ギルヴァはもう一人しと埋め合わせしなくてはならなかった。
結構飛ばし飛ばしです…許せ(懇願
404と埋め合わせ期間が終了し、一週間が経った。
そしてこの一週間は非常に忙しかった。
まず45との関係について代理人達や404のメンバー、そしてシーナ指揮官にへリアンやクルーガーに報告しなければならなかった。彼女との関係は恋人という枠に収まる訳もなく、もはや嫁といっても過言ではない。
だが自分はグリフィンに属している訳でもなく、協力関係という立場だ。このまま黙っておくのも何かと問題がある為と判断し、報告する事にした。
当然ながら報告には45にも付き添ってもらい、先程挙げた全員に報告した。皆の反応はそれぞれだったが、一番驚いていたのは代理人と416、へリアンの三人だった。
意外にもブレイク、フードゥル、グリフォン、9、G11、シーナ指揮官、クルーガーはさして驚いている様子はなかった。疑問に思い理由を聞けばこの様な答えが返ってきたのだ。
遅かれ早かれ、そうなるとは予想出来ていた、と。
ブレイク達や404の二人は分かる。だがシーナ指揮官やクルーガーまでも予想出来ていた事に、逆にこちらが驚かされた。どうやら45の様子を見れば、言わなくても分かる位だったらしいのだが…。
だが自分はグリフィン属している訳ではないというのに、その事を容認していいのかと問うと、その程度の事くらいこちらがとやかく言うつもりはない。騒がれて厄介なら隠匿すればいいという返答がきた。
それで良いのだろうか、グリフィン…。
ともあれ自分と45との関係は認められたという事になるのだが…これで良いのだろうかと思う事がある。
あとこれは何となく気になったのだが…代理人や416はともかく何故へリアンまで驚いていたのだろうか?
次にブレイクの事をクルーガーに説明する必要があった。
自分と同じ悪魔である事、そして同時に彼もどこかの地区で便利屋を開こうかと考えているとの事。
これに関しては二日も時間を要した。向こうとしてはここS10地区内で支店を開いて欲しいらしい。理由としては激戦区であるS地区で問題の対処に当たってほしいらしく、またこちらが別件で外していて依頼を受けれないという時に支店の方へ依頼する事が可能になるという訳だ。
理由を一通り聞いた俺とブレイク。最初こそは渋っていたが、向こうが店も用意してくれるのを条件でブレイクは納得しS10地区内に留まる形になった。
そしてグリフィン側が用意してくれた店はここからそれなりに離れた位置にあるらしく、ここと同じ様にレンガ造りの三階建て。一人で過ごすには少し大き過ぎる気もするが…まぁ本人はそれで良いと言っていたので問題ないだろう。
彼がここを出るのは今日から二日後に決まった。別れという訳ではないので問題ないだろう。連絡が必要になった場合は端末を用いればいい。
そして今。
もう一人埋め合わせをしなくはならない者と共にS-10地区からS-9地区にへと訪れていた。
S-9地区の小さな商店街のコーヒーショップでその者は売られている品と睨めっこを続けていた。
「成程。たまには違う豆を使ってみるのも良いかも知れませんね」
そう言っているのは代理人だ。
二日前に埋め合わせとして、買い物に付き合ってほしいと言われ彼女の買い物に同行していた。
「普段は別の豆を使っているのか」
「ええ。ですが今回は趣旨を変えて別のを試してみようかと。同じ味だと飽きてしまうかも知れませんので」
「成程」
それにしても本当に代理人と二人っきりで来てしまっているのだが…良いのだろうか。
彼女に埋め合わせを望まれた時には45も居たのでどうしたものかと考えていただが、あろうことか45がそれを許可したのだ。そしてにこやかな笑顔で伝えてきたのだ。
「ギルヴァに愛人増えても大丈夫。だって私が一番だからね~♪」
若干含みある笑顔の様な気もしなくはないが許可が下りたのなら問題ない。
45もこちらへと向けられている代理人と416の好意を気付いている。それを見抜いての発言だったのだろう。
それにだ。代理人用と416用のアミュレットハーツをコートの懐に入れている事もお見通しと言っていい。
只…45は嫉妬深い所がある。ちゃんと構ってやらなければどうなるか分かったものでない。
「これで全部ですね。会計の方、済ませてきます」
「分かった」
今回代理人の買い出しはこれだけではない。
食料もそうだが、バンのガソリンや持っている銃の弾薬等も買い足しておかなくてはならない。
特に代理人が愛用するニーゼル・レーゲンとシルヴァ・バレトに至っては弾自体が特殊だ。簡単に手に入る訳がないのだが…。
「あの店主、本当に何者なんだ…」
そう。何時も世話になっている武器屋の店主があろうことかその二つの弾薬を作り出したのだ。
彼曰く一度見て理解出来たら簡単にできると言っていたが普通に考えて無理である。彼の頭は一体どうなっているだろうか。いっそ武器屋ではなく技術屋でもやればいいのではと思ったのは間違っていない筈だ。
だが弾を得られる様になったのは大きいのでとやかく言う必要はないだろう。
「終わりました。次へ向かいましょう」
「ああ」
会計を済ませた代理人と共に店へを出て、近くに停めてあるバンに乗り込む。
代理人の運転の元、車は走り出すのだった。
S-9地区を後にし、車はS-10地区へと戻る道を辿っていた。
陽はまだ上がっており、自分達が向こうに着いても陽は上がっていると思われる。
辺り周辺に草原が広がり、その上を分断したかの様な一本道を車両が駆け抜ける。
そんな時だった。静かに運転していた代理人が口を開いた。
「45さんとの一夜はどうでしたか?」
「何故それを聞く」
「参考にと思いまして」
「何の参考かは聞かんぞ」
いきなり何を言っているのやらか。
そう思った矢先だった。代理人の雰囲気が変わった様な感じを覚えた。
目だけを動かし、彼女の方へ視線を向けるが表情は変わらぬまま。
「…羨ましいと言えばいいのでしょうか」
先も言った様に表情に変化はない。
だがどこかその表情は悲しそうにしている様にも見えた。
それを皮切りに代理人はぽつぽつと語り始めた。
「私自身こんな感情を覚えてたのは初めてでした。私は貴方の傍に入れればそれでいい。それだけで良いと思っていた。しかし指輪なる物を貴方から貰い、満面の笑みを浮かべている45さんを見て…羨ましいと同時に何か苦しいものを感じたのです」
車の速度が徐々に落ちていき…。
「人形である私です。今の今まで苦しい物を感じた事すらありませんでした。だけど今は…人間でいう心という何かに類似した何かが締め付ける様な苦しさを感じてならないのです」
道の真ん中で停車した。
そして彼女は微笑みながらこちらへと向いた。
「…この苦しさは何なのでしょうか。これが恋の代償だと言うのでしょうか…?」
その瞳から涙なるものを流しながら。
「あら…おかしいですね。まさか私が涙を流すなんて…。すいません、どうやら私はおかしくなったかも知れません」
その微笑みは見て居られなかった。
「代理人」
だからこそ…
「?…何でしょうか」
「バンから降りてあそこに行ってみないか」
その責任を取る時だ。
バンを降りて代理人と共に向かったのは、丘の上に建てられていた小さな教会。
この辺りに教会がある事を知っていた訳ではない。正直偶然と言えた。
もう使われていないのか、屋根の一部が無くなっておりそこから陽の光が差し込む。そしてこれもまた偶然か差し込む光はスポットライトの様に祭壇を照らしている。
隣に並び立つ代理人は不思議そうに教会の内部を見回していた。教会自体初めてなのだろう。自分も教会に入る事は初めてだが、本とかでどの様なものか知っていた事もあって何かが気になるという事はなかった。
「長い事使われていないにしては原型は留めていますね」
「そうだな」
ごく最近に建ったものではない事は分かる。
戦争や鉄血との戦いなどで跡形もなく崩れていてもおかしくない。この様に教会だと認識できる所まで原型が残っている点を考えるとある意味奇跡と言えよう。
「しかし何故ここへ…?」
その問いに答えず、そのまま祭壇の方へと歩き出す。
祭壇で足と止めると、代理人の方へと言葉を出さずに視線だけを向ける。何かを感じ取ったのか代理人は祭壇へと歩き出し、対面する様に自分の前に立つ。
コートの懐からアミュレットハーツを取り出し、そのまま代理人の首へと掛ける。
デザインは45と同じ物。一度見たであろうそれに代理人の目は見開いている。
「これは…」
「…自分を愛してくれている者への贈り物だ。グリフィンでは誓約というものだ」
「っ!」
「…ムードもへったくれもない。だがこれが俺の限界だ。…無くすなよ」
「ギルヴァ…」
歓喜極まったのか涙を浮かべながら、代理人に唇を塞がれる。
短い様で長い様な接吻。代理人の顔がゆっくりと離れる。
「我が愛は貴方に…」
嬉しさから流れる涙。
その笑みは先程のとは違う。
心から喜んでいるものと言っていい。
「私の全てを捧げましょう」
「ギルヴァ…いいえ」
「あ・な・た♪」
45に続き、代理人も嫁としてお迎えです。
ん?夜は無いのかって?…作者にそれは期待したら駄目よ…。
次回は416編ですかねぇ…。
あ、そうそう。わーちゃんがかつて属していた基地案件。恐らくですが悪魔を絡ませます…。コラボ依頼として出すつもりですが当分先になるかもで悪しからず。
…コラボする時って悪魔とか絡ませない方が良いのかなぁ…(ボソッ
では次回ノシノシ