Devils front line   作:白黒モンブラン

49 / 278
S-12地区へと訪れたギルヴァ。
酒場にてブレイクと名乗る青年にある依頼を頼まれる事となる。


はい。やはり通常通りで行う事にしました。お騒がせして申し訳ございません。。
また感想の返事ですが、今までちゃんと返す事を心掛けていたのですが、私の気分で返す事にしました。なので感想書いたのに返事がない!という事があったら、作者が返事を返す気がないと思って頂ければ幸いです。
そもそも感想の返信は義務ではないし…いいよね?


Act31 潜みし悪魔の影

S-12地区。

この地区には来るのは今回が初めてだったりする。依頼でなければ他の地区に訪れる事も早々ない。

故にS-10地区とは違うここにどこか新鮮さを感じつつ、街中を一人で歩いていた。

流石にバンに乗ったままだと目を引く、また代理人やフードゥルを連れたままだと余計な混乱を起こしかねないので二人は地区の外に停めてあるバンの中で待機してもらう事にした。

 

「不思議な気分だな。無銘を握らない時が来るとは」

 

武器をレーゾンデートルとフェイクだけに絞ってある。無銘を手にしたままではこれから会う者やここで暮らす住人に怪しまれる可能性もある。グリフィンがこちらの事を知っていたとしても、住人がこちらの事を知っているとは限らない。

それもその筈だろう。今まで受けた依頼内容は全てではないにしろ公にできるものではない。

一部に関しては「悪魔」も関わっているとなれば尚の事だ。

 

「さて…店主の知り合いがしている酒場はどこにあるのやらか…」

 

舗装された歩道を歩きながら、その酒場を探す。

しかしS-10とは違う街並み。分かっていたがこうも違うと驚いてしまうな。

まぁこれはこれで違う魅力がある。そうだな…いつか支店を開く事になったらこの地区で開くのも悪くないかも知れない。それともS-9地区か…。とは言うもののそれはまだ先の話だ。

それ程の資金があるとは言えないのでな。それに悪魔がらみの案件もあるとなればこの件は当分先となるだろう。

 

「む…ここか」

 

10分程歩き、店主の知り合いが経営している酒場の前へと到着。

どうやら昼間から開いているらしく、中から酒を煽りながら楽しく談笑している声が店の外にまで届いている。

そしてこの中に自分を尋ねにここまで来た青年も居る。

自分に一体何の用か…それを知る為にも酒場の扉に手をかける。

騒がしくも賑やかな空間。一部の者は店に訪れたこちらに視線を向けたが、すぐさまその視線は酒へと向けられていく。カウンターでグラスを磨いている店主に例の青年のことを尋ねる為、迷う事無くカウンターへと歩く。

あちらもこちらに気付き、顔をこちらに向けてきた。

 

「いらっしゃい。何にします?」

 

「そちらに呼ばれてきた。便利屋と言えば…分かるか?」

 

「ああ…あんたが。…例の兄ちゃんなら、ほら、そこで飯を食っている」

 

店主が指さす先。店内の端の方の席でサンドイッチをほおばっている若い青年が一人。

銀髪で古びたコートを羽織っている。彼が俺を尋ねにやってきた男か…。

ありがとう、と店主に礼を述べると青年が座っている席へと向かう。余程腹を空かせていたのか彼はサンドイッチに夢中になっており、こちらが近づいている事に一切気付いていないので声を掛ける。

 

「相席構わないか」

 

「ん?…って、あんたは…」

 

食べる手を止めて、青年はコートの内ポケットから一枚の写真を取り出し、そこに映る自分とこちらを見比べ始めた。やっとこちらがその写真に映る男だと気付いたのか、彼は慌てて口元についたパンくずを払い落し、姿勢を正した。

 

「座ってくれ」

 

「ああ。失礼する」

 

青年に促され椅子に腰掛ける。

銀髪で顔つきは若い。歳はこちらより一つ下か、二つ下ぐらいだろうか。

 

「えっと…あんたがS-10地区の…デビルメイクライのギルヴァ、であっているよな?」

 

「ああ。…それでお前は?」

 

「ブレイク」

 

「ブレイクだな。それで自分に何か用だろうか。依頼でないのであれば帰らせてもらうが?」

 

「安心してくれ。依頼をしたくてここまで来たんだ。…相当腕が立つって評判のあんたに」

 

「…話を聞こうか」

 

その言葉に青年は頷き、コートから一枚の写真を取り出した。

それは先程のとは町の風景が映った写真。だが不思議な事にその町には人が見えない。

人がいないタイミングに撮ったのか。或いはこの町の状態がブレイクが依頼したい内容と何らか関係があるのだろうか。

 

「この町は俺が過ごしている町でね。普段から活気で溢れている良い町なんだ」

 

「それで?」

 

「この写真を撮ったのは昼時。普段なら人が居ても可笑しくない。けど…」

 

「この時は人一人居なかった…と言いたいのか」

 

「ああ。まるで忽然と。それにだ、この写真を撮った時は町の連中総出でやる祭りがあったんだ。だというのにそれをすっぽかして消える理由が俺には分からないんだ」

 

「その真相を知りたいから、依頼したい訳か」

 

静かに頷くブレイク。

彼が言う事が全て真実なのであれば、確かにおかしな話だ。

彼以外の町で過ごしていた住民が忽然と消える。町ぐるみで何かをしようとしていたのか、或いは神隠しにでもあってしまったか。それか…悪魔の仕業か。

関係ないとも言い切れない。以前のヴァンギスの様に人間界に流れつき、潜んでいた悪魔もいるのだ。

悪魔と断定した訳ではない。だが、赴く必要はあるだろう。

 

「町には気を良くしてくれる奴が沢山いる。それに色んな街をあちこち行き来した訳アリの俺を快く迎え入れてくれた町なんだ。だから…どうか頼む。この依頼は受けて欲しい」

 

そう言いながら頭を下げる彼。

本来であれば依頼を受けるのであれば報酬の話をしなくてはならない。

だが遥々遠方からこちらを尋ね、町の人達の事を想う彼の姿を見て、その話をする気にはなれなかった。

つまりそれはどういう事かいうと…

 

「分かった、依頼は受けよう」

 

「ホントか!?」

 

「ああ。それに今回に限っては報酬無しで受けよう。次からは用意しておく事だ」

 

「!…恩に切る」

 

さて、と呟き席から立ち上がる。

ブレイクも最後の一口を口に放り込むと続く様に立ち上がる。

待て、何故彼まで立ち上がる必要がある?

 

「ここから先はこちらの仕事だ。ついてくる必要はない筈だが」

 

「流石に全部まかせっきりなのは俺の性に合わなくてね。戦闘だって無いとは限らないだろ?」

 

「…遊びではないのだぞ」

 

「危険があるのも承知の上さ」

 

口調は軽く感じるが蒼き瞳を宿した眼差しは真剣そのもの。

腕には自信はあるみたいだが…さてどうしたものか。

ここまで待てと言われて大人しく引き下がる性格ではないのは何となくであるが分かる。

…仕方あるまいか。

 

「お守はしないぞ」

 

「こう見えて前までは色々やってたもんでね。便利屋紛いな事もしてたのさ」

 

「そうか…。勝手についてくるが良い」

 

「そうさせてもらうよ」

 

店を出て、まずは車の中で待っている二人の元へと向かう必要があるのだが…。

足を止めて、後ろからついてくるブレイクの方へと振り向く。

不思議そうな表情を浮かべる彼。このまま行くのもいいのだが…

 

「そのコート…どうにかした方が良いと思うぞ」

 

「あー……やっぱり?」

 

苦笑い交じりに彼は指で頬を掻いた。

どうやら自覚はあったようだ…。取りあえず服屋に寄る必要がありそうだな。

 

服屋に寄り、適当に彼に合う服を身繕う。

ブレイクもブレイクで自分に合う服を探しているみたいだが、中々決まらない様子だ。

 

―なぁ。この赤いコート良さそうだと思わないか?

 

コートの類が並ぶコーナーにて、蒼がそう語りかけてきた。

そこにあったのは赤色のコート。真っ赤というよりかはくすんだ赤色が特徴のコート。

派手過ぎず地味過ぎずといったそれは、確かに若いブレイクに似合っていると言えた。

 

「ブレイク」

 

「ん?どうした?」

 

呼ばれてこちらへとやってきた彼に赤いコートを渡す。

 

「お前に似合っていると思うが?」

 

「へぇー。目つきからして怖そうなのに、センスはいいんだな」

 

自然と挑発をかましてくるブレイク。

レーゾンデートルでも一発喰らわせてやろうか。それとも幻影刀で串刺しにしてやろうか…こいつ。

 

―落ち着けって…

 

ちっ…。

まぁ良い。彼もコートを気にいっている様子だ。さっさと会計を済ませ仕事に取り掛かるとしよう。

 

「会計を済ませるぞ。時間が勿体ない」

 

「あいよ」

 

品をレジに持っていき、会計を済ませる。

その際店員に兄弟かと聞かれたが、違うと答えておいた。

ブレイクと俺は…そんなに似ているだろうか?

 

 

「成程」

 

バンに戻るなり代理人とフードゥルに今回の依頼を話す。

独断で決めてしまった事を詫びつつ、全てを話し、また今回の依頼は依頼主も同伴すると伝えた。

彼女もそれはどうなのか、といった表情を浮かべていたが決まった事なので反対意見を出す事はなくフードゥルも同じ様で反対意見を出す様子はなかった。

このままブレイクが過ごしていた町へと向かう事になり、代理人の運転の元、バンは舗装されていない道を走っていた。舗装されていない事もあって車内は揺れる。

だというのに助手席から立ち上がり、ソファーで腰掛けて寛いでいるブレイクへと話しかける。

彼は愛用武器である二挺の銃を手にしていた。拳銃とは思えぬ大型化された銃。

双方ともに黒を基調とした銃。銃身部分には何やら言葉が彫られているがここからでは読み取れない。

 

「それがお前の相棒か」

 

「ん?…ああ、今住んでいる町ではなく以前住んでいた町のガンスミスに作って貰った一品さ」

 

「何故作ってもらうまでに至った?」

 

素朴な疑問だった。

彼が持つ銃は珍しい位に大型化されている。便利屋紛い事をやっていたと彼は言っていたがここまでする必要はあったのか。思わずそれを彼に問うた。

その問いに彼は苦笑しながら答えくれた。

 

「何度も銃を御釈迦にしてしまう事があってね。買い直すにも金はかかる。ならば強度がある自分専用の銃を作って貰おうと思ってな」

 

「故にその銃か」

 

「そういうこと。名前とかは付けてないが、大事な相棒さ」

 

銃を何度も御釈迦にした、か。

一体どれ程の力を籠めれば銃が壊れてしまうのだろうか。

そんな疑問を抱えつつもブレイクが住んでいた町へと車は向かって行くのだった。




あれ…この青年って…思った方はその答えは心の中でしまっておきましょう。
分かったね?(威圧

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。