Devils front line   作:白黒モンブラン

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始まった作戦。
襲い掛かる敵を排除しつつ、彼らは目標へと目指す。






書きたい事が沢山あったから長くなってしまった…許して…(震え


Act26 悪魔舞踏

敵基地に正面から突撃した事により敵は少し間だけではあるが混乱を見せつつあった。

だがそれも時間の問題であり、どこからともなく武装した過激派メンバーがこの広場へと姿を見せる。

このままではバンに集中砲火を喰らうのも時間の問題だ。素早く車外に飛び出てて、敵の第一陣を始末する必要がある。

 

「先に行く。代理人、フードゥル…内部の制圧は任せるぞ」

 

「お任せを」

 

―承知。

 

無銘を携え、45とアイコンタクトを交わす。

そしてお互いに頷くと、彼女達は後部ドアから飛び出し、こちらは助手席から外へ大きく跳躍。

空高くへと飛びあがり、驚愕の表情を浮かべ隙を晒している敵の一人に向かってレーゾンデートルを引き抜く。

狙いを定め、引き金を引く。連装化された銃身から13mmの弾丸がはじき出され、敵の頭部へと吸い込まれる様に風穴を作り、血飛沫が舞う。そのまま敵陣の真ん中へと降下、着地したと同時に居合の態勢から刀を抜き放つ。

 

「ふっ…!」

 

円を描く様に周囲の敵の体へ横一閃。

噴水の如く血飛沫から舞い上がり、敵の体が真っ二つに分かれる。

これが人であったら、絶命しているだろう。だがこいつらは違う。

それを指し示すかの様に、敵の亡骸を食い破って―

 

「「「GUOOOOOO!!!」」」

 

―悪魔が姿を現した。

人とは思えぬ灰色の体。悪魔らしさを知らしめているのか頭部には歪んだ角。あからさまに異様と思える鋭利な牙と爪。

まだ二足歩行の点で雀の涙程度には人の形をしているが、それだけだ。

血の様に染まった目を光らせ、雄叫びを上げ勢い良く数体の悪魔がこちらへと襲い掛かってくる。

鋭利な爪で切り裂こうと、鋭利な牙で食い殺そうと。

だが…

 

「この命…くれてやるつもりはない」

 

一度刀を鞘へと納め、そっと目を伏せた。

 

 

 

襲い掛かる悪魔。

命を狩り取らんとする鋭利な爪が彼へと振り下ろされようとする。

にも関わらず、ギルヴァは静かに目を伏せてそこで立ち尽くしていた。

が、次の瞬間彼はその目を開き、素早く後方から迫る悪魔を納刀した状態の無銘で地面に叩き付けるとそのまま流れる様に前傾姿勢を作り地面に蹴る。形は疾走居合と同じ。

高速で前方の悪魔との間合いを詰めると勢い良く抜刀しつつ飛び上がる。宙へ舞い上がりつつ螺旋を描く様に回転しながら同時に巻き込みながら二体の悪魔を斬り裂いた。

だがもう一体残っている。その事を忘れている彼ではない。

上手く体を動かし、空中で態勢を変えると地面に叩き付けた悪魔に対し追撃と言わんばかりの一撃を振り下ろした。

 

「寝ていろ!」

 

急降下からの一撃は悪魔の体を簡単に縦二つへと切り裂く。

地を這う様に広がる血だまり。絶命した悪魔が再度動き出す事はなく、紅く光らせていた目は光を失う。

それを見向きもせずギルヴァは交戦中の404小隊の方を向いた。

 

「立ったまま死ね!」

 

「消えちまえ!」

 

只々真っ直ぐ突っ込んでくるだけか、UMP姉妹の攻撃により成す術もなく鉛弾の嵐によって悪魔達は蜂の巣へと変えられていく。

撃たれた箇所から鮮血が吹き出し、また一体、また一体と魔界の生物は倒れ伏せていく。

後方では小刻みながらも己の名を冠した銃を撃つ416もG11も負けていない。精密な射撃でほとんどの敵の頭部、また胸部を撃ち抜き、命を刈り取っていく。

悪魔達を相手に圧倒する彼女達の姿は、正に悪魔狩人と言えるかもしれない。

そう思いつつもギルヴァは周囲の状況を確認した。現在の所、敵は先程404の面々が倒したので最後。

バンの中には誰もおらず、代理人もフードゥルも内部へ侵入したと思われる。

現に他の箇所から銃声やら爆発音、あまつさえは落雷の音がが響いているという事は、敵は各個撃破に動き出したと彼はそう判断した。

敵は決して固くはない。だがその分機動力に長けている。一瞬でも隙を晒せばやられるだろう。

ギルヴァを含め、この戦場に居る者全員がそれを理解している筈だろう。

 

「ギルヴァ!行くよ!」

 

「ああ!」

 

45に呼ばれ、彼は彼女達と共に基地内へと侵入。

長い廊下をかけながら、彼はひっそりと願った。

 

(どうか無理だけはしないでくれ)

 

「居たぞ!」

 

「人形に媚を売る愚か者に制裁を!!」

 

「撃て!撃てえぇッ!!」

 

角から飛び出してきた敵の集団に気付いた404は即座に近くの部屋へと飛び込んだが、ギルヴァはそのまま駆け出し突撃。飛んでくる弾丸の嵐に対し、刀を抜刀し素早く振るいながら切り落としつつ距離を詰める。

幻影刀を一つ展開し、敵の一人へと投射。群青色の刀が嵐を掻い潜り敵の肩に突き刺さった瞬間、黒き残像が廊下を奔り、一瞬にして敵との距離を詰めた。

 

「「「!!!???」」」

 

離れていたというのに、気付けば自分達の目の間にいるという状況に過激派メンバーも言葉を失い、つい銃を撃つの疎かになってしまう。それが隙となりギルヴァは即座に無銘を振るった。

 

「ふんッ…!」

 

鞘で殴打した後に、つかさず居合の態勢へ切り替える。

左手で鞘を、右手で柄を掴み、無銘の鯉口を切った。一瞬だけ見えた煌きの瞬間、一撃が放たれる。

鋭く、かつ神速とも言える一撃は彼らに攻撃の瞬間すら与える事もなく胴へと喰らいつき、真っ二つに一刀両断。そのまま刀身を鞘に納め、彼は静かに警戒する。

これからどうなるのかもう分かっている。敵の亡骸が突然膨らみ、中から悪魔が出てきた瞬間彼はその場から大きく後ろへと跳躍。一度着地すると再度後ろへ後退。

 

「やれ!」

 

「りょーかい!」

 

ギルヴァの声に部屋から404の面々は姿を出す。

迫りくる悪魔達へと狙いを定め、引き金に指をかける。

前もって考えた訳ではない。即座に行われた陽動作戦だ。45はギルヴァが後退し始めた辺りでそれに気付き、呼ばれるのを待っていた。

まるで言葉にしなくても彼と意思疎通出来ているかの様な感覚が彼女の体に熱を入れる。

ハイライトは静かに消え去り、誰にも気付かれぬ様に口角を三日月状に歪める。

そして彼女はギルヴァがかつて口にした言葉を発する。

 

Jack Pot(大当たり)

 

それを合図と言わんばかりに銃声が連続して響いた。

 

 

彼らは襲い掛かかってくる敵を排除しつつ、対象がいる…この基地の通路から繋がる数十階はあるであろう塔の最上階にある部屋へと目指していた。駆け抜けていった跡には壁や床、窓が血で赤く染まっており、そこらじゅうに悪魔の死体が転がっている。

一体は斬り伏せられ、一体は蜂の巣にされ…。誰がやったのか言葉にしなくても分かる。

未だに聞こえる戦闘音が辺りに響き渡り、開戦始めよりもその激しさは増していた。

仲間やS-10地区の面々、そして援軍として来てくれた者達の事を心配しながらギルヴァは先頭を駆ける45達の後についていく。

 

「この階段を上がってすぐの部屋に目標がいるわ。ギルヴァ…相手は貴方に任せていい?」

 

「元よりそのつもりだ。行こう」

 

最上階に繋がる階段へと一歩踏み込んだ瞬間、突如として彼の足元を中心に闇が広がった。。

まるで狙っていたかの様な事態に誰も素早く反応できず、彼は闇に飲み込まれていく。

四人の中で一番早く反応した416が腕を伸ばしギルヴァも腕を伸ばす。

が、あと少しという所で二人の手は届かず、ギルヴァは暗闇の底へと飲み込まれてしまった。。

 

「ギルヴァ!!」

 

416が彼の名前を叫んだ時には彼の姿はなかった。

闇も蓋を閉じるかの様に小さくなっていき、消失。残されたのは404小隊となった。

誰もが言葉を失う中、416は冷や汗を流した。

まるでギルヴァだけを狙った罠は、恐らく今から自分達が向かおうしている対象の力。

悪魔という存在の力。今の自分達では対応できるのかすら怪しい。

現に奴はG11の狙撃で頭に一発喰らっても生きていた。彼なしでは倒す事すら叶わないだろう。

だがやれらねばならない。これは命令だから。

でも416の手は少しだけ震えていた。だが何とかして抑え込み、頭を下に俯く45に冷静な判断を下してくれる事を願いつつ彼女は問う。平静を保ち、冷静かつ静かに。

 

「どうするの…?」

 

「彼無しではあれを倒す事が出来ない位分かっているわ。でもこのままここで彼を待っていても、対象に逃げれられるかも知れない」

 

45はゆっくりと顔を上げる。

その瞳には光はない。金色の瞳の奥は黒く濁った何かを覗かせる。

彼女から放たれる殺気は下手すれば悪魔ですら裸足で逃げ出してしまいそうな位だ。

新たなマガジンに差し替え、彼女は歩き出す。

 

「彼が来るまで時間稼ぎするわ。…行くわよ」

 

誰も反対の意見を出す事は…否、出せる事もなく彼女の後へ続く。

そんな中、45は内心業火に等しい黒き炎を滾らせ、誰にも聞こえぬ様に呟く。

それは彼を自分と離れ離れにしてくれた対象に対する殺意と言ってもいいだろう。

 

「アハハッ……やっと会えたァ……ホントウ ニ 殺シタイ奴…!!」

 

この戦場に誰もが「死」を感じてしまう位の殺気を放ちながら、本当に殺したい奴の元へと向かった。

 

 

一方闇へと飲み込まれてしまったギルヴァは絶賛急降下の真っ最中だった。

本来であれば焦る場面であるが彼は冷静に先程の現象を内に存在する蒼へと質問をぶつけていた。

 

「どういう事だ…あれは罠か?」

 

―それも転移系のな。恐らく奴さん、お前が一番の障害と判断したんだろう。

 

「ピンポイントで狙ったのもその為か」

 

闇が抜けた先で彼は一回転して着地する。

辺りは薄暗く、そして漂う血の臭いと腐臭に顔をしかめた。

悪魔だから嗅覚は鋭く、ここに降り立った時点で彼はそれを感じ取っていた。

酷い臭いに何とか堪えつつ、ギルヴァは周りを見渡す。

 

「…地下牢か」

 

本来は別の用途に使われていた地下を無理矢理、地下牢へと作り上げたのだろう。

いくつかの牢屋の姿を彼は捉えていた。冷静ながらも静かな怒りを露わにし、ここから出る方法を探り始める。そんな時、薄暗い空間に声が響いた。

 

「無駄ですよ」

 

その声の主の方へと彼は素早く振り向く。鉄格子の先に居たのは黒き衣装を身に纏った女性の姿。

頭には白き花の飾りをつけ、45と似た金色の瞳がギルヴァを見つめていた。

一瞬レーゾンデートルを引き抜きそうになったが、閉じ込められている点から彼は敵ではないと判断。寧ろここに閉じ込められている一人だと感じ、先程の言葉に対し質問を投げかけた。

 

「どういう意味だ」

 

「そのままの意味です。ここに来てしまえば誰も逃げ出す事は出来ない。一度逃げ出そうとした事もありましたが、どうやら見えない壁に塞がれているみたいです」

 

―なるほど。地下全体を囲んでいる魔力の正体は結界という訳か。道理で妙な魔力な訳だ。

 

蒼はここの魔力をギルヴァが降り立った瞬間感じ取っていた。

流れが妙だと感じ取ってはいたらしく、彼女が言った「見えない壁」を聞いて全て理解した。

何故ここに閉じ込めたのかはともかく、こうまでして逃がさない様にするには理由がある。そしてその理由が商品として売り出す為のものだと言う事も。

同じ悪魔として蒼はこの行いに嫌悪感を示す。もし自分に肉体があったら、細切れにしてやると思うほどに。

 

「それに…"あれ"が居てはここから出る事もできない」

 

「"あれ"?…ッ!」

 

何か感づき彼は地下の奥を睨んだ。

暗闇から何かがゆっくりとやってくる。人ではない、それ以外の何かがゆっくりと。

時々聞こえる呻き声。奥底から姿を見せたのは一体の悪魔だった。

だが彼が相手してきた様な人型ではなく、それはまるで蟷螂の様な姿をしている。

両手は鋭く弧を描いたまるで死神の鎌の様で、無数の紅い目を輝かせる。他のとは段違いに大きな体格を有している。

ギルヴァを餌だと認識したのか、或いは自分の縄張りを踏み入れた侵入者を排除しようと思ったのか、その悪魔…「エンプーサクイーン」は叫びをあげる。

現れた地下牢の主にギルヴァはエンプーサクイーンを睨みつつ、静かにそれの前に立った。

地下牢で閉じ込められていた戦術人形のAUGはその彼の行動を静かに見守る。名も知らぬ黒コートの彼が何をするのか分からない。だが命乞いをするとは思えなかった。彼から放たれる蒼く静かな何か…言葉では表しづらい雰囲気がそう思わせるのだ。

魔虫の女王が姿を見せた辺りから沈黙を貫いているギルヴァ。彼は静かに親指を鍔に押し当て鯉口を切る。

それを合図にエンプーサクイーンがその体格から想像できない位、大きく跳躍しギルヴァへと飛びかかる。

両手の鎌を勢い良く振り下ろそうとした瞬間…

 

「失せろ…!」

 

怒気を交えつつ鞘から白刃の刀身が抜き放たれ、一閃。

その一撃は巨大な体格を持つエンプーサクイーンをいとも簡単に両断。鮮血を降らし空中で崩れる亡骸が降下してくるが、追撃と言わんばかりにその死体をギルヴァを天井へ向けて蹴り上げた。

重い一撃により天井に叩きつけられるどころか威力が強すぎたのかあまり余って天井を叩き割り、地上へと繋がる大穴まであけてしまう始末。あまりにもあり得ぬ状況にAUGは目を丸くする。

だがギルヴァがエンプーサクイーンを倒した事が功を奏し、地下牢を囲んでいた結界が崩れ、暗闇が晴れる。

おかげ全体の様子がはっきり写し出され、ギルヴァは周りを見渡す。

 

「成程…元々は地下駐車場だったのか。それに手を加え地下牢に改装したという訳か」

 

―ここが地下駐車場だと証明するものとして、そこに使われていないバイクが寝転がっているしな。

 

「…ほう」

 

蒼の言う通り、彼が立つ近場に使われていないバイクの姿があった。

ギルヴァはバイクの元へと歩き出し、それを起こす。

スポーツタイプのバイク。所々塗装は剥げており、走るとは到底思えない。

だがそんなのは彼には関係ない。手を通してバイクに魔力を流し込み、息を吹き込む。すると先程の姿はどこに行ったのか、新品同様の姿をバイクは取り戻していた。

 

(恐らく彼女達も…。急ぐ必要がある)

 

バイクにまたがり、エンジンをかける。

生まれかわり、新たな命を宿したバイクが産声を現すかの様に咆哮する。

そのまま走り出す前に、彼はAUGに向けて口を開いた。

 

「…鉄格子は既に壊してある。早く脱出しろ」

 

「え…?」

 

答えを待たず彼はフルスロットルでバイクを走らせて大きくそれごとジャンプ。そのまま地上へ出ていった。

残されたAUGは彼に言っていた事が俄かに信じ難いと思いつつも、手で軽く鉄格子を押した。

すると鉄格子に斬り目が入り、音を立てて崩れた。

その光景に彼女は彼が去っていた方向を見据えつつ、静かに呟く。

 

「彼は一体何者なのでしょうね…」

 

 

空いた穴から地上へと飛び出た先は代理人とフードゥルと別れた最初の広場だった。

バイクにまたがったまま、彼は塔の最上階を見つめた。

そして見つめた先にあった光景を見て、目を見開いた。ギルヴァの目に映ったのは、本来の姿を見せた対象の姿と片手で持ち上げられ首を絞められもがく45の姿だった。

 

「45ッ!」

 

その声は塔の最上階で首を絞められもがく彼女の耳に届いていた。

何とか反応したいもののできない。

 

「哀れだな」

 

そう言うのは今回の対象である裏切り者で悪魔である男、ヴァンギス。しかしその姿は人ではない。

肌は白く、両肩からは目が存在し、腹の部分には第二の口とも言える何かが開いている。何よりも背からはまるで触手の様な物が無数に飛び出ていた。

突撃した瞬間、攻撃を受け20秒足らずで404小隊は壊滅的な損害を受けた。

9も416もG11も悪魔の相手に成す術もなくやられ地に伏せてしまい、気を失ってはないものの受けたダメージの痛みで悶えていた。痛覚を切っていたとしても何故か痛みが伝わってくる。

 

「ぐうっ…!」

 

「どうした?何も言えないか?」

 

その悪魔は彼女達に一発貰った時から怒りの炎を滾らせていた。

簡単に殺さない。いたぶってから殺すつもりでいた。まず初めに見せしめとして小隊長である45をこの塔の最上階から落とそうとしていた。

 

「45…ねぇ…!」

 

何とか痛みに耐えつつも9は銃を手に立ち上がろうとするが、受けたダメージを予想以上に大きすぎた為か立ち上がる事すらままならない。

その様子を見ていたヴァンギスは嘲笑交じりに鼻を鳴らした。

 

「姉妹愛だな。それも涙すら流れる程のな」

 

「あく…ま…は…涙を流すの…かしら…?」

 

「流すと思うか?貴様ら人形に…最弱である人間どもに…この俺が涙を見せるとでも?」

 

「ええ…見せ、る…わ。あんたを…狩りに来る……彼にね…」

 

「ほざいてろ」

 

ヴァンギスの手が離れる。

その瞬間、45は地上へと落ちていった。

戦場にいた誰もが45が落ちていく姿を目にした。助けようにも自分達は空を飛べない。

だがこの男は違った。

 

「蒼!全開で飛ばせッ!!」

 

―あいよッ!!派手に行くぜえええッ!!!

 

バイクに魔力を流し込み、駆け抜ける黒コートの男の姿を一つ。

マフラーから青い炎が噴き出し、本来の性能を超えた速度で塔へと目指す。

しかしこのまま行けば激突するのは目に見えている。だがギルヴァはスピードを緩める事をしない。

それどころかバイクごと持ち上げる様にジャンプすると、あろう事かそのまま壁の上を猛スピードで昇りだしていった。

上からは待ち伏せていたのか悪魔達が進行を妨げようと彼に襲い掛かる。

 

「邪魔だッ!!」

 

思い切りバイクを回転させて襲い掛かる悪魔達を迎撃。空中でマフラーから噴き出す青い炎を推進力に振り回し次々と悪魔達を叩き落していく。もはやこんな事をすればバイクもいずれ廃車になり兼ねないだろう。

だが彼は止まらない、止まろうともしない。今…危機に陥っている彼女を…彼女達を助ける為に。

態勢を元へ戻したのちに、ギルヴァはバイクから立ち上がりシートを足場に飛び上がった。

落ちてきた45を両手でキャッチし、追いついてきたバイクへと戻る。

 

「ギルヴァ!」

 

「無事だな!このままあれにご挨拶に行くぞ!しっかり掴まっていろ!」

 

「分かった!」

 

ギルヴァの体にしがみつく45。

少しでも力を抜けば振り落とされる。それに壁を走っているのだ。落ちたら二度目の奇跡は起きない。

二人を乗せたバイクは段々とヴァンギスがいる部屋で近づいていく。

そして部屋へと到達した瞬間、ギルヴァは片腕を45をしっかりと抱え、もう片方の腕でハンドルを握った。

バイクの向きを水平にして、スロットを捻る。

最大出力で青い炎を噴き出され、それを利用してヴァンギスへと向かいながら回転。

落ちても安全の位置まで来た時、手放してバイクをヴァンギスへと投げつけた。

 

「ッ!」

 

反動を付け投げられたバイクはヴァンギスの胴にめり込み、思わず彼は態勢を崩してしまう。

よろめいている所にギルヴァがレーゾンデートルを、45が自分と同じ名の銃を構えた。

狙う先はバイク。他の面々には爆発時の影響はない。

 

「つまらないものだけど…」

 

「受け取れ!」

 

レーゾンデートルとUMP45が火を噴く。

撃ち出される弾丸がバイクをヴァンギスに喰らい付き、そしてバイクは魔力を流し込まれ無理が集った反動と撃たれた反動で爆ぜた。

爆発にヴァンギスは巻きこまれ、煙が部屋全体に広がる。

その場にいた全員が腕で視界を防ぐ。そして煙が晴れると部屋の中央に片足を着くヴァンギスの姿があった。

ダメージはあったものの完全にやられた訳ではない。しかし多少ながらその体からは血が流れている。

そこに彼へと近寄る影が一つ。

 

――黒を基調に青い刺繡がほどこされたコートをなびかせ…

 

――手には日本刀状の魔剣「無銘」…

 

――いつも下ろしていた前髪を片手で後ろへとかきあげ…

 

「挨拶代わりに一杯奢ってもらおうか」

 

刀身の切っ先をヴァンギスへと突き付ける黒コートの悪魔(ギ ル ヴ ァ)の姿がそこにあった。




次回はギルヴァvsヴァンギスでございます。
出来るだけ早めに出そうと思いますが、場合によっては遅れるかもなのでご容赦を。

因みに死体から食い破って出てくる悪魔はアニメ版「デビルメイクライ」を参考にしました。
エンプーサクイーンはDMC5から。
ヴァンギスは完全にオリジナルです。

また今回と次回はコラボ企画となっています。詳しい内容は私の活動報告へ。


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