Devils front line   作:白黒モンブラン

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クリスマスは過ぎ、マギーは職人としての仕事をしていた。
そこには意外な事にグリフォンが訪れていた。






他の基地にはなくて、けどこの基地だけにしかないものを出します。
故にここだけの、なんですよ。


Act67 Only here

クリスマスは過ぎ、今年も残りわずかとなったがここS10地区前線基地のやる事は変わらない。

基地の第二格納庫ではマギーが空いた時間を利用して、大型機動兵器 リヴァイアサンの組み立て作業を行っていた。そして第二格納庫には珍しく、グリフォンが訪れていた。

マギーが作業している一方でグリフォンは羽を羽ばたかせながら回収されたいくつもの魔具を眺めていた。

それぞれ異なった特徴、形を有する魔具の数々。それらの殆どがマギー・ハリスンの手によって作られたものばかり。よくもまぁこんなもの思い付くよなぁ、とグリフォンは思った。

事実マギー・ハリスンが手掛けた作品はどれも似た様な特徴がなかったりする。形は似ていれど、特徴は全て異なっていた。雷撃を放つものもあれば、火炎を放つものもある。中には爆発する剣を無限に生み出す装置もあったりする。何処からそんなアイディアが思い付くんだろうかとグリフォンは不思議で仕方なかった。

マギー・ハリスンによって作られた魔具達を見ていく中で彼はある物を発見する。

 

「こいつは…」

 

白く染まりし持ち手、白銀の刀身。施された装飾。その姿、形は日本刀と見て取れるのだが、その刀身の長さはギルヴァが持つ愛剣「無銘」以上の長さを誇っており、種別上それは太刀と言えるものだった。

 

「こんなもん…誰が扱えんだろうなぁ」

 

流石に戦術人形が扱うには無理があると言えた。

ギルヴァやブレイク、またはノーネイムならば扱えると思われるのだが、彼らには愛用する武器が、そして彼女には専用武装がある時点でこの太刀が三人の誰かの手に渡るとは思えなかった。

そこに休憩に入ったマギーが、グリフォンへと声を掛ける。

 

「気になりますか?」

 

「まぁな。これも魔具ってやつ?」

 

「そうですね。…ある意味では魔剣に類する物ですね」

 

「は?魔剣!?」

 

「ええ。といっても、これは私が初めて作った作品であり…」

 

マギーの表情に影が差す。

それに気付かないグリフォンではなかった。

グリフォンもマギー…否、マキャ・ハヴェリの事は何度も耳にしている。手掛けた魔具の完成度は最早芸術品とまで言え、そしてその力も高いと言えるほど。

そんな強力な魔具を製作できる魔工職人を、力や権力を持つ悪魔達が放っておく筈がなかったと。

 

「そして魔剣の名には程遠い…欠陥品ですよ」

 

「そう言えばあんまり魔力を感じられねぇな。でもよぉ、こんだけ立派な姿してんのに何で欠陥品なんだ?」

 

「斬る事が出来ないんですよ。これは」

 

「は?」

 

マギーから告げられた言葉にグリフォンは素っ頓狂な声を上げる。

"斬れない"…それが何を意味するのか。つまりそれは相手にダメージを与える事が出来ないという事。

そしてそれは武器として…。その意味を理解したグリフォンは驚きの声を上げる。

 

「致命的過ぎる欠陥じゃねぇか!?」

 

「だから言ったでしょ?魔剣の名には程遠い欠陥品だと」

 

「…何でそんな欠陥抱えちまったのか、その原因は分かってんのか?」

 

「いいえ、全く。こればかりは私も分からないんですよねぇ」

 

「初めて作った作品なのに覚えてないのかよ」

 

「当時の私は何も考えもせずこれに色々組み込んでしまいましたからね。何を組み込んだのかさえあんまり覚えていないのです。これを作ったのは、もう遠い昔の話ですから」

 

そう言いながらマギーは置かれた白き太刀にそっと触れる。

その表情はまるで懐かしんでいる様で、それであって悲しんでいる様であって…。

もしかすれば武器としての役目を果たしてあげる事が出来ない事について謝っているかもしれない。だがそれは推論に過ぎない。心の内でマギーが何を思っているか…それはマギーにしか分からぬ事であった。

しかしこの太刀は生み出された時からマギーですら知り得なかった事が起きていた。

この太刀は斬る事が出来ないのではない欠陥品などではない。

意思を有し、己にある約定を施した。

その約定が果たされるまで、この太刀は目覚める事はない。

それが訪れるのは今か、或いは明日か。それとも永遠に訪れないか…。

 

 

「そう言えばよ。これって誰が扱う事を想定してんだ?」

 

初めて作った武器が欠陥品だという話をマギーがグリフォンに話して数時間後。

グリフォンは目の前に鎮座する大型機動兵器 リヴァイアサンを見て疑問を投げかけた。

 

「そうですねぇ…。私としてはノーネイムさんかな、と思っています」

 

「あぁ…あの嬢ちゃんかぁ」

 

グリフォンもノーネイムに魔界の技術が扱われている事を見抜いていた。

そしてその力は他の戦術人形や代理人を圧倒するものだという事も。だがそれだけであり、マギーはノーネイムを選んだ理由はその魔界の技術が使われている以外にあった。

 

「それに彼女は多くの武装を同時に扱う為に、超高性能火器管制システムが搭載されているらしくて。リヴァイアサンも多くの火器を装備していますから」

 

「そういや、代理人が言っていたな。専用武装の一つが重火器を大量に装備しているものだって。確かにあんなのを装備させんだ。そりゃそういう能力を持っていても可笑しくねぇわな」

 

「ええ。ですからこれは彼女だからこそ扱える武装だと思うのです」

 

リヴァイアサンもノーネイムの専用武装に劣らない程に重装備が施されている。

二基の砲身、武装コンテナの様な4つの何か、あからさまに操縦士が扱うであろうと思われる超大型武装、他にも数々の武装が施されていた。

最早これ一機だけでも鉄血の大部隊をものの数分で壊滅に追い込む事が可能と言える程の超重装備っぷりである。

 

(ぜってぇ何かの影響されているよなぁ…。じゃなきゃこんなの思い付かねぇって)

 

マギーが作り上げたいくつもの魔具の中で、リヴァイアサンは特に異彩を放っていると言えた。

籠手や剣、或いは銃など基本的手に扱える物が多いのだが、まるでその考えをぶっ飛ばしたかのように生まれたのがリヴァイアサンだ。どう考えても何かの影響を受けているとしか、グリフォンはそう思わざる得なかった。

そこでグリフォンの中である疑問が浮かんだ。大型機動兵器 リヴァイアサンはこの第二格納庫の部屋の半分を占拠する程の大型である。これが完成した際に、どうやって外へと持ち出すのだろうかと。

偶然にも長い事ここで後方幕僚を務めている者が居る。グリフォンはその疑問をマギーへとぶつけた。

 

「これってよ。完成したらどうやって外に持ち出すんだ?まさか一回解体して持ち出したり?」

 

「そんな手間が掛かる事をすると思いますか?」

 

「だよなぁ。じゃあどうやって?」

 

「簡単な事です。ここを経由して外…いえ、カタパルトデッキに運ぶのですよ」

 

ここ、そこへと繋がっているのでと締めくくるマギー。

グリフォンもカタパルトというものがどういうものかは何となく分かっていた。

しかし余りにも突拍子過ぎたのか、グリフォンはまるで確認する様にマギーに尋ねる。

 

「…カタパルトってあれだよな。空母とかにあるアレだよな?」

 

「そう。そのカタパルトですよ」

 

「…何でそんなのがここにあんの?殆どの基地じゃヘリポートはあってもカタパルトなんてねぇだろ」

 

グリフォンが言う事は至極当然な事であった。

普通に考えて基地にカタパルトデッキがある方が可笑しいのだ。

 

「そう言えば知りませんでしたね」

 

しかしマギーは知っている。最もそれは最初期にここに配属されたシーナや戦術人形だけが知り得る事であるが。

 

 

 

 

 

「元々ここは建設途中で破棄された特殊基地だったんですよ。どうやらマスドライバーなんてものを作る気みたいでしたがそんなもの出来る筈がありませんからね。破棄されて年数が経っていない事から、グリフィンが早急に買収し、それを基地として転用したんです。カタパルトはその名残です」

 

 

 

 

 




と言う訳で、S10地区前線基地のちょっとした秘密の公開です。

次回は何時になるかは分かりませんので、気長にお待ちを。

では次回ノシ

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