Devils front line   作:白黒モンブラン

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大規模作戦のその後…。
ギルヴァ達はいつもの日常へ。
そして発見された謎のハイエンドモデルの調査に代理人とマギー、そして95式が動いていた。


Act58 Unnamed doll

S11地区での作戦が終了し、無事事後処理も終えたその後…。

発見された謎の鉄血のハイエンドモデルに関してはマギーと代理人の二人により調査が始められる事となり、結果が伝えられるまで時間を要する事もあり、自分達はいつも通りの日常へと戻っていた。とは言え何もなかった訳ではない。まず一つ目はブレイクがここを離れ便利屋「Devil May Cry S10地区第一支店」へ移動した事だ。本来であればもっと早く移動する予定だったのだが、大規模作戦もあってその予定が後回しになっていた。そして時間が取れた事もあり、彼は第一支店の方へ移動していったのだ。

とはいえここと第一支店との距離はさしてない。こちらが基地に隣接しているに対し、第一支店は基地から離れ、町の方へと移動したぐらいで行こうと思えばいつでも向かう事が出来る距離だ。

それにあいつもあいつで便利屋を開くつもりでいたので、それが叶ったのは良い事だと思うべきだろう。

そしてここ便利屋…というよりもS10地区前線基地に新たな戦術人形達が配属された。とは言っても以前から配属予定だった95式、AUGの二人加え、元S11地区後方支援基地所属のGr MG4が属する事となった。またS11地区後方支援基地に所属していた他の戦術人形達の処遇に関しては後日指揮官の元に連絡されるそうだ。

それとは別に前線基地に関わらずS10地区前線基地はヴァルハラ(楽園)だと戦術人形達の間では少しばかり噂になっているらしい。その理由としては細かくは知らないが所謂"黒"と称される基地にて指揮官に酷い扱いを受け、ここを属する事となった戦術人形達がそう噂しているのだとか。確かに黒に属していた時と比べればここは楽園とも言えるだろう。聞いた話ではここの属する戦術人形達の三分の一は元"黒"に属していた経緯があるそうだ。その中にはあのFALもその一人だったらしい。ここに所属する事になったのも指揮官の悪行がグリフィンによって暴かれた事により解放され、のちにまだ発足して短い此処に戦力補充という意味で配属されたというらしい。

もっとこれは聞いた話に過ぎない。間違いはないと思うが、だからといって事の顛末を本人に聞こうとは更々ない。

ブレイクの移動、新たに配属された人形達、それでもここは変わらない日常を過ごす。現にここデビルメイクライには大規模作戦以降依頼が舞い込む事がなく、のんびりとした時間を過ごしていた。

 

「~♪~♪」

 

膝に座り、こちらが読んでいる本を一緒に読んでいる45の鼻歌を聴きながら次のページへとめくる。

9はニャン丸とグリフォンと戯れ、416は読書、G11に至っては体を丸めて休んでいるフードゥルの背に捕まり、ふさふさの毛並みに包まれがら眠りについていた。背中に乗られてもさして苦に感じてもおらず、それどころか自身の尻尾を抱き枕代わりに眠っているG11に優しく被せるフードゥル。

ちなみにだが95式は代理人とマギーの手伝いに赴いている。恐らく解析に没頭する余りに食事面が疎かになるのではないかと感じたのだろう。料理も出来る事もあって、手伝いに行った。

 

「にしてもあの代理人ですら見た事のないハイエンドモデルだなんてね」

 

本の内容も中盤に差し掛かった時、45が発見された謎のハイエンドモデルの事について言及した。

立場状、鉄血の中での代理人の地位は極めて高い事ぐらい考えなくても分かる。故に高度な権限も有していたに違いない。それにも関わらず、代理人が見た事がないという事は誰もが不思議に思っても可笑しくないだろう。

 

「鉄血の新型かしら」

 

そのセリフが聞こえていたのか読んでいた本を閉じ、こちらへと歩み寄り書斎の上に腰掛ける416。

その問いについて45は本の内容を読みながら、答えた。

 

「さぁ?でもあの代理人が知らないとなればそうじゃない?」

 

確かにそう考えるのが妥当と考えていいだろう。

しかしだ。新型を奪われる様なヘマなど鉄血がするだろうか…。

 

「どうかな」

 

「ギルヴァ?」

 

異議を申し立てた事により45と416の視線がこちらへと向けられる。

その理由は?と二人の目が問いかけてくる。

 

「普通であれば新型と考えるのが妥当だろう。…だが、その逆という事もあり得なくもない」

 

「…つまり破棄された?」

 

「破棄されたのであれば代理人も覚えているだろう。俺が言いたいのは計画だけで終わったハイエンドモデル、という事だ」

 

「ペーパープランってやつね。…もしそれだけ終わったのなら、どうして製造されているのかしら?」

 

「さあな…。それは向こうの調査が終わるまで待つしかあるまい」

 

ここで考えた所で只の予想でしかない。調査結果報告が来るまで待つしかない。

それに今日は休みだ。本を読み終えたらカフェでも向かうとしよう。

 

 

その頃…。

 

「ふぅ…中々に進みませんね」

 

基地内部、仮調査室という名の第二格納庫でPCを操作していたマギーがそう呟いた。

調査を開始して彼是三時間経過しており、持ち出された武装、魔具等についてはある一定の情報は得られたのだが、謎のハイエンドモデルについては現状めぼしい情報は得られずにいた。

椅子の背凭れつつ大きく背伸びずるマギーの元に代理人が現れそっと淹れたての紅茶が入ったカップを机の上に置いた。

 

「ああ、すいません」

 

「いえ。…少し休憩しましょうか」

 

「そうですね。95式も少し休憩しましょう。代理人さんが美味しい紅茶淹れてくれましたよ」

 

部屋の奥の方で情報を得られた武器、魔具を仮ウエポンラックにへと運搬、整理をしていた95式。マギーに呼ばれると分かりました、と答え作業を中断して、二人の元へと向かった。

ここが格納庫という事もあり、部屋自体はかなりの広さがある。その広いスペースを利用し休憩スペースも設けている。とは言っても簡単な机と椅子が置かれているぐらいだが、無いよりかは十分と言えた。

三人はそれぞれの椅子に腰掛けると淹れたての紅茶を一口飲み、ほっと息を付いた。

 

「にしても魔具でしたか?それなりにありましたが…これだけの数をどうやって揃えたのでしょうか?」

 

「大体は…いえ、ほとんど盗品ですよ、95式」

 

「えっ…盗品!?」

 

魔具のほとんどが盗品だとマギーから聞かされた95式は驚きの声を上げた。

ギルヴァと共にアグリットを対峙した時に、本人自ら魔工職人だと名乗っていたので彼女はここにある魔具のほとんどがあの者によるものだと思い込んでいた。

それもその筈、軽く10以上はあるであろう魔具のほとんどが盗品だと誰も思わないだろう。そしてマギーから驚きの発言が飛び出る。

 

「ちなみに製作者は私ですけどね」

 

「「えっ!?」」

 

何気なしに飛び出た発言に、近くで聞いていた代理人も95式と共に驚きの声を上げた。

魔具のほとんどが盗品で、その魔具を作ったのが目の前でのんきに紅茶を飲んでいる魔工職人。

管理体制があまりにもザル過ぎませんか?と内心思う二人だが、それを知ってか知らずか補足を入れる様にマギーはある事を伝える。

 

「大丈夫。例え盗まれても悪用されない様に魔術を施してありますので。本人がその術式を解かない限り、使用も分解も出来ない様に施してありますから」

 

「いや…笑顔で言われても…」

 

95式の台詞に頷く代理人。あはは…と苦笑を浮かべるマギー。

すると彼女はこの部屋を大きく陣取っているある物へと視線を向けた。それが気になったのか代理人がマギーへと声をかける。

 

「どうかされましたか?」

 

「まさかとは思っていましたが…リヴァイアサンを未完成とはいえここまで持って行ったとは、と思いましてね」

 

「リヴァイアサン…?もしかしてあの大型機動兵器の事ですか?」

 

「はい。こちらの世界で言うと対拠点用重装型高機動戦略兵器…それがリヴァイアサンです。設計だけはしていたのですが、結局は作らず仕舞い。まさかあれの設計図を盗まれていたとは思いもしませんでした」

 

(そういうのはちゃんと厳重管理しておくべきなのでは…)

 

傍で聞いていた95式の内心で呟いた意見は最もである。

寧ろリヴァイアサンと言われる大型機動兵器が敵として出てこなかっただけマシと言えよう。

もし完成しており敵の手で運用されていたのであれば、以前の作戦は長期に及んでいたであろう。

 

「あっちに居た時は周りからあれを作れ、これを作れ…無理難題な注文を押し付ける輩ばっかりでしたから…。ある意味自暴自棄になっていたんでしょうね。自分の作った作品ですら守れない様であれば魔工職人として失格です」

 

人間界に来てからは作った作品の管理はちゃんとしているんですどね、と言いながら紅茶に口を付けるマギー。

彼女にとって魔界は少し息苦しい時があったのだろう。逆にこの人間界は生きやすいのかも知れない。好きなように作品を作って、たまに注文を受けて生きていくのが彼女にとってはあっているのだから。

そんな姿のマギーを見ながら、ある事を思い出したのか代理人が手に持っていたタブレット端末を操作し、机の中央に置いた。画面には種別、使用武器等が記載されており、マギーも95式も興味深そうにそれへと覗き込む。

 

「全てではありませんが、彼女の事について一部だけ分かりました」

 

「これって…私が考える武器やら魔具以上にぶっ飛んでません?」

 

「どちらも同じかと」

 

迷う事無く代理人に一蹴されるマギー。

同じかぁ、と軽く項垂れる彼女の姿に苦笑しながらも95式がタブレット端末の画面に映し出されているそれを見て、思った事を口にした。

 

「なんていうか…凄いですね。全分野を一体に詰め込んだ様な…」

 

「はい。私もそういう風に感じました。まるでオールラウンダーを目指したかの様で…」

 

「これとかどうなっているんです…?こんな重装備…幾らハイエンドモデルとは言え不可でしょう?」

 

95式が指さしたのは、謎のハイエンドモデル用に設計された武装欄の一つ。

六銃身のガトリングガンを連装化した物を二梃、両肩には前後右左上に発射口が存在し、そこから無数のミサイルが発射される武器コンテナ、両脚部用のミサイルコンテナがあり、その側面もランチャーポッドが備え付けられている。また重量による機動力低下を防ぐ為か無限軌道ユニットまで備わっている。あまりの重武装っぷりに何と戦うつもりだと言いたくなる様な武装が謎のハイエンドモデル用に設計されていた。

 

「ええ。幾らハイエンドモデルでもこんな重装備は無理です。ですが彼女はそれが装備できるようになっている」

 

そして、と彼女は言葉を続ける。

 

「これらの武装は専用武装の一つに過ぎない…他にも専用武装があると考えられます。そしてここからは私の考察ですが…」

 

「何ですか?」

 

「彼女は計画だけ終わってしまった存在。その足で立つ事も許されず、名を与えられる事すら許されない…」

 

代理人は静かに目を伏せて、そして告げる。

 

名無しの人形(Unnamed doll)

 

だが謎は残る。

存在も名前も与えられる事すら許されなかった彼女が何故体を得たのか。

それが明らかになるにはまだまだ時間が要するのだった。

 

 

「お疲れ様ー」

 

休憩を終え、再び作業を再開した三人の元にシーナが尋ねてくる。

執務を終えたのか、お手製の焼きたてのクッキーを持参しており、甘い香りが漂う。

訪れた彼女にマギーが迎える。

 

「ああ、指揮官。お疲れ様です。おや、クッキーですか?」

 

「うん♪良かったらと思ってね。もしかして休憩し終えたばっかりだった?」

 

「つい先程。ですが有難くいただきますよ」

 

「小腹がすいた時に食べてね」

 

焼き立てのクッキーが入ったバスケットをマギーに渡すと、シーナは武器、魔具の運搬をしている95式の方へ向かった。どうやら魔具というのが気になるのか、興味深そうに仮ウエポンラックに立て掛けられている魔具を見つめていた。そんな彼女の姿を見て微笑みがらも95式が隣に並び立つ。

 

「気になりますか?」

 

「うん、魔具というはあまり知らないからね。使う事はないと思うけど…一目見ておこうかなぁって思って」

 

「そうでしたか。私も魔具に関しては全く分かりませんが…色々ありますよねぇ…」

 

「だよねぇ…。これなんか凄そうに見るよ」

 

「少し禍々しいですけどね。…でも何故薔薇なんて咥えているでしょうか…?」

 

「さ、さぁ…?」

 

二人が見つけたのは髑髏が薔薇を咥え、まるで羽の様な何かがある魔具。

一体何のか分からない二人にマギーに彼女達に近寄り、その魔具を説明する。

 

「それは爆発する剣を無限に生み出す装置ですよ」

 

「「えっ…」」

 

「その名も…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルシフェル」




という訳でS10地区で「デビルメイクライ 第一支店」を開店。店主はブレイクが担当。
そして今後出るであろう大型機動兵器 リヴァイアサンと謎のハイエンドモデル用の専用武装の一つを出しました。

リヴァイアサンのイメージは某機動戦士語る事のA装備。
今回出てきた謎のハイエンドモデル用の専用武装のイメージは…まぁ分かるかな?(オリジナル設定ぶっこんでいるけど

そして最後に出てきた魔具…。誰が使うかなんて分かるだろ?

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