Devils front line   作:白黒モンブラン

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依頼が来る様子もなく、店で過ごすギルヴァ。
一日をそこで過ごす事に落ち着かなさを感じた彼はある場所へと赴く事にした。




今回はぼのぼの?回でございやす。
たまにはこういうのもいいでしょ?



Act23 カフェでの一時

晴れ晴れとした空。

基地から離陸していくヘリの音。香る紅茶、ページを捲る度に紙のこすれる音。

報酬の金で買ったジュークボックスから流れるジャズ。まるでこの世が平和と錯覚してしまう位に店ではのんびりとした空間が生まれていた。

このまま一日中のんびり過ごすというのも悪くはないのだが、流石にそれでは自分なりに落ち着かない。

キリが良い所でお気に入りの本を閉じて本棚にへとしまう。愛用のコートを羽織るとそのまま店の裏口のドアを開き、出かける。

まだ昼間ではあるが、一杯飲みに行くとしよう。

 

 

 

―てっきり酒でも飲むのかと思ったぞ

 

「昼間から酒を飲むつもりはない」

 

S-10地区前線基地内には訓練所や食堂など様々な場所がある。

その中にはカフェが存在し、どうやらライフルの戦術人形が趣味としてマスターをしているらしい。

だが自分はそのカフェに一度も行った事がない。理由としてはここにカフェがあるという事を最近まで知らなかったというのもあるのだが、ここに訪れる戦術人形達の中に一人、母と同じ戦術人形がいるという事だ。

最もそれを知ったのもごく最近の事ではあるが。

 

「さて…」

 

カフェの前に到着し、自動ドアが開く。

店内はお洒落な雰囲気が保たれ、偶然にも自分以外の利用者は居ない様だ。

カウンターでグラスを拭いていたライフルの戦術人形 スプリングフィールドがこちらに気付き、少しばかり驚いたと言わんばかりの表情を浮かべた。

顔に出るまで自分がここに訪れた事が驚きの様だ。

 

「これは…。お店の方はよろしいのですか?」

 

また彼女とはS-10地区前線基地に来てから最初に話をした人形だ。あれから日はかなり経ったが今でもそれなりに話す間柄。

世間話や一日の中で何があったとかそういった事で話す事が多く、前々からカフェに来て欲しいと言われていたが何分色々あった為、先延ばし状態になっていた。

カウンターの椅子に腰掛けつつ、彼女からの質問に答える。

 

「今日は依頼が来る様子がない感じなのでな。それに約束を先延ばしにしていた事もある。遅くなってしまったが果たしに来た」

 

「ずっと待っていたんですよ?てっきり約束すら忘れているのかと…」

 

「すまない。もっと早く来るべきだった」

 

「ええ、そうです。でもちゃんと来てくれたので、チャラにしてあげます」

 

「感謝する」

 

許しを得た事で、早速注文しようとした時、備え付けられたテレビから速報ニュースが流れだした。

視線がそちらへと向き、スプリングフィールドもそちらへと向いていた。

民間の報道局だろうか。画面にはスーツを着こなした中年男性が原稿用紙を片手にニュースの内容を読み上げていく。内容は以前行われた正規軍による他の地区で潜んでいたE.L.I.D掃討作戦が成功したというものだった。

そのまま内容は次へと流れ、自分はある単語を静かに口にした。

 

「E.L.I.D、か…」

 

広域性低濃度感染症。

この世界に広がっている汚染 崩壊液(コーラップス)によって低濃度の被爆で起きる症状。

高濃度の被爆の場合は死に至るが、低濃度の被爆の場合、被爆者の姿は変貌する。

その姿は正しく「化け物」と言っていい位だ。本当の姿が何だったのか分からなくなる程までに。

 

「正規軍だからこそ相手に出来ますからね…。私達グリフィンに所属する戦術人形では太刀打ちできない」

 

「…それ程までに強力という訳か。確かに厄介な相手ではあったが」

 

「ん?その言い方ですと…まるで相手した事がある様な言い方ですね?」

 

「む?…ああ、放浪の旅をし始めた頃に奴らを狩っていたな」

 

あの時は次元漸ではなく、次元を切り裂き、前方に斬撃の渦を発生させる技「スラッシュディメンション」なら出来た。またデビルトリガーを引く程の力もなく、出来たのは幻影刀と無銘を振るう程度だった。

今思うと「アレ」と戦ったからこそ、次元漸やデビルトリガーが出来る様になったのだろう。

 

―それにしても、何を喰らえばあんな姿になるのやらか…。

 

さぁな。あれの考えなど分かる筈もない。

 

一度相対したそれは醜悪と美…矛盾した二つを持ち合わせた姿をしていた。

今程の力を持ち合わせていなかった事もあり、完全に倒すまでには至らず逃がしてしまった。

あれからかなりの月日が経っている筈。一度か二度は奴の噂を耳にするであろうと思っていたが、予想に反して噂が出回る事はなかった。人知れず正規軍にやられたか、或いは身を隠しているか。

もし後者であるならば赴く必要がある。依頼が来ればの話ではあるが。

だが今は仕事の話ではなく、淹れたての美味しいコーヒーでも頼むとしよう。

カウンターに立つスプリングフィールドへと注文しよう視界を向けるが、何があったのか何故か彼女はフリーズしていた。

 

「スプリングフィールド…?」

 

彼女の名前を呼び、声を掛けるが反応がない。

本当に何かあったのか、目の前で手を振っても反応しない。

よくよく見ると、どこか驚いている様な表情を浮かべている。はて…自分は驚く様な事を言っただろうか?

 

「ど…」

 

「ん?」

 

「どういう事です!?E.L.I.Dを狩っていた!?ギルヴァさんは無事だったんですか!?被爆は!?」

 

先程の姿はどこに行ったのか、少し声を高めながらも質問攻めしてくるスプリングフィールド。

その姿に少し押されつつも、手を上げて制止する。

 

「落ち着け。取り敢えずコーヒーを淹れてくれ。質問は一つずつ答えよう」

 

そう促せて彼女を落ち着かせる。

少しして落ち着いたのか器具やらを取り出しはじめ、自分は質問の答えを話し始める。

 

「まず奴らを狩っていたというのは本当だ。理由は…まぁ色々あったと思ってくれればいい。そしては自分は無事で被爆もしていない。でなければ自分はここに居ない」

 

「それはそうですけど…。どうしてそんな無茶な事を…」

 

「先程も言ったろう?色々あった…それだけだ」

 

とは言いつつも、理由の一つは修行を兼ねていたと言えば説教されかねんので黙っておく。

淹れたてのコーヒーが入ったカップが置かれ、一言礼を言って一口飲む。

 

「美味い。…コーヒーを淹れる技術に関してはスプリングフィールドが一番だな」

 

「ふふっ、ありがとうございます」

 

代理人が淹れる紅茶も良いが、スプリングフィールドが淹れる珈琲も良い。

どちらかを選べと言われたら、難しい話になりそうだ。それ位、二人が淹れる紅茶、珈琲は美味しいのだ。

ここまでに辿り着きまでどれ位練習したのかは分からないが、その域に達するまでは決して短くはなかっただろう。流石としか言いようがない。

味を楽しみながら、カフェの自動ドアが開いた。そこに入ってきたのはこの基地でスプリングフィールドと同じ様にそれなりに話した事がある人形だった。

 

「む?おお!お主、来ておったのか」

 

小柄な体型で金髪に白い衣装に身を包んだ人形、ナガンM1895だ。

特徴的な口調から、おばあちゃんと言いたくなるが年寄り扱いされたくないらしいので、ここに所属する面々は彼女の事を「ナガン」と呼ぶようにしている。

そしてここに指揮官が着任したと同時に着任した最古参の人形の一人だ。

故に実力はこの基地では随一と言っても過言ではない。

聞いた話ではもっと身長が欲しいと言っていたが、人形は身長は伸びない筈では?と思ったのは内緒だ。

また彼女は愛用しているリボルバー、フェイクの名付け親だったりする。

まぁその事はまたの機会に話すとしよう。

 

「久しいな、ナガン。射撃訓練場での以来だな」

 

「じゃのう。指揮官から聞いたぞ?お主、S-9地区に行っておったそうじゃな?」

 

「ああ。ある戦術人形の救出にな」

 

「そうかそうか。無事で何よりじゃ」

 

彼女は何かと面倒を見てくる。

曰く危なっかしいとの事で個人的には悪い気はしない。

心配してくれているというのもあるのだが、助言なり注意なり、ナガンが言う事に気づかされる事も度々あるのだ。

 

「そう言えば、あの銃は…フェイクだったかの?使い勝手はどうじゃった?」

 

「悪くない。威力はレーゾンデートルと比べると劣るが反動と連射速度は申し分ない」

 

「あれか…あれと比べるのもどうかと思うのじゃがな…」

 

どこか呆れた表情を浮かべるナガンを見て疑問に思ったのかスプリングフィールドが尋ねてきた。

 

「レーゾンデートル?」

 

「こやつが愛用しているもう一丁の銃じゃ。二連装、装弾数は12。人では到底扱う事はできぬ重量と反動を誇る…正しく化け物銃と言っても過言ではない銃、それがレーゾンデートルじゃ」

 

「それって扱えるんですか?」

 

「扱えるから愛用しているという事じゃの。この男は片手で振り回しておるしの」

 

「え」

 

おい、スプリングフィールド。こちらを化け物みたいな目で見るな。

この身は悪魔だから否定はできないが、それなりに傷付く。

 

「余りいじめないでくれ。大事な相棒なのでな」

 

「分かっておるよ」

 

してやったりと言わんばかりの表情を見せるナガンを見て少しカチンときたので、帽子越しではあるが頭を撫でる。

 

「あ、こら!頭を撫でるでない!子供扱いされるのは心外じゃ!」

 

「気にしてはいるのか」

 

「当たり前じゃあ!年長者は敬うべきじゃぞ!?」

 

「都合が悪い所でそれを出すか?」

 

可愛そうに思えてきたので手を退ける。

若干涙目のナガンの姿が少しだけ可愛らしく見えた。子供と見られても仕方ないのはこれが原因の一つなのかも知れないが、ここはあえて黙っておく。

少し冷めてしまったが、残った珈琲を飲み干し椅子から立ち上がる。

 

「ご馳走。そろそろ店に戻る」

 

「そうですか。またいらっしゃって下さいね?」

 

「善処しよう」

 

そのままカフェを後にして店にへと戻る為、歩き出す。

何だかんだ言って今日は平和に過ごせた一日なりそうだ。




さて次はどうしたものか…。
こっちからコラボとか言ってみるのも良いかなぁと思いつつも…自信がない。文才皆無過ぎる自分にはきつすぎる…。
まぁのんびりやって行きましょうかね…。
また感想とかくれると嬉しいです。まぁ自分、お豆腐メンタルなので…何卒ご容赦…

では次回お会いしましょうノシ

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