Devils front line   作:白黒モンブラン

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――再戦はあの時のままとは限らない


Act78 rematch

―どうしたと言うんだ!?■■■ッ!!?―

 

 

 

 

誰かの声がする。

 

 

 

 

―くうッ…!!…お前に何があったんだ…答えろッ!!

 

 

 

 

何があった…?

何があっただろうか…?

 

 

 

 

―……誰かあいつを止めてくれ…誰でも良いッ…!!あいつを…■■■を止めてくれッ!!!…―

 

 

 

 

とても聞き覚えのある声。

でも何故かそいつの顔が思い出せない。

駄目だ…何も思い出せない…。

そいつの顔も名前も…何よりも…

 

 

 

 

 

 

オレ ハ ダレダ?

 

 

 

 

 

「…」

 

処刑人と狩人が拠点にしていた基地の前で、彼…ギルヴァはじっと先を見つめていた。

基地から感じられる膨大な魔力。それが波となって押し寄せているのを感じ取っていた。それもかつて経験したS11地区後方支援基地の時に感じた魔力とは比べ物にならない位の魔力量であった。

 

―こいつはまた…とんでもない位の魔力だな…

 

「…魔に飲まれていると聞いたが、本当に魔力だけで人形を支配下に置くなど可能なのか?」

 

ブレイクが言っていた事にギルヴァは疑問に感じていた。

何故なら魔力単体で人形を支配できるとは到底思えなかったからだ。もしそれが可能であればS11地区での作戦は長期に渡っていただろう。

 

―それは無理だ。何らかの悪魔が関与してねぇと話にならない。もし魔力単体で相手を支配下に置く事が出来るなら、S11地区後方支援基地での作戦は失敗に終わってるからな?

 

「やはり悪魔が関わっているという事か…」

 

―多分な。…恐らくだが、処刑人は地獄門を起動させる以前から悪魔と何らかの繋がりを持ってしまった。例えばより強い依代を見つける為に、魔界の寄生虫に取りつかれたとかな

 

「もしそうだとして、たかだが寄生虫一匹でここまでなるのか?」

 

―いや、ならない。地獄門を起動させたのはその寄生虫によって思考か或いは別の何かが乗っ取られ、そして処刑人よりも遥かに強力な悪魔に寄生する為に起動させた。そっからは出てきた何かによって…

 

「それでこの状況か…」

 

どちらにせよ悪魔という存在が関わっている事に違いない。

ギルヴァは基地の正面入口から内部へと侵入した。内部は処刑人が暴れたであろう状況がそのまま残っており、酷く荒れていた。その中には頭から縦に一閃され無残な姿で横たわっている鉄血人形兵達があちらこちらに転がっていた。抵抗した形跡はなく、一方的に斬り伏せられたのが容易に察する事が出来る。

 

「味方も関係なく、か…」

 

彼の脳裏に死ぬ間際に狩人が彼に依頼した内容が浮かぶ。

変わり果てた処刑人に救って欲しいと彼女はギルヴァに依頼した。

しかし付き合いの長い筈であろう狩人や仲間にその刃をぶつけたという事は、処刑人は戻れない所に来ているかも知れないとギルヴァは考えた。

そして…もしそうなれば手段は限られてくるという事も。

 

「死か生か…お前はどちらの救いを望んだ」

 

小さく呟くギルヴァ。

依頼し、先に逝った彼女(狩人)へとその言葉を投げかける様に。

 

基地内部、中央区画。

物一つなく、ただ広いだけの空間の中央に変わり果てた処刑人は目を伏せ静かに宙を浮かびながら佇んでいた。

戦闘義手はまるで生物と同化した様な姿を有し、愛用している大剣も禍々しい姿をした大剣へと成り果てていた。

目に見える程の魔力が彼女を中心に放たれ、その背には魔力で形成された羽に展開されている。そして自身を守るかの様に周囲に氷を配置されており、まさに攻防一体を具現した様な姿を有していた。その一方で禍々しいさを保ちながら、氷と魔力で形成された羽が相まって何処か神々しさすら感じられる。

 

「…」

 

ふっと伏せていた目を開く処刑人。

誰かが近寄ってくる気配を感じ取り、彼女は静かに後ろへと振り向く。そこに居たのはかつて自身を空へと吹っ飛ばした元凶。青い刺繡が施された黒いコートをなびかせ、ギルヴァは彼女の前で足を止める。

変わり果てた彼女を見て、彼はフンと鼻を鳴らすと呆れた様な形相で話しかける。

 

「随分な姿だな。悪魔に己を…いや、全てを売り払ったか」

 

「…」

 

「喋る事も忘れたか。以前の貴様なら話す事ぐらいはしていたが」

 

「…オマエ ハ ダレダ?」

 

(忘れている…?)

 

処刑人から出た言葉にギルヴァは訝しんだ。

幾ら魔に飲まれたとは言え、記憶ぐらいはしているだろう。ましてや自身をまるで漫画のオチみたく吹っ飛ばした相手を忘れる事は早々ない筈。しかし処刑人は目の前に立つギルヴァの事を覚えていなかった。否、思い出せずにいた。魔による影響か、或いは本当に全てを売り払ったのか…そう思わざるえなかった。

 

「素晴らしい姿だろう?彼女の自我は多少なりとあるが、時間の問題だがな。義手に取り着いた魔界の寄生虫も彼女も私の支配下になりつつあるのでね。」

 

聞こえた第三者の声。そしてそれは亡霊の如く、彼女の背後から姿を晒した。

その姿はまるで騎士の様で、かつてギルヴァと激闘を繰り広げたアンジェロに酷似していた。

 

(あの悪魔とは似ているが…)

 

―どっかで見たと思えば…あいつ、アンジェロよりも先に作られた古い存在か。あいつの兄貴分ってやつさ。普通なら肉体があるんだが…成程、そういう事か。アンジェロが死んだ事をどっかで嗅ぎ付けてこっちに飛んでこようとしたが、閉じ込めれて肉体だけが滅んだな?あいつ、愛が深い奴でね。弟を討った奴への復讐をしに来たんだろうさ。

 

(そうか)

 

復讐をするしないは勝手であるが、肉体が滅んで尚成仏しきれないアンジェロの兄にギルヴァは迷惑だと感じられずにいた。肉体も精神もそのまま消滅してくれれば事態はここまで悪化する事はなかったからだ。

 

「さて…初めまして、デビルハンター。こうして話すのはこれが初めてか」

 

「そのようだな。それで…こんな世界に何をしに来た。作られし魔界の騎士の兄とやら」

 

「…!成程…お前が」

 

「ああ。迷惑な存在だったのでな。早々に消えてもらった。貴様も弟をやられて復讐をしに来た身なのだろう?会話の相手をするつもりはない…貴様もあいつの元に送ってやろう」

 

そう言い切るやギルヴァは無銘の鍔に親指を押し当て鯉口を切り、居合の態勢を取る。

相手が戦闘態勢に移行した事によりアンジェロの兄…フリージング・アンジェロも処刑人の中へと隠れ込み、自身の手足を扱うかの様に大剣を構える。にらみ合う両者。緊迫した空間が場を支配する。

そして…

 

「「…ッ!」」

 

勢い良く地面を蹴り、突進する両者。神速の抜刀技により鞘から鋭い一撃が抜き放たれ、禍々しい魔力を有した機械剣が振りぬかれ、刹那刃同士が激突する。二人を中心に発せられる衝撃波。外壁が勢い良く吹き飛ばされ、青空が二人を迎える。しかしそんな事はどうでもいいと言わんばかりに激しい剣戟を繰り広げる両者。

ぶつかる度に響く鋼の音、散りばめる火花。そしてそのまま鍔迫り合いへと持っていくが、数秒も経たぬ内に解かれ、二人をその場から後方へ飛び退き距離を取る。開いた両者の距離、先に動き出したのはギルヴァだった。

自身の右左に幻影刀複数を展開し、投射。槍の如く凄まじい速さで投射された幻影刀が迫るが、フリージングも同じような氷の槍を複数生み出すし射出。迫る幻影刀を撃ち落していく。二つが連鎖してぶつかった事により、氷の槍が崩れた事に氷霧が周囲に広がり、二人の視界を妨げる。

氷霧によって周りが見えない中。ギルヴァは背に背負っていたクイーンの柄を握り、引き抜く。そして片腕で剣を引きつつ切っ先を突き立てる様に構える。

 

「そこを動くな」

 

腰を使いつつ、勢い良く投げ飛ばされるクイーン。横に回転しながらクイーンは氷霧の中を斬り抜けていく。

氷霧の中から飛んできたクイーンに素早く反応し、右手の大剣を勢い振り上げて弾き飛ばすフリージング。

 

「この程度の攻撃で倒せると思ったか!貴様の目は節穴か!」

 

慣性を失い緩やかに回転しながら後方へと飛んで行くクイーン。振り上げた際に起きた剣風によって氷霧は払われ、全体がクリアになるがフリージングは言葉を失った。

 

(居ないだと…!?)

 

先程までそこにいた男がいない。

フリージングが周りを見回そうとした瞬間だった。

 

「節穴だと?」

 

後ろから響く声。

まさかと思いフリージングが後ろへと振り向くと…。

 

「節穴は貴様の方だ」

 

弾き飛ばされたはずのクイーンを手にし宙を浮かぶギルヴァの姿があった。

振り下ろされる刃。つかさず大剣の剣幅で攻撃を防ぐフリージング。何故相手が一瞬にして後方にいるのか理解出来なかった。もしこの時、処刑人の自我が多少なりと残っていたとするのであればこのギルヴァの戦術に気付けていたかも知れない。フリージング本人は気付いていないが、宙を浮かぶギルヴァの後方には群青色に輝く幻影刀が突き刺さっていた。クイーンを投擲し、フリージングがそれへと意識を向けている隙に幻影刀を投射。クイーンを弾かれた瞬間を見計らい後方へ移動したのだ。その戦術を処刑人に憑りついた悪魔に理解できる筈がなかった。だからと言って自身が窮地に落ちた訳ではなく、攻撃と共にギルヴァを振り払うフリージング。振り払われたギルヴァはそのまま後方へ一回転しつつ地へと着地。相手を一睨みした瞬間、彼がいた場所に残像だけが残った。

また奇襲攻撃を仕掛けてくると判断したフリージングは何時でも迎撃に出来る様に大剣を構える。

 

「…」

 

沈黙が訪れる。だがそれは長く続かなかった。

 

「ッ!!」

 

「ふっ…!」

 

フリージングの頭上に現れるギルヴァ。体を捻りつつ、強烈な一太刀が振り下ろされる。その場から飛び退くフリージング。攻撃を避け、生まれた一瞬の隙を逃す事無くギルヴァへと氷の矢を放っていく。だがそれらはギルヴァに届く前に上空から飛来した幻影刀の雨によって打ち消される。遠距離攻撃では彼を倒せないと判断したのか、フリージングは大剣にさらに魔力を纏わせ、突撃。先程よりも倍以上の速さで迫り突進と同時に突きが放たれるが、ギルヴァは無銘の刀身で難なく受け流しつつ、左手に持っていた鞘で足を掬い上げる。足を掬い上げられ、横転するフリージング。無防備となったそこに腹部へと目掛けて刀が振り下ろされるが寸での所で大剣で攻撃を防ぎ、背の羽を勢いよく羽ばたかせ後ろへと後退する。間髪入れずに大剣を大きく下から上へと振り上げる。刀身に纏っていた魔力が刃となってギルヴァへと迫るが、あろう事か彼は一度刀身を鞘へと納めると飛んできた魔力による斬撃を納刀した状態の無銘で弾き飛ばした。

 

「その程度か。貴様より憑代となったその女の方や先に逝った弟の方がまだマシだったぞ」

 

ここぞと言わんばかりに挑発をかますギルヴァ。

弟はともかく、自身が操る人形よりも劣ると言われた事が逆鱗に触れたのか、フリージングから放出されていた魔力はより一層激しくなる。

突風が吹き荒れ、手にしていた大剣に禍々しい魔力が注がれていく。剣先を突き立て、ギルヴァへと狙いを定める。対するギルヴァは何もせず、ただその時が来るのを待った。

膨大な魔力が周囲に拡散しているためか、空間が揺れ地響きの様な音が鳴り響く。

次の瞬間勢い良く突進するフリージング。対するギルヴァも地面を蹴り、クイーンを引き抜くとブレイクがよく利用する技「スティンガー」と同じ動きで突進。刀身に魔力を纏わせつつ同時に魔力を放出させ、魔人化を果たす。

迫る合う両者の距離。刹那赤黒い魔力の塊と青い魔力の塊が空間の中央で激突した。

どちらが上を行ったか。瞬く間もなくそれは明らかになった。

硝子が割れる様な音。砕け散る大剣。氷霧と化していく氷と霧散する魔力の羽。宙へと投げ出される悪魔に支配されし人形の姿。それを下から見つめる蒼き悪魔は一気に畳み掛ける。

一瞬で地表から宙に浮かぶフリージングへと接近し、体を勢いよく回転させるとその勢いを利用し強烈な踵落としをぶつける蹴り技「月輪脚」で地面へと叩きつける。威力は敢えて抑えつつなのだが、それでも相手をバウンドさせる程の力はある。再度宙へと舞い上がった所に、ギルヴァは無銘を構え、居合の態勢へと移行し突進。

鍔と鯉口の間から見える刃。放たれる一瞬の煌き。

 

「まずは貴様からだ」

 

すれ違いざまに一閃。寄生虫に憑りつかれた部分だけを斬り落とす。これで力の一部を使えなくなるフリージング・アンジェロ。このままでは不味いと判断したのだろう。新たな憑代を見つける為、処刑人から脱した。しかしそれが愚策であった事を知る由もなく、これこそがギルヴァの狙いだった。

救ってほしいと死ぬ間際に依頼されたのだ。多少程度のダメージは仕方ないとし、完全に機能停止させるつもりは今の彼にはない。寄生されたのであれば、その部分だけを斬ればいい。

普通なら不可とされる事も、彼が持つ愛刀「無銘」ならば問題ない。何故なら「無銘」は…

 

 

ありとあらゆるものを斬る事が出来るのだから。

 

 

「逃がすと思ったか?」

 

一歩後方へと引き、居合の態勢で構えるギルヴァ。

神速の抜刀。空間を切り裂き、放たれた無数の斬撃は霊体であるフリージング・アンジェロを斬り刻む。

攻撃により、態勢を崩し地面と落ちていくフリージング・アンジェロ。その下では、無銘を両手で握り上段構えを作るギルヴァの姿。刀身に蒼い魔力が注がれる。そしてお互いの位置が同じになった瞬間…

 

「!」

 

振り下ろされる一撃。蒼い魔力が弧を描き、空間を振動させる。

その一撃はフリージング・アンジェロを一瞬で消滅。刀を巧みに回し、刀身を鞘へとゆっくりと納めていくギルヴァ。一瞬の刃の煌いた後鍔と鯉口とかち合う音が静かにその場に響く。

魔人化を解き、地面に転がる処刑人へと向くギルヴァ。歩いて近づき、肩を貸す様に彼女を抱えるとゆっくりとその場を後にする。

 

「…依頼は果たしたぞ」

 

静かに依頼人である彼女へと言葉を投げかけ、去っていくギルヴァであった。

 

 

 

後に彼は処刑人に連れて、代理人達と合流する。

殺さずに処刑人をつれてきたギルヴァにM4達は何かを言いたげであったが、結局は何も言わなかった。

そのまま負傷した処刑人を連れて代理人達はS10地区前線基地へと戻る事となる。その際に代理人はシーナの指示により一旦AR小隊の三人をS10地区前線基地で保護してほしいという指示により彼女達を連れて戻った。

そしてギルヴァは…

 

「そうか。一旦基地で保護する事になったのか」

 

電話越しに代理人から後の事を聞かされ、内心安堵した。

 

『はい。処刑人及びAR小隊の三名はS10地区前線基地で保護する事になりました。AR小隊の三名に関しては恐らく上からの指示かと』

 

「だろうな。…手間をかける」

 

『いえ。それでギルヴァ…今どちらに?』

 

「ああ。今は…」

 

実の所ギルヴァは代理人達と共にS10地区へと戻っていなかった。

処刑人を代理人に預けた後、気になる事があると彼女に伝えてからギルヴァは単身、ある地区に訪れていた。

無銘とクイーンは人目につく事を恐れ、この地区に来る道中で拾った布に包み背負っていた。

 

「S09 P地区だ」




という訳で事態は終幕へ。処刑人とAR小隊の三名はうちで保護。

また憑りつかれた処刑人の姿はDMC4に出てくる悪魔化したあのおじいちゃんの様な感じです。

そして作者様からは許可を頂き、ギルヴァ単身でS09 P地区に訪れています。
何故彼がここに訪れたのか、次回明らかになります。

訪れてるから…何かお礼しないとな。クイーンを作る為にパーツとかかな?

では次回ノシノシ
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