Devils front line   作:白黒モンブラン

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現れたグリフォンと激闘を繰り広げるフードゥル。
一方でグリフォンは今回の一件にある思いを抱いていた。

その一方で便利屋「Devil May Cry」にいる彼女もある想いを抱いていた。


Act35 グリフォン

「バーベキュータイムだぜッ!ワンちゃん!」

 

グリフォンがそう叫ぶと同時に翼を前へ振るうと雷撃が横に列を成して現れ、フードゥルへと襲い掛かる。

フードゥルとは違い、グリフォンは雷撃を用い遠距離戦を得意としている。高密度かつ変則的な雷撃の扱い方が顕著に表れている。対するフードゥルは自身から発生する雷を体に纏い、隙あらば雷で刃に形成して攻撃といった接近戦を得意とする。グリフォンが繰り出す様な攻撃もできない訳ではない。だがその技の豊富さはあの猛禽類が勝っていた。

 

「ぬん!」

 

迫りくる雷撃を躱し、攻撃へと転じるフードゥル。

互いに雷を用いた攻撃を得意とする両者。雷光がぶつかり、閃光が奔る。幾度なくぶつかり合うそれに、ギルヴァ達は離れてその様子を見つめていた。

フードゥルにグリフォンを任せたのはギルヴァだ。そして彼に任せた以上に手出しは無用。

ギルヴァが動かない事から、傍に立つ代理人もブレイクも只見ているだけに徹していた。

激闘は収まる事を知らない。両者が放つ雷撃はあらゆる所へと飛んで行き、その一撃がギルヴァの目の前に落ちる。

だが彼はだじろぐ事もなければ驚く事もしない。只々戦いを見つめていた。

 

「流石は精鋭部隊の隊長を務めた事があらぁッ!あんたは猟犬か、何かかよッ!!」

 

「猟犬などではない。我は狼ぞ!それすら忘れたか、グリフォン!」

 

「忘れる訳――」

 

フードゥルがグリフォンへと飛び掛かる。

刃を振りかざそうとした瞬間、グリフォンは翼を思い切り振り下ろした。

 

「――ねぇだろッ!!」

 

グリフォンの全方位を包む様な雷の防御壁らしきものを発生させ、フードゥルの一撃を受け止めた。

火花ではなく激しく散る紫電。負けじと己の刃を押し込もうとするフードゥル。

 

(マジかよ…強引に貫く気かよッ!?)

 

表情からでは分からずともグリフォンは内心焦っていた。

彼もまた悪魔の中では上位種に君臨するのだが、力という点ではフードゥルに負けていた。

元々遠距離での支援を得意とし密度のある攻撃を繰り出す事で敵の接近を許さないのだが相手が悪い。

上位種に入らずとも高速移動を用いた攻撃や魔力で生み出した雷で刃を作り出し、それから繰り出される攻撃は下手すればグリフォンでさえ一撃で刈り取られる威力を誇る。

 

(ったく…俺一人でこいつらを葬れって?ふざけんなよ、あの引きこもりの魔術師が!)

 

自分にこんな役目を押し付けた今回の首謀者にグリフォンは悪態つく。

ある目的の為に魔界から強引に人間界に連れてこられたグリフォンは今回の一件の首謀者たる悪魔にこき使われていた。主に偵察を任される事が多く、ギルヴァ達の事を見つけた時はすぐさまその事を伝えに行った。

悪魔を討つ力を持つ者が現れたのであればその悪魔も何らかの行動を起こすだろうと思っていた彼に伝えられたのはギルヴァ達の始末であった。流石に自分一人では荷が重いと抗議したそうだが、それも聞き入れられる事はなかった。

フードゥルを相手にするだけで手一杯なのにギルヴァやブレイク、代理人が相手になれば勝ち目などあるだろうか?否、無い。寧ろこちらが狩られる。だがここで逃げ帰った所で殺される。ここで戦った所で殺される。

どの道、グリフォンに逃げ道はない。ならば奇跡を信じて戦いを仕掛ける他ないのだ。最もフードゥルは自分を殺す気などない事は知る由もないが。

 

「ぬおおおおっ!!」

 

「え、ちょっ!マジかよッ!!?」

 

グリフォンが放った攻撃がフードゥルの刃によって崩される。

すかさず威力が低いながらも連射が効く光弾を放つ。だがフードゥルが纏う雷によりそれは全て弾かれていく。

次の手を出そうとしてもその余裕はない。今から引こうとしても刃の範囲に入っている。

 

(…こいつは詰んだな…。やれやれ…もうちと長生きしたかったもんだぜ)

 

死を悟り、動きを止めるグリフォン。

だがそれをフードゥルは許さない。刃ではなく、体を回転させ尻尾をグリフォンの体へと叩きつけた。

決して強い一撃で無いにしろ、グリフォンを地面へと叩きつけるには十分な一撃。

一撃を当てられたグリフォンはそのまま吸い込まれる様に地面へと叩きつけられた。

 

「ぐえっ!」

 

変な声を出しながら地面とぶつかったグリフォン。

あのままやればこっちを倒せたに関わらず何故か仕留めなかった事に疑問を抱く。

そこで彼は気付く。戦いが始まる直前、フードゥルがあの男と何かを話していたのを。

 

「最初から…うおっ!」

 

何かに捕まれる感覚に驚き、頭をそちらへと向ける。

彼の視界に入ったのはフードゥルが自分の首を咥えて持ち上げられていた様。まるでそれは狩りを終えて主に獲物を持っていこうとする様そのもの。やっぱ狼というより犬だよなぁと彼は内心そう呟いた。

もしそれが声に出ていたのであれば今度こそローストチキンかフライドチキンにされていたであろう。

 

「主よ、これで良いか」

 

「ああ。上出来だ」

 

ギルヴァ達の前で足を止めるフードゥル。咥えているグリフォンを離し、ギルヴァ達の後ろへと下がった。

フードゥルから離されたグリフォンは体を起こし立ち上がると正面に立つギルヴァを見つめた。

何故自分を殺さぬように指示したのか、グリフォンもそこまで頭が回らない訳ではない。

恐らくというより…十中八九今回の首謀者の事について、そしてその理由を知る為だと。

元よりグリフォンはその悪魔に良い様にこき使われ、良い感情を持っていない。目的を成し遂げたいのであれば勝手にやってろと大声で言いたいぐらいだった。

 

(どうせ魔界には戻れねぇし…話してもいっか)

 

忠誠を誓ったわけでもない。向こうも自分が消えた所でどうとも思わないだろう。

ならばいっそ倒魔の力を持つ者にそいつをぶちのめしてもらった方がスッキリするというものである。

 

「…こちらが聞きたい事が分かっている顔だな」

 

「ああ。あんたらが知りたい事を全部知ってるぜ。で、何が聞きてぇんだい?」

 

その表情から中々読み取れないが、声量からしてそれは実に悪魔らしいものであった。

 

 

一方…。

ギルヴァ達が遠く離れた小さな町 フェーンベルツを訪れているその頃。

S-10地区前線基地に併設された建物「Devil May Cry」の店内では灯りが灯っていた。

知っている者は知っているだろうが、ここは404小隊の帰る家としても機能している。故に店内に灯りが灯っていもおかしい話ではない。最も店内でギルヴァがいつも座っている椅子に腰かけている45の目には光が灯っていないが。

彼女達が任務から帰ってきたのはギルヴァ達が出ていった数十分後の事である。指揮官に報告を終えて後、疲れを癒す為、そして愛してやまない彼に抱きつく為に急いで店へと向かった45に待ち受けていたのは誰も居ない店内だった。のちに彼らは依頼で店を開けた事に知り、仕方ないといえば仕方ないとそう結論付けた彼女なのだが…。

 

「どこに行ったんだろう…、まさか私に隠れて浮気じゃ…。もしそうなら…フフフ…アハハ…♪」

 

ギルヴァに抱きつく事が出来なかった事が原因なのか。

狂気ここに極まりと言わんばかりに45は物騒な事を呟いていた。

その一方でソファーに腰掛けて彼が愛読している本を読んでた416は言葉こそしないものの、内心ギルヴァの事で一杯だったりする。404小隊の中で彼と最初に出会ったのは彼女なのだ。あの時自身が恐れられるかも知れぬというのにも関わらず悪魔の力を解放し助けてくれた事もあって45の様に大胆にはなっていないものの、好意を抱いてたりする。そこまでなら恋する乙女と何ら変わりないだろう。だが何時しか彼女の中でこんな思いが芽生えていた。

 

―もっと私を見て欲しい…

 

そんな思いを抱く様になる。それを抱く様になったのはここで過ごす事を彼が許可してくれた辺りからだ。

そこまでしてくれたのは他ならぬ45であるのでそれに関しては感謝している。だが自分達が汚れ仕事をやる事を気にせず受け入れてくれて、まして帰る家としてここ「Devil May Cry」で過ごす事も許可してくれた。

彼からすればそこまで気にしていないかも知れない。だが彼女…いや404小隊にとっては非常に喜ばしい事である。

 

(ああ……早く貴方に会いたい…そして触れたいわ…)

 

故に思いが止まらなくなっていた。最早恋の暴走機関車と言わんばかりに。

そんな時だった。45が416へと声を掛けた。

 

「ねぇ、416」

 

「何かしら?」

 

「彼…ギルヴァと家族になれたら…それってとても素敵と思わない…?」

 

416も気付いていた。そしてその意味も。

ギルヴァという男は誰にでも優しいのだ。最も敵対すれば容赦しない点はあるが、その刃が404の面々に向けられる事は可能性としては限りなく低いだろう。それにだ。どこから知ったのか45にもたらされた情報によればギルヴァは何度かAR小隊の部隊長 M4A1と何度接触していると。聞けば一度は依頼で助けに行ったらしく、それに関しては仕方ないと言わざる終えなかった。だが彼女によればギルヴァはM4A1に対し何らかの思いを抱いていると告げられた。その思いが一体何のなのか分からずとも彼女としてはそれは良くない。何より気に食わない。

ならば彼を自分達の所に引き込めばいい。どんな手段を使おうとも。

 

「…そうね。あいつらに渡すなら分捕るわ…」

 

「決まりね…。因みに9とG11には通達済みよ。9は喜んで受けてくれたし、G11もギルヴァの事を良いお兄さんみたいに見てるらしいから、問題なしよ」

 

「そう」

 

奴らから彼を分捕る。そして私達の家族となる。

それがどれほど甘美なものだろうか。その先の光景を予想した416は体が熱に浮かされる感覚を覚えた。

 

(ギルヴァ…私は貴方に全てを与える。この想いも、この体も…スベテ…)

 

ふっと彼女の瞳から光が消える。

ギルヴァが愛読していた本を閉じると、以前に読んだ本に綴られた言葉を呟くと同時に416は依頼をこなしているギルヴァへと想いを馳せた。

 

「欲望あれど行動せぬ者には…災いあり」

 

(だから待っていて?私達無しじゃ生きていけない様にシテアゲルカラ…フフッ…)




グリフォン戦短いと思いますが…許せ…。

久しぶりのヤンデレでございます。
流石ににそろそろ出さないと不味いと思い、出しました。

さてお次はグリフォンが知る今回の全てからスタートです。
ある程度は決まっているのですが更新は遅れると思いますので何卒ご容赦を。

ではではノシノシ

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