S11地区後方支援基地を完全に破壊する前に、ギルヴァはある探し物をしていた。
大型コラボ作戦のその後です。
最後辺りで大型コラボ作戦に参加してくれた面々の事にシーナが少しだけ語ります。
S11地区後方支援基地。
大規模作戦が終わりをつげ、S10前線基地のシーナを含めた面々は事後処理の為、ここに残っていた。
当然ながらデビルメイクライのメンバーも残っており、その事後処理を手伝っていた。
U05基地から除染剤と火炎放射器をいくつか貰っており、幾つかの班に分かれて、各々が与えられた作業をこなすのだが…それが行われる前にギルヴァを含めた即席で結成された残党狩り部隊が基地の内部に探索に当たっていた。メンバーは、ギルヴァ、AUG、64式自、MG5、M1895の計五名。
そしてギルヴァを省き、この中で内部に突撃した64式自がそっと呟く。
「何もなかった様に嫌な感じが消えてるね…」
乗り込んだ際に、64式自は気味が悪い何かがまとわりついてくる感覚をその身で感じていた。
忘れそうにもないそれは元凶が討たれた事もあってかそれはまるで嘘だったかの様に消えていた。
それを隣で聞いていたM1895が答える。
「ほぼほぼ片付いておるからの。じゃがこうして残党狩り部隊を組んだのも、何が訳があるのじゃろ?ギルヴァよ」
全員の視線が先を行くギルヴァに向けられる。
そう、ほとんど悪魔の気配がないにも関わらず残党狩り部隊が編成されたのはギルヴァがシーナに頼み込んだ事がきっかけだった。呼ばれたメンバーも事情は聞かされておらず、先行して歩く彼の後を追うばかり。これでは時間の無駄だと言いたくなるのだが、そこにMG5が冷静に判断して皆に伝えた。
「もしかしたらあいつは何か感じているかも知れん。私達戦術人形では感じられん何かをな」
現に魔力を感じる事を出来るのは、デビルメイクライのギルヴァとブレイク、そして魔界出身のフードゥルとグリフォン、そしてこの場には居ない後方幕僚のマギーのみ。
また彼が何も無しにこんな事をするとは思えない事もあって、ギルヴァが事情を話すまで彼女達は待つ事にした。
そして今M1895がギルヴァに尋ねたのだ。
「そろそろわしらに理由を聞かせてくれんかの?なにゆえ残党狩り部隊など組んだのじゃ?」
「…そうだな。頃合いか」
そのまま彼は言葉を続ける。
「ここに足を踏み入れてから妙な気配を感じている。悪魔…とも言い切れん、妙な気配をな」
「悪魔とも言い切れん?」
「ああ。魔の気配は感じているが、そこに何かが混じっている。余りにも微々たるものなのか、それが人形のものか、あるいは別のものかはっきりしていないのが現状だ」
ギルヴァも曖昧な気配に少し困惑しつつあったのだが、何となくその正体が何なのか検討つきつつもあった。
(恐らく前者…そしてこの気配は鉄血の人形。それも…ハイエンドモデルのものだが…)
しかしギルヴァは断言できる程の自信はなかった。余りにもその気配が小さ過ぎて、完全に感知できないのだ。
距離が離れているのか、或いはその人形は何らかの理由で眠っているのか。どちらにせよ自分の目で確かめる他ないのは事実だった。
その一方で浮き上がってくる謎にも思考を巡らせていた。
(奴らが守ろうとしたのはここに眠っていた人形?…しかし何故守る必要があった?あの悪魔はともかく、ここの指揮官は人形をガラクタと呼んでいた。…それは鉄血の人形にも当てはまると思うが…)
謎が謎を呼ぶ。
考えていても埒が明かないと感じた彼は、一旦その事を置いておく事にした。
まずは執務室からと判断し、迷う事無くそこへと歩き出す。部隊のメンバーも彼の後を追い、ついていくのだった。
執務室。
悪魔へと変貌した指揮官が空けた大きな壁穴からは季節が季節という事もあってひんやりとした空気が流れ込んでおり、物が散乱した部屋に訪れたギルヴァ達より404小隊が先に訪れていた。
彼女達も、というより小隊長の45がここの構造に何やら引っかかる事があるらしく、ギルヴァ達と同様、シーナに許可を得て残党狩り部隊という名目で探し物をしていた。
その事を聞いたギルヴァは、表情を変える事はないものの不思議そうな声を上げた。
「ここの構造が変だと?」
「ええ。ここを偵察に来た時に取ってきた構造図は頭に入っているから、作戦時に内部に侵入した時はすぐにその違和感に気付けたわ」
「…つまりデータには載っていない部分が存在するという訳か」
「それが前々からか、私達が偵察した後に施した物かは分からないけどね」
「…ふむ」
データ上では存在しない謎の空間に、眠っている鉄血の人形がいるかどうかすら分からない。
だが謎の空間とやらにも興味を示した彼は探し物ついでに45の探し物にも協力する事にした。しかしデータ上に存在しない空間の入口とやらを探すのは困難を極めると言ってもいい。見極める方法としてはそこだけ壁の色が違うとか、妙なスイッチがあるとか…ゲームならではの事を現実で行う事になる。ましてやこの荒れ具合では見つけるのはもっと困難を極める。現にギルヴァと彼女達がそれを探し始めた結果、何の成果すら得られない状況が続いていた。途中でフードゥルが合流しつつも執務室から存在する部屋の隅々まで調べ尽くしたにも関わらず、謎の空間に繋がる入り口は見つからない。
メンバーが半分諦め状態になる中、とある部屋にて静かに地面を見つめるギルヴァ。その鄰でフードゥルは彼の考えに気付いたのか声をかける。
「主よ」
「ああ。いい加減面倒になってきた。…頼めるか」
「承知」
光に包まれ姿を変えるフードゥル。かつて見せた魔具へと姿を変え、籠手と具足がギルヴァの手脚に装着される。
一体何をする気なのかと、見守るメンバー。そして地面に向けて腕を引き上げつつ構えの態勢を取った瞬間、今から彼が何をする気なのか察した全員は急いで部屋へと飛び出し始めた。
「正気か!?」
「正気じゃのう。めんどくさりおってからに」
「まぁ…速いと言われたら…」
「これが速いですね」
「一番手っ取り早いよね~」
「だねー♪」
「あんたも動く!」
「グエッ」
バタバタと部屋を飛び出していく彼女達。
その間にもギルヴァはフードゥルから発せられる雷を溜め始める。段々とそれは激しくなり、気付けば風まで吹く始末。物が風によって舞い上がる中、冷静にただ一転に狙いを絞る。
そして発せられる雷が最大まで放たれた瞬間…
「フッ!」
雷を纏い、落雷を落とすかのように勢い良く地面に向かって拳が叩きつけられた。
その衝撃は破砕音と共に地面に亀裂が入り、その直後に轟音と共に地面が崩落した。その音と衝撃は外で待機していたシーナ達の所まで届き、のんびりコーヒーを飲んでいた彼女はその音についびっくりし、こぼしそうになるが何とか抑え、即座に無線で大声で話しかける。
「い、今のなに!?何が起きたの!?」
『落ち着いてくれ、指揮官。…どうやら彼が地面を思い切り殴って叩き割ったみたいでな』
「え、えぇ…?」
シーナの無線に答えたのはMG5だった。
彼女は起きた事をありのまま伝え、それを聞いたシーナは思わず表情が引き攣らせた。
後でやる事をやったら、ここは爆破する予定なのだからいっか…、と軽く考える事を放棄しかける彼女だった。
その頃、地面を叩き割り謎の空間に降り立ったギルヴァは周りを見回していた。彼の視界に映るのは、大型トレーラーの荷台に未完成のまま放棄されている幾多の兵器が積まれており、中には魔具のようなものまであった。しまいには大型機動兵器らしきものまで積まれているのだが彼が気にしていたのは、人一人が入るには十分な大きさの鉄の棺桶の中で眠る一体のハイエンドモデルの存在。
「やはりか…」
―一発で目覚める目覚まし時計を鳴らしたというのに、目を覚ましてないとはな。それにこの眠り姫…
「ああ」
未だに眠り続ける人形をじっと見つめるギルヴァ。
実際に見て確信が得られたのか、そっと口を開く。
「俺やブレイクみたいなその身に悪魔の血を流す者、純粋に魔界生まれの者…それを反する様に魔力を持った人形とはな。人形としての気配が微々たるものだったのは、眠っていた事が原因か。魔力が薄っすらなのも、その事が原因か。…どうやらあの魔工職人、この人形に色々やってたみたいだな」
―あの虫みたいな姿でか?…想像してたくもねぇな
「同感だ。…目覚める兆候がないならこちらとしても助かる。こいつはこちらで引き取るべきだろう。鉄血に、ましてや他の誰かに取られるのは不味い。…耐えられるかは知らんが最悪魔力による暴走もあり得るのでな」
―まぁそんな事されたら鉄血も困るだろうしな。それにマギーへのお土産も出来た
「…そうだな」
同意しつつもギルヴァはもう一度大型トレーラーの方を見る。
荷台にはマギーが喜ぶであろう物が大量に積まれている。それに加え、
後に地上へと上がる隠し通路が発見され、鉄血のハイエンドモデルも持ち出される事となる。その事に関して色々議論となるのだが、暴れ出す様であれば自分が斬り捨てるとギルヴァが発言した為、事なきを得るのだが、その直後に代理人からある事を告げられる。
それは―――
今回発見されたハイエンドモデルは自分ですら見た事がない、と。
この後大型作戦の事後処理を終えた後、持ち帰った物はマギーへと渡される事になる。
その時に限って、あのマギー・ハリスンがハイテンションになっていたのは言うまでもない。
―ちょっとした余談―
発見されたものを地下から地上へと運ぶ運搬作業が交代制で行われていた時の事。
休憩していたシーナの隣に休憩をしに来たギルヴァが立った。シーナは彼にお疲れ、と一言かけふと彼女は今回の作戦で思った事を話し始めた。
「参加してくれた人達、皆凄い人達ばっかりだったなぁ~…。凄すぎてちょっぴり自信なくしちゃったし、まだまだだなぁ、私…って思っちゃった」
「…」
語り始めたシーナに対し、ギルヴァは返答はしないものの黙って聞き役に徹する事にした。
「S09地区P基地やU05基地とか私達の所の倍の戦力を持ってたし、それに加えて部隊の実力も凄く高い。ベテランというのはこういう事を言うのかもね。義勇兵として来てくれたM16A4さん、M14さん、そして途中参加だったけれどオサム・アマラキさんも凄かった。悪魔を初めて見るのに勇敢に立ち向かって…作戦に協力してくれた」
「…」
「H&R社のリホ・ワイルダーさんは…まぁ裏で何かしてたけど…」
「けど?」
「私は信じているから、あの人を。だって最初の共同作戦の時、協力してくれたから」
それ以外の理由がいる?と言わんばかりの目線をギルヴァへと向けるシーナ。
軽くため息を吐きつつもギルヴァは小さく笑みを浮かべた。シーナ・ナギサという女性にはかなわない、と。
「…それに運び屋さんとイエスマンさんは…えっと……あはは…」
苦笑いを浮かべるシーナ。
何か直感的な所で思う所があるのか、それ以上の事は言わなかった。
流石にこのままでは不味いと思ったのか彼女は別の話題へと切り替える事にした。
「今思ったんだけど…」
「ん?」
「今回協力してくれた面々がさ、ギルヴァさんとブレイクさん相手に模擬戦したらどうなるんだろう?」
「…ほう」
そう小さく漏らしたギルヴァの雰囲気が変わる。
彼とて戦闘マニアという訳でない。ただ実力もある者達と模擬戦をするのは悪くないと感じたからだ。
「…少しは面白そうだな」
最もそれは実現する事は難しいだろう。
何故なら隣で立っていたシーナが何であろうと実現させないと決心していたからだ。
しかしその決心の中で、彼女はある事を気に掛けていた。
(アップルパイ…皆美味しく食べてくれたかなぁ…?)
運び屋にイエスマン…許せ…(焼き土下座
因みに模擬戦が実現したら、ブレイクは絶対に挑発を入れる。ギルヴァに至っては幻魔人化、幻影刀、次元斬を出す事は無くてもエアトリックからの接近戦をやらかすと思う。
さて次回から暫くは謎の鉄血のハイエンドモデル関連で行くぞ。
マギーが盛大にやらかしにかかるぜ…
ではではノシ