しかし荒れた町の惨状にはいくつかの謎が残されていた。
ブレイクが住んでいたとされる町は、どこの地区にも属していない町である。
またS-12地区から相当な離れた場所に存在する町であり、この町を知る人はそう多くない。
比較的小さな町であるのだが、汚染はなく自然に囲まれてる事もありとても住みやすい環境にある。
ブレイク曰く普段から活気がある町だと言っていたが、自分達がその町に到着した時にはその姿はどこかへと消えていた。酒場で彼に町の写真を見せてもらった時と比べると歴然とした差がある。
建物の幾つかは倒壊し、道路には巨大な何かが落ちたのかクレーターらしきものが幾つか確認できる。
ブレイクが住んでいた町は廃墟ばかりが並ぶ町へと変貌してた。
これがどこぞの盗賊や人形の仕業とは到底思えない。やはり悪魔の仕業と見ていいだろう。
「随分と荒らしていきやがったな…」
隣に立ち、町の荒れ具合に驚きは見せなかったが若干怒気を交えつつブレイクが呟いた。
過ごしていた町なのだ。無理もないだろう。
「だが…無作為に暴れた感じではなさそうだな」
「そりゃあどういう意味だ?」
「見ろ」
指差す先。そこはこの場所から少し離れた位置に存在する通り。
何故かそこの通りは荒らされた様子はなく、その姿を保っていた。もし無作為に悪魔が暴れたとするのであれば、自分が指差す先にある通りも荒らされているだろう。
しかしそれがない。人こそはいないものの綺麗な状態のままで残されている。
気付かなかったにという事はないだろう。気づいてはいたが、それをしなかった。
まるでここに何か探しているようにも思える。この町にあると思われる何かに。
「まんまの形で残されている…どういうこった?」
「それは分からん。調べない事にはな」
周りを見渡す。
悪魔が何故ここを狙ったのか…まずはこの町の事を知る必要がある。
「ブレイク、この町に図書館はあるか?」
「ここから少し歩いた所に小さな図書館があるが…そこへ何にしに行くんだ?」
「先も言ったろう。調べない事には何も分からん」
それにと呟き、言葉を続ける。
確固たる確証はない。だが自分の中にある何かがそう囁いてくる。
「悪魔とこの町…どうも関係がないとは思えん」
ブレイクの案内元、自分達はこの町にある図書館に来ていた。
幸いな事にこの町を襲った悪魔はこの図書館には手を付けてはいない模様で、荒らされた形跡はない。
ここへ来た理由を話そして三人にこの町に関する事を何でもいいので調べて欲しいと頼み、一時的ではあるが代理人とブレイク、自分とフードゥルで別行動を取る事にした。
まず自分が手に付けたのはこの町に関する歴史について。
過去にこの町で起きた事が今回の一件に関与しているのではないかと思い、その類から調べ始めた。
しかし事細かくこの町の歴史について記されいる書物は数少なく、調査は困難を極めていた。
「どれも二千年代以降の事ばかりか」
―それ以前のものは余り無いみたいだな。本来であればあってもおかしくないおかしくないのと思うのだが…
「フードゥルの言う通りだな。あまりにも二千年代以前の歴史に関する書物が少なすぎる」
これではまるで過去の事を探られたくないと言わんばかりだ。
何か都合の悪い事があるから少ないという事なのだろうか。
ますますこの町の事が怪しく感じていたその時、フードゥルがある一冊の本を食われてやってきた。
―主よ、これを見てみてくれ
そう言ってフードゥルは食われていた本を足元に置いた、
身をかがめ、それを手に取る。本のタイトルは…『真実』?
挿絵とかは無く、只々タイトルだけしか記されていない表紙。
それなりに厚みがある…もしかすればこちらが知りたい事が分かるかも知れない。
近くの椅子に腰掛け、その本を広げ、その内容を読んでいく。
そこにはこう記されている。
『この町は活気にあふれ、自然に囲まれた素晴らしい町だ。故にここへ移住しに来る者も少なくない。しかしこの町はある事実を隠匿していた。誰にも知られぬ様に、そして厳重に』
この町の秘密…。
この本を書いた作者は偶然にも知ってしまったか、あるいはどうにしてその裏を知ったか。…どちらにせよその事を誰かに知らせる為にこの本を書いたのだろう。
次のページをめくり、続きを読んでいく。
『すべての始まりは今から1000年前に起きた。この町は今と比べて活気には溢れていなかった。外部との交流を拒み、閉鎖的な町だった。また外部の人間もこの町を恐れて訪れる事はなかったそうだ。何故人はこの町を恐れたのか。それは彼らが信仰していたものにあった。人間が神を崇め、信仰する様に、この町に住んでいた者達は何を思ったのか、悪魔を信仰していたというのだ。何故それを信仰しようと思ったのか分からない。だが1000年前にここで住んでいた住人は普通ではなかった事は言わなくても分かる。しかしその話にはまだ先があった。この町の住民たちは最初から悪魔を信仰していた訳ではない。一部の人間が悪魔を信仰し、そして悪魔を呼び出したというのだ。呼び出された悪魔は町を支配、住民たちは信仰せざるおえなかったのだ』
全ての原因は悪魔ではなく、人間にあったという訳か。
しかし悪魔を呼び出す事など可能なのだろうか?
―出来なくはないな。確率は低いがな。
出来なくはないのか…。
しかし1000年前にも悪魔が存在していたとな…。悪魔も予期できなかっただろう。
この世界がこんな姿になるとは。…それは兎も角続きを読もう。
『悪魔による支配は100年にも渡った。人々は恐れを抱きながら日々を過ごした。本来であれば悪魔に支配された町が100年も維持されてきたのはある種奇跡と言えるかも知れない。だからこそであろう。悪魔の町として名を馳せる様になった此処にある男が訪れたのは。彼は旅人だと言っていたそうだ。だがその旅人を誰も歓迎しようとはしなかった。寧ろ追い返そうとした。当然だ、町は悪魔の支配化にある。何も知らない者がここにいてはいずれ命を落とす事になる。その事を知ってか知らずか旅人は町に留まる事無く去っていったらしい。そして彼が去っていたその日の夜、運命の歯車は動いた。』
『誰もが寝静まった深夜。突如として轟音が響いたらしい。住民は突然の事に目を覚まし、恐る恐る窓から外を見たという。そこに映ったのは長年にわたり町を苦しめてきた悪魔を相手に大剣を手に戦う一人の男の姿があったらしい。その当時の記録によれば、悪魔相手に戦う男も悪魔の様な姿をしていたらしい。その男は私利私欲に戦っている訳ではなかった。彼は100年も悪魔によって苦しめられた町を解放するのが目的だった。圧倒的な力と卓越した技術で悪魔を圧倒。見事それを討ち、悪魔を封印した。一躍町の英雄となったその者の正体はあの旅人だったらしい。彼は悪魔でありながら正義に目覚めた者らしい。誰もがここに残ってほしいと願ったらしいが、彼はそれを拒み、自分の名前を残して町を去っていったそうだ。町は救ってくれた感謝の印としてその悪魔の名前をこの町の名前にしたらしい。名前は…フェーンベルツ。それがこの町の名前であり、この町を救った魔剣士の名前だ』
『これだけならばまだマシであろう。問題は彼が去った後にあった。魔剣士 フェーンベルツはこの町を苦しめてきた悪魔を封印した。それだけなら聞こえはいい。問題はその封印が永遠のものかであった。それを危惧した一の住民たちはこの事を隠した。もし封印が解かれてしまえば、この町は再度悪魔の支配下に下る。さすればまたあの悪夢を見る事になる。だが何ら対策がなかった訳ではなかった。月に一度行われる祭りで供物を与える事で封印を強化するといるフェーンベルツから教えられた儀式があった。最初こそは人間のちょっとした血で良かったらしい。だがより強固な封印をを考えた一部がある事に手を出した。それは…人間を、若い娘を供物として捧げる事であった。』
『十代から二十代までの少女を人柱として捧げようと考えた。本人には決して知らせずに、深夜に押し入り誘拐して、その後は捧げられる。当然ながら親族もそれは知らない。偶然にもその場に居合わせてしまった場合は殺害される。もはやこの町はかつての姿を取り戻しつつあった。悪魔の復活を止める為に、逆に町の人間が悪魔となってしまった。私がこの事実を残したのはこの町の事を調べに来たものに伝える為だ。この事実を書いている今もこの町の住民は私を血眼になって探している。ここから生きて出る事はないだろう。だから頼む。この本を見たのであればこの事実を誰かに伝え広めてほしい。願わくはかつてこの町を救った彼に届く事を願って』
「…」
本を閉じる。
悪魔の復活を止める為に町の人間が悪魔になり果てる、か。
この町を救った魔剣士 フェーンベルツはこの町の惨状を知ったらどう思うだろうか。
彼も町がこうなるとは思わなかったであろう。
「取りあえず、この事を代理人とブレイクに伝える必要があるな」
作者が命がけで残した本を本棚にしまい、二人を探し歩き出す。
その瞬間、銃声が鳴り響いた。
ギルヴァがこの町の事に関する本を読んでいる一方で代理人とブレイクは違う箇所でこの町に関する事を探していた。一冊ずつ本を取り出しては調べていく代理人を他所にブレイクはどこかうんざりとした顔を浮かべる。
彼自身そこまで本を読まない。どちらかという雑誌の方が多い。故にこの本棚の中からこの町に関する事が乗っている本を探すなど面倒ではあった。だがこちらから依頼し、依頼料も取らないと約束してくれたギルヴァからの頼み。流石にサボる気にはなれなかった。しかしちまちまとやるのは自分の性分ではないと呟くブレイク。別の箇所へと移動しようとした時、受付に飾られている一つの絵画が彼の目に留まった。
興味本位でその絵画に近づき、それを眺めるブレイク。しかしその絵はどう考えてもこの場所に飾るべきではないと思えるもの。彼も同じ様に言葉にした。
「流石に趣味を窺うな。俺でも死神の絵なんて飾らないね」
黒いローブを纏う骸骨が大きな鋏を手にしている絵画。
まさしく死神を現している絵はあまり良いものではない。
暫くその絵を眺めるブレイク。そしてそれは起こった。
「!」
絵画から黒い靄を纏いながら何かが出てこようとしている。
それはゆっくりと姿を現し…真っ白な顔、まるで木製人形の様な両手には巨大な鋏が姿を晒す。
この世の者とは思えぬそれ。普通の人間なら驚くであろう。しかしブレイクはそれを見せなかった。
背に配置したホルスターから愛用の二丁の拳銃を引き抜き、それへと向ける。
「やれやれ…今まで見てきた奴らとは少し違うが…」
あれが悪魔だとは彼は知らない。
だが見てきた事がある様な口ぶりで彼は呟く。
コルト・ガバメントとベースにカスタムされた銃の引き金に指をかける。
「一曲踊ろうか…!」
黒き二挺拳銃が火を噴いた。
最近夢でHK416に何故か後ろから抱きしめられるという夢を見た作者です。
これはもっと出番を出せということなのか…?
さてお次はどうするかは未定なので遅れると思います。
ではノシノシ