「ほう…」
綺麗な声が響いた声とと共に地上に降り立つ少女を見て、ギルヴァはついぞニヤリと笑った。
S09地区P基地の者だと気付いた彼は、無銘の柄にも手を添える。
―天使の声ってか?にしては随分物騒なもん持ってやがるぜ
(俺達も似た様なものだがな!)
迫りくる悪魔達を一体、また一体を切り裂き後退するギルヴァ。離れた敵に対してはレーゾンデートルを発砲しつつ、両手に持った20mmバルカン砲で悪魔達を蜂の巣へと変えている少女へと背中合わせになりながら背後に立つ。
彼女も彼女で気付いたのか、ちらりとギルヴァへと視線を送りつつ手にも持った重火器を放っていく。
余裕はあるのだが、二人の間で会話が始まる事はない。己の獲物で撃つ、斬る事を続ける。
そこでギルヴァが手にしていたレーゾンデートルが弾切れを起こす。生まれた小さな隙を突く様にヘル=ラスト達が彼へと襲い掛かるが、その瞬間ヘル=ラスト達は頭上から降ってきた無数の何かによって地面へと縫い付けられる。
広がるのは群青色に輝く刀が幾つものヘル=ラスト達の体に刺さっている光景。それはギルヴァが魔力で錬成した幻影刀であり、それを雨の様に敵の頭上から降らせる技「五月雨幻影刀」によるものだった。
先程の暴れっぷりといい突如として魔力で錬成した刀を降らせる技といいギルヴァも持ち得る技を前面に叩き出す。最も彼が全てを叩き出すというのであればそれでこそ
まだまだ減る気配を見せない悪魔達。即座にギルヴァはレーゾンデートルの弾倉を取り出し排莢し、腰に吊り下げた予備弾倉の一つに向かってレーゾンデートルの銃身をぶつけた。
浮かび上がった弾倉。それに合わせてギルヴァはその場で回転。まるで息を合わせたかの様にレーゾンデートルの弾倉に12の弾丸が収まり、回転の勢いを利用し弾倉を元へと戻す。
「これだけとなると銃だけでは退屈か」
―なら背に背負った玩具でも試したらどうだ?
「それもそうだな」
蒼の提案を受け、レーゾンデートルをホルスターへと納めるとギルヴァは背に背負った機械剣 クイーンの柄へと右手を伸ばし、抜剣。重量がある為、振るった瞬間ブォンと響き持ち手のグリップを捻るとクイーンの推進剤噴射機構が作動し始まる。まるでバイクのエンジン音を轟かせ推進剤噴射機構の一段目が解放される。
「…ッ!」
地面を蹴り、正面の敵集団へと接近。持ち手付近のレバーを引き推進剤を噴射させ、それによって加速した刃を叩きつける。が、ギルヴァは振り下ろした瞬間にグリップを限界まで捻った。それは偶然と言え、推進剤噴射機構が一気に三段階全て解放されたのだ。これはマギーが秘密裏に内蔵していたもので、タイミングで良くグリップを限界まで捻る事に起きる機能「Max.Act」と言われる機能である。その存在を知らずにギルヴァはその機能を使い、このクイーンと称された剣の扱い方を理解し始める。
―成程。お姫様は我儘の様だな?
「そのようだな…ッ!!」
三段階まで解放した機構の噴射剤を噴射させるレバーを引くと同時にギルヴァはクイーンを勢いよく上へ持ち上げる。三段階まで解放した事により推進剤が青い炎となって噴き出し、ヘルたちを巻き込みつつ回転しながら斬り上げ、宙へと舞い上がる。その高さは外部迎撃組全員がどこにいるのか分かる程で、偶然にもギルヴァはとある二人を発見する。
(あれは…?)
一人は自分より遥かに年上だと思われる男性。いつの間にかこの戦場に現れており、生身でありながら群がる悪魔を蹴散らしていた。敵ではないと思いつつも彼が何者かと思っていると仮司令塔の装甲車で指示を飛ばしていたシーナから無線が入る。
『ギルヴァさん、聞こえる?』
「ああ、聞こえている。どうした」
『さっき無線が入って、どうやらここの基地の調査を独自行動していた人がこの作戦に途中参加にする事になりました。名前はオサム・アマラキさん。彼にはこのまま内部に突撃させるから!敵と間違えないで!』
「始末する指揮官に投降は意味を成さない事は伝えてあるのか?」
『うん。既に伝えてあるから。指揮官排除組の皆にも連絡済みだから!』
「了解した。こちらでもカバーする」
『お願い!……第三部隊のリロードをカバー!第一部隊援護を!FAL!必要なら榴弾使ってもいいから!!第二部隊!援軍の皆を援護!弾をケチらないで!!相手は悪魔!やり過ぎなんて気にしないでッ!!』
通信越しから勇ましい声が響く。
経験で言えばシーナが一番浅いと言っていいだろう。しかし忘れてはならない事がある。
経験は確かに浅い。だが悪魔案件の指揮なら彼女が経験としては数が上である。人間でもなければ、鉄血人形でもなければ、E.L.I.Dでもない。悪魔という未知数の相手の指揮は彼女がお手の物だった。
『いい?これまでの常識なんて覆す相手…。それでも悪魔達に冥土の土産に教えてやりなさい!私達という名の
『『『『了解ッ!!』』』』
シーナの言葉に鼓舞され、S10基地所属のメンバーから気迫のある返答が返ってくる。
それも相まってかS10基地部隊による悪魔撃破数が格段に上がる。
「ふっ…」
―気付かぬ内に成長しているもんだな?
「ああ」
するとアマラキが内部へと侵入するのがギルヴァの視界の端に映る。そしてすぐさま彼は別の人物が基地の別の入り口から侵入するのを発見する。その者はロングコートを纏い、頭部にはヘルメットにフルフェイスガスマスク…といった風貌。あまりにも怪しいと感じてしまうのだが、悪魔を蹴散らしている所を見る辺り敵ではないと判断し、自身の右左に幻影刀を展開し遠距離ながらその者の援護に入る。射出されたいくつもの幻影刀はその者の背後にいたヘル=プライドを串刺しに針鼠へと変えさせる。
ギルヴァが多少ながら援護に入った事に向こうも彼の方を向くが、言葉が届く距離ではない。またギルヴァは降下しつつであった為、その者の姿を目にしたのはほんの数秒程度。
この舞台に現れた二人が無事でいる事を願いつつ、ギルヴァは地表へと着地。クイーンを背に背負い、現れ始めたヘル=グリード達へと攻撃を開始する。
動きは速いとは言えないが、棺桶で銃弾による攻撃を防ぎ、しまいには撃たれているにも関わらず棺桶でヘル達を召喚する始末。このままでは長期戦となりこちら側が押させるのは目に見えている。またヘルの上位種であるヘル=バンガードも未だにその姿を見せていない。もしこの状況でその上位種が現れたら形勢は逆転する。
「はあああぁ…」
体を回転させて一体のヘル=グリードへと接近し、鋸の様に切り刻むかの様にダメージを与え…
「っでああぁッ!!」
回転の勢いを利用し強烈な踵落としによる蹴り技 月輪脚を叩きつけ、流れる様にヘル=グリードを体を捻る様に蹴り上げつつ宙へと上昇する蹴り技「日輪脚」を繰り出す。宙へと身を投じるギルヴァ。しかしそのまま彼が止まる訳がなく一体のヘル=グリードを宙へと蹴り上げたのは理由がある。
宙で居合の態勢を作るとそのままヘル=グリードを足場にして一気に蹴った。空中という不安定な足場にも関わらず、ロケットかの様な速さでギルヴァは地表のヘル=グリード、ヘル=プライド、ヘル=ラストの集団へと襲い掛かる。
「調子に乗るな」
彼の姿が消える。
その瞬間、悪魔の集団の中であらゆる箇所で空間が歪み、連続して斬撃が奔った。
繰り出される斬撃の嵐。成す術もなく斬撃の嵐に巻き込まれ悪魔達は消失していく。
外部迎撃組もそこで何が起きているのか分からなかった。その技はかつてギルヴァが使った次元斬 絶ではない。
超高速である事は変わりないのだが、これはギルヴァ一人で繰り出している。数秒程度続いた大技、もはや常識とう存在が介在しないそれは終わりをつげ、全てとは言わずとも悪魔達の数はかなり削られるが次か次へと現れる。
そしてそれをやってのけた男はあんな技を放っておきながら、疲弊した様子を見せる事もなく無銘の刀身を鞘へと納刀する。
その姿を追う事は無理に等しく、超高速と同時に次元斬を連発する技…その名も―――
「他愛ない」
―――絶刀
ギルヴァがこれまでに無い位に外で大暴れしている一方で内部ではブレイクがヴァーン・ズィニヒを乗り回してながら派手に暴れていた。外とは違い、爆弾を持った悪魔、ヘル=レイスが出現しており近づけば自爆するという厄介な相手なのだが、遠距離攻撃が効果的とされブレイクもフォルテ&アレグロも用いてヘル=レイスを撃破しながら一体、また一体と悪魔を討っていく。
基地内部では指揮官排除組が動き出しており、人形救出組が行動したら彼は指揮官排除組の援護に向かうつもりでいた。そして基地内部一階の悪魔達の清掃を終えたブレイクは無線機のマイクへと喋りかける。
「待たせたな!404に第四部隊、行くなら今の内だぜ!ワンちゃんにチキン野郎、レディ達のエスコートはしっかりやんな!」
返答を待たずブレイクはヴァーン・ズィニヒを唸らせ、二階へと昇る。二階へと上がったタイミングで、指揮官排除組を見つけるとバイクを降りて駆け出す。
何人かがブレイクが後ろから来ている事に気付いた瞬間、人間離れした跳躍で指揮官排除組の上を飛び越えるとフォルテ&アレグロを構えた。
SMG顔負けレベルの連射で立ちふさがる悪魔達を蜂の巣へと変え、宙で一回転しながらリベリオンの柄を掴む。
勢い良く振り下ろされた反逆の意味を持つ大剣が攻撃を防ごうとしたヘル=プライドを鎌ごと叩き切る。
「悪いが道を開けて貰うぜ。団体客のお通りなんでな!」
そのまま正面にいたヘル=ラストへとリベリオンを突き立て突進。勢い良く放たれた突きに群がるヘル達はまるでボウリングのピンに吹き飛んでいく。その中へと飛び込むと敵を足場にして宙へと飛びあがり、空中で上下反転、そこから体を回転させフブレイクはフォルテ&アレグロによる銃弾の雨を降らせ、蜂の巣へと変えた所に即座に体勢を変えリベリオンに振り下ろし、そこからバットの様に構えた。
刀身が赤い魔力に包まれ、力一杯に振り抜く。
「吹っ飛びな!」
その一撃は吹っ飛びどころか悪魔達は消失するレベルであり、その場で先程まで群がっていた悪魔達は綺麗さっぱりと居なくなっていた。
「はっ!ホームランだな!」
軽々とリベリオンを振るい、背へと収めるとブレイクは指揮官排除組の方へと振り向く。
全員、目を丸くするか表情を引き攣らせている。その事にブレイクはやり過ぎたと思いつつも、この程度普通なんだがなぁとも思った。しかしその事を顔に出す事もなく、余裕綽々と言った態度で話しかける。
「さて道は開いたぜ?このままついていってやりてぇ所だが…ちょいとデートのお誘いがあるんでね。先に行けよ」
親指を立てて後ろへと差すブレイク。その言葉を受け指揮官排除組はブレイクを置いて対象指揮官が居る場所へ駆け出していく。彼女達が行ったのを見届けると彼は誰にもいないにも関わらず、そこに誰かが居る様な様子で口を開いた。
「姿、出せよ。覗きで通報されるぜ?」
暗い廊下の奥からゆらりと何者かが現れる。
片目が妖々しく輝き、弧を描いた何かも輝く。どこからともなく鐘の音が鳴り響き、その者、否、その悪魔を姿を見せる。先程まで相手にしてきたヘル達とは一線超える程にその体軸は大きく、手にしている鎌も大型だった。
黒いローブを纏い、手にした大鎌を軽々回すとブレイクにへと狙いを定め…ヘル=バンガードは彼へと襲い掛かる。
「やっぱりな。あいつらを先に行かせて正解だったぜ」
ホルスターからフォルテ&アレグロを抜き、二丁をくるくると回し構えるブレイク。彼がわざわざ指揮官排除組を先に行かせたのはこの悪魔が隠れていると察知しての行動だった。
あのまま援護に入らなかったら、目の前に悪魔によって最悪の事態となっていたであろう。
口角を吊り上げ、ブレイクはヘル=バンガードへと狙いを定める。そして―――
「サプライズゲストだ!一曲踊ろうぜ?」
―――フォルテ&アレグロがサプライズゲストとの一曲を奏で始めた。
その頃。
シーナ指揮官の元にある二人の戦術人形が訪れていた。
本当であれば基地の方で歓迎会でもしてあげたかったのだが、来て早々戦場に行ってもらう事を謝罪しつつも彼女は命令する。その命令を了承した二人。すると一人がシーナにある頼みをする。
それは一緒に連れてきた家族を預かっていて欲しいとの事だった。その家族とは一匹の子猫。
本来は恩人が連れていた子猫だったのだが、ある事を機に彼女が預かっていたのだ。
「それじゃあ…この子ことお願いしますね」
「うん、任されました。…無理はしないでね」
「ええ。あの人にもう一度会うまで無理はしませんよ。…
その言葉に答える様にニャッと鳴くニャン丸と呼ばれた猫。
出ていく前にもう一度ニャン丸の頭を撫でると彼女はもう一人を連れて、乗ってきたバイクに乗り込む。
アメリカンバイクに類するバイクには後付けでホルスターが取り付けられており、そこにはバレルとストックを切り詰めたウィンチェスターM1887が差し込まれている。
元々は無かった物であるが、バイクでの移動している際に敵と遭遇する事を考慮して、運転する彼女が取り付けたものだ。また彼女はSGの戦術人形ではなく、ARの戦術人形だ。烙印システム外の武器とはいえ、何気なく使っており気付けば使いこなすに至っていた。
「さて…行きましょうか、
「そうですね、
もう一人は喪服の様な服装が特徴だった。
95式の言葉に返答すると、バイクは走り出す。目指すはS11地区後方支援基地、もとい悪魔の巣靴。
「この香りを戦場の隅々まで漂わせますわ」
自重しないうちの二人。
そして何気なく参加組のキャラと接触です。
ブレイクはともかく、ギルヴァはこれまでにない位えげつない技を乱発しています。
というかガチです。どしたんこいつ…(お前がやったんだろうが
次回は…急展開?
出来るだけ早く投稿を頑張りますが…遅れると思うので宜しくお願い致します。
ではノシノシ。