そしてギルヴァの所には…
リヴァイアサンの運用許可、そしてカタパルトデッキの使用が社長から下りた事によりS10地区前線基地は空いた時間を使ってカタパルトデッキの整備点検が行われる様になった。
本来であればそこにマギーが居なければならないのだが、彼女はリヴァイアサンの組み立てと同時にノーネイムの専用武装を手掛けなくてはならない上に後方幕僚としての仕事がある。そこにカタパルトの整備点検を任せてしまえば多忙過ぎて倒れかねないと懸念を示したシーナ。その為、整備点検は指揮官のシーナの他、手空きのメンバーで行われる様にあった。
そして今日、ノーネイム用武装が一つが完成した事により、第二格納庫ではその知らせを受け、呼び出されたノーネイムが訪れていた。
マギーが作業用の外骨格を操縦しながら、ノーネイムの身には武装が次々と装着されていく。
二連装の六銃身型ガトリングガンを両手に持ち、背中に装着されたバックパックにはまるで柱の様な筒が二つ装備され、そして後ろから覆うかのように伸ばされた二つのアーム先には巨大な武装コンテナが配置されている。
両脚部にもコンテナが装着され、その側面にはポッドが配置。
傍から見れば重装備だと分かる外見。重装備による機動力低下を補う為か脚部には無限軌道ユニットが備われていた。これがノーネイムの専用装備の一つ パトローネである。
「データ上では見ていますが尋常じゃない位の武装ですね。どうですか、ノーネイム?不調とかはありませんか?」
「特に問題ない。武装とのリンクも出来ている」
そう言いながら軽々と動くノーネイム。
その動きからして重武装による重さは感じている様には思えない程軽々しかった。
「重武装、重装備化を前提に生まれた貴女ですからね。寧ろほんの少しだけ重いと感じる位でしょうか」
「そうだな」
これだけの重装備でも苦にすら感じていないノーネイム。
そんな姿を見て、マギーは何故彼女が計画だけ終わったのか、ある答えに至っていた。
(整備性の問題…なのでしょうか。或いはそのコストの高さか)
ノーネイム用として製作される予定だった武装は全て重装備、重武装化が施されている。
戦場においては圧倒する力を有する反面、そのコストの高さ、整備性の悪さは出ていた。
(結構な大仕事になりましたね…)
それにマギーは気付いており、外見をそのままに、中身の殆どに自身が持つ魔工のあらゆる技術を使用していた。
完成に時間がかかったのは全て専用武装に魔工の技術を詰め込んでいた為である。
これによりある一定の整備性向上、今後修理等で資材の消費量をある程度抑える事に成功している。
「動きに問題はない。武装に関しては元からの情報として入っているから問題ない。後は実戦形式の運用テストが必要か」
「そうですね。しかしほんの少しの相手では恐らくパトローネの真価は発揮できないでしょうし…最悪他の地区で鉄血の大部隊を相手にするしかないかもですね」
「ふむ…。父から聞いた話ではS09地区が激戦区と聞いているのだが…」
「近場で鉄血の大部隊相手を遭遇目当てで行くならそこしか無いですね。状況によっては鉄血が支配下に置いてある基地もあるかも知れないですし。…これは指揮官に頼んで運用テストを許可を頂かないといけないですね」
流石に独断で動く訳にはいかない。そんな事はマギーもノーネイムも分かっている。
一度パトローネを外してから、二人は今カタパルトデッキで整備点検を行っているシーナの元へと運用テストの実施許可を得る為に第二格納庫を後にしカタパルトデッキへと向かうのだった。
その一方でカタパルトデッキではグリフィンの制服ではなく、安全第一と記された黄色のヘルメットを被り作業着に着替え、端末を手に画面とにらみ合うシーナの姿があった。
その他にもいつもの服装ではなくシーナと同じ様に作業着に着替えて整備点検を行っている戦術人形達の姿があった。
「しきかーん!」
手を振りながら元気よくシーナの元へと駆け寄るのはスコーピオン。
彼女も同じ様に作業着に着ている。ただヘルメットが少しだけ大きいのか、ずれ落ちそうになっていた。
そんな姿に微笑みながら手を振り返すシーナ。
「カタパルトの操作室と昇降エレベーターの点検終わったよー!」
「ありがとう。どうかな、動きそう?」
「操作室のコントロールパネルは起動したし、昇降エレベーターも皆で見てみたけど何処か壊れている感じはなかったよ」
「成程。何かあれだね、マスドライバーとして運用されるよりこっちをメインに建てられた感じがするなぁ」
シーナはこの昇降エレベーターやカタパルトが完全な状態で残っているとは思っていなかった。
何かしらの破損等などは残っていると思っていたのだが、いざ点検を行ってみれば一部破損あれど殆どの箇所が問題ないという結果になっていた。
これではまるでマスドライバーとして運用するというより、カタパルトとして運用する事を主にしているのではないかと、シーナはそう感じられずにはいられなかった。
「もしかしたら路線変更したのかも」
「マスドライバーとして運用が無理と判断したからかな?」
「かも知れない。こうやって点検をやってさ、一部破損していて後の殆どの箇所が破損無しって変じゃん」
「だよねぇ…。ここに来て辺りを見回した時、何か完成されている感じはしたけど」
シーナは数時間前にここへ来た時を思い出す。
カタパルトデッキが存在する事は知っていたが、一度も足を踏み入れた事が無く彼女は幾らか未完成で終わっていると思っていた。
そしていざ来てみれば完成されたまま残っている事に不思議に思っていた。
「でもまぁ…マスドライバーなんて建てなくて良かったかもね」
「それはどうして?」
「マスドライバーって下手すればどこでも届く大砲みたいなものだからさ。悪魔の力と同じ様に…まぁギルヴァさんやブレイクさんは違うけど…度が過ぎた力は自分も、それどころか大事な人達でさ巻き込みかねない」
そんなのって嫌でしょ?と締めくくりつつスコーピオンへと問いかけるシーナ。
スコーピオンも悪魔との戦いに何度か関わっている為、その恐ろしさを知っている。目にはしてないが、S11地区後方支援基地の指揮官が悪魔へと変貌していた事も、そしてそれを相手にしている事も覚えている。
度が過ぎた力が幾ら凄くても、そう簡単に制御できるものではなく、結果自身を滅ぼしかねないというシーナの台詞に言葉に出さずとも深く頷くスコーピオン。
それを見てシーナは微笑みながら優しくスコーピオンの頭を撫でるのだった。
その後にマギーとノーネイムがカタパルトデッキに訪れる。
パトローネの運用テストの許可をマギーから聞いたシーナはそれを許可。その事によりパトローネの運用テストが近日中に行われる事となった。
その頃、S10地区前線基地隣接店「デビルメイクライ」では…。
404小隊は任務で基地を離れ、代理人は買い出しへ。フードゥルはのんびり体を丸めて休んでいた。
ギルヴァは何時もの様に椅子に腰掛け、そして95式がニャン丸と共にデビルメイクライに訪れていた。
ニャン丸はフードゥルの上で体を丸めて彼と同じ様に休み、95式は椅子を持ち出して、彼の隣でお茶を飲んでいた。
静かな時間が流れる店内。95式はギルヴァと会話しよう思い、彼へと話しかける。
「思えば鉄血を相手にする為にデビルメイクライと名付けたのに、知らない内に本当の悪魔を相手にする様になってしまいましたね」
「言われみればそうだな。気付かぬ内にそんな風になっていたな」
「…もしかしたらデビルメイクライと名付けた辺りから本当の悪魔と戦う事は決まっていたかも知れませんね」
「かもな」
少しだけ距離を縮める為に95式は座っている椅子をずらし、ギルヴァとの距離を縮める。
お互いの肩が触れられる距離まで近づくとそっと頭をギルヴァの肩へと預けた。
「…このまま貴方と一緒に居られますでしょうか?」
「…さぁな」
「ふふっ。そうですね…この先の事なんて分からないですね」
そんな時、書斎の上に置かれた電話が鳴り響いた。
ギルヴァは受話器を手に取り、何時もの言葉を口にする。
「デビルメイクライ」
『お久しぶりです、ギルヴァさん』
「!…その声は」
『はい。M4A1です』
次回はノーネイムの専用武装の一つ「パトローネ」の運用テストです。
どっかの地区で派手に暴れるので、一目見たければどうぞ。
そして運送用テストが終わればギルヴァ編へ。
M4からの依頼で動き出す予定です。
では次回ノシ