Devils front line   作:白黒モンブラン

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与えらし名は「銃弾」を意味する。
主の共に放たれる銃弾は敵へと問う。

―死の覚悟は出来たか?―


Act71 Bullet dance

S09地区、某所。

奥まで続く舗装されていない道を一台の大型トレーラーが駆け抜けていた。

運転席にはノーネイム、助手席にはマギーが座っている。二人が向かう先はS09地区にて密かに鉄血の大部隊が占領していると噂される地区内の端に存在する基地。

情報の出どころはへリアンからによるもの。本来であればS09地区に存在するグリフィンの者達に任せるのが当たり前なのだが、対応していたシーナがノーネイムの専用武装「パトローネ」の運用テストの件の事を話し、特例としてS10地区前線基地がそれを任せてもらえる事となった。

正式な許可を得られた事により、シーナからその知らせを聞いたマギーとノーネイムは例の基地へと向かっていた。

大型トレーラーのコンテナの側面にはDevil May Cryと綴られたネオンサインと、その横にはS10と綴られたネオンサインが取り付けられている。これらは店の宣伝とS10前線基地の所有物という意味を含めて取り付けられたものだ。

車両は人気の無い町の中を進んでいく。運転しながらノーネイムが口を開く。

 

「…この町の惨状は鉄血の攻撃によるものか」

 

彼女の目に映るのは、攻撃によって倒壊した建物、破棄された建物の群。

二人が乗る大型トレーラーが通っている町は所謂ゴーストタウンと言われるものへと変貌していた。

それを聞いていたマギーはへリアンから聞いた情報をノーネイムに伝える。

 

「話を聞く限りではそうみたいですね。ただここに価値はないのか、鉄血の大部隊はこの先の基地に引きこもっているみたいです」

 

「そうか。…それならば先手を打つ事が可能か」

 

ノーネイムは車両のスピードを上げる。大型トレーラーはゴーストタウンを抜け、鉄血の大部隊が占拠している基地へと進んでいくのだった。

 

 

「…」

 

鉄血の基地から少し離れた場所にて大型トレーラーは停車していた。

専用武装「パトローネ」を装着したノーネイムが大型トレーラーのコンテナから降り立ち、近くの茂みに身を潜めながらその先にある鉄血の基地を見つめた。

ここまで近づいて攻撃してこないのは、基地までおびき寄せて自分を向かえ撃つつもりなのだと。

主兵装たる連装ガトリングガンは大型武装コンテナの内側にマウントされており、その代わりに彼女は身の丈以上はある榴弾砲を手にしていた。専用武装「パトローネ」の武器の一つではなく、これはマギーが、以前ノーネイムとギルヴァが持ち帰ってきたデストロイヤーの榴弾砲からヒントを得て作り上げた武器である。ただし試作品であるが故に耐久性に難があり、その為一射しか出来ないという欠点を抱えている。

だがノーネイムにとっては一発だけで十分だった。遠距離砲撃を仕掛けた後に起きる混乱に乗じて突撃するつもりなのだから。

 

「始めるか」

 

伏せていた目を上げ、榴弾砲を構える。装填しているのは時限式の拡散焼夷弾。発射後に宙で炸裂し、地上に居る敵に焼夷弾の雨を降らせるもの。

そしてノーネイムは榴弾砲の引き金を引く。刹那、開戦の狼煙と言わんばかりの砲撃音が鳴り響く。

その砲撃音は基地で何時でも迎え撃てる態勢を取っていた鉄血の人形部隊の耳にも届いていた。そして偶然にもそこには基地の防衛を任されたハイエンドモデルであるデストロイヤーもいた。彼女もその音を耳にし、茂みの奥から空へと上がっていく何かを発見した。

空へと上がっていくそれを目で追っていく。その瞬間、それは宙で炸裂、大量の焼夷弾が基地全体を覆いつくさんと言わんばかりに降り注いだ。降り注ぐそれを見てデストロイヤーは目を見開き、自分が立っていた地点から即座に飛び退いた。

 

「噓でしょうおおおっ!?」

 

瞬く間に広がる炎の海。炎に飲み込まれる鉄血の大部隊。万全と言えた状態は一瞬にして崩され、その隙を突くかのように榴弾砲を投げ捨て専用武装「パトローネ」を身にまとったノーネイムが茂みの中から勢いよく跳躍して現れ戦場へと降り立つ。

 

「第一陣は何とかなったか。…む」

 

状況把握にしているノーネイを迎え撃とうと鉄血の大部隊を次々と姿を現す。

プロウラー、スカウト、ダイナゲート、ジャガーと言った鉄血機械大部隊に咥え、リッパ―、ヴェスピット、ガード、ストライカー、ドラグーンと言った鉄血人形大部隊。戦力としては確実に鉄血が勝っている。

瞬く間にノーネイムは包囲されてしまう。退路は絶たれ、この後に待っているのは鉄血による集中砲火だろう。

だと言うのにノーネイムは冷静だった。専用武装「パトローネ」はこういう時の為にあるのだから。

 

「戦術的には間違っていないが…」

 

銃口が向けられる。

 

「だが…」

 

引き金が引かれる瞬間、ノーネイムは勢いよく空高くへと跳躍。

重武装にも関わらず軽々と宙で大きく回転しながら、静かに呟く。

 

「詰めが甘い」

 

両サイドの武装コンテナが動き出し次々とミサイルの発射口が展開されていく。

前、後ろ、側面、上部…複数の発射口からミサイルの弾頭部分が姿を現す。

 

「は…?」

 

炎から何とか逃れ遠方で見ていたデストロイヤーは口を開いたまま啞然とした。ノーネイムが装備している武装コンテナから見えたミサイルの数は異常だった。正直その数を数える方が馬鹿らしく感じるレベル。

それ以前にあれだけの重装備なのに何故あんな風に軽々とアクロバティックな回転が決められるのかそこが不思議でならなかった。そんな疑問を他所にノーネイムは攻撃を開始。

両武装コンテナから一斉にミサイルが全弾発射され、それぞれの軌道を描きながらミサイルのシャワーが地上の鉄血部隊へと襲い掛かった。次々とミサイルの餌食となっていく鉄血の大部隊。次々と起きる爆発、木端微塵に吹き飛んでいく敵。あれだけ居た敵の数もミサイルのシャワーによって半数以上削られている。

華麗に地上へと着地するノーネイム。脚部の無限軌道ユニットを展開し周りを見回しながら両手の連装ガトリングガンを構えた。

鉄血が占領下にある基地だけあって、そう簡単には落ちる事はないのだろう。

何処からともなく現れる鉄血部隊へとノーネイムは静かに呟く。

 

「運用テストも兼ねているが…やるなら徹底的にだ」

 

地上を滑るかのように動き出すノーネイム。両手に構える連装ガトリングガンの引き金を引いた。

回転し始める銃身。そして瞬く間に無数の鉛玉がはじき出された。

相手に反撃を許さない嵐の様な弾幕が敵へと襲い掛かり射線上に立つ鉄血の機械、人形部隊は次々と無数の弾丸によって貫かれ蜂の巣へと変えられていき鉄屑へと姿を変えていく。負けじと交戦する機械鉄血兵や人形鉄血兵もいるが、それも意味を成さない。最早蹂躙とも言える戦場に次々と鉄屑が積み上げられていく。

ガードの集団が味方を守る為に前に出ても、ノーネイムの攻撃には盾すら紙当然と言わんばかりに盾ごと貫かれ機能停止に追い込まれる。

 

「何なの!?何なのあいつッ!?」

 

後方で榴弾砲を用いてグレネードを撃ち続けるデストロイヤーは軽く混乱していた、以前に何者かによってドリーマーと共に星にされたの内、何とか戦線復帰し、ドリーマーに基地の防衛を任せれいずれはグリフィンの人形に攻撃仕掛けようと考えていた。

それがどうだ。グリフィンの大部隊が攻めてきたとしても返り討ちできる戦力を有していたにも関わらず、それがたった一人の襲撃によって、逆に壊滅状態へと追い込まれていた。

これだけの砲火に包まれているのに攻撃を軽々と回避され、その中に紛れてデストロイヤーが砲撃してもノールックでグレネード弾をガトリングガンで撃ち落される始末。

しかしデストロイヤーはまだ勝機があると信じていた。

戦闘が始まりミサイルのシャワーを降らした以降ノーネイムは一度もミサイルを使っていないという事。

それを見てデストロイヤーは両サイドの武装コンテナの弾薬は尽きているから両手のガトリングガンに使用しているのだと確信し、彼女は基地にこっそり隠していた軍用人形「イージス」を戦場に投入した。全身装甲に覆われたそれは一体ではない。五体も投入され、その全てがノーネイムへと狙っていた。

 

「…軍用型か。確かにこういう相手ならこちらにとって分が悪いか」

 

しかし、とノーネイムが呟いた。

盾を構え進軍してくるイージス達との距離を空ける為、後方へと体操選手並みの回転をしながらその距離を空けつつ着地。

そのまま両手のガトリングガンを構えるとそれを合図と言わんばかりにバックパックに装備されていた二つの大きな筒が動き出す。上下に分割し、上部はノーネイムの肩へと移動し、下部は彼女の腰の横へと移動する。

上部の方には機関砲が、そして下部の方には八銃身のガトリング砲が内蔵されている。

 

「倒せない相手ではない」

 

その瞬間、合計八門の機銃による一斉掃射が開始された。

ただでさえ両手のガトリングガンの弾幕がえげつないと言うのに、その倍以上の弾幕がイージス達に襲い掛かる。

絶えのない機銃一斉射を盾で防ぐのに精一杯で近づく事もままならない。

敵の動きが鈍くなりつつある事を確信したノーネイムは一気に畳み掛ける事にした。

 

「あるだけ使う」

 

その言葉を合図に両サイドの武装コンテナ、両脚部のランチャーポッド、その側面に展開された追加ポッドのハッチが次々と展開されていく。そしてミサイルのシャワーを降らせ弾切れしているはずなのに武装コンテナにはミサイルの姿があった。

 

「え…」

 

それを見たデストロイヤーは言葉を失った。そして不味いと感じた。

撃ち尽くしたはずなのにまるで生えてきたみたいミサイルが復活している。一体どういう仕掛けになっているのか分からない。それもその筈であろう。これらの仕様は全て伝説の魔工職人によるものなのだから。

全ての敵に対し照準を合わせ、ノーネイムは冷たく告げる。

 

「チェックメイトだ」

 

両手のガトリングガンが、機関砲が、腰横のガトリング砲が、武装コンテナが、脚部のランチャーポッドが一斉に火を噴いた。嵐の様な弾幕が射線上に立っていた敵を破壊し百以上はあるであろう放たれたミサイルがそれぞれの軌道を描きながら、敵に襲い掛かりバラバラに吹き飛ばす。無数の爆発が同時に巻き起こり、最後には派手な爆発が空高くまで舞い上がる。

因みにデストロイヤーはノーネイムがパトローネでの全弾発射を始める直前は身の危険を感じ基地から早々に撤退している。

 

「…」

 

硝煙と炎が辺りを包み、火の粉が舞い上がる。姿形が残らない位に積み上がった鉄屑。その中を立ち尽くしノーネイムは沈黙を保っていた。そっと周りを見回した後、彼女は何も言わず背を向けて基地を去っていくのだった。

運用テストを終え、一度破棄した榴弾砲を回収してからノーネイムは大型トレーラーで待機していたマギーと合流。そのままS10地区前線基地に戻る事になる。

この後にノーネイムの専用装備「パトローネ」が正式に運用される事となるのだが、ノーネイムはマギーに戦闘の最中で気になった事を尋ねた。それは一度使い果たした筈のミサイルが何故復活しているのかというもの。

それを聞かれたマギーはこう答えた。

 

「主武装のガトリングガンと背部マルチウエポンユニットのガトリング砲と機関砲を使って攻撃を敵に命中させると、それをエネルギーに作り替えそれを用いてミサイルを作り出す機能を搭載したんですよ。この技術は以前から考案していたものでして、代理人さんが愛用するニーゼル・レーゲンに組み込もうと考えた機能なんですよ。最もそれは断念して、パトローネに組み込んだのですけどね」

 

 

 

 

その頃。

ノーネイムがS09地区の基地にて暴れている一方でこの男達もS09地区に訪れていた。

Devil May Cryと綴られたネオンサインが取り付けられた一台のバンが道を駆け抜けていく。

運転には代理人が、助手席にはギルヴァが。

そして後ろではギルヴァに呼び出されたブレイクと、参加メンバーとして95式とグローザが乗っている。

彼ら一行が向かうのはある場所にて待っている依頼主の元。

依頼主はM4A1。そして依頼内容は…

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄血のハイエンドモデル エクスキューショナー、ハンターの排除及びAR小隊のメンバー ST AR-15の救出。




やっている事がどこぞの弾切れを気にしない人というね…。
という訳で、ノーネイムの専用装備「パトローネ」が正式運用となりました。
パトローネの詳細はまた今度。
後もう一つノーネイムの専用装備があるのですが、それはまた追々。

次回はギルヴァ編。

ではノシノシ
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