Devils front line   作:白黒モンブラン

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突如としてやってきた依頼。
依頼主はグリフィン。依頼内容はある戦術人形の救援。
救援対象はギルヴァがかつて助けた戦術人形 M4A1だった。





今回は短めです。
何卒ご容赦を…(震え


Act19 夜空に輝く銃弾

揺れる車内。

辺りは暗闇に包まれ、空には星が輝いている。舗装されていない道を駆け抜け、車のライトが先を照らす。

備え付けられたジュークボックスから静かな曲が流れており、多少ではあるが雰囲気は変わる。

ハンドルに握り、先程まで静かにしていた代理人が口を開いた。

 

「まさか…よりによって彼女を助ける事になるとは」

 

「不満か?」

 

「いえ…。只、皮肉なものだと思いまして」

 

「あの時は敵対していたからな。そう思うのも無理もない」

 

「ええ…。ですがこれも仕事。途中で投げ出す訳にはいきませんので」

 

「そうか」

 

俺達はある依頼を受けて、とある地区へと向かっていた。

行き先はS-9地区近くのゴーストタウン。依頼内容はある戦術人形の救出。

依頼人はグリフィン。そして今回の救出対象は…

 

 

 

 

 

 

M4A1。

 

 

 

 

 

何故グリフィンが俺達に依頼をしてきたのか。

時は数時間前に遡る。

 

その日は依頼が来る様子が無く、一日中店で過ごしていた。

自分は本を読み、代理人は椅子に腰掛けて紅茶を飲み、フードゥルは基地内の散歩。

各々が自分の時間を過ごしていると、渡されていた通信端末に指揮官から連絡があった。

何やら急を要する案件らしく、執務室に来てほしいとのこと。店番を代理人に任せて、自分は指揮官が居る執務室へ。

数分かけて執務室に到着し中に入ると、指揮官とホログラム投影で映し出された見覚えのある人物がいた。

その人物はあの時本部で会った片眼鏡が特徴の女性、へリアンであった。

指揮官に用があるなら分かるが何故自分まで呼び出されたのか。その事を尋ねると指揮官の代わりにへリアンが言った。

 

『君に依頼をしたい』

 

わざわざグリフィンが依頼してくるとは思いつつも要件を聞く。

彼女が言うには鉄血に関してある重要な情報を持っている戦術人形が一か月前から行方不明となっているらしい。

グリフィンはその部隊長が残していった音声ログを見つけては後を追っていたらしいが、中々合流する事が出来なかったそうだ。そしてS-9地区近くのゴーストタウンにてその姿が確認出来たと言うのだ。

本来であればすぐに救援を出したい所だったらしいが、向こうにも向こうなりに訳があるらしくその戦術人形の救出任務をS-9地区の指揮官に委ねた事。そして保険として便利屋である俺達にも救援に向かってほしいというのだ。断る理由もなかったので了承。そして救出対象である戦術人形があの時助けたM4A1だと言うのだ。

店に戻り、代理人に依頼があった事と救出対象がM4A1である事を伝えると少し複雑そうな表情を浮かべていてはいたが、自分も同行するとの事。正直止めるべきかと思われたが彼女の意思を汲み取り、フードゥルに留守番を任せると俺達は現場へと向かう事に。

 

 

そして今、代理人に運転を任せて現場へと向かっている最中である。

先程S-9地区に入ったので、後少しで現場に着く頃だろう。へリアンから教えてもらった情報を整理し、運転している代理人に伝える。

 

「作戦は簡単だ。作戦領域内の鉄血の人形を排除し、対象を保護。手段は問わない。派手に暴れても構わないとの事らしい。また俺達の存在はあっちの指揮官とその部隊の面々に伝えられている。安心していい」

 

「分かりやすい作戦ですね。…作戦領域内に進入。このまま行きます」

 

代理人が自ら改造を行った大型ワゴン車のスピードが上がる。

防弾仕様、そして車内はジュークボックスにウェポンラックにソファー。そして車体の側面には「Devil May Cry」と書かれたネオンサインが取り付けられている。何故それを取り付けたのか聞くと宣伝の為と彼女は言っていたが…本当に必要なのだろうか。

それは兎も角、車は街中を駆け抜けていく。エンジン音と音楽に混ざって何処からか微かに銃声が聞こえるので作戦は既に開始されているのだろう。

現にこちらが行く先に鉄血の人形部隊が道にバリゲート張っていた。

 

「代理人」

 

「ええ。このまま突っ込みます!」

 

アクセルを思い切り踏んだのだろう。車のスピードがさらに上がった。

いつの間にか曲は別の曲へと移り変わっており、先程より激しめの曲が流れ始める。

車両は右へと左へと蛇行しながら道路上にいる機械鉄血兵や人形鉄血兵を派手に弾き飛ばしていく。

敵は思わないだろう。今運転しているのがかつては味方だったとは。

それはそうと代理人も容赦ないな…。問答無用で轢いているのだが?

ぶつかる度に振動が伝わり、ハンドルを握る代理人が少し残念そうに呟いた。

 

「正直あまり揺らしたくないんですよね。今流れている曲、結構お気に入りなので…」

 

「それは残念だ。だが暫くは…」

 

窓を開け、外へと身を出すと進化したレーゾンデートルを構えて敵に目掛けて発砲。

連装化された銃身から火が吹く。

 

「この状態だ!」

 

引き金を引いて弾を放つ。

乾いた音が何度も街中に響き渡り、放たれた二発の弾丸が敵を貫き、風穴を開けていく。

猛スピードで道を駆け抜けていく車。すると捨てられた車二台でバリゲートを作り、武器を構えて待ち構える鉄血の人形部隊が進路を塞いでいた。

 

 

 

車両の窓から身を乗り出したまま、ギルヴァは運転している代理人へと視線を送る。

それを感じ取った代理人は彼に視線を送り返すと敵が敷いたバリゲートの手前で思い切りハンドルを左へと切った。敵がぶつかった反動と捨てられた車両へと乗り上げた事により車体は左へと回転しながら勢い良く宙へと舞い上がった。その瞬間ギルヴァは外へと飛び出す。レーゾンデートルを手に、ぶつかった衝撃で宙へと上げられた人形兵たちに向けて弾丸をお見舞いし始めた。

自身の目の前に居たRipperの頭部を撃ち抜き、放った反動を利用して後ろへと銃口を向けVespidへと弾丸が放つ。次に浮かんでいる車両のボンネットを足場にして二人目のRipperを撃つと正面へと振り向きすぐさま前方のダイナゲートへと放ちボンネットから跳躍しつつ、別のホルスターに納めていた45口径リボルバーを引き抜く。

レミントンM1858を模ったリボルバー、fake(偽物)はギルヴァの新たなる武器でありパーカッション式ではなく、シリンダーを横にへと出す方式が使われている。まさしく偽物(fake)と言う銘を名付けられたリボルバーは、態勢を崩して成す術もないまま宙に浮かぶ敵にへと一発、銃弾を叩き込む。続けざまにギルヴァは近寄ってくる敵に対し、レーゾンデートルで見向きせず引き金を引く。二つの銃口から二発の弾丸が相手の頭部に風穴を開け、撃った反動を活かしてギルヴァは体を回転させつつワゴン車の助手席にへと体を滑りこませ、そのまま戻る。

滞空時間が数秒程度にもかかわらずでありながら敵を仕留める彼の姿を、偶然ながらも居合わせ、終始を見ていたS-9地区基地所属の戦術人形は思わず呟いた。

 

「…凄い」

 

その言葉を聞こえる事もなく、ワゴン車は道路に着陸するとそのまま走り去っていくのだった。

 

 

「ふぅ…」

 

敵に弾丸がお見舞いし、助手席に戻る。

レーゾンデートルとフェイクとホルスターに納め、シートに体を預ける。

 

「お見事です」

 

「ありがとう」

 

猛スピードで走り抜けていくワゴン車。

先程S-9地区基地所属している戦術人形の部隊を見つけてしまったが…見せ場奪ってしまったかもしれん。

内心彼女達に謝罪しながらも、今も尚救援を待っている人形へと思いを馳せる。

…無事にいてくれよ、M4A1。




はい。今回は前回に名前だけ出てきた45口径リボルバーを出しました。
fake…偽物という名の銃も悪くないだろう?

さて…次はどうしたものかね。


次回お会いしましょうノシノシ

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