Devils front line   作:白黒モンブラン

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─感動の再会(一発触発)


Act253-Extra M.O.S back story Ghost ship in the sea Ⅸ/Ⅰ

全ての元凶たる『母ヲ名乗ル者』との戦闘が始まる約十分前の事。

元凶ではないにしろ、倒すべき敵である悪魔であり、かの伝説の魔剣士の弟子であった魔剣士『モデウス』を討つべく、ギルヴァ、ネージュ、アナ、グリフォーネ、蛮族戦士、アイソマーの六人は暗闇に包まれた船内を歩いていた。

この無駄に広い船内。ただ闇雲に探し回るのは愚の骨頂であり時間の無駄。

鋭い気配察知能力を有するギルヴァが既にモデウスが居る場所を探知しており、他の五人は先を行く彼の背を追いながらモデウスがいる場所へと向かっていた。

誰一人とて口を開かず、歩く音だけが反響する。状況が状況だけあって和やかな雰囲気になる筈がない。

そう思われていただけあって、ギルヴァが歩いていた足を止め、口を開いたのは実に珍しい事であった。

 

「無理についてくる必要はない」

 

「?」

 

突然として出たギルヴァの台詞に隣を歩いていたアナは彼を見つめ、グリフォーネとアイソマーは首を傾げた。

蛮族戦士とネージュは足を止め、彼の背を見つめた。

 

「今なら向こうの戦いに参加する事も出来る。ゼーレの話を聞いて何も思わなかった訳ではあるまい」

 

あの場所を去る前にゼーレという少女から聞かされた過去は壮絶の一言に尽きた。

怒りを覚えない方がおかしいと言えるほどに元凶の行いは許されるものではなく、ギルヴァもあのタリンでの戦いで救出対象であったアイソマーらの事を思い出していたりする。

そうにも関わらず元凶との戦いを選ばず、モデウスとの戦いを選んだのはアレの相手は自身が適任であると思った同時に蒼に関する事だからでもあった。

そこに理屈や理由など無く、魂がそう叫んでいる。故にギルヴァはそちらとの戦闘を選んだ。

娘のネージュは豊富な武装による援護射撃を得意としている為、近接を得意とする自身との相性が良い。

蛮族戦士に関しては元より強者との戦いを望む性格である為、ついてくる事は分かり切った事でもあった。

その事からモデウスとの戦いに付いてくるのはこの二人だと思っていたギルヴァであったが、アナ、グリフォーネ、アイソマーの三人がついてきた事には僅かな驚きがあったのは言うまでもなく、その疑問を伏せた上で告げたのだ。

言外についてくるなと言っている様な気もしなくはないのだが、ネージュやアナはギルヴァの事をよく知っており、その台詞の裏に隠された本当の意味を既に理解していた。

 

「何も思わないと言ったら嘘になります」

 

それを察していたからこそ、アナはその問いに答えながら、ですがと言葉を続けた。

 

「この怒りは向こうにいる皆が代わりにぶつけてくれる。そう信じているからこそ私は此方側に。それに"アレ(モデウス)"が伝説の魔剣士(スパーダ)の弟子であるのでは尚の事。ギルヴァさんと同様に私もまた適任とも言えます」

 

「…」

 

「それ以外の理由が必要ですか?」

 

見つめてくる瞳に理由としては十分と判断したギルヴァは後ろに立つグリフォーネとアイソマーを見た。

青い瞳が二人を見つめるとグリフォーネは軽く肩を竦め、理由を明かした。

 

「残った所で近接寄りの自分じゃ出来る事も少ないですし…それに向こうには苛立ちを敵にぶつけて重火器で爆殺する爆殺魔が居ますから」

 

「その爆殺魔ってM4さんの事だよね?」

 

「…」

 

わざと伏せたつもりが、秒も経たない内にアイソマーに言い当てられ固まるグリフォーネ。

まるで錆びついた人形の様に首を動かしながらアイソマーを見るグリフォーネ。

引き攣った笑みを浮かべながら彼女はアイソマーへ一言。

 

「…隊長には内緒で」

 

「む・り♪」

 

満面の笑みで断るアイソマー。

どうかご慈悲をー!と腰にしがみつくグリフォーネを無視しながら、彼女はこの戦いについてきた理由を話し始める。

 

「あのクソ親父(ウィリアム)みたいな事をやってる訳だし、何も思わなかったと言えば嘘になりますよ。残る悪魔が元凶だけだったら、どうブチのめしてやろうかって考えてた所でしょうね」

 

手にした薙刀を肩に乗せながら彼女はちらりと後ろを見る。

その先にいるのは蛮族戦士。

平然としている彼にため息を付くアイソマーを見て他の面々は彼女がついてきた理由を察した。

 

「…そこにいる人が好き勝手やらかすでしょうから…その面倒も兼ねてます」

 

蛮族戦士と共に居る事で気苦労が絶えないのだろう。

アハハ…と乾いた笑みを浮かべるアイソマーへとアナ、ネージュの二人から同情の目が差し向けられる。

三人から告げられた理由。

引き返す様に言った所で引き返す事は無いだろうと判断し歩き出すギルヴァ。

そんな彼を先ほどまで懇願していた筈のグリフォーネが呼び止めた。

 

「あのー…あの時、ギルヴァさんから現れた分身みたいな人って…あの人は何者なんですか?」

 

「あいつか」

 

バアルでの戦いで仮初とは言えどその姿を現した蒼。

言われてみればグリフォーネとアイソマーには紹介してないという事を思い出し、ギルヴァは蒼へと話しかけた。

 

(指名だ。表に出てこい)

 

―あいよ。好印象を与えられる様にちゃんとした自己紹介をしねぇとな

 

正直言えばそんな事をしている暇はないがギルヴァが蒼を呼び出したのは理由があった。

蒼を知っているのはギルヴァを含めエラブル、アナとティアの四人。

その姿しか知らないグリフォーネが尋ねてくるのも無理もない事であり、いずれ話しておくべきとも思っていた為、行動に起こしたのだ。

グリフォーネに指名を受け、ギルヴァの魔力で構成されたドッペルゲンガーが姿を現す。

当然それには蒼が憑依しており、彼は軽く背伸びした後グリフォーネを一目見ると傍へと歩み寄った。

 

「初めましてだな。アイソマーと共にジョガトグルゥムへと決めた一撃は見事だったぜ」

 

「え、あ、どうも…。えっと、あなたが…?」

 

「おっと、自己紹介し忘れてたな。蒼って呼んでくれ、よろしくグリフォーネ」

 

「ど、どうも。その…蒼さんって悪魔なんですか?」

 

「肉体は無いけどな。れっきとした悪魔である事は変わんねぇよ」

 

手にした大剣を担ぎ肩を竦める蒼。

ギルヴァの中から出てきたとは思えない程に蒼の飄々とした性格にグリフォーネは戸惑いを覚えた。

それが顔に出ていたのか蒼はグリフォーネを見据えながら口を開く。

 

「流石にギルヴァには似ないさ。それともう一つ言ってやるとすりゃ俺自身色々訳アリでね。肉体を失い、残ったのは精神のみ。この姿も仮初の姿で、名前も肉体無き身じゃ不要になったんで今は蒼って名乗ってる。因みに名付けたのはギルヴァだけどな」

 

「…」

 

「まぁ、無理に全部理解しろとは言わんさ。この手を全部飲み込んで理解するには時間がいるからな」

 

ゆっくりでいいさとグリフォーネに念押しした後、蒼はアイソマーと蛮族戦士の二人に軽い挨拶を交わす。

これですべきことが終わった。後はモデウスが居る場所へと向かうのみとなった時、アナが口を開いた。

 

「丁度良いので私も彼女を紹介しないといけませんね」

 

「彼女?」

 

首を傾げるネージュであったが、この場にいるギルヴァと蒼、エラブルだけは知っている。

アナの中にいるもう一人の彼女の存在を。

ネージュ以外のメンバーも首を傾げた時、彼女はアナの隣に並び立った。

姿こそはアナと同じ、しかしその髪の色は深紅に染まっていた。

手にした大剣を軽々と振るい肩に担ぐ少女こそ、アナに存在するもう一人の人格()、ティアである。

 

「え?え?え?」

 

「アナさんが二人!?でも髪の色が違う…?」

 

蒼の登場でも十分困惑すると言うのに、追加と言わんばかりに登場したティアにグリフォーネとアイソマーの頭は更に困惑し始める。

そんな二人の傍で蛮族戦士は相変わらず平然としているが、ネージュは驚きながらも素早く立ち直り、ティアを見つめた。

その視線に気づいたのかティアは笑みを湛えながらネージュへと歩み寄る。

 

「おー…貴女がネージュね。人形だって分かってるけど凄い美人さんね」

 

「そう言われて悪い気はしない。それで、貴女の名前を聞いても?」

 

「おっと、忘れてた。私はティア。この戦いに参加するつもりだし宜しくね」

 

「そうか。であれば背中は任せてもらおう。援護射撃は得意な方なのでな」

 

「最高の弾幕と最高のアクロバティックを期待してるわ」

 

軽くウインクしてネージュの傍から離れるティア。

グリフォーネ、アイソマー、蛮族戦士にへと挨拶していく彼女の姿を見つめるアナ。

その隣に立ったギルヴァは同じようにティアの姿を見つめながらアナへと話しかける。

 

「姿を保って動けるようになるとはな」

 

「とは言っても、ドッペルゲンガーに憑依している蒼の様に長くは保つ事は出来ないみたいです。ですが体の主導権を彼女に渡す事で、私とはまた違う戦い方が出来るみたいです」

 

「人格の交代、か。成る程な」

 

長く保つ事は出来ないが人格を交代する事でそれぞれ異なる戦い方を展開する。

ギルヴァからすればあのように姿を保ちながら外へ出られるようになっただけでも十分とも言えた。

なにせそこまでの技術は教えてはいないのだから。

それはドッペルゲンガーに憑依した蒼も同じだった模様でギルヴァの隣に立ちつつ視線をティアへと向けた。

 

「ホント恐ろしいヤツだな。好奇心旺盛に加えて器用と来やがった」

 

「下手すれば貴方を超えるかもですよ?蒼」

 

「ハッ!言うねぇ。だが悪いな、俺はそう簡単に超えられないぜ?」

 

「分かってますよ。今のはちょっとした冗談です」

 

魔界出身であり、ギルヴァと同等か或いはそれ以上の実力を持つ蒼を超えるなど容易い事ではない。

それはアナも良く分かっている。

先ほどの発言は場を和ませる為の冗談でもあり、蒼もそれに気づきながらもわざと気付いていない振りをしており、ギルヴァも反応はしなかったもののアナの冗談の目的には気付いていた。

 

「今のうちに魔力を回してくれませんか、ギルヴァさん。今回の戦いでは恐らく…」

 

そこから先を口にしなかったアナではあったが、ギルヴァは分かっていた。

この戦いで確実と言っていい程に自身と蒼が託した力『デビルトリガー』を使う事になる、と。

 

「既に回してある」

 

だからこそギルヴァはそうなる事を見越して、自身の中にいるエラブルへと仕事を与えていた。

背に伝わる僅かな衝撃。それがエラブルが戻って来たという合図だと知るとギルヴァは彼女へと問いかける。

 

(上手く行けたか?)

 

―はい!デビルトリガー一回分とイグナイトトリガー二回分の魔力をアナさんへと送っておきました!

 

(よくやった。……面倒をかける)

 

―気にしないで下さい。私はギルヴァさんや蒼さん、他の皆さんみたく戦える訳ではありませんから。こうしてお役に立てるだけでも凄く嬉しいです

 

エラブルの口から出た言葉は紛れもなく純粋なものであった。

表立って戦えないからこそ、自身が出来る事をする。

その成長はアイソマーと言われながら身体が成長したことにより身に着けたのか、或いは肉体を失い精神のみとなってしまった時に身に着けたかは分からない。

だがエラブルがそう口にしてくれた事はギルヴァにとって少なからず喜ばしい事であった。

 

(そうか。…お前がそういうのであれば此方が何か言うつもりはない)

 

―はい!

 

明るく返事するエラブルにギルヴァは誰にも気づかれる事無く笑みを浮かべる。

だがそれも僅かな出来事。いつもの表情へと切り替える。そして軽く息を吐くと静かに歩き出した。

それに続く様に他の面子も彼の後ろを追う。

長く奥へと続く廊下。

やがて出口の近くまで来た時、外から聞こえてくる音にギルヴァの中にいたエラブルが呟く。

 

―雨の音…?

 

雨特有の匂いを感じる事は出来ないが、外では雨が降っているのは確かであった。

あの世とこの世の間にある世界『狭間』に雨など降るのかという疑問も覚えるエラブルであったが、決してそれを口に出さないまま外へ歩くギルヴァの視界を通してその行方を静かに見守る。

そして全員が船の外へ出た時、そこに広がったのは艦橋の上とも言える場所であった。

艦橋と明確に言わなかったのは、あまりにも艦橋とは言い切れない程に違う景観を保っていたからである。

まるで塔の頂上を彷彿とさせる円を描いた頂上。

周囲を囲むようにして並べられた複数の得体の知れない像。

そしてその場の中央で剣の切っ先を地に宛がい、静かに立ち尽くす騎士の姿。

静かに降る雨に打たれながらも微動だにしないその姿はどこか覚悟を決めている様な、そんな雰囲気を纏っていた。

その姿を後ろから見つめていた一行。そしていつの間にか体の主導権を手にしていたティアは軽く笑みを浮かべ、ホルスターに差し込んであったモデラートを引き抜いて戦いの舞台へと足を踏み入れる。

それを合図に全員が足を踏み入れた時、静寂を保っていたモデウスが反応した。

 

「来ましたか」

 

発せられた声に警戒を強める者がいる中でギルヴァと蒼、ティアと交代し意識の世界にいるアナ、表に出ているティアは違和感を覚える。

廃棄された素体と融合したモデウスは暴走状態にあると認識している。

実際、初めて邂逅した時もそうであった為だけに今の様子が異常とも言えた。

今そこに立っている敵は暴走している様子など無く、理性を保った魔界の騎士がそこに存在していた。

そうだと分かっていながらもティアは焦る様子もなく、何時もの様子で口を開いた。

 

「ホント、大したパーティーね」

 

モデラートを軽く一回転させ言葉を紡いでいくティア。

 

「食事もなければ、お酒もない。それで華やかな女性もいない。残ったのは悪さしか頭にない悪魔だけ」

 

「それは大変失礼しました、お嬢さん(レディ)。此方もパーティーを開くというのを聞かされなかったものでして。知らない内に突然パーティーを開いた事で準備すらままならなかったのです」

 

「へぇ?それじゃ仕方ないか。なら今から開いたパーティーを祝してグラスでもぶつける?それとも…」

 

モデラートを再び回転させた後、ティアはモデウスへとその銃口を突きつけた。

 

こっち(弾丸)をぶつけた方がいいかしら?」

 

それを合図に響き渡る雷の音。緊迫した状況が生まれる。

静かに降る雨が身に当たる中、ティアは静かにモデウスへと尋ねる。

 

「こう言うのって、感動の出会い(一発触発)って言うみたいよ?」

 

いつ、どのタイミングでこの戦いが始まるかなど誰しもが言わなくても分かっていた。

相手に悟られぬ様に身構える中、モデウスは空いた方の手を伸ばし背に滞空させてある大剣を握りつつ、ええ…と頷き静かに答える。

 

「そのようですね」

 

振り抜かれる剣。

鋭い切っ先に雨が降り、雫が滴る。

刀身の切っ先から落ちた雫が雨音に紛れて地にぶつかった瞬間、一番に動いたギルヴァと蒼が振るった得物の刀身が甲高い音を立てながらモデウスが振るった大剣をぶつかる。

火花が散りばめ、拮抗する力。雨が降りしきる中、最後の戦いが幕を開くのであった。




あけましておめでとうございます!

という訳でコラボの続きでございます。
前回と同様に分ける訳でございますが…
裏ボス戦の戦闘描写を無理に書く必要はございません。
そこは裏ボス戦に参加している方々に判断を委ねます。

もし…「ええで、折角の裏ボス戦の戦闘描写書かせてもらおうか」という方が居れば私の方にメッセージを送ってくださいませ。
モデウスの外見、攻撃パターン、ギルヴァ&ネージュの使用武器などの詳細を送りますので。

ではノシ
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