古風な造りが特徴の空間に彼はいた。
「やれやれ、ここどこだ?」
周りを見渡せば、どこかの建物内の廊下。古風な造りからしてどっかの城みたいだが…。
にしても何でここに?さっきまで地下に居たんだが…。
「分断されちまった…そう考えた方がいいか」
としか思えない。あっちの事も気になるが、そう簡単にやられる奴ではないだろうから問題ないだろう。
取りあえず向こうと合流しないといけない。ここから抜け出すのを急ぐべきのが先決だ。
しかしあれだ…ここ全体が嫌な何か包まれている様な気がしてならねぇ。俺達を分断させたのはアルフェネスによるものだという事は分かるが、この空間もそいつが作ったのか?
そう言えばあの鳥野郎は、魔界じゃ魔術に関してはアルフェネスが一番とか言っていたな。
なら…こんな事出来てもおかしくないって訳か。
「まぁ言ってた所で仕方ねえ。とっと動くか」
湾曲した廊下。自分はその中腹辺りにいるのか…さて上か下か。
ゴールはどっちかは分かんねぇが、取りあえず上を目指した方が早そうだ。
それにこの先から何か懐かしい感じしてならない。どこで感じたか…まぁ見てみれば分かる事だ。
「んじゃ、行ってみるか」
愛用の銃を手にしたまま、上へと歩き出す。歩く度に響く音。道中見かける窓から外を覗けば、辺り一帯暗闇に包まれていた。何となくだが、ここは再現された場所という奴か?
何故ここだけを再現したのかは分からないが、何かしらの理由があると見ていい。最も理由を聞くつもりなどないがな。
「おっとここまでか。…ん?」
上まで来たのだが、隣へと繋がるドアがびくともしない。ドアノブを幾ら回してもそれが開くは事ない。
軽くため息をつき、苛立ちをぶつけるかの様にドアに向かって蹴りを叩きこむ。当然だがそれで何か起きる訳もなく、今度は下へと降りようとした時だった。ふと奥の方で煌めく何かが視界の端に入った。
無視しても良かったのだがどうしても気になり、そっちへと向く。
女神像の前で地に突き刺さっている大剣。髑髏の装飾が施され、十字剣にも似た姿をしている。
普通こんな所に武器なんか置くか?それに…この懐かしい感じはこいつから?どういう事だ?
それへと近寄ってみる。そしてその大剣の前へと立ち、持ち手を握った時だった。
この剣に意思があるのか、頭の中に囁きかけてくる。
―我を持つに値する者か、この試練を超えてみよ。超えられぬのであればその命を捧げよ―
その瞬間、大剣が一人でに動き出し、そのまま―――
「がっ…」
心臓を貫かれた。
大剣に心臓を突き刺され、地面へと縫い付けられるかの様に倒れるブレイク。
目は閉じられており、目覚める気配はない。その時、彼の意思とは関係なく、ブレイクの体から膨大な魔力が放たれ始め、人から悪魔へ、悪魔から人へを繰り返す。
そして次の瞬間、ブレイクの下ろされていた瞼が勢い良く開かれた。
「!」
それと伴う魔力の波動で周りに置かれていた物が吹き飛び、悪魔の力が完全に目覚めたブレイクは自身の心臓に突き刺さったままの大剣の刃の部分を両手で挟み込み、ゆっくりと大剣を抜き始めた。
抜く度に溢れる血飛沫。しかしブレイクの表情に痛みの表情はない。そしてそれを完全に抜き取ると彼は立ち上がり、大剣を地面へと突き刺す。
(成程…。懐かしいのはそういう事か)
心臓を刺されて彼はこの大剣から感じる何かに心当たりがあった。
真剣な表情で剣を見つめつつ、静かに呟く。
「あんたの剣だったのか、院長」
ブレイクが感じたのはかつて世話になっていた孤児院の院長 ローグフェルツのものだった。
優しく、かつ強く。孤児院の院長からそれを子供の時から感じ取っていたブレイクにとって、確信とも言えるものがあった。最も刺されてから気付いた事に少しではあるが後悔しているのは彼以外が知る事はないだろう。
「再現じゃない。ここは本当に存在するどこか、か…」
他にも色々疑問に思う事があっても、ブレイクは敢えてそれを考えぬ様にした。
実はこれもアルフェネスが仕掛けた罠だったりする。出る事が出来ない空間に、さもここから抜け出させる様にアルフェネスが、ディスペアの封印にも使われていたローグフェルツの大剣「リベリオン」を回収、配置。魔剣であるが故に意思を持つそれは、触れた者に自身を扱う相応しいか否かを確かめる為に一人で動き出しその者の心臓へと突き刺し、殺害といった罠であった。ただ今回の相手が悪魔の血を流すブレイクであった事についてはアルフェネスも気付けなかったであろう。
そんな事も知る訳が無く。ブレイクは大剣の持ち手を勢い良く握ると、その場で剣舞を始めた。
流れるかの様で、それでも力強く。ローグフェルツに叩き込まれた剣技の数々の一端が繰り広げられる。
最後は回転を効かせ大剣を前へと放り投げた後、絶妙なタイミングで大剣の柄の部分を足で軽く蹴り上げる。
回転は緩くなりつつも大剣はブレイクの方へと戻り、柄を掴み彼は大剣を背へと納めるとかつての持ち主へと向けて静かに呟いた。
「有難く貰うぜ、院長」
赤いコートをなびかせ、彼がその場から離れた矢先だった。
空間が歪んだ。ガタガタと音を立てて、周りが変化していく。また何処かに飛ばそうとしているのか感じたブレイクであったが、自身が魔術に長けているかと言えばそうでもない。流れるままに任せるしかないと感じた彼を迎えたのはドームの様な場所。周りは照明器具らしき何かが埋まっており、そこから眩しいまでに光が放たれている。
「!」
ドームの中央に立っていたブレイクは何かに気付いたかの様に後ろを振り向いた。
光によって地に映し出された自身の影。その影が伸びる様に動き出し、光が届かぬ所へと向かって行く。
そして影から赤く鋭い双眸が浮かびあがり、影から何かが出てくる。どこか悪魔の様な姿、背に背負った大剣。
その姿に既視感を覚えたブレイクは、フッと笑みを浮かべつつその影へと向かった話しかける。
「通す気ないって感じだな。通行料金でも払えばいいのか?」
周りの照明が一つ、また一つ。光を失っていく。そんな中でもブレイクは態度を崩さない。
模倣を武器とする悪魔「ドッペルゲンガー」を相手にしても。
ドッペルゲンガーは静かに背を背負った大剣を引き抜く。武器までもブレイクが持っている物と同じ。
「でも悪いな。料金所がないのなら払うつもりはないぜ。それでも文句があるなら―――」
ブレイクもリベリオンの柄を手に掴み、勢い良く振るうと大剣の切っ先をドッペルゲンガーへと突き付ける。
「―――来いよ、モノマネ野郎」
身を低く屈めながらも素早くステップを踏みつつブレイクとの距離を縮めるドッペルゲンガー。
最速の突きが繰り出されるがブレイクは難なくそれを回避。ドッペルゲンガーが向いている方向とは反対側へと走り出す。この時、ブレイクが相対している悪魔が何に弱いか分かっていた。
攻撃を回避されたドッペルゲンガーはブレイクの後を追う。
「えぇぃいやッ!!!!」
照明を閉ざした壁に突きによる一撃を叩きこむ。並みの悪魔であれば吹っ飛ぶであろう一撃は壁を破壊。
そしてその後を追ってきたドッペルゲンガーに光が浴びせられる。先程の姿は何処へ行ったのか強烈な光を浴びせられ、もがき苦しむドッペルゲンガー。それが隙となり攻撃を仕掛けるブレイクであるが、思ったより復活が速いのかドッペルゲンガーはそこから飛び退き、ドームの中央へと降り立つと同時に拳を地面へと叩きつける。
そこから広がる闇の衝撃波がブレイクが一度破壊した壁を復活させる。
流石に銃までは模倣していないか、ドッペルゲンガーは腕を突き出すとそこから光弾が放たれた。
そこに誰かが見ていれば避けろと言うかも知れない。だが彼はこう答えるであろう。
「
一直線に迫りくるそれをブレイクは難なくリベリオンではじき返すが、相手もそれをはじき返す。
ドッジボールでもやっているのかと言いたくなる様な光景。繰り返される光弾の弾き返し合戦。
まるで遊んでいるかの様である。
「
調子に乗ってドッジボールに付き合いつつ、ドッペルゲンガーにへと挑発をかますブレイク。
だが段々と飽きてきたのか、あえて敵との距離を縮め弾き合いの速度を速めた。
「!?」
それが功を奏したのか、迫りくる光弾に反応が遅れドッペルゲンガーにそれが直撃し、怯む。
「
その隙を突き、ブレイクは照明を塞いでいる周囲の壁に向けて愛銃を連射し始める。
一発では壁は破壊できない。だが大量の弾丸が集中すれば、自ずと壁の耐久力は低くなっていく。その印に壁には段々と亀裂が入っていき、後一手のという所でそれを止めさせんと言わんばかりにドッペルゲンガーが襲い掛かる。
大剣を振るい、連撃を仕掛ける。ブレイクも真っ向から受ける様にリベリオンを振り抜き抗戦。
斬り結んで両者。しかしこの暗闇の中ではドッペルゲンガーが優位に立っていると言えた。影だからか、ブレイクの攻撃がすり抜けていく。だと言うのに向こうの攻撃は通る。
「やっぱりか。下手に付き合うもんじゃねぇな!」
攻撃をいなし、彼はその場から大きく飛び上がる。空中で上下反転し、回転しながら周りにへとばらまく様に銃を連射。薄暗い空間で光るマズルフラッシュ。高速回転しているにも関わらず、的確な射撃により周囲の壁が同時に崩れた。
目を遮りたくなる様な強烈な光がドッペルゲンガーに浴びせられる。悪魔の姿は消え、苦しみの声をあげる。
「
地へと降り立ち、リベリオンを構えつつ身を低く屈めながら突進するブレイク。
「こっからは―――」
逆袈裟から返すかの様に切り上げ、そして流れる様にリベリオンを後方へと回しつつ、持ち手を切り替え袈裟斬り。
「
そのまま刺突の連撃を高速で繰り出していき、ダメージを与えるとブレイクは地面へとリベリオンを突き刺し、それを軸に勢い良くその場で回転。踊るかの様に回転しながら蹴りを数発叩き込んだの内に、止めに反動を活かし一気に薙ぎ払いを叩きこんだ。
ドッペルゲンガーの横っ腹に入る止めの一撃。あれだけの連撃をもらえば悪魔であろうと耐えられない。
その証拠に相対していたドッペルゲンガーはその身を影へと潜ませていく。何か仕掛けるつもりもなく、ドッペルゲンガーは消失していった。
「ふぅ…。影が無くならないでよかった」
自分の影がちゃんと存在している事に若干安堵した声を漏らすブレイク。
そこに何処からともなく扉が現れる。そのドアがここから出るものであると感じた彼はそこへと近づき、ドアの前に立った。そのままドアノブに手をかけようとするブレイクだが、途中でその手を止めた。
何かを思い付いたのか、ニヤリと口角を吊り上げ笑みを浮かべる。
「既にイカれているが……こっからはイカれたパーティーの始まりだ」
足を上げる。その先は当然…。
「派手に行くぜ!」
意気揚々とブレイクは力任せにドアを蹴飛ばすのだった。
後に彼はギルヴァと合流。
アルフェネスはやられ、外へと飛び出して行ったザ・ディスペア・エンボディードをギルヴァと共に追う。
その際ブレイクは魔人化を果たしているのだが…実はこれは偶然できたのだ。
デビルトリガーの存在すら知らなかったブレイクはギルヴァが魔人化をした所を目撃。自分もできるのではないかと思った彼はそれを見よう見まねでやったのだ。そして一回目にして魔人化を果たす事が出来たのだ。
ギルヴァに何故出来るのか問われた時に、強引に話をそらしたのは自分でも説明出来なかったからである。
という訳で、通過儀礼を済ませてブレイクも近接武器をゲットでございます。
本当であれば別の名前で出したかったのですが、中々良い案が思い付かず、もうリベリオンで行こうと思いそのまま出しました。とは言っても色々独自設定をぶっこんでますけどね。
通過儀礼の描写はDMC1から。ドッペルゲンガーはご存知DMC3から。DMC3で登場したスタイルの一つであるドッペルゲンガーは出さない感じです。
さて次回はディスペア戦。
コラボ?……多分やらないかも…。
ではノシノシ