Devils front line   作:白黒モンブラン

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便利屋「Devil May Cry」を開いた初日。
依頼が来ない此処に初の客人が訪れる。
最もその客人はギルヴァにとって見覚えがあり過ぎた。


第二章 悪魔は前線に居る
Act14 来客はメイド


S-10地区前線基地に隣接された建物。

中には灯りが灯っているが店の表には店名の一文字すら見当たらない。

それもその筈で、ここ便利屋「Devil May Cry」は開業したばかりなのだ。

開業したばかりなのだが、店主であるギルヴァは椅子に腰掛けて本を読んでいた。

それもその筈だろう。開業したばかり、加えて名すら知られていない店に初日から客がやって来るとは思えない。

やって来るとしても興味本位でやってくるか、只の冷やかしかぐらいだろうとギルヴァは基地からの依頼か、他の基地からの依頼が来るまでのんびり過ごす事にしていた。

ぱらりとページをめくる音が響く。

その時。店の入口ドアが開いた。

開いた音が来客を知らせる。ギルヴァは読んでいた本を閉じ、来客の方へと視線を向けた、

 

(ん…?)

 

そこに居た来客に彼は眉をひそめた。

まずこの世界を生きていくには適しているとは言えないその姿は趣味なのか、それ以外の理由があるのか。

来客はメイド服を着ていた。そしてここの指揮官の様に黒髪を長く伸ばしている。

そしてその来客にギルヴァは見覚えがあった。いや、見覚えがあり過ぎた。

色々疑問を抱えながらも彼は書斎の引き出しから、ある物を取り出す。

念の為にと指揮官から渡されたもの。

使い方は簡単。中央に配置されたボタンを押すだけ。後は基地全体に警報が鳴り響くだけ。

早速ボタンを押そうとする彼に代理人が優しい笑みを浮かべたまま言葉を口にする。

 

「お久しぶりです」

 

「人違いだ」

 

即答かつ何ら躊躇いもなく、彼は警報装置のボタンをぶっ叩いた。

 

 

けたたましく鳴り響く警報。

基地全体にへと響き渡っており、店が発信源なので裏口からは武装した戦術人形達が流れ込んできた。

それなりに広さがあるこの部屋でも何十人もの人形達が入れば満員状態となる。

各々が持つ銃が向く先は何故かここにいる鉄血の人形。それもハイエンドモデル。

強力な個体種がここに居る時点で緊迫した空間が生まれた。

だが彼女は一切抵抗する素振りを見せない。あろう事に両手を上げて降参の意を示してきた。

これには誰もが驚き、啞然とした。後からやってきた指揮官もその状況に戸惑い気味であった。

これでも十分戸惑うと言うのに、鉄血のハイエンドモデル(後に聞いた話では代理人と言うらしい)がとんでもない事を言い出した。

 

「私をここに置いては頂けないでしょうか」

 

その台詞に余計に混乱が生み出され、自分も訳が分からずにいた。

だと言うのに代理人は笑みを崩さない。一旦この状況に収拾を付ける為、指揮官は護衛を5人付けて代理人と共に店を出ていった。残された他の戦術人形達は顔を見合わせ、戸惑いの表情を見せる。

自分も戸惑ってはいたが、後に指揮官から報告があるだろうと判断し中断していた読書を再開。

ここに来て初日の午前中の出来事であった。

 

昼過ぎ。

あの騒ぎから依頼が来る事はなく、読んでいた本もこれで三度目になる。

流石に飽きてきたのだが、暇を潰すのがこれぐらいしかない。

どうしたものかと思い悩んでいると店の裏口のドアが開く音が響いた。

やってきたのは若干疲れ気味のナギサ指揮官と変わらぬ様子の代理人。あれから一体何があったのやらか。

 

「ギルヴァさん…」

 

「どうした、指揮官」

 

書斎に項垂れる指揮官。

本を閉じ、彼女にへと視線を向ける。

 

「…彼女、鉄血から離反しているみたい。それも追っ手の事とか強制終了されない手段…ありとあらゆる手段を講じて離反してきたみたいなの」

 

「ほう」

 

態々そこまでして置いて欲しい理由とは一体?

 

―意外とお前が原因かもな?

 

どういう意味だ?

 

しかし原因、か。

確かに自分はあの時M4A1を助ける為に代理人と戦った訳だが…。

もしそうなら置いて欲しいなんて言うだろうか?否、それはあり得ない。

寧ろ探し出して襲撃をかけてくるに違いないだろう。仕留めるチャンスを奪ったのだからな。

だと言うのに代理人はその様子を見せていない。好機を伺っているのかも知れないが…何か違うと勘がそう告げている。

 

「それで?指揮官としての見解を聞かせてほしい」

 

「話した所敵対する所は見受けられなかった。でも信用に欠ける」

 

驚いた。

年若いと言うのにいい表情をする。伊達に指揮官はやっていないという訳か。

まぁ…当然といえば当然か。

 

「成程な。…で、どうするつもりだ?本来であれば俺に相談するべきではないだろう。副官か、本当に信頼できる者に相談するのが筋だと思うが」

 

「普通はね。でも彼女、ここに置いて欲しい訳じゃないみたい」

 

「?どういう事だ」

 

「厳密に言えば、基地にではなく、ここデビルメイクライに置いて欲しいみたいなの」

 

「成程な…。道理で指揮官ではなく、俺に…」

 

だからここに来たという訳か。

ナギサ指揮官の後ろに立っている代理人の方へと見やると、彼女は優しく微笑み返してきた。

あの時とは想像が付かない位の変わりようだな。一体何があったというのだ?

疑問は尽きないがこのままでは平行線を辿る一方だ。一旦自分がこの場を納めた方が良いかも知れない。

 

「指揮官、少し席を外してもらえるか。彼女と話してみる」

 

「でもそれだとギルヴァさんが…」

 

「問題ない。それに彼女が暴れる様であれば即刻斬り伏せる」

 

立て掛けた無銘を手にする。

多少距離は離れているが問題にもならない。あの時、彼女の装備を破壊した様にやるだけに過ぎない。

 

「…分かった。でも心配だから、店の裏口に二人護衛を待機させるから。何かあったらその子達に言ってね?」

 

「了解した」

 

こちらを心配してくれている様子に内心感謝を述べつつ頷き、ナギサ指揮官は店を後にした。

さて…ここからが本番か。

 

「ここに置いて欲しいとはな。一体何が目的だ?」

 

「そうですね…。端的に申せば、貴方に尽くしたいという事でしょうか」

 

その台詞に最近になって自身の起きた出来事が脳裏を駆け抜けた。

笑顔なのに、目が違う。まるで…45に押し倒された時に見た目に似ている…。

 

「あの時私は貴方に敗北し、一時は貴方に強烈な殺意を抱きました。ですが日を跨ぐ度にその感情は薄れていき、代わりに貴方の事を知りたいと思う様になったのです。そして傍に居たい。時間を共有したい、独占したい…。この感情を何て言うのか…ええ、答えなくても分かりますとも。まさしくこれが「恋」というものなのでしょうね。人形である私にこんな感情があったとは今でも驚いています。だけどこの感情は間違ってない。そう確信しています。だから私は鉄血を離反。貴方を会う為に、この手に抱きしめる為に、同じ時を過ごす為に探していました。そして漸く…漸くです。貴方を見つけた。今すぐにでも姿を現したかった。だけど駄目だった。何故なら貴方は他の人形と行動を共にしていたから。あぁ、ご安心を。共に行動していた彼女に手を出すつもりはありませんので。そして私は貴方を追った。そして待った。この日が来ることを」

 

代理人の手が自分の頬に触れる。

人形だと言うのにその手はとても柔らかい。

 

「私は貴方に尽くしましょう。ありとあらゆる…全てを貴方に捧げましょう。望みなら家事も戦いもこなして見せましょう。あ、お望みでしたら夜の方もお世話しますので、その時はご遠慮なくお申し付けください。そして貴方に、ここの人達に…私が反旗を翻す様な事があれが一切躊躇いもなく斬り伏せて下さい」

 

今理解した。

原因は自分にあった。

 

―え、今更?

 

分かる訳ないだろ。確かに戦ったがここまでになるとは誰が予想できる?…しかし45に続き、鉄血のハイエンドモデルまでとは…。

 

これは先がどうなるか全く予想できない。

頭を悩ませていると書斎に置いてあったレトロな外見を持った電話が音を響かせた。

携帯端末が普及しているこの時代だが、たまにレトロな外見を維持したまま、中身が最新という物が出回っていたりする。この電話もその一つで、昨日本部から基地宛に支給品が届けられ、中に俺宛の品もあった。

何とクルーガーから俺宛に届けられた物で、どうやら開業祝いに送ってきたそうだ。

それは良いとして、問題は開業したばかりのこの店に何故電話が掛かっているのかという事だ。

もしかすれば本当に依頼の電話かも知れない。

代理人に手を退ける様に頼み、受話器を手に取り耳に当てる。

 

「デビルメイクライ」

 

『はぁーい、ギルヴァ』

 

「その声は…45か?」

 

『正解♪』

 

まさか45から電話かかってくるとはな…。

あの後自分はこっちに来ていたが、彼女達404小隊がどうしたのかは知らなかった。

まだ本部にいるのか、あるいは任務に出ていると思うのだが。

それ以前に何故ここの連絡先を知っているのが疑問に思う所なのだが、何かと不思議が残る彼女だから出来ておかしくないと納得する様にしておこう。

 

「で?何の用だ?」

 

『まずはお店の開業おめでとう。もし何かあったら頼らせてもらうから。ちゃんと報酬も払うわ』

 

「あぁ、ありがとう」

 

『それとね…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一番は私だから』

 

 

 

 

 

 

 

 

「?それはどういう…」

 

『そうね…。今あなたの前に居る人形に向けてかな?」

 

目の前居る人形…?それってまさか…。

 

―おいおい、マジかよ。あの嬢ちゃん、このメイドさんがここに居る事を気づいているのか。

 

『なんてね、冗談よ』

 

全くもって冗談に聞こえない。

 

『それじゃそろそろ切るね。また会いましょ。その時は二人っきりで、ね?』

 

それを最後に彼女からの電話が切れる。

何だろう…今まで感じた事の無い恐怖を感じた気がする。

…取りあえず、今は代理人をどうするかだ。

 

「…良いだろう。ここに居てくれても構わない。だが…君が先に言った様にここの者を傷付ける様であれば即刻斬り伏せる。それだけは肝に銘じてほしい」

 

「畏まりました。では…」

 

代理人は一歩下がり、一礼しつつスカートの裾を軽くつまみつつ持ち上げる。

 

「元鉄血所属 名も代理人。この身が果てるまで貴方様にお使いする事を誓いましょう」

 

こうして。

初日だと言うのに便利屋「Devil May Cry」の社員が増えたのだった。

ここの基地の面々と本部にはこちらから説明しておかなくてはならんな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一番は私だから、ですか。

どなたか存じ上げませんが、一番になるつもりはありません。

彼の元に入れたら、彼の全てを知れたら良い。願わくば独占出来ればいいのです。

それに電話を掛けてきた方とは仲良く出来そうな気もするんですよね。

その日がすぐ来たら嬉しいのですがね…ふふっ。




「…!」

「どうしたの?45姉」

「いいえ…なんでもないわ。少しね…」


(ギルヴァにまた人形が増えたのね…)

(どこの誰だが知れないけど……一番は渡さないわ)



と言う訳で代理人、Devil May Cry所属となりました。
今後どういう風にしていくかは未定ですが…まぁそこはぼちぼちと。

では次回お会いしましょう。
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