そのリーダーはギルヴァに依頼を持ちかける。
遅れて申し訳ないです…。
風邪を引いたり等々…ドタバタしていました。
さて今回は名前の通り「序曲」。
パーティーはもうちょっとだけ待って…(震え
グリフィン本部。
アンジェロの襲撃により、全て割れてしまった窓ガラスは修繕され、また本部前広場もかつての姿を取り戻していた。社員たちはせわしなく動き回り、仕事や対応に追われ、資料を睨み合い眉間に皺を寄せる毎日。
そして社長であるクルーガーも端末に表示されている情報を見ながら眉間に皺を寄せていた。
今朝方彼宛と送られた報告書。その内容は信じられないものであった。
このままこの一件を放置すれば、会社の信用にも関わり、余計な被害を生み出しかねない。
彼はつかさず携帯端末でへリアンへと連絡を取った。
「へリアンか?私だ。…ああ、今し方報告書を読んだ。事態は一刻を争う。…そうだ、彼女達を、404小隊をS-10地区に向かわせてくれ。地区担当の指揮官にも連絡を忘れないでくれ。それと彼女達に伝えて欲しい」
「悪魔泣かせの狩人へ協力を仰ぐ様にとな」
S-10地区前線基地に隣接された建物、便利屋「Devil May Cry」。
店内では何時ものように椅子に腰掛けて本を読むギルヴァと掃除に勤しむ代理人、そして書斎近くで丸まって眠りについているフードゥルの姿があった。
響くのは本のページを捲る音、箒で床を掃く音、そしてフードゥルの寝息。
誰一人とて話をしない状況ではあるが、場はのんびりとしていた。
そんな中、代理人は何か気付いたかの様に顔をあげ、窓から空を見た。
店の周りはそれ程大きな建物は立っていない。その為、見通しを良かったりする。
その事もあってか、彼女は基地のヘリポートへと向かう一機のヘリを見つける事が出来た。
「今日は出撃はなかった筈…。となるとあれは…?」
「どうした?」
そこに本を読み終えたのかギルヴァが代理人へと声を掛けた。
彼は椅子から立ち上がると代理人の元へと寄り、同じ様に窓から空を見上げた。
「ヘリ?妙だな、今日は休みだと聞いていたが」
代理人と同じ様にギルヴァもそのヘリを見て眉をひそめた。
最近働きづめだった事もあってか、指揮官から実働部隊は今日は原則として休息を言い渡されたと話していた人形から情報を得ていた。当然ながら何となくの会話の中でその事を代理人にも話している。
故に現在動いている人形は街中の状況確認をしているぐらいなのだ。
「ええ。…来客でしょうか?」
「それなら分からんでもないが…」
しかしギルヴァはどこか納得がいかない表情を浮かべる。
同時に朝から感じていた胸騒ぎが一段と強くなったの感じた。
(…一つ大きな嵐がやってきそうだな)
何となく思ったはそれは後に実現する事になる。
最も彼がそれに気付く事はないが。
あのヘリが何だったのか知る事もなく時はすぐ去っていく。
代理人は買い出しに出かけ、フードゥルは日課と称して散歩へと出掛けた。
今ここには自分しか居らず、机の上に工具を広げレーゾンデートルとフェイクの整備をしていた。
汚れを取り除き、パーツの消耗具合を確認して、油を差す。
これらを丁寧に行い、最後は組み直しホルスターへと納めた。
少し一息つきながら椅子に凭れ、紅茶でも飲もうかと思った矢先、電話が鳴った。
一休みを邪魔された様な感覚を覚えながらも受話器を手に取り、耳に当てる。
「デビルメイクライ」
『やっほ、ギルヴァ~』
決まりきった挨拶をしてくる奴は一人しかない。
依頼じゃない事に残念に思いながらも相手の名を呼ぶ。
「45か。うちに何か用か?」
『まぁね。そこでクイズ。私は今どこに居るでしょうか?』
「? いきなりどうした?」
『良いから、良いから♪』
どこに居ると言われても、分かるはずがない。
だがこんな事をするのに何かしらの意味があるのだろうか?
正解するとは思えないが、適当に言ってみるとしよう。
「そうだな…。本部か?」
『ハズレ~』
「だと思った。何処にいるんだ?」
『それはね…』
『貴方の後ろ』
「ッ!!?」
背筋に走った冷たい何かを感じたと同時に素早く後ろへと振り向く。
しかしそこには45の姿はなく、あるのは裏手に続くドアのみ。
「…どういうつもりだ」
『ごめんごめん。そう怒らないで?ね…?』
怒気を交えつつ彼女へと問い詰める。
だが45は笑いながら謝罪。あまりふざけられるのも好きではない、だからと言って酷く怒る気にもなれない。
一つため息をつきつつ、話を戻す。
「それで?答えは?」
『…正解は』
「貴方の目の前にいるよ」
「っ!」
癖もあってから反射的にレーゾンデートルを抜いたのは仕方ないと言いたい。
だがすぐそこから聞こえた声に対し、何もしないまま振り向くなど出来なかった。
いつ、どのタイミングで書斎の前に現れたのか分からない。
しかしレーゾンデートルの銃口が向く先には彼女…UMP45は居た。
通信端末を手に、笑顔を浮かべたまま彼女はそこに立っている。何故この基地に、ましてやここに居るのかに疑問を抱いたが、今朝方見た妙なヘリを思い出す。
もしかすればあれに乗っていたのは404小隊だったのではないだろうか。
それなら納得が行く上、胸騒ぎの正体が分かった気もした。
だが全てではない。これ以外の胸騒ぎが起きる感覚を覚えていた。まだ他に何かが起きるというのだろうか?
謎を抱えつつも向けていたレーゾンデートルを下ろしホルスターに収める。
「久しぶり、ギルヴァ。元気してた?」
「ご覧の通りだ。特に変わってはおらんよ」
「みたいね。じゃあ…」
「む?おい…何故膝の上に座る」
挨拶済ませた後に45は何故か自分の膝の上に座ってきた。
どちらかと言うと彼女は小柄な部類に入るだろう。それもあって、頭が胸元に寄りかかる形になっている。
すると45はこちらの両腕を掴むとそっと自分の前を回した。
遠目から見ればまるで自分が彼女を後ろから抱きしめている形と言っていいだろう。
「はぁっ…やっと…やっと…貴方に触れられたぁ…」
「変な声を出さないで欲しいのだが?」
「無理よ…。だってぇ…ギルヴァの事を思うと、興奮が止まらなくてぇ…」
熱に浮かされ、甘ったるい声を聞かせる45。
ゆっくりとこちらへと振り返り、彼女の金色の瞳の奥は黒く濁った様な何を覗かせる。
頬も紅潮しており、何よりも息が荒い。
そこまで来れば自身の危険信号が警笛を鳴らし始めたのが分からない訳ではなかった。
すぐさま彼女を退けようと行動に出るが、読まれていたのか彼女は瞬時に体を反転させてその腕をこちらの首に回そうと伸ばしてきたのだが、寸での所で手首を掴み封じる。
「もう…流石にその気にならないわよ」
「だったら何をする気だ?」
「ハグ」
「にしては随分と強引だな。今にもこちらを押し倒しそうな勢いだったが?」
「だってあれからずっとお預けをくらったのよ?任務の兼ね合いもあるから仕方ないと言えば仕方ない。でも私からすれば死活問題よ!?一日どころか数週間はギルヴァに触れてなかったら満たされない。それに私が居ない隙に貴方から泥棒猫の匂いがするのよ。だから匂いを消す為に、私の匂いで上書きしないといけないの。だからね、大人しく私にハグされなさい!」
流石は戦術人形。
力が凄まじい。普通の人間だったら簡単に押し負けるだろう。
椅子の上で行われる攻防。だがそれは戻ってきた一人の声で強制終了される事になる。
「だれが泥棒猫なのでしょうか?」
そう。買い出しから戻ってきた代理人である。
何時ぞや見た笑みを浮かべているが目が笑っていない。纏う雰囲気が絶対零度並みに冷たさを感じる。
それに当てられたせいか、突如としてジュークボックスの電源が切れてしまった。
最近買ったばかりなので壊れたとは思えないが、空気を読む技術でも身に着けてしまったのだろうか。
ともあれだ。この状況は非常によろしくない。だがこの状況を何とかするほどの力など俺にない。
そこに裏口から誰かが入ってきた。そこにいたのは…。
「こんにちはー!ギルヴァい…る……あれ?」
「いい加減起きなさい!この寝坊助!……って…は…?」
「ふえぇ……zzz」
404小隊の面々だった。
明らかにこの状況に戸惑っており、固まっている。
G11に関しては平常運転の様だが。
しかしこれはもっと収拾が付かなくなったの明白となった。
手を額に静かにため息を付く。
「はぁ…」
―頑張れよ?
こういう時に限って他人事の様に…。やれやれ…。
その後、何とか事態を収め漸く本題に入る事になった。
どうやら彼女達がここに来たのは、ある任務の遂行に協力して欲しいというものらしい。
その任務内容を小隊長である45による説明が始まる。
「今回ギルヴァに依頼したいのは、人権保護団体の過激派が拠点としている基地の制圧とある人物の始末に協力してほしいの」
奴らか…。それに過激派となれば。
「詳しく聞かせてくれ」
分かったと言いながら彼女は手に持ったタブレット端末を操作しそれを見せてきた。
そこに映るのは過激派が拠点としている基地全体の風景と場所と一人の男の画像。
ん…?この男が着ている服…グリフィンの制服じゃないか…?
「ここの連中は部隊とはぐれてしまった人形を捕えては闇市のオークションに出したり、何らかの理由で親を亡くし民間用人形に育てらている子供を異端児と称して誘拐、人身売買を糧にする商人に売り出した。極めつけは見せしめに子供を殺害するという…吐き気を催す程の事をやっているわ」
「…」
「だけど、それなら他の基地の面々に任せる事が出来るのだけど…今回は少し訳が違うの」
「この男か?」
画像に映し出されている男へと指さす。
それに対して45は頷き、説明を続けた。
「実はこの男、過激派のメンバーだったらしいの。現にこいつが所属していた基地の戦術人形達は謎の失踪を遂げているわ。大方この男が売ったと見て良い。そしてこいつをこのまま放置すればグリフィンの信用は地に落ち、重要な戦力を失う羽目になる。そこで本部は私達に男の始末を。同時に表でグリフィンの戦術人形部隊が基地を制圧するという作戦が展開されたわ」
一度作戦は行われた。
だが依頼するという事は…。
「だが作戦は失敗した。…何があった?」
「これを見て」
タブレット端末を操作し次に写し出されたのは映像だった。
どうやら作戦に参加した人形のメモリからコピーしたものなのだろう。
彼女視点で映像は流れていく。狭い通路でアサルトライフルを手に激しい銃撃戦が行われている。
そして放たれた攻撃は敵に命中し、また一人、また一人と過激派のメンバーは倒れていく。
そこまでならまだ普通だろう。しかし次の瞬間衝撃的な光景が流れた。
―こいつは…
その様子に蒼も驚きの声を上げた。
そこに映るのは死んだ筈の過激派のメンバーの死体を破って化け物が現れたのだ。
それも一体じゃない。何体も化け物が死体の中から現れてくる。
そして化け物たちは彼女、そして仲間たちへと襲い掛かかり再度戦闘が開始される。
運が良い事に化け物には弾丸は効いているみたいだが、如何せん動きが速く苦戦を強いられていた。
結局の所、化け物たち相手に勝てたものの被害が大きくなってしまった為撤退する形になっていた。
蒼…こいつは…。
―ああ。死体から出てきたのは悪魔だ。寄生するタイプで宿主が死んだ時に動き出す。動きは速いが固くはない。人形の武器でも対処出来る。
だが何故悪魔が…?
―恐らく潜んでいたんだろう。アンジェロの様に奇跡的にこっちに流れ着いた。だがこの手の悪魔は親が居ないと寄生なんて出来ない筈。となると…。
画像の男が親玉であり…悪魔という訳か。
「作戦は失敗し撤退。私達は撤退する前にG11による狙撃で男を始末しようとした。放たれた弾丸は男の頭の真ん中に風穴を開けた。だけど奴は生きていた。まるで何もなかったかの様に傷はなく、そしてこっちの位置を分かっているかの様にこちらを見ていたわ。流石に危険と感じ私達も撤退」
「だがE.L.I.Dではない何かと感じ、本部は君たちをこちらに送り、そして俺達に依頼したという訳か」
「そういう事。今の所他の地区の指揮官にも参加要請しているみたいだけど、どうなるか分からない。最悪S-10地区基地の部隊と私達と貴方達で行うかも知れない。でも報酬はちゃんと払う。だからあなたの力を借りたいの」
この男はそうだが。
過激派のメンバーもやっている事は最早人間の所業とは思えない。
言うなれば奴らは人の皮を被った悪魔と言って差し支えないだろう。
また見知った者が死ぬ様等見たいと思わない上にこの依頼を断る理由がない。
「良いだろう。その依頼受けよう」
「そう言ってくれると思った。流石私のギルヴァね」
「まだ誰のものにもなった覚えはないが…。それで作戦決行は何時になる」
「明後日。明日は準備と休養といった所ね」
何よりも只々今を、明日を生きようとしている子供たちの命を軽んじた事。
人形を軽んじた報いは…死を持って償ってもらうとしよう。
今回はここまで…。
多分、後2~3話続くかもと思われる。
またこの基地制圧の話、コラボ依頼で出すかも知れないです。
と言っても本決まりではない上、細かい内容も決まっていないので期待しないでください…。
それとこの作品以外でドルフロを題材にした小説を書こうかなと思ってたり…。
一応鉄血のオリ人形を主人公した小説を書こうと思いつつも、他の作者様もそう言ったのを書いてたり…まぁこれも本決まりではないので期待しないでくださいな…。
ではまたお会いしましょうノシ