彼と彼女しかいない店内はとても静かであった。
今回からは埋め合わせ編&ぼのぼので行こうかと。
ギルヴァも大変だったからね、いいよね?
埋め合わせの内容が決まって三日後。内容が決まったのは良いものの、404の中で誰が最後を動くかと言う話になってしまい、埋め合わせの件は先延ばしになり兼ねない状況にあった。何故最後を狙うのかは分からないが…G11と9は先でも構わないらしい。だが最後を狙う45と416との対決が勃発しており、店内は何時もと違い騒々しくなるかと思われた。
そこに一部始終を見ていたブレイクが二人にある提案をしたのだ。
「どうせだ。ここの演習場でも使って、得点を競うなり勝負を付けてきたらどうだ?」
ここで暴れるのは良くないことぐらいは二人は理解している。
ならば演習場で白黒つけるのが良いと判断したのだろう。その提案に乗っかり、二人と勝負の行く末を見届ける為に自分とG11以外の者が店を出ていったのは約数時間前の話だ。
どれ程彼女達はやりあっているのかは分からないが…こちらとしては静かでいい。
ジュークボックスから流れる静かな曲。窓から見える空は青々としていて美しい。
曲に交えて小さく聞こえるG11の寝息。本のページをめくる音。
この世の中が平穏と勘違いしてしまってもおかしくない程にゆっくりとした時間が流れていた。
「…」
「…ZZZ」
ソファーに腰掛けるこちらの膝を枕にしてタオルケットに包まり、静かな寝息を立てながら横になっているG11。
片手で上手く本のページをめくりつつ、空いている手で優しく彼女の頭を撫でる。
こういった事は初めてではない。妹のカエデにせがまれて、何度かやってあげた事がある。
男の膝枕など硬くて眠れないだろうと思っていたが、びっくりする位にあの子はぐっすり眠っていた。
何故そこまでぐっすり眠れるのか聞いた事があったが、カエデに笑って誤魔化して理由を教えてくれなかった。
一度だけであったが、母さんにも膝枕をしてあげた事がある。母さんもびっくりするくらいぐっすり眠っていた。カエデに聞いた様に母さんにもどうしてそこまで眠れるのか聞いてみた所、母さんはこう言っていた。
ギルヴァの膝枕はとても暖かくて、傍にいてくれるだけでとても安心してしまうの、と。
何故カエデがその事を言わなかったのかは今となって分からないが…恐らく母さんと同じ意見だったに違いない。
「…んみゅ…」
「ん…起きたか」
少しだけ昔を思い耽っていたタイミングでG11が目を覚ました。
目は半開きで、まだまだ眠たそうである。
しかし…よく眠る娘だ。初めて会った時も眠たそうにしていたが…もしや彼女は休みの時は一日中寝ていたりするのだろうか?それはそれでどうなのかと思ってしまうが、とやかく言うまい。
「ふあぁ~……あれ?皆はまだ戻ってきてないの?」
「そうらしいな。店を出てからそれなりに経っているがな」
どれ程やりあっているのやらか。
何となくだが…
―おおっと!45選手、一点リード!—
―数え直せ!同点よ!—
…みたいなやり取りをしている様子が容易想像できる。
あまりにも派手になり過ぎる様であれば、直々に止めに行く必要があると思うが…あちらにはフードゥルが居るから安心して良いだろう。
こちらが態々頼まなくても冷静な判断が出来るフードゥルなら任せられる。
「なに読んでるの?」
「小説だ」
「どんな内容?」
「ゾンビの大群が徘徊するショッピングモールでフリージャーナリストの男が無双する話だ」
「おぉ~、ゾンビものかぁ…それって面白い?」
「どうだろうな…」
それにしてもこの主人公、本当に人間か?
素手でゾンビの腹をぶち抜いたり、サマーソルトキックをかましたり…重機関銃を喰らっても生きて居たり…。
正直言って悪魔より恐ろしいのはこの男ではないのか?こいつが死ぬイメージが全く沸かん。
―こいつが居れば魔界も総崩れするかもな?
それはないと思うが…。
「ギルヴァがさ、読んできた本の中で一番面白かったのはなに?」
「一番か…。特にそれは考えた事がなかったな。最近読んだ本で中々に面白いと思ったのはあったな」
「それは?」
「多重人格…いや、多層人格というべきだろうか。それぞれ特徴が異なる人格が7人存在する殺し屋の物語だ」
読んでいて中々に面白い作品とは思った。
登場人物の台詞の言い回しや残る謎など、深く引き込まれる程面白いと感じた。
また自分が持っているレーゾンデートルにも似た銃が登場していたが…もしかしたらレーゾンデートルの製作者はあの小説からヒントを得たのだろうか?
「へぇー…そんな小説があるんだ」
「今度読んでみるか?」
「うーん…いいかなぁ。読んでるとすぐ眠たくなるから」
「そうか」
そこで疑問に思った。
先程までこちらの膝枕で眠っていたG11だが、よく眠れたのだろうか?
それが気になり、起き上がろうとはしない彼女にへと問いかける。
「随分と眠っていたが…男の膝枕などでそこまでぐっすり眠れるのか?」
「どうかなぁ…。男性に膝枕された事ないから」
「つまり俺が初となる訳か」
「うん」
―つまりG11の初めてを奪った訳だな?
言い方というのがあるだろうが。
誤解を招きかねない台詞を言いおってからに…。
こういう時にだけふざけるのは、元が悪魔なのだろう。
だからといってやめろと言うつもりはない。こういうやり取りも嫌いではないのだから。
「で?膝枕はどうだった?」
「うーん…正直言えば硬かった。でも…」
「でも?」
「ギルヴァの傍にいるととても安心するし、それに頭を撫でてくれる手もとても優しかった」
彼女が言った台詞は一部違えどかつて母さんが言っていた事を似ていた。
悪魔になった身なのに、そう思われるとはな。自分では中々に分からんものだな。
そっとG11の頭を撫でる。昔、カエデや母さんの頭を撫でていた時を再現するかのように。
それが心地よかったのか、彼女の瞼が段々と沈み始める。
「ふあぁ~…もっかい寝るねぇ……お休み~…」
そのままG11は再度眠りにつく。
まだ彼女達が帰ってくる様子はない。
…それにこんなにものんびりとした時間を過ごしているのだ。
この時間を堪能しつつ、本を読んでいく。訪れた平穏な時間を彼女達が帰ってくるまで堪能するのだった。
余談であるが45と416との勝負は45の勝利で終わったらしい。
順番としては最後が45。45の前が416…。
つまりは次は9と一日デートという訳である。
という訳で次回は9。
どんな風にしていくかねぇ…
あとギルヴァが読んでいた本は…分かる人は分かるかな?
では次回~ノシノシ