でしたか」

 

「ええ。それを最後に貴女は私達を捨てた。何とも愚かで殺す価値もない。一族の長であり、一族の恥」

 

その台詞にセイレーンは何も言わなかった。

悪魔としての生き方を捨て、人として生きるという道を選んだ身。

 

「そうでしょうね」

 

静かに目を伏せて、お母様の台詞に対して肯定を示すセイレーン。

 

「ですが後悔はしていません。この生き方こそが──」

 

伏せられていた目をゆっくりと開かれ、透き通るような水色の瞳が異形と化した同胞を見据えた。

その瞳からの放たれる眼光は決して鋭くはないが相手に顔を反らす事を許さない。

 

私という悪魔(セイレーン)が叶えたかった生き方なのです」

 

愚かと言われても、魔族の恥と言われたとしてもそれは覚悟していた事。

故に彼女が叶えたかった生き方の中には決して後悔は存在していなかった。

 

「愚か。実に愚か。最早会話すら成り立たない」

 

会話は無意味だと分かるとお母様の視線はセイレーンからゼーレへと向けられる。

 

「ああ、探していたのよ?ゼーレ。今まで何処に行っていたのかしら」

 

先ほどまでの様子から一転。

ゼーレへと向けられる言葉は気味が悪いと感じられるほどに優しさに溢れていた。

まるで性格が変わったのではないかと思えるほどの変わりようにゼーレの傍にいたシャリテが前に飛び出し、ベルフェゴールの装備である両肩に配置された外套型多目的兵装『ローブ&アーモリー』の中から『対魔用折り畳み式25mmライフル砲』を二丁取り出し、両手に携え狙いをお母様へと向ける。

しかしお母様はシャリテに目もくれず、そのままゼーレへと話しかける。

 

「皆、心配していたのよ?私も姉妹も貴女に会いたくて、ずっと探していたんだから」

 

「う、嘘を言わないで。皆、貴女に殺された…貴女に利用され、食われて死んでいった…!」

 

「何を言っているの?みんな、生きているわ。此処でずっと待っているのよ」

 

この時、一体何人が気付いただろうか。

お母様が微かに浮かべた笑みに。

そしてその笑みと共に行われる行動の意味に。

 

「そう…ずうぅぅっと…待っていたのよ」

 

ゆっくりと動き出す両腕。

その二つは腹へと向かっていき、鋭い爪を有した指が立てられるとあろうことかお母様は自らの腹を裂いた。

そこに痛みに対する声はなく、それどころかその行いに快感を覚える様な声と共に余りにも鈍く、生々しい音が反響する。

やがて白き女体の腹が大きく広げられ、その中身が露わになった時、誰しもが絶句した。

あったのは無数の遺体。

それも全員身長が異なり、その体格からして女性、或いは少女らの遺体の様である。

だがそれら全ての遺体は全身の皮という皮が余すことなく剥ぎ落されており、一部の遺体は最早原型すら留めていない。

そして全ての遺体が浮かべた最期の表情が悲痛に染まっていた。

この時、一部が気づき理解してしまった。

『お母様』が口にした台詞。

姉妹はずっと"此処"で待っていた。

その台詞とあの腹の中にいる全ての遺体。

二つが繋がった時、気づいた者達はこれはゼーレには見せてはいけないと判断した。

 

「ゼーレ、見ちゃ駄目!!」

 

気付いた何人かの一人であるアーキテクトがゼーレへと叫んだが時すでに遅し。

彼女の目は既に腹の中にあったものへと向けられていた。

 

「そんな……皆……いや…!やめて…!」

 

呼吸が乱れ、ゼーレの体は小刻みに震え止まる様子がない。

一本、一歩へと後ろへと下がり、彼女はそこにある光景を否定しようとする。

だがその光景は否定しようのない現実。姉妹らの死体が詰め込まれた腹の中という目を反らしたくなる様な光景に尻餅をつくゼーレにストライクEを纏ったM4A1が駆け寄り、抱きかかえる。

 

「しっかり!」

 

「はぁっ…!はぁっ…!」

 

震える体。嫌なくらいに脂汗が流れ出し、過呼吸を起こし出すゼーレ。

ゼーレに対する余りの仕打ちにM4A1は『お母様』を睨みつけ、その怒りは最早爆発寸前にまで来ていた。

だがそれは彼女だけではない。この場にいる全身が怒りを覚え、爆発しかけそうになっていた。

 

「ほら…皆、待ってるわよ?おいで、ゼーレ。お母さんを困らせ―」

 

「黙れよ」

 

銃声。

放たれた弾丸は母と名乗る醜い化け物の顔に直撃するも大して効いていない。

だが相手を黙らせるには十分とも言える様な一発だった事に変わりなく娘の元へと向かうの邪魔した挙句自身へと向かって銃弾を叩きつけてきた者を睨みつける『お母様』。

そこに居たのは白銀に染められた大口径大型特殊リボルバー『ウィザードズ・ノクターン(魔法使いの夜想曲)』を構えていたソルシエールの姿。

二本の縦に連なる銃身の上部の銃身からは硝煙の煙が上がっており、発砲したのが彼女である事は間違いなかった。

 

「おま─」

 

「黙れと言ったんだ」

 

またしても台詞を遮るようにソルシエールは二射目を放った。

巨体を誇るお母様に拳銃の弾丸では大した効果は無い。だがそんなものは彼女からすればどうでも良かった。

その口を二度と開かせない。そして黙らせる。ただそれだけの為に撃ったのだ。

 

「喋らないでくれ。その耳障りで不快な声を出すな、その口を開くな、粗大ゴミ(お母様)

 

ソルシエールの全身を纏う古びた黒い外套がゆらりと動き出し広がっていく。

やがてそれは大きな蝙蝠の羽へと姿を変え、背中と後ろ越しに展開し彼女の手には全てを切り裂かんとする大鎌が現れ、弧を描いた刀身は禍々しい魔力で帯び始める。

専用装備『ワーロック・シャルフリヒター』を戦闘形態へと移行させたソルシエールはウィザードズ・ノクターンをホルスターと納め冷たい瞳でお母様へと睨み大鎌を向ける。

 

「何が母親だ。お前如きが母親を名乗るな」

 

「人間の真似事しか出来ない存在が!!!」

 

片腕を振り上げ、ソルシエールへと向かって振り下ろすとする『お母様』。

だがこの時、『お母様』は気づくべきだったかもしれない。

ソルシエール以外にもう一人、怒りを爆発させて母の皮を被った化け物の顔面に巨大な鈍器を叩きつけようと突進する悪魔の存在を。

 

(許せない…!)

 

怠惰と好色を司る悪魔(ベルフェゴール)の名を冠するその兵装を纏う『慈愛』の意味を有した名を持つ彼女は手にした巨大な鈍器『対魔用大型戦槌』を軽く握り直し構えながらお母様を睨みつける。

 

(許せない…!!)

 

彼女…シャリテにとって生きている同胞はソルシエールしかいない。

その他の同胞は、とある理由で兵器へと変えられ討たれた。

当事者でなかったとしても、失った痛みが無い訳ではない。

経験した事が重なったとは言え、それを抜きにしたとしてもシャリテにとって『お母様』の所業は許せるものではなかった。

 

(許せない…!!!)

 

痛みを知り、悲しみを知った。

そこに残る辛さは計り知れないもので、それを知っているからこそ一人の少女(ゼーレ)が背負うには余りにも重すぎるだという事も知っている。

 

(許せないッ!!!!)

 

だからこそ許せない。

そんな運命を背負わせる元凶となった存在が許せない。

 

「はああぁぁぁぁっ!!!!」

 

振り放たれる一撃。

質量の塊とも言える戦槌の一撃はお母様の横顔に直撃。

凄まじい音を立てながら、その衝撃を物語る様に衝撃波が奔り巨体の『お母様』はたった一撃で部屋の端へと吹き飛ばされていった。

破砕音と土埃が舞う中で、全員が戦闘を開始する。

今回の元凶である『お母様』、またの名を『母ヲ名乗ル者』との戦いが幕を開いた。




はい…遅くなって申し訳ありません…。

仕事や仕事疲れ、そのほかなど執筆の時間が中々とれず・・・・。
おまけの一話に済まなかったという事態…。


本来であればラスボス戦は一話で済ませたかったのですが、こんなド外道は皆さんもぶちのめしたいと思いますので、その描写を軽くで良いのでお願いします。
皆さんの投稿、展開に合わせてラスボス『お母様』戦決着編を描きたいと思います。

お母様、またの『母ヲ名乗ル者』に関しての詳しい説明は一応記載しておきます。

・母ヲ名乗ル者
:初代セイレーンと同じセイレーンであり、『セイレーン』という種族が初代を残して全滅した理由を知る悪魔。"力"を有した魂を吸収した事によりその外見は本来の姿とと比べて大きく変わっている。
(イメージとしてはGOD EATER2 レイジバーストにて出てきたアラガミ『世界を閉ざす者』に近い。
両腕で薙ぎ払う他、魔力の刃を生成して敵の足元目掛けて展開するなど攻撃方法は多岐に渡る。
ずば抜けた耐久力を持つ反面、両腕と両足、顔は比較的弱点に相当する。

母ヲ名乗ル者やシリエジオ、ソルシエール、シャリテ、ゼーレなどこちらのキャラで分からない事があればいつでも言ってください。
返信は遅れますが必ず返します。

(今回コラボ作戦の活動報告に、母ヲ名乗ル者、ソルシエール、シャリテ、ゼーレの詳しい説明を記載しておきます。参考程度にどうぞ)

では次回ノシ
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