Devils front line   作:白黒モンブラン

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─これが最後の戦い─


Act254-Extra M.O.S back story Ghost ship in the sea Ⅸ/Ⅱ

剣戟と銃撃、破砕音と爆発音、駆け抜ける剣風と爆風。

血は舞い、火花は散り、薬莢は飛び跳ね、硝煙が漂い、殺気は降り注ぐ雨と交わる。

自身を討つ為に挑みに来た者達から繰り出される熾烈な攻撃の数々。

それらを捌き、往なし、躱し、剣を交え、弾丸を斬り落とすモデウス。

肉体の主導権をティアから自身へと切り替えたアナの幻影と剣戟を繰り広げ、一瞬の隙を突く形で薙ぎ払う様な蹴りを放って吹き飛ばしながらモデウスは思う。

 

──強い、と。

 

スパーダにその剣術を学び、彼が人類の味方をし魔界を去った後も一時は剣を振るい続けたモデウス。

魔界において一度剣を振るえば悪魔の千や二千は斬り殺されると恐れられた彼が苦戦している。

モデウスの恐ろしさを知る悪魔が聞けば、さぞや驚く事であろう。

それ程までに狩人らの実力は高かった。

 

(決して侮ってはいなかった、と言うのは言い訳にしかならない。己の内の何処かでこの者達を侮っていたか…)

 

素体が持ち合わせていた予備の剣もグリフォーネによって全て破壊され、蛮族戦士とアイソマーによる猛攻によって体のあらゆるところから血が流れている。

残る武器は()()()と自身が愛用している大剣のみ。

倒れても可笑しくない程の傷を負いながらも剣を構える事が出来るのは、悪魔としての矜持、何よりスパーダの弟子として彼に最も近いとされた魔剣士である誇りが、そして何よりも──

 

(我が師、スパーダを超える為にも…!)

 

兄を手にかけてまで叶えたい野望がモデウスが倒れる事を許さない。

そしてその野望をモデウス自身から聞かなくても密かに見抜いていた人物が一人いた。

 

アイツ(スパーダ)の力を得て、アイツを超えるのが目的)

 

それが蒼であった。

 

(故にソレを持ち出した…)

 

魔力で構成された大剣を振るい、構える。

吹き飛ばされたアナと入れ替わるようにして前に飛び出る蒼。

地を蹴り突進しつつ蒼の目は一瞬だけモデウスの背に残った最後の剣へと向けられた。

戦いが始まり、背中に展開した四振りの大剣をグリフォーネに破壊されたにも関わらず、残った武器が愛用の大剣とソレだけにも関わらず、モデウスは最後に残った大剣を使わずにいる。

一方でただの飾りではないのは事実。では、あの大剣は何なのだと誰しもが思うであろう。

密かに抱えた疑問。それに対し蒼が答える。

 

「魔剣スパーダの力が秘められた"フォースエッジ"を持ち出すとはなぁ!!お師匠様(スパーダ)が聞いたら勘当もんだろうぜ!!」

 

「ちいッ!!」

 

甲高い音が響く。

両者の剣から飛び交う火花。決して退かないと言う意思を体現するように拮抗する力。

鍔ぜり合う中、蒼は叫ぶ。

 

「互いの志を貫き、生きていく!お前と兄のバアル、そしてスパーダはそう誓い合った筈だ!!そんな事すら忘れたのかよ!」

 

「忘れてなど…ッ!!」

 

「じゃあ、その有り様は何だ!?それがお前が掲げる志とか言うんじゃねぇよな!!?」

 

「ッ…!…黙れ…黙れッ!!!」

 

その台詞が癇に障ったのか、激昂するモデウス。

剣を勢いよく振るい蒼を押し飛ばすし、態勢を崩した所を見逃さず、一気に接近。

無防備な状態を晒す蒼へ向かって刃を振り下ろす。

そこにギルヴァが両者の間に割って入り無銘の刀身でモデウスの一撃を弾き飛ばし、素早く身体を回転。片足を軸にしつつ鋭い蹴りをモデウスの腹部へと放ち吹き飛ばすと流れるように居合の態勢へと移行、地を蹴ったと同時にエアトリックを用いて一瞬の内にモデウスの目の前まで詰め寄った。

鯉口が切られた同時に鞘からその姿を晒し出す刀身。神速の一撃となって放たれる刃がモデウスの迎撃が届く前に、その体を切り裂いた。

 

「ぐぅっ…!」

 

苦悶の声を上げるモデウスだったが、その体は決して倒れる事は無い。

新たに出来た傷から血を流しつつ大剣による横薙ぎを見舞う。

迫りくる刀身を体を反らして躱し、その状態で刀を持ち得る力を全開にして振り上げ大剣を上へ弾くギルヴァ。

後方へと飛んでいく大剣、仰け反るモデウスの体。

それが最大のチャンスと見たギルヴァはモデウスの首へ目掛けて刀を振るうも、モデウスは素早く復帰し無銘の刃を大剣の幅で受け流し突進。

同時に最速を誇る刺突を放つも躱され、両者はこれで何度目になるのか分からない鍔迫り合いを持ち込む。

一歩も動かない二人。刃と刃の間で散りばめる火花の音だけがその場を支配する。

その時、足に強烈な痛みを感じた瞬間、モデウスの体が後ろへ浮かび上がった。。

一瞬の事に驚きを覚えるモデウスだが、ギルヴァの左手に握られたソレを見て理解した。

 

(鞘で払ったのか…!)

 

内心でそう呟くの束の間、無銘の刀身が振り下ろされ、不安定な態勢にも関わらずモデウスは大剣で防御態勢を取った。

寸でのところで防御が間に合い、刀の一撃を防ぐ。

だが直撃の反動までは殺す事は出来ず地面へ叩きつけられた後、そのまま跳ね上がったと同時に体を回転させて後方へと飛び退き、素早く構えた時、モデウスの体を影が覆った。

次第に大きくなり、人の形を成していく影にそれが上から迫ってくる者によるものだと判断すると体をそちらへと向けた。

 

「ハロー♪」

 

緊迫した状況下にも関わらず、届く陽気な挨拶。

宙で揺れる真っ赤な髪。

浮かび上がった笑みが彼女(ティア)が居ると言う確固たる証拠。

 

「…」

 

そんな彼女を抱えつつ回転しながら降下してくるは半面のみの道化師の仮面を装着した白銀の人形(ネージュ)

宿した瞳と纏う雰囲気は氷の様に冷たく、重装備にも関わらずその動きは実に軽やかだ。

深紅と氷(Crimson&Ice)

そんな印象を抱かせる両者が持つ二丁の拳銃と重火器がモデウスへと向けられた時、二人は息を合わせたかのように誘いを掛ける。

 

「「Shall we dance?(踊りましょう?)」」

 

誘い文句と共に始まりを告げる銃が火を吹く。

回転する砲身、カスタムが施された二丁拳銃の銃口から嵐の様に吐き出される鉛玉。

モデウスへと向かっいく弾丸の中でネージュと共に急降下していくティアは笑い、思った。

元凶よりもこのモデウス(裏ボス)との戦闘が最高に盛り上がる。そしてその盛り上げる要因の一つとして自身が握っている二丁の銃がそうであると。

 

(ハハッ…たまんないわね、この銃。まるで私の為にあるって言わんばかりの銃じゃない!)

 

もう一人の自分(アナ)が愛用する白銀の大型二丁拳銃(アジダート&フォルツァンド)に装填されているのは9mmパラベラム弾。

対して黒と銀の大型二丁拳銃(モデラート&ラルゴ)が吐き出す弾丸は.40S&W弾。

弾頭のサイズで言えば1ミリの差であるが、重量では1.5~1.8倍の差があり、着弾時における敵へのダメージは雲泥の差がある。

その強烈な反動を抑える為に施された改造、弾頭の拡大による装弾数減少をカバーする為のロングマガジン、銃をホールドする為に加工されたグリップ。

自身が知っている銃とは比べ物にならない程に改造が施されたこの銃は戦いを盛り上げる一方で自身の気分さえも高揚させていた。

 

「ったく、伝説の魔剣士の弟子ってのも厄介ね!ご丁寧に全部弾いたり斬り落としてる!」

 

これだけ銃弾が放っているにも関わらずモデウスは降ってくる弾丸の全てを大剣で弾き、そして斬り落としていた。そんな光景を前に浮かべた笑みながら愚痴るティアに戦闘が始まってからというものの冷静を保っているネージュが口を開く。

 

「ならばそれが出来なくなるまで撃つ。要は相手が死ぬまで撃ち続けるまでだ」

 

「ハッ…殺される前に殺るって訳か。良いわ、その脳筋戦法。実に好みだわ」

 

「ありがとう」

 

一言礼を告げてから着地するネージュ。彼女が着地したと同時に傍から離れ、肉体の主導権へとアナへと渡し交代するティア。

重装備故かまるで破裂したかのような破砕音が響き渡り、地は割れ、地面に転がっていた空の薬莢が飛び上がり、雨とそれがモデウスと二人の姿を一時的に隠す壁と化す。

その瞬間にネージュは両手に持つダブルガトリングガン『ジェラシー』を構えるとパトローネが持つ全ての武装を起動させた。

飛行ユニットとして生まれ変わった背部ユニットのアームに接続された巨大なコンテナ。無数の存在する発射口が次々と展開されていき、内部に装填されていた無数のミサイルが前へと迫り出す。

一対多を想定した装備。搭載された全ての武装を用いた時、生まれる瞬間火力は戦艦級。

fullweapon fullburst(全弾発射形態)』と命名されたその状態はパトローネを纏う今のネージュにとって必殺と言っても過言ではない選択。

だがネージュはモデウスを仕留めるつもりはなかった。否、自身が仕留めるのは不可と判断している。

そうだと分かっていながら浮かべる表情に焦りや諦めが見られないのは何故か。

単に彼女が冷静な性格だから?ただ隠すのが上手いだけ?

──違う。そんな理由でこんな表情している訳がない。

勘違いをしていないか?そして忘れていないか?此処に居るメンバーは誰であるかを。

 

「そう…仕留めるのは私じゃない」

 

身体を打ち付ける雨。その背後から青き突風が奔り、彼女の傍で赤から青へその色を変えていく霧が駆け抜けた。

眩い光がその場を駆け抜けた時。現れたのは刀を携えた悪魔と人間と悪魔が融合したような悪魔。

その二人がネージュの傍に立ち刀身を鞘へと納めた愛刀の柄へと手を伸ばし腰を低くした時──

 

「仕留めるまでの過程を作るのが私の役目だ」

 

パトローネが持つ全ての武器が一斉に火を噴いた。

耳を塞ぎたくなる様な劈く銃声。

高速回転する砲身から吐き出される弾丸は真っ直ぐと、コンテナに設置された複数の発射口から飛び出していく無数のミサイルはそれぞれの軌道を描きながら突撃。

硝煙とミサイルの噴煙が広がり、弾丸とミサイルの台風とも形容すべき弾幕がモデウスへと襲い掛かる一方で飛び交う銃弾とミサイルの中を掻い潜る様にして魔人化を果たしたギルヴァとイグナイトトリガーの上位版であり継承された力『デビルトリガー』を引いたアナが駆け抜けていく。

 

「くっ…!」

 

苦悶の声を上げながらも嵐を前に致命傷となる攻撃だけを捌いていくモデウス。

しかしその量は幾ら伝説の魔剣士と言えども捌き切るのは難しく、体を貫く弾丸と対象の至近距離で起爆するように設定されたミサイルによる爆発が肉体を削っていく。

それでも尚、モデウスは倒れない。

熱と硝煙、そして鮮血に包まれた爆炎の中から飛び出す二体の悪魔の刃が迫った。

研ぎ澄まされた鋭い一撃。首を狙った高速の刃にモデウスは満身創痍にも関わらず素早く反応。

幻影の刃を受け流し、即座に無銘の刃を受け止め弾き返し二人同時に仕留めようと大剣を横へと薙ぎ払うが態勢を瞬時に立て直したギルヴァとアナは体を後ろへと反らして回避。

生まれた僅かな隙。この時、アナの視線は蒼が口にした大剣『フォースエッジ』へと向けられていた。

 

【ティア!】

 

【言われなくても分かってる!!】

 

己の内に居るもう一人の自身が答えた瞬間、左手に現れたのはレプリカント。

腕を引き刺突の態勢へと移行する。

 

【使わずに置いておくと言うのあれば…!】

 

狙うは一点。

 

【"そいつ"を扱うに相応しい奴に渡したって良いわよね!!】

 

生まれた隙を見逃す程──

 

【受け取ってください、蒼!】

 

彼女は…いや、彼女達は愚かではない。

 

【私達からのプレゼントよッ!】

 

神経を極限にまで尖らせる。爆炎と雨が視界を遮ろうとしたとしても狙いは決して外さない。

確実に"ソレ"を送り届ける。この戦いを終わらせるに相応しい人物の元へと。

 

【「はあぁッ!!!!」】

 

目で追う事は不可。放たれるは最速の刺突。まるで流星の様な一撃。

神速の一撃とレプリカントが保有する変形機構によって刀身は前へ飛び出し魔力を纏い突進。

この状態だからこそ行える一撃と増大した射程はモデウスに反撃させる間もなく、彼の背後で浮遊するフォースエッジに直撃。

響き渡る甲高い音。駆け抜ける剣風。モデウスの傍を離れ宙へと勢いよく舞うフォースエッジ。

 

「なっ…!!ええぇい、忌々しい!!」

 

フォースエッジを狙った攻撃に驚くのも束の間、苛立ちを露わにするモデウス。

攻めてくるギルヴァとアナの攻撃を受け止めた後、二人を吹き飛ばすと彼は追撃を仕掛けるのではなく、何故か飛んでいったフォースエッジの回収する為、駆け出していた。

だが、その先に行かせんと蛮族戦士とアイソマーがモデウスの前に立ちふさがる。

 

「イカセヌ…!」

 

「ここからは先は通行止めよ!!」

 

爪と薙刀による同時攻撃。

否応なしに防御を強いらせるモデウス。

しかしその目は二人ではなく、未だに宙を舞うフォースエッジへと向けられていた。

まるで自分たちを見ていない。それに怒りを覚えたのかアイソマーが叫ぶ。

 

「ふざっけんじゃないわよ!このデカブツが!!私を見やがれッ!!!」

 

纏う装備が持ち得る力を全開にしてモデウスを押し飛ばすアイソマー。

よろけた所を蛮族戦士と同時に猛烈な連撃をぶつける。

蛮族戦士が放つ強烈な一撃は巨体を持つモデウスに確実な傷を負わせ、一瞬の隙をついてアイソマーが蛮族戦士と交代する形で前へと出る。

手にした白銀の薙刀を握り直し、懐へ飛び込む。

大きく薙ぎ払いから八の字を描く様な斬撃を繰り出した後、体を捻り持ち手を変えながら薙刀を自身の背へと回しながら飛び上がり、そのまま高速回転しながら斬撃を叩きつける。

そして着地と同時に回転による勢い利用した振り下ろしによる一撃を叩きつけ、モデウスを後ろへと吹き飛ばした。

今まで受けてきたダメージ、そこに蛮族戦士とアイソマーの二人による猛攻によって限界が近づいたのか体の各所から血を吹き出しながら片足をつくモデウス。

だが彼の感情は二人にではなく、飛んでいくフォースエッジへと向けられたままだった。

 

「アレが無くては…アレが…!!」

 

「こいつがなきゃ伝説の魔剣士(スパーダ)が超えられないって思ってんだろ?」

 

「ッ!!?」

 

ふと聞こえた声に勢いよく顔を上げ、声の主の方へと向けるモデウス。

モデウスの視線の先。その先にいたのは肉体を魔力で構成した悪魔の存在、蒼であった。

彼の手にはアナの一撃によって吹き飛ばされたフォースエッジが握られておりそれを軽々と振るった後に肩に担いでその場に立っていた。

 

「確かにアイツは憧れだったろうよ。魔帝に仕えし最強の存在…そりゃ悪魔の誰しもが憧れるのも無理もない話さ」

 

まるで近くで見てきたような口ぶり。

誰しもがそんな違和感を覚えながらも敢えて口にせず、感慨深げにフォースエッジを見る蒼を見つめた。

 

「けどなアイツは選んだのさ。人という存在を…例えどんなにド畜生な奴が存在していたとしても、それがたった一握りしか居ない、この世を必死に生きる存在をさ」

 

「…だから我が師は我らを裏切ったと…?」

 

「さぁな。アイツの真意までは分からんさ。でも、言葉には表せない感情ってもんは分かる。なんせ俺は残り香みたいな存在だしな」

 

「…! まさか…貴方は!?」

 

肩に担いだフォースエッジを下ろし、柄を両手に握りながらその刀身の切っ先を天へと掲げる蒼。

フォースエッジ全体が僅かに輝きを放ち始めた時、辺りは真っ白な空間に包まれる。

そんな時、蒼は一瞬だけ驚いた様な表情を浮かべた。

つい先ほどまでその姿すらなかった筈だ。

しかし蒼の前にはいつの間にかに一体の漆黒の魔剣士が立っていた。

 

(良いのかよ。こいつがその姿を取り戻す条件…それは意思と力、二つの鍵に己の血族が揃わなかったら駄目なんじゃないのか?俺がやろうとしているのは、誰も知らない第二の方法なんだぜ?)

 

(──)

 

(…そうか。お前がそう望むなら、態々俺の前だけに現れたお前がそう望むのであれば吝かではないさ)

 

(──)

 

(伝言?ああ…ティアの持つレプリカントについてか。分かった、お前がそう言うなら伝えておくよ)

 

(──?)

 

(ああ、いつでも。…力を借りるぜ?)

 

その問いに漆黒の魔剣士は静かに頷き、蒼はフッと笑みを零す。

やがて真っ白に包まれた空間は収束していき、天に掲げたフォースエッジに赤黒い魔力が帯び始めた。

微かにだが、フォースエッジとは違う姿をした大剣が出現する。

肉体を失ったとしても、ほんの僅かに残った欠片程度の誇りは今も尚、彼の中に存在し続けていた。

かつての姿を一時的にとは言え、取り戻そうとする大剣。

その光景を近くで見守る漆黒の魔剣士は静かに開く。

 

「…往くがいい。己に宿る魂がそう叫び続ける限り」

 

そう言葉をかけると漆黒の魔剣士は何も言わずにその場から消え去っていく。

次の瞬間、何処から現れたのか黒雲から赤黒い雷がフォースエッジにへと直撃。

そしてそれが合図と言わんばかりに、現れるはフォースエッジとは全く形の異なる大剣とつい先ほどそこに立っていたであろう蒼とは違う姿を有した漆黒の魔剣士がいた。

 

「あれは…」

 

【…凄まじい気配ね。アイツが今、手にしているのレプリカントの元となった剣よ】

 

「ッ!?では、あれが…!?」

 

【ええ、あれが伝説の魔剣士スパーダが有していたものであり、己の名を冠した大剣…魔剣スパーダよ】

 

「あれが…レプリカントの元となったという…。では、あそこに立っているのは、まさか…?」

 

【ご本人様って感じがしないわね。でも、気配で分かるわ。紛れもなくあそこに立っているのは蒼本人よ】

 

「…!」

 

ティアの話を聞き、思わず息を呑むアナ。

魔剣スパーダを手に、漆黒の悪魔の姿をした蒼という存在、彼から感じられた気配に彼女はこう思わずにはいられなかった。

次元が違い過ぎる、と。

何より次元が違い過ぎる存在が何故肉体を失い、精神のみの存在になってしまった事に疑問を覚えすにはいられなかった。

 

「遅いぞ、蒼」

 

「悪いな、ギルヴァ。ちと本気を出すのに時間がかかった」

 

「そうか。…それがお前の本当の姿だな?」

 

「流石にお前なら分かるか。ああ…これがもう何百年も前に失った俺の姿さ。スパーダ本人と違うとするのであれば、左腕に鞘みたいのが生えているぐらいかもな」

 

訪れた静けさを破るようにギルヴァと蒼は普段通りの会話を繰り広げる。

だが、それも一瞬の事であり二人の視線はモデウスへと向けられた。

 

「何故…何故貴方なのだ…!?何故、貴方にそれが出来る!?」

 

「まぁ…そう言われてもおかしくはねぇだろうな。けど、悪いな。俺の存在を一番に知るのは相棒(ギルヴァ)可愛い愛弟子(アナ&ティア)に決めてるんでな」

 

消える。

それは字のごとくであり、彼が地を蹴った時、その姿を目で追う事すら不可と言える速さで、一秒足らずでモデウスの懐に飛び込んでおり、モデウスが気づいた時には蒼は既に剣を抜き払っていた。

 

「ッ!?」

 

余りの速さに驚きながらもモデウスは満身創痍の体に鞭を打ち、無理矢理にでも動かした。

初撃は回避できた。そのまま攻撃を仕掛けようとした時、それすらも許さない突風が奔った。

閉じそうになる目を辛うじて開きつつ、モデウスは突風の発生源を見た。

 

「終わりだ」

 

居合の姿勢からゆっくりと刀の柄へと伸ばす蒼き悪魔。

そして──

 

「決着をつけるぞ」

 

魔剣スパーダを逆手で持ち、ゆっくりと腰を下ろしながらモデウスを見据える漆黒の悪魔の姿があった。

確実に仕留めに来た。そんな事は言葉にせずともモデウスは分かっていた。

地面を抉るような脚力で地を蹴り、技を繰り出そうとする二人を阻止すべく突進。

だがそれを許さんと言わんばかりにモデウスの前に立ち塞がる者がいた。

 

「準備は良いですね、ティア?」

 

【いつでもオーケーよ。一発かましてやりましょ】

 

それがデビルトリガーを発動させたアナであった。

 

「邪魔をするなぁッ!!!」

 

「大変申し訳ないのですが、そういう訳には行かないのです。…伝説の魔剣士の弟子であるモデウス、どうかお覚悟を」

 

激昂しながら突進してくるモデウスに前にして決して怯む事無くアナは構える。

幻影を左腕と同化した鞘へと勢いよく収め、力を貯める。

蒼い霧が暴風となって彼女の元へと集まり、相手を見据えながら腰を低くし刀の柄へと手を伸ばしながらゆっくりと体を回転させていく。

今から彼女がやろうとしているのは、かつての作戦で放った技の進化版とも言える技。

あの時の一撃が刀身に膨大な魔力を纏わせて巨大な剣を作るのであれば、この技は極限にまで魔力を収束させ、抜刀と共に放つ絶技。

この姿だからこそ出来る技。受け継いだ力によって出来るようになった最大の一手。

 

「はああああッ!!!!!」

 

抜刀。

回転と同時に振り下ろされた一刀は地面すらも揺らし、研ぎ澄まされた一撃は空間すらも切り裂く真空刃へと昇華。

迫りくるモデウスに切り裂くと、抜き放たれた一撃に続く様に青い斬撃とも言うべき巨大な衝撃波が飛翔。

その衝撃波はあろう事か灰色に覆われていた雲を切り裂く様に真っ二つに両断した。

これこそがデビルトリガーを発動させたアナが出来るようになった絶技。

その名も──『蒼ノ一閃 絶』。

 

「後は任せます」

 

幻影の刀身を鞘へと納めつつ、この戦いの幕引きを二人へと託すアナ。

彼女がその場から飛び退いた瞬間、世界が静止し無数の斬撃の音が響き渡った。

白黒へと切り替わった空間、視界の全てがゆっくりとズレ落ちる。

何かもが止まった世界で、息遣いすら聞こえないこの場で動けるのは青い悪魔と漆黒の悪魔のみ。

青い悪魔が持つ刀の刀身が鞘へ納められ、漆黒の悪魔が持つ大剣がその背へと収められた時──

静止した空間に煌めていた無数の太刀筋がガラスを割るように破裂

大技をまともに受け、地面に倒れ伏せるモデウス。

そして勝者としてその場に立つのは狩人達。

その光景は言わずとも分かる。

ギルヴァらが最後の戦いに勝利したという光景だけがその場に残っていた。




遅くなり申し訳ございません。
何度も書いては内容が気に入らず書き直しを繰り返していて、こんなにも時間がかかってしまいました。
これにてモデウス戦は決着。次回は脱出&後日談と行きます。
去年の夏に始めたコラボバカンス。大変時間がかかってしまいましたが、何卒お付き合いくださいませ。

さて、今回の戦いで魔剣スパーダを開放した蒼ですが…原作基準で行くと意思と力、二つのアミュレット、そしてスパーダの血族でなくては解放できません(多分そうだった筈)。蒼がスパーダは復活させた方法は誰も知らない第二の方法…いわゆる此方が考えたオリジナルなので、どうかご理解の程よろしくお願いします。

またアナさんが最後に放った大技は『sekiro』の竜閃を意識したものです。
なんかやれそうだなって思いやってみました。

あ、それと最近AIイラストというの使う様になりました。
それを用いてルージュちゃんを生成してもらったので、良ければどうぞ


【挿絵表示】


では次回ノシ
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