Devils front line   作:白黒モンブラン

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大聖堂へと乗り込むギルヴァ達。
アルフェネスによって生む出された魔樹を巣食う寄生虫が姿を現す。


Act37 巣食う寄生虫

大聖堂の扉を押す。

その大きさ故にそれなりの力を要し、ドアの軋む音がが大聖堂内部に響き渡る。

まるで嘆く様な…不気味な叫び声にも聞こえるその音は自分達に何かを伝えてきているようだった。

そして内部の全貌は明らかになった時、代理人が呟いた。

 

「荒れてますね…」

 

内部は巨大な管の様な何かがいくつも見えていた。所々棘の様な物が生えており、黒く染まったそれは禍々しい。そして管の先には苗の様な何かがあった。元々はその場所には祈りの捧げる為の神像が置かれていたに違いない。だがそれは苗に取り込まれた形で埋まっていた。元々悲痛な叫びをした表情をしていたのだろう。その事も相まって、まるで助けを求めている様にも見える。

にしてもこれほどの物を用意できるとは、流石は魔界の魔術師といった所だろうか。

よく見れば苗から生えている管は地面を突き破り下へと続いている。恐らくではあるが管が続く先にアルフェネスがいる。そしてザ・ディスペア・エンボディードが封印されてると見ていい。

まずは大聖堂の地下へと繋がる入り口を見つけなくてはならないが…。

そう決めて一歩踏み出した時であった。苗から何かが現れた。、目は存在していないが、口がある。如何にもこちらを食い殺さんと言わんばかりの触手が一直線にこちらへと飛んできた。

 

「!」

 

地面を蹴りその場から飛び退く。代理人達もその場から各方位へと飛び退く。

苗からはまたあの触手が飛び出し、こちらを狙って襲ってくる。動きは単純なので回避は容易なのだが、このままでは先に進めない。

 

「ギルヴァ。貴方はブレイクと共に先へ行ってください」

 

叫び様に大声で伝えてきたのは少し離れた位置にいた代理人だ。

飛び交う触手たちの攻撃を難なくかわしながら、ショットガンを構え散弾を放っていた。

 

「どうする気だ、代理人」

 

「どうするも何も…目の前にある目障りな苗を討ちます。私とフードゥル、そしてグリフォンで」

 

俺まで!?とグリフォンが叫んだ気がするが、触手が暴れ回るせいで起きる轟音と銃声で聞き取れなかった事にする。

だがこのままではアルフェネスに猶予を与えてしまう事になる。ならば彼女の提案を許可するしかないだろう。

 

蒼、奴の位置は分かるか?

 

―地下なのはわかっているな。奴の気配も探知出来ている。ナビゲートなら任せろよ

 

流石だな。

 

「ブレイク、ここは代理人に任せて先に行く。ついてこい!」

 

「あいよ!」

 

攻撃を回避し、別の部屋へと通ずる廊下へと飛び込む。それに続く様にブレイクも後を追ってきた。

代理人が居る部屋では銃声が鳴り響いている。フードゥルとグリフォンも一緒に居るので大丈夫だと思いたい。

地下へと繋がる入り口を目指し、ブレイクと共に走り出す。まだ少しだけ時間があると願いつつ…。

 

 

「行きましたか」

 

「おいおい、メイドのねぇちゃん!何で俺まで巻き込むのよ!?」

 

何やらチキン野郎(グリフォン)が騒いでいるみたいですが、ここは聞かなかった事にしましょう。

すると苗からあの触手とはまたタイプが違うのが姿を見せた。形から人型…柔らかい何か出来ており、両腕には細い剣の様な何か。見た目からして正直気持ち悪い。

 

「よ、よ、避けやがったな!俺の、こ、攻撃を!」

 

喋るとプルプルと震えるみたいですね…にしてもこれも悪魔という訳ですか。

以前見たタイプとは全然違いますね。あれは寄生型でしたが…こちらも寄生型なのでしょうか?

趣味の悪い苗から出てきたのですから…さしずめ寄生虫ですかね。

 

「うへぇ、きめぇ…ニーズヘッグか」

 

「ああ。ニーズヘッグだな」

 

どうやらグリフォンとフードゥルはあれを知っているみたいですね。

まぁ二人は魔界の出であり、悪魔。目の前にいるあの悪魔について知っていてもおかしくはないでしょう。

その声が聞こえていたみたいで、ニーズヘッグと呼ばれる悪魔が喋り出した。

 

「お前、俺を知っているのかぁ?」

 

「正真正銘の馬鹿さ。魔樹の中でしか動けねぇ寄生虫野郎だしよ」

 

向こうの台詞を無視して、グリフォンはニーズヘッグを馬鹿にしつつこちらへと情報を与えてくる。

馬鹿はともかく、魔樹という言葉が気になる。どういったものかは知りませんが、あれも…。いえ、苗と管から察するにあれは魔樹の根の部分に当たるものかもしれません。

 

「魔樹…。そして下へと繋がっている管。成程、これは封印されているディスペアに養分を与えるものか。ニーズヘッグと根を叩き潰せば少しはディスペアの力を弱らせる事が出来るかもしれぬ」

 

「ほう…」

 

それは良い事を聞きましたね。

ギルヴァ達の助けになるのであれば、それをやらない理由はない。

それに、持ってきた"こいつ"で悪魔相手にどれ程聞くか試すのも悪くないでしょう。

ガンベルトの左側に下げているものを見やる。大型弾倉に、杭の様なもの。先端には成型炸裂弾を備えているというもの。人形、人間相手には決して使うものではない武器。パイルバンカーとも呼ばれるが、少し違う。これは、ヒートパイルと呼ばれるもの。

そう。あの時、あの兵器工場からシルヴァ・バレトやニーゼル・レーゲンと共に持ってきた一つ。使う機会は中々なかったが今回は念の為持ってきていた。

 

「お、俺を馬鹿にしたな!」

 

「げっ!聞こえてやがる…」

 

グリフォンが馬鹿と罵ったのが聞こえていたのでしょう。

キレるニーズヘッグに指示で触手がグリフォンへと狙い定められる。グリフォンの自業自得なのですが、流石に死なれるのは困る。すかさずシルヴァ・バレトに徹甲弾を装填し、その触手へと一発放つ。

砲火と共に弾き出された29mmの弾丸の一撃を受けた触手の頭部らしき部分は跡形残さず散り、残された触手が苗へと引っ込んでいく。

 

「殺す!お前ら、こ、殺してやる!」

 

明らかな殺意を見せるニーズヘッグ。

たかだが馬鹿と罵られただけであれほどキレるとは…沸点が低すぎだと思うのですが。

まぁそんな事はどうでもいいです。早い所、寄生虫の駆除と趣味の悪い苗の撤去をしなくてはなりません。

 

「やれるものならやってみなさい」

 

シルヴァ・バレトを持ったまま、右手に持ったデビルをニーズヘッグへと突きつける。

 

「どの道、消えるのは貴方でしょうから」

 

 

その言葉を火蓋に戦いが始まる。

シルヴァ・バレトの一撃を受け、頭を吹き飛ばされた触手は再生したのか再度姿を現し、彼女達へと敵意をむき出しにし、襲い掛かる。そしてニーズヘッグの視線は、フードゥルやグリフォンにではなく代理人へと注がれていた。

 

「お前…い、良い女だな…。お、俺がか、可愛がってやるぞ」

 

戦闘中だと言うのに明らかに下心満載な声で代理人へ告白まがいな事をやらかした。

 

「お断りです。寝言なら寝て言いなさい」

 

即答からのお返しと言わんばかりにニーズヘッグへとショットガンを放つ代理人。

彼女には心から愛する人(ギルヴァ)がいるのだ。ましてやニーズヘッグの様な悪魔に可愛がられるとか論外中の論外である。そうなる位なら死んだ方がマシとも言えるだろう。

雷撃を放ちながら、そのやり取りを聞いていたグリフォンはゲラゲラと下品な笑いを上げながら、ニーズヘッグへと挑発を仕掛ける。

 

「ギャハハハハッ!ひ~…!こいつは傑作過ぎんだろッ!こくって三秒でフラれやがるッ!!ざまぁねぇぜ!」

 

「この…ト、トリがぁっ!!」

 

挑発に乗り激怒するニーズヘッグ。ニーズヘッグ自らグリフォンを攻撃を仕掛ける。

両腕を剣を乱暴に振り回しながら襲い掛かるが、そこにフードゥルがニーズヘッグの目の前に雷を落とし攻撃を止めさせる。

 

「おっと!惜しい!なぁ、どんな気分?マジでどんな気分よ?寄生虫ちゃんよぉ!」

 

煽りに煽りまくるグリフォン。

最早どっちが悪魔か分からないものである。

しかしグリフォンによる挑発が功を奏し、ニーズヘッグの攻撃は雑なものになっていた。考えもなく、只々振り回すだけの単調攻撃は、フードゥルも間抜けがと内心呟く程に。

高速移動しつつ、現れる触手を一撃で仕留めるフードゥルの攻撃によりニーズヘッグの防御は薄れていく。

 

「よっとおッ!!」

 

グリフォンから球体が落ちる。そしてそれが地面と接触した時、二筋の雷撃が扇状に展開、そして互いの距離を縮め合っていく。それは一度だけでなく、二度、三度続く。繰り返し行われる攻撃に追加する様にグリフォンによる攻撃が繰り出される。

 

「しびれなッ!!」

 

五つに並列しつつ迫りくる雷撃を展開。雷の壁が触手を、ニーズヘッグに確実なダメージを与え、そこにフードゥルが飛び込む。纏っている雷を用いて強烈な落雷を叩きつける。槍の様な鋭い一撃はニーズヘッグの体を貫く。

 

「ぐおおおおおおおおっ!!!!」

 

流石にニーズヘッグもその猛攻にはよろめく。

与えられたダメージは大きく、触手にも攻撃指示出せない。

 

「!」

 

生まれた隙。代理人がショットガンをホルスターへと差し込み、ヒートパイルの持ち手を握り、ニーズヘッグへと駆け出し、構える。しかし彼女が思ったよりニーズヘッグが早く復活し、その場から離れようとしたが代理人の追撃は止まらなかった。力強く地面を蹴りニーズヘッグの眼前にまで迫る。

そして勢い任せに杭をニーズヘッグの顔に当たる部分に叩き込んだ。

体に風穴を開けかねない程の一撃はニーズヘッグの体表を抉る。その痛みに懇願にも似た声が上がる。

 

「やめ…やめ…やめろおぉ…!」

 

痛みにのたうち回るニーズヘッグ。だが代理人は杭を差し込んだ手を緩めない。

この悪魔が確実に死ぬまで離さない。

 

「斬られた虫は隙は晒す…」

 

苗へと逃げようしたのがニーズヘッグの運の尽きだった。

代理人はヒートパイルの引き金を引いた。

それへと縫い付けるかの様に杭が飛び出し、先端部の成型炸裂弾が炸裂、ニーズヘッグの内部で爆ぜた。

それが止めの一撃となり、ニーズヘッグが力なく崩れていく。代理人はその場から飛び退き、地に着地。

ヒートパイルの排莢を行いつつ、息絶えたニーズヘッグへと告げた。

 

「貴方はどうでしょうか」

 

排莢により落ちた薬莢がカランと音を立てて戦いの終わりを告げる。

その身は細やか粒子へ変わっていき、ニーズヘッグは消失していく。そして根を寝床にしていたそれも段々と真っ白へ変色していき、そして最後は砂の様に崩れ落ちていくのだった。

こうして代理人、フードゥル、グリフォンによりザ・ディスペア・エンボディードへと送られる養分は絶たれた。




ニーズヘッグ早期退場…許せ…。あとグリフォンの煽りはやっちゃっ駄目だからねぇー。

さてお次は未定なので遅れると思いますので…。
また感想くれたら嬉しいです。…まぁ作者お豆腐メンタルだから、ご容赦を…(震え

ではノシノシ

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