Devils front line   作:白黒モンブラン

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今年も残り数時間。
S10地区前線基地では今年最後の一時を過ごしていた。


Act68 Last time of the year

今年も残り数時間。S10地区前線基地では新年を皆と迎えたいという願いからシーナを筆頭に基地に元からあった和室にて、基地のメンバー全員とデビルメイクライのメンバーが集まっていた。炬燵が用意され、鍋が用意され、美味しい料理が用意され、酒が用意されていた。最早この場は宴会場になっている気もしなくはないが、和気藹々とした空間が生まれていた。そんな中でギルヴァは45を膝の上に乗せたまま、食事を楽しんでいた。

 

「ふむ、鍋というのは悪くないな。今まで知らなかった事が悔やまれる」

 

「美味しいよねぇ。ボリュームもあるし」

 

「そうだな」

 

ギルヴァ自身、日本の食事や文化に関してはそれなりに興味は示している。

日本刀状の魔剣「無銘」を扱っているという事もあるのだが、一番はかつて母が見てみたいと言っていた日本の国花、桜の花の写真を見て、彼が日本というものに対して興味を示す様になったきっかけとなっていた。

とは言え、崩壊液や核の影響もあってそういう機会が中々に訪れない事もギルヴァは理解している。

 

「しっかし、色々あった一年だった気がするぜ」

 

今年が残り数時間という事もあって、ギルヴァの対面で座っていたブレイクが過去を振り返る様に呟いた。

 

「俺は途中でこっちに来たわけだが…よりによってあんな事件になるとは思わなかったな」

 

「フェーンベルツでの一件か…。あれから数ヶ月経ったというにの、昨日の事の様に覚えている」

 

「魔界の覇王を倒したのは良いものの、俺達の仕事は無くならない訳か」

 

「そう無くなる事はなかろう」

 

だが…とギルヴァは考える。

もし悪魔という存在がこの世から消え去ったとしたら。

自分やブレイクといった存在は不要となる。それでこそグリフィンに属すという考えもあるだろうが、戦闘狂という訳ではない。自身が不要となった時は愛する者と共に静かに暮らすというのも悪くないとも考えていた。

とは言えそれは飽くまでもそれは、もしもの話に過ぎないのだが。

 

「それに悪魔という存在がこの世から無くなろうと、俺達は鉄血との戦いに駆り出される。雨風凌げる安全な場所で言葉が達者な奴らは自分を守ってくれる者を必要とする。地位、権利を保持したいが為にな」

 

「もしそう言われたらどうする気だ?」

 

「…次は来たら本気でグリフィンと敵対するとでも脅せばいい」

 

その事に和気藹々とした空間が一瞬にして冷え切った。

悪魔を狩る事を生業とし、鉄血が大部隊で攻め行っても抵抗する暇を与える事無く壊滅に追い込む事が出来る奴が本気でグリフィンと敵対するとなった時、果たしてどちらが勝つか?

 

「…ギルヴァさん、本気で敵対しようとしないでね…?」

 

「飽くまでの話に過ぎん。真に受けん事だ」

 

そう言われても、ギルヴァなら本気で敵対しかねないと思う者は決して少なくはなかった。

敵対する者には容赦しないという点は最近になってここに配属となった元S11地区後方支援基地所属していた三人は省き、この基地に居る者全員が知っている事である。

とは言え彼とて親しかった者達と敵対する様な真似をしたいとは一度も思った事はない。

飽くまで脅し程度でしかないのだから。

 

時刻は段々と日付の変わり目を迎え始める。

酔い潰れる者や先に眠ってしまった者達。日付が変わるまで起きている者達の中にはギルヴァの姿もあった。

彼を中心に、45、代理人、ノーネイム、ブレイク、シーナが机を囲んでいた。

 

「来年は別の基地の所にも挨拶に行かないとなぁ」

 

「指揮官の所ではそういうの良くやってたのかしら?」

 

「うん、そうだよ。両親と一緒に近所に挨拶回りしてたよ」

 

「へぇ~。何かそういうのも悪くないわね」

 

日系人であるが、シーナのその中身は純粋な日本人としての部分が多い。

それは彼女の両親のおかげでもあると言えるだろう。

 

「なら、俺達は娘が出来た事を報告しに行くべきか」

 

血んつながりは無くとも、ギルヴァは一児の父親である。

そう言った事は基本内々で納めていた事が、そういう時の場合位は報告しても良いかと彼は考えていた。

 

「そうですね。今まで作戦で助けていただいた所に報告しに行くのも良いですね」

 

「だねぇ~」

 

妻である45も代理人の台詞に同意を示しながら頷く。

 

「んなら、俺も出向くか。店が構えて事だしな」

 

「…その時はグローザもついて行ってやれ」

 

「分かってるって」

 

ギルヴァなりの茶々に、ブレイクは何ら気にする事なく普通に答える。

それを見ていたシーナはそっと微笑んだ。

そして彼女は壁に立て掛けあった時計を見た。

後一分で新たな年を迎える。そして時計の針が動き、日付は1月1日を迎えた。

代表してシーナが起きている面々に挨拶をする。

 

「新年あけましておめでとう」

 

 

 

 

 

 

 

「そして…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「今年もよろしくね!」




短いですが、今年で最後の投稿となります。
次回投稿は来年となります。

この作品を書き始めてあっという間でしたが、多くのお気に入り登録、高評価、本当にありがとうございました。
また多くの作者様とコラボできた事もとても嬉しく思います。

来年も「Devils front line」をよろしくお願いいたします。

では皆さん、良いお年を!

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