Devils front line   作:白黒モンブラン

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タイトルに星マークがついている通り今回はoldsnake様作「破壊の嵐を巻き起こせ!」とのコラボです!

UMP45からシーナへともたらされた、とある情報。
それは「H&R社本部制圧作戦」というものだった。
不審に思ったシーナは便利屋であるギルヴァに”様子見”を依頼する。


Act62-Extra Calamity Ⅰ

ノーネイムがS10地区前線基地に属する事となった後の事。

少しだけ溜まっていた執務の処理をしていたシーナの元に404小隊のUMP45が執務室に尋ねてきた。

いつもならデビルメイクライでギルヴァにくっついている彼女。にも関わらずここへ来た事に不思議に思いながらもシーナは入室の許可を出し、45が室内へと入ってくる。

 

「さっきぶりね、指揮官。今良いかしら?」

 

「良いよ。何かあったの?」

 

「あったと言えばあったわね。まずはこれを見てくれるかしら?」

 

そう言って45は手に持っていたタブレット端末をシーナへ手渡す。

それを受け取り、画面に記されている内容の一文を見て、シーナの表情が変わる。

 

「H&R社本部に対して制圧作戦を展開?…どういう事?」

 

H&R社は二度にわたり、作戦に参加してくれた事のある会社だ。

S11地区後方支援基地を舞台に行われた大規模作戦「operation End of nightmare」では社長であるリホ・ワイルダーはこっそりと何かしていたのだが、それに関してはシーナはあまりに気にしてはいない。ましてやリホ・ワイルダーが鉄血のハイエンドモデルだという事を知っている訳ではない。

だが二度に渡り作戦に参加してくれた事にシーナはある一定の信頼を寄せていた。

 

(喋りは上手で、余り内面を見せない人だけど…。でもあの人はあの人なりに何かを抱えている。それが何なのかは私には分からない。でも…この作戦は納得が行かない)

 

「指揮官はS010地区を知っている?」

 

「S010地区…確か崩壊液、核による汚染による影響がないとされる奇跡の地区だった筈。その重要性の高さから今でも鉄血とグリフィンとの戦いは激化している地区…だよね?」

 

「ええ。そしてH&R社本社はその地区の山岳地帯にあるの。どうやらH&R社が山岳地帯の坑道一帯を不法に占領しているとグリフィン側が知ったらしくて。それで立ち退き交渉したそうよ」

 

「でも向こうは拒否し徹底抗戦を選んだ。だから不正企業と認定して制圧する事になった、と?」

 

「正解♪」

 

それを聞き、シーナは静かに目を伏せて指を顎に当て、思考を巡らせ始める。

 

(…向こうが不正に占領していたとして、幾ら何でもグリフィンの対応が遅すぎる。初めて向こうがこちらの作戦を参加してくれた時もH&R社はあった。だとするのであれば……)

 

「…おかしいわね」

 

小さく呟き、そっと下ろしていた瞼を上げるシーナ。そしてスッと表情が目つきが変わる。

幾ら自分がグリフィンの人間だとしてもこの作戦に対して不信感を抱かざるおえない。

その一方でシーナの様子を見ながら45は小さく笑みを浮かべた。

 

(初めて会った時は少し頼りなかったけど……ホント良い表情する様になったわね)

 

「それで?どうする気かしら、指揮官。借りがあるとは言え、私達が動けば後々が面倒よ?」

 

「分かってる。流石に私達は動けない。でもこういう時に動いてくれそうな人、いるでしょ?」

 

そのセリフを聞いて、45はハッとした表情を浮かべる。

 

「だからといって味方してきてと言う訳じゃない。飽くまでも様子見を”依頼”するだけだから」

 

 

 

 

 

「成程」

 

便利屋「デビルメイクライ」の店内で、椅子に腰かけて本を読んでいたギルヴァの元に尋ねてきたシーナからの依頼を聞いて、彼は小さく頷いた。読んでいた本を机の隅に追いやり、椅子から立ち上がる。

 

「確かに今更過ぎる作戦だな。普通であればもっと早く行動していてもおかしくない」

 

「うん。今回は私個人としての依頼として受けて欲しいの。依頼内容はS010地区山岳地帯にて行われているH&R社本部制圧作戦の様子見。条件としてはグリフィン側との戦闘を出来るだけ避けて欲しい事。万が一戦闘になった場合、その場から逃げる事を念頭に置いて欲しいかな」

 

「向こうが追撃してくる様であれば?」

 

「それでも逃げて。…ギルヴァさんなら逃げられると思うけどな」

 

可愛らしく首を横へと傾けつつ笑みを浮かべるシーナ。

人間では不可能な動きを可能とするギルヴァを知っているからこそのセリフ。瞬間移動技「エアトリック」など平然とやってのけるのだから、そのセリフは間違ってはいなかった。

 

「期待してくれるな…。取り敢えず依頼は受けよう。今回は俺だけで…」

 

「私も同行していいか、父よ」

 

「む…」

 

店内で代理人が淹れた紅茶を飲みながらシーナの話を聞いていたノーネイムがギルヴァに同行許可を求めてきた。

先程の服装とは違い、代理人から貰った白のロングコートを羽織り、中着に黒のシャツを着こみ、白の長ズボンとロングブーツを履いていた。お洒落なのか、頭には水色のヘアピンを付けている。

 

「父も分かっているだろうが、私もその作戦に疑問を感じている。主犯格が前線に出てくるかどうかは分からんが、前線に出てくるのであれば証拠を押さえておく必要があるだろう」

 

「…そしてそれを匿名でグリフィンに送りつけるという訳か」

 

「ああ」

 

「ふむ…」

 

指に顎を当て考える仕草を作るギルヴァ。

そして数秒後には自身の中で考えがまとまったのか、その態勢は解かれる。

 

「良いだろう。ただし依頼人の要望通り、グリフィン側との戦闘は避けろ。良いな?」

 

「ああ。了解した」

 

ここで話を聞いていた代理人やUMP45もついて行き兼ねないのだが、依頼内容を鑑みるに極力少人数で動くのがベストだと判断。それもあって二人は敢えて参加を名乗り出る事はしなかった。

だが自分らの娘が依頼に赴くのに何もしないなど母とは言えない。ノーネイムの為にと、動き出した二人の行動は迅速だった。

 

「これらを貸しておきます。後で返す様に」

 

「これは…車のキー?こっちは母さんが愛用しているシルヴァ・バレト?」

 

「S10地区からS010地区までそう遠くはありませんが、徒歩で向かうにしては少し厳しいかと。ですので車で移動した後に、山岳地帯近くまで来たら本部近くを目指して歩くと良いでしょう。それとシルヴァ・バレトは念の為です」

 

「分かった。ありがとう、母さん」

 

「娘の為です、これ位は当然ですよ」

 

二人のやり取りを見ていたギルヴァはノーネイムに礼を言われてクールに振る舞いつつも、にやけそうなのを必死にこらえている代理人を見て内心呟く。

 

(いつか子煩悩になりそうだな…)

 

―もうなってんじゃね?

 

(かも知れんな)

 

「はい、これ。念の為渡しておくわ」

 

「ありがとう。…発煙手榴弾か」

 

「飽くまで様子見だけだから必要ないかもだけどね。でも無いよりかはマシでしょ?」

 

「そうだな。…感謝する、45母さん」

 

「ふふん♪どうも致しまして」

 

二人の母から渡された物を受け取るノーネイム。その様子をシーナは優しそうな笑みを浮かべながら眺め、その一方でギルヴァは準備を始める。愛刀の無銘と念の為にとクイーンをバンのウエポンラックへと収納。

そして準備が整った所で、ノーネイムの運転の元、二人はS010地区山岳地帯へと目指すのだった。

 

 

 

 

S010地区山岳地帯付近まで来た便利屋「デビルメイクライ」のギルヴァとノーネイム。

バンは山岳地帯から少し離れた位置に偶然にも見つけた古びた倉庫内に停めており、二人は車両から降りて徒歩でH&R社本部へと目指していた。

姿を見られる事に懸念を示したギルヴァの発案の元、彼とノーネイムは全身を隠すようにローブを纏い、険しい山道を一歩ずつ足を進めていた。

ローブ姿では確認できないが、二人共武装はしている。ギルヴァはいつもの武装一式を、そしてノーネイムは代理人から借りたシルヴァ・バレトを肩に掛け、腰には45から貰った発煙手榴弾を一つだけ吊り下げている。

そして背にはギルヴァが持ってきていたクイーンを背負っていた。

 

「まだ始まってはいないようだな」

 

「そうみたいだな。…だがグリフィンのヘリは先程から何機か見かけたが」

 

ノーネイムが言及した様に、ギルヴァもグリフィンのヘリが何機か飛び去っていくの目撃している。

当然ながらそのヘリが向かう先はH&R社本部だと言う事はギルヴァもノーネイムも分かっていた。

 

「父よ。H&R社の社長はどういう人物なんだ?」

 

「過去に二度、作戦に参加してくれた女社長だ。色々やっている様だが詳しくは知らん。ただ分かる事は一つ」

 

「それは?」

 

「H&R社社長、リホ・ワイルダーはお前と同じ鉄血のハイエンドモデルだという事だ」

 

「! それは本当か」

 

「この身になってからは戦術人形と鉄血人形の気配の分別は付く。奴と対面した時、すぐにあの者の正体に気付く事が出来た」

 

(悪魔を持ち帰ろうとしていた…それに関しては言う必要はないか)

 

疲れを見せる事無く、二人はずんずんと山道を歩いていく。そして数分後にはH&R社本部近くまで来た二人。

姿を見られぬ様に隠れながらも全体が見渡せる場所まで移動し、そこへ着いた時にはギルヴァの隣で立っていたノーネイムは目を丸くした。彼女の目に映るはH&R社本部制圧作戦に参加する為に集まった相当規模のグリフィンの戦術人形達。

 

「これほどとは…」

 

「H&R社本部は確か坑道一帯を利用しているとナギサ指揮官から聞いた。…戦力としてはグリフィンが上だが、坑道自体は決して広いとは言えん。恐らく無数の罠が仕掛けられていると見ていいだろう」

 

「まさか…チマチマと戦力を送り込むというつもりか?」

 

「どうだろうな。…戦力を送り込めば勝てると思っているのか。或いはそれ以外の理由があるのか」

 

(さて…この状況。お前はどうするつもりだ?リホ・ワイルダー)

 

聞こえる筈もないにも関わらず、心の内でH&R社本部で籠城しているリホ・ワイルダーへと言葉を投げかけるギルヴァ。そのまま彼は近くにあった岩に腰掛け、依頼の内容通りに作戦の様子身を徹する。

ノーネイムも同じ様にギルヴァの隣に腰掛け、彼と共に様子見に徹した。

刻々と作戦開始時間が迫る中、ギルヴァとノーネイムは静かに状況を見守るのだった。




さっそくお母さんムーヴをかます代理人と45姉。

そしてうちからはギルヴァとノーネイムが出ます。
作戦に参加する訳ではなく、飽くまでも様子見だけ。

なのでコラボ参加している面々はうちらを見つけてもいいからね!

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