Devils front line   作:白黒モンブラン

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とある地区に墜落したギルヴァとブレイク、そしてディスペア。
戦いは終幕を迎える。




覇王戦後編。
また今回からは焔薙様作「それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!」とのコラボ
でございます!
初なので…正直凄く緊張しております…。何か不備があれば言ってくださいませ…。
またある戦術人形視点を勝手ながら描かせていただきました…どうかお許しを。
またタイトルの最後についている星マークはコラボ回の印と思って頂けたら幸いです。


Act40-Extra 覇王(後編)

とある地区の上空。

魔人化を解除しても尚、急降下しながらディスペアと刃を交えるギルヴァとブレイク。

ぶつかる度に火花を散らし、ぶつかる度に傷を負う。

幾度も雲を突き破り地表との距離が近くなろうと彼らは獲物を振るう事を止めない。

 

「ぬおおおおっ!!」

 

「これで散れ…!」

 

ブレイクがリベリオンの刃を叩きつけ、ディスペアの胴に一閃。

傷を負った事により動きを止めた所にギルヴァが次元斬を繰り出す。神速の抜刀術と無銘の持つ力により、空間が歪むと同時に繰り出される斬撃がディスペアに更なる傷を負わせる。

だがディスペアを仕留めるにはまだ至らない。

 

「ならよっ…!」

 

何かを思い付いたのかブレイクがリベリオンをディスペアへと向けて勢い良く投擲。

槍の様に投げされたリベリオンはディスペアの体に突き刺さり、追撃としてギルヴァがホルスターからレーゾンデートルを引き抜き発砲。放たれた二発の銃弾は真っ直ぐ突っ込んでいき、リベリオンの柄の底に当たる部分に命中する。

食い込む様にリベリオンはディスペアの体にさらに深く突き刺さり、さらに降下速度を速めるディスペア。

それを追う二人。風を切りつつ、ディスペアを見失わない様に視線をそらさない。

そのまま地面とぶつかるかの様に二人とディスペアは墜落した。舞い上がる土埃と響き渡る轟音。

現にそこではとある基地所属の戦術人形部隊と鉄血の人形部隊が交戦している真っ最中であったのだが、彼らは知らない。

戦場のド真ん中に墜落したギルヴァとブレイク。転がるかの様に受け身を取りつつ、態勢を元に戻し地面を軽く滑る。魔力の使い過ぎと疲弊もあって二人共方肩で息をしていた。そこに墜落の衝撃によりディスペアの体を抜けたのか舞い上がる土埃からリベリオンが飛び出しブレイクの手前の地面で突き刺さる。

 

「ふぅ…」

 

息を整え、立ち上がるブレイク。リベリオンを引き抜くと、勢い良く振るった。

舞い上がる土埃はそれによって振り払われ、全体がクリアになる。ディスペアの後方には鉄血人形部隊。彼らの後ろで物陰に身をひそめ、様子を窺っているとある基地所属の戦術人形部隊。自分達以外にも誰かがいる事は気配で察知していた二人であるが、だからといって話しかけようとは思ってすらいない。そんな余裕があるのであれば、魔界の覇王との決着を急ぐべきであると判断していた。

 

「後で謝罪しなくてはな…。故意では無いにしろ飛び入り参加してしまったからな」

 

「まぁ…そうだな」

 

ちらりと後ろを見るブレイク。

巻き込んでしまった事には彼も思う所があるようで、何とも言えない表情を浮かべる。

しかしそれは束の間、真剣な表情へと切り替わり、視線を前へと向ける。

片翼と片腕になっても尚、戦う姿勢を見せるディスペア。その姿に感心したかの様にブレイクは話しかける。

 

「掃き溜めのゴミにしちゃガッツあるみたいだな。流石は魔界の覇王様って言った所か」

 

「…」

 

この状況でも余裕そうな態度を見せるブレイクに対し、ギルヴァは沈黙を貫き左手に持った無銘の柄に右手を近づける。その姿を見て、ブレイクも肩に担いでいたリベリオンを下ろし、切っ先を地面へと向けると少しだけ右腕を後ろに引く。そして二人は静かに歩き出し、空いているディスペアとの距離を埋め始めた。

一歩、一歩ずつと足を前へ出し距離が縮まっていく。ディスペアは動かない。そこで立ち尽くし、その時が来るのを待つ。

雲一つない夜空。空高く登った満月の月明かりが全てを照らす。

緊張が走る。にらみ合う両者。決着の時が刻々と迫る。そして…風が吹いた。

 

「「!」」

 

それを合図に、地面を蹴り走り出す二人。

先程まで緩やかに埋まっていたディスペアとの距離も、走り出した事にとてつもない速さでその間は短くなる。

間がごくわずかになった時、先にディスペアが攻撃を繰り出す。右腕の大剣をさらに大きくさせブレイクを突き刺そうと伸ばす。だがそれを読んでいたのかブレイクは躱し、体を捻りつつ身を宙へと投じリベリオンを突き立てる。狙いがブレイクへと定められた事により、生まれた隙を突く様にギルヴァは無銘を抜刀。鞘から引き抜かれる刃が姿を晒し鋭い一撃がディスペアに迫る。

だがこうなる事をディスペアは読んでいた。敢えて大剣を大きくさせたのもその一つ。どちらかへと攻撃を繰り出し、どちらかがその隙を狙って仕留めに来るであろう。そしてそれは読み通りとなった。

ディスペアは迫りくる攻撃に対し、わざと一歩引いた。刃が届く寸前で片翼を剣状に変質させ、右腕の大剣と変質させた片翼で二人の攻撃を弾いた。

響いた金属の音と同時に回転しながら宙を舞う無銘とリベリオン。しかしそこには二人の姿はなかった。

死んだわけではない。もし死んだのであれば死体が転がっている筈。突如として二人が消えた事により困惑するディスペア。右へ、左へ頭を動かし辺りを見渡してもその姿は確認出来ない。

 

「!」

 

そして何かに気付いたかの様に正面を向いた瞬間、二つの銃の銃口がディスペアの顔に突き付けられた。

そこには居たのは先程まで消えていたはずのギルヴァとブレイク。お互いに背中を合わせ、愛用する銃を構えている。ギルヴァは右手に銃身が銀色に輝くリボルバー、レーゾンデートルを。ブレイクは左手に黒を基調とし、銃身にはForteと刻まれた大型拳銃 フォルテを。

二人は顔をディスペアへと向ける事無く、銃だけを突き付けていた。

ディスペアは動かない。否、動けなかった。下手に動けばとどめの一撃を放たれるからだ。

レーゾンデートルに蒼い魔力が、フォルテに赤い魔力が注がれる。バチバチと雷の様に音を立て、注ぎ込まれる魔力は段々と激しくなる。

 

二人が持つ銃の引き金に指掛かる。

 

二人して小さく口角を吊り上げる。

 

そして次の瞬間―――

 

 

 

――――銃声が木霊した。

 

 

 

放たれた一撃。

それはとどめの一撃となり、ザ・ディスペア・エンボディードは後方へ撃ち飛ばされた。

硝子が割れてしまったかの様に体は砕け散り、魔界の覇王はこの世から消失。それを見届けた二人は銃をホルスターに収めまるでこの時を待っていたかの様に落ちてきた愛剣を見向きもせずキャッチした。

刀身を鞘に当て、静かに鞘へと納めるギルヴァ。ブォンとリベリオンを横へと一閃し、背へと背覆うブレイク。

互いに背中を合わせ、その行いを見せつける二人の姿はある意味、絵になっていた。

 

「終わったか」

 

「こっちの問題はな」

 

ブレイクの台詞に、そう答えるギルヴァ。

鋭い目つきで物陰に隠れていた戦術人形部隊を一目見ると、すぐさま鉄血人形部隊の方へと睨む。

どうやら向こうは彼らをやり合うつもりでなのだろう。武器を構えている。

魔力の使い過ぎと疲弊も体力の限界が来ているのだが、二人は鉄血人形部隊へと体を向け、構える。

 

「鉄血人形の事を悪魔と称した奴がいるそうだな」

 

「そんな奴がいたのか。…ま。確かにそう言われたらそうかも知れないな」

 

何かを理解したかのようにフッと笑うブレイク。それに釣られてギルヴァも口角を吊り上げる。

そして地面を蹴り、二人は鉄血人形部隊へと飛び込んだ。また一人、また一人と斬り伏せる中、ブレイクが叫ぶ。

 

「悪魔でも泣くんだって?」

 

「なら…」

 

 

 

 

 

「良い声で泣いてみせろッ!!」

 

「良い声で泣いてみなッ!!」

 

 

 

 

 

 

『ねぇ?私の見間違いかな?その場に居る鉄血の数がもの凄い勢いで減っているんだけど…』

 

「見間違いなんかじゃないわ、指揮官。さっきも報告したけど、あの若い男二人組が派手にかましているわ」

 

指揮官からの通信に答える(FAL)

ナデシコを介して見ているのだろうけど、確かにこの減りように困惑してもおかしくないわ。

それにしても落ちてきたと言い、体が炎に様に輝いている得体の知れない奴といい、今と言い…。

正直何が何なのか分からなくなっていた。周りの皆も何が何なのか分からないといった表情を浮かべている。

それ以前にあの二人何者?生身で鉄血人形部隊を相手しているのだけど…。

黒いコートを着ている男は日本刀を振るい…待って?さっき離れた敵を斬らなかった?

赤いコートを着ている男は身の丈以上はある大剣を軽々と振るっているし…。

もうどうなっているよ…。

 

『て、敵の消失を確認…。そっちは?』

 

「特に問題ないわ。全員無事よ。で、あっちは…」

 

視線をあの男たちへと向ける。

そこで映っていた光景を取り乱す事なく冷静に伝える。

 

「…気絶してるわ」

 

『えっ!?』

 

 

 

その後、指揮官の指示により私達は帰投。ついでにあの男達も連れて戻る事になった。

目立った外傷はなかったみたいだけど…念の為という事で医務室に運ばれていった。

一体彼らは何者なのかしらね…。

 

 

 

暗い。

視界全体に暗闇が広がっている。

だと言うのに暖かさを感じられる。…そうか、目をつむっているのか。

…物音が聞こえる。誰かが居るのか…?それにここは何処なんだ…?

ゆっくりと瞼を上げる。ぼやける視界…そして映ったのはどこかの部屋の天井だった。

 

「…」

 

ゆっくりと体を起こし、周囲を見回す。

医療器具にベット…隣を見ればブレイクがベットの中で眠っていた。

…もしやここはどこかの基地内にある医務室か。当てはまるとすればそれぐらいしかないだろう。

 

―よお、起きたか?

 

蒼…。

 

―だいぶ眠っていたらしいな。

 

どれ位眠っていたのか蒼に尋ねようとするとカーテンが開かれた。

そこに居たのは金髪であどけない少女。パンツスーツに白色のカッターシャツ、そして白衣を身に纏っている。

それにこの気配は…戦術人形か。

 

「あ、起きましたか。具合はどうですか?」

 

「問題ない。…ここは何処か聞いていいだろうか?」

 

「ここですか?ここは…」

 

 

 

 

 

「S09地区P基地です」




次回もコラボ回!。

またこちらからのコラボのお願いを許可して下さった焔薙様。
この場をお借りしてお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます!

では次回に!ノシノシ

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