Devils front line   作:白黒モンブラン

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バリゲートを突破し、駆け抜けるバン。
そんな中、ギルヴァは敵の数が減っていない事に気付く。
代理人曰く飛行場が敵の占領下にある為、そこから増援部隊が出ているとの事。
そこで二人は別行動と取る事にする。
ギルヴァは対象の保護。そして代理人は敵飛行場を襲撃する。
新たなる相棒と共に…


Act20 美しく狂い咲き

市街地を駆け抜けていくバン。

バリケードをいくつか突破したのは良いものの、状況は良い方へとは行っていない。

それどころか敵の数が減っていない様にも思える。

このまま対象を保護出来たとしても帰り道が辛くなるのは目に見えていた。どうしたのもかと思っていると運転している代理人が言ってきた。

 

「いくつかの飛行場を占領しているからでしょう。元々この辺りは鉄血の支配下にある領域ですから」

 

「つまり飛行場を抑えれば増援は来ないと?」

 

「ええ」

 

ならば話は早い。

こちらから急いで飛行場へと赴くべきだ。

 

「なので…飛行場の占領は私が抑えます。ギルヴァは対象の保護を」

 

「…いけるのか?」

 

彼女が赴くという事はかつての味方に対し銃口を向けるという事だ。

自身は大して思ってなかったとしても心という部分には多少ばかり傷がつく。

それが積み重なってしまえば、いつしか自分自身が崩れる。

人間と同じ様にそうなりかねないのであれば自分が赴くべきかもしれない。

 

「言ったでしょう?」

 

初めて会った時の様な優しい笑みを浮かべて彼女は言った。

 

「この身は貴方に捧げると。例え敵がかつての味方だったとしても関係ありません」

 

その声は一切震えてなどいなかった。

仕事だからと割り切っているのだからか、あるいはそれ以外か。

問題ないと思っていると、彼女はそっと不気味な笑みを浮かべた。

 

「ええ…。貴方の行き先を邪魔しようとする害虫は始末しなくてはなりませんから。私の様な奴は一人で十分。他なんて要らないのですよ。ええ…そう……他なんて要らないんですよ……ふふっ…アハハッ…♪」

 

多少だが不気味さを感じさせる。

そしてこれから相対するであろう敵に謝罪を述べておく。

例え人形であれ…その終わりは決して安らかなものではないという事を。

 

「おっと…すいません。つい…」

 

「問題ない」

 

助手席から立ち上がり、車内の後ろにあるウェポンラックへと向かい立て掛けられてある無銘を手に取る。

レーゾンデートルとフェイクに弾丸を込めてから、彼女の隣にへと立つ。

 

「この先は丁度分かれ道になっている。右は恐らくM4との合流をする地点へと繋がる道、左は飛行場へと繋がる道だ。そこで別れよう。それと通信機を渡しておく。何かあれば連絡しろ」

 

「分かりました。……見えました」

 

分かれ道が見える。

車は停車し、自分は外へと出る。銃声と爆発は未だに響いており、対象の保護を急がなくてはならない。

右の道へと歩き出して、一旦足を止めて代理人の方へと振り向く。

 

「恐らく飛行場ではかなりの敵が居るだろう。…派手にやってこい」

 

「…ふふっ。…ええ…ご要望に応えて見せましょう」

 

そう言い残して彼女は飛行場がある道へと車を走らせた。

さて…こちらも急ぐとしよう。

 

―そう言えばシルヴァ・バレトに装填していた弾…焼夷弾じゃなかったか?

 

「…」

 

―…

 

「…行くぞ」

 

―え?ちょっ!?ギルヴァぁっ!?

 

何も聞いていない事にしよう。

…派手にやってこいって言うのではなかったな。

 

 

 

車を走らせる。

彼が対象への保護へと向かい、私は敵の占領下にある飛行場へと向かっている。

しかし派手にやってこいとは…彼からあの様な言葉が出るとは思いませんでしたね。

ですが私がデビルメイクライに所属してからの初の戦闘。それなりに派手でも良いでしょう。

段々と飛行場へと近付きつつある。このまま突っ込んで大暴れしていいのですが…流石にこの車を壊す訳にはいかないので近くに停めてから徒歩で向かう方がいいですね。

 

「そろそろですね…」

 

車を停車し、運転席から離れるとウェポンラックに立て掛けてあるシルヴァ・バレトとニーゼル・レーゲンを手に取る。普通であれば片方で良いと思いますが、使い勝手というのも知りたい事もあるので。

あの工場から幾らか持ち出してきたシルヴァ・バレト用の予備弾倉を三つ、自前で持ってきたガンベルトに吊り下げる。

一つは焼夷弾を、もう一つは徹甲弾を、最後は榴弾を装填してある。そしてシルヴァ・バレト本体には焼夷弾が。

さて…準備はこれで良いでしょう。

バンのドアを開き、外へと出る。辺りを見回してみると、どうやら飛行場全体を見渡せる高台がある。そこへと向かう為、歩き始める。

 

「しかし私が助ける立場になるとは…。ホント…皮肉なものですね…」

 

そう…あの時だ。

私と彼女が居て…そして彼が現れた。

今でも覚えている。あの時の技を、動きを…姿を。

彼には言った事はないが、あの時手を斬られる瞬間、不意にもその太刀筋は美しいと思ってしまった。

その美しさに隠された「死」に気付かなくなる程に…そのまま私の右手は斬り落とされた。

そして彼に圧倒され敗北。その後は…今に至る。

 

「狂っている…そう言われてもおかしくないかも知れません。ですが…それが何だというのでしょうか」

 

人形が恋をしてはいけないと誰が決めた?

ただ人を殺す事にしか考えがなかった過去の自分よりも今の方がマシだと本気で思える。

だから…私の恋路を邪魔するのであれば、例えかつての仲間であれ撃つのみ。ただ、それだけ。

数分歩るき、高台に到達。

飛行場ではRipeerやVispidの他、プラウラー、ダイナゲートが周囲の警戒に当たっている。

どうやらここから援軍が出てきているみたいですね。現に飛行機にある二つの道から増援部隊が出ている。ここを一つ叩けば、S-9地区所属の戦術人形部隊の消耗を少しは抑えられるでしょう。

折り畳んであるシルヴァ・バレトの銃身を展開。身を低く屈め、構える。

一回目と二回目の攻撃では敵を狙わない。まずは二つの出入口を塞ぐ。三回目の攻撃で逃げ道を失った集団に向けて攻撃する。

 

「…マシュマロでもあれば、一緒に焼いていたかもしれませんね」

 

まぁ…冗談ですが。

狙いがぶれない様に、少し間だけ息と止める。

引き金に指を掛ける。そして…

 

「発射」

 

引き金を引いた。

 

 

銀色の銃口からまるで砲撃音の様な音が飛行場全体にへと響いた。

放たれた一撃は飛行場の二つある道の一つに着弾すると同時に火災が発生。立て続けに二発目の銃声が鳴り響き、二つ目の道に着弾、そこでも火災が発生。辺りを照らすかのように炎は次第に大きくなり、近くにある物を巻き込んでいく。まるで炎の渦の中に呑み込まれてしまった鉄血の人形部隊と機械鉄血兵は逃げ道を失った。応戦しようとしても敵が何処から攻撃しているのかつかめず、また自身が持っている武器では攻撃が届かない。

状況が混乱している所を高台にて見ていた代理人はつかさず三発目の焼夷弾を発射。

撒かれる炎が敵に喰らつき、その身を焼いていく。最早飛行場は地獄と化していた。あとは時間の問題かと判断していた代理人だが、ある物を目撃する。

 

「あれは…マンティコア?」

 

彼女はそれに対し眉をひそめた。

マンティコアは陸戦用。しかし今見ているのは空を飛んでいた。

四つ足には装甲板が取り付けられており、機関砲ではなくガトリング砲が装備されている。

そこで代理人は思い出した。

まだ鉄血にいた頃、マンティコアをベースに空戦用に改造されたものがあると。しかしそれは一機しか生産されず、倉庫で埃を被っていると…。

 

「そう言えば…彼女を追っていたのは処刑人でしたか…。確かギルヴァに吹っ飛ばされたのでしたね。…成程、代わりにあんなものを持ち出してきた、と…」

 

どこか呆れた表情を浮かべる代理人の耳に通信が流れる。

 

『何あれ…マンティコア…?』

 

『違う気がする…でもあれはやばいわ…』

 

それは偶然か。その通信は戦術人形の部隊からによるものだった。

彼女達も上空を浮かんでいるものに戸惑いを覚えながらも危機感を示す。

代理人も彼女達の言う通りだと思った。動きはゆっくりであるが、あれはまるで空飛ぶ狩人。上からの攻撃というのもは非常に恐ろしいものである。そしてあんなものを放置していれば彼女達も危険であり、帰り道も危険になる。

そう判断した代理人はシルヴァ・バレトではなく、傍に置いてあったニーゼル・レーゲンの取っ手を握った。

そしてそれを思い切り地面に叩きつけるとニーゼル・レーゲンは通常形態から攻撃形態へと変形開始。ガコンガコンと音を立てながら右腕に纏い、武器が組み立てられていく。数秒で彼女の右腕は武器腕へと変貌し、銀色の砲身と装甲の隙間から淡い水色の光を放つレールガンの姿が露わとなる。

 

「ふっ…!」

 

大きく腕を振り上げてから、空を飛ぶ狩人へと向ける。

肩を覆う装甲に内蔵された小型ジェネレータが唸るかの様に音を立て、生み出される余剰エネルギーが放熱フィンからまるで青い翼の様に放射されていく。

そして代理人はニーゼル・レーゲンを最大出力モードへと移行させた。

その事により放たれる余剰エネルギーがより一層激しくなり、砲身が三又状に変形し、電流が走る。

最大出力モードの影響か代理人の右目は水色へ輝きを放つ。

左手で狙いがぶれない様に支え、左足を一歩後ろへ引く。

 

 

 

 

 

 

準備は整った。

 

 

 

 

 

 

 

「落ちなさい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

狙い、穿つは一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「かとんぼ…!」

 

 

 

 

 

 

 

爆発と重厚な音が混じったかの様な砲撃音と共に閃光が走った。

駆け抜ける一撃は紫電を纏い障害物を貫き、空を飛ぶ狩人を穿つとその巨体を真っ二つにした。

何が起きたのか分からないまま、それは宙で爆発。地上で見ていた戦術人形の部隊も驚愕の表情を浮かべたまま突っ立ている。

それが分かるのは何となく察したギルヴァだけだろう。

 

「見た目は綺麗だが、威力は狂ってるな…」

 

―そして最後は一輪咲かせるという訳かねぇ…

 

そんな事を言いながら彼は行く道を塞ぐ敵を斬り伏せていく。

合流地点まで後少し。

この戦いに終幕が下ろされる時が刻々と迫りつつあった。




今回代理人がメイン。
あと「あんなもの」はこの回以降出てきません。…一機しか作られなかったから仕方ないね。


因みにニーゼル・レーゲンの最大出力モード時の発射音はビー〇・マグナム。


さてそろそろ戦いも終盤へ。
どんな風にしていくかねぇ…処刑人以外のハイエンドモデルでも出すかぁ…?
まぁ未定なので更新が遅れると思います。何卒ご容赦を。
では次回お会いしましょうノシノシ

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