名勝負数え唄より
ここはとある鎮守府の演習場。両艦隊の随伴艦は大破し、旗艦の長門と川内だけが残っていた。
「互いの艦隊の随伴艦は全て大破し、残るは旗艦の私とお前か。ふっ、面白くなったな」
「へぇ、余裕あるじゃん。だけどさ、あたしの真の力を見てもまだそんな口が聞けるかな?」
「真の力だと…?」
「そっ、あたし艦娘になる前は忍者だったんだよね。今でこそ艦娘の川内で通ってるけど、自分の本当の名前なんてとっくの前に捨てたの。この手で殺した数なんて100人を超えたところから数えてないね」
ケラケラと笑う川内。だがそのひょうきんな態度とは裏腹に禍々しいオーラが川内から放たれてるのを長門は感じ取った。
(なるほど……あながち嘘ではない。先程までの川内とは訳が違う…気を抜けばやられる…!)
「ねぇ、なにボーッとしてるのさ。来ないならこっちから行くよ!」
川内は目にも留まらぬ速さで懐から武器を抜き取り、長門に向かって投げつけた。
(なっ…!?手裏剣か!マズイ…!避けられない……!!)
次の瞬間、川内の投げた武器が長門の顔面にバチンと音をたててぶつかった。
「痛っ!」
(えっ?)
川内は妙な違和感を感じた。
(えっ?えっ?手裏剣当たってバチン?どゆこと…?)
「いったぁ〜……ん?なんだこれ?」
長門は痛みに悶えながら顔面に当たったものを拾い上げる。
その途端、川内の顔が驚愕に染め上げられる。
(じょ、冗談でしょ……手裏剣と間違えて…………先月買ったブルガリの財布投げちゃったよ………)
長門は川内の財布をマジマジと見つめると物色し始める。
「えっ、なに?これお前のか?うわっ、630円しか入ってない」
「ちょっ、やめてよ!!銀行でおろしてないだけだから!最近忙しかったからおろす暇なかっただけだから!」
「ふ〜ん…あっ、本名は川田内子っていうんだ。だから川内になったんだ〜(笑)プッw何が名前はとっくの昔に捨てただよ(笑)」
「免許証勝手に見るなって!つーか名前意識してねーし!!たまたま川内になっただけだし!!早く財布返せよ!!!」
「もうちょっともうちょっと(笑)ってか、病院の診察券多いな(笑)」
財布を返すように叫ぶ川内だが、長門は聞く耳持たずニヤニヤしながら川内の財布を物色し続ける。
「返せっつってんだろうがあああああ!!!!」
川内の怒りは頂点に達し、鎖鎌を長門目掛けて投げつけた。
「あっ、レシートめっちゃ溜まってるじゃん。ちゃんと捨てろよ(笑)」
だが長門は難無く鎖鎌をかわした。
「見るなってえええええええ!!!!」
川内は目に涙を溜めながらも、再度鎖鎌を長門目掛けて投げつける。
「何買ったんだ?………え〜、木綿豆腐・ひき肉・豆板醤・片栗粉………」
「読み上げんなし!!急に麻婆豆腐が食べたくなっただけだし!!」
またもや難無くかわす長門。
「ぜえ…ぜえ……もう…マジで返してよ………」
「ムーリーー!」
息を切らし懇願する川内だが、全く聞き入れずにレシートを漁る長門。
(チッ、仕方がない……こうなればあの秘術で………)
川内は呪文をとなえながら独特の印を結び始める。
そして印を結び終えたその時
「なっ!?」
長門の目の前から川内の姿が消えた。
それも束の間、次の瞬間には長門の全身に衝撃が走る。
「グハァッ!!!」
長門はあまりの衝撃に海面に膝をつく。
長門の後ろには消えたはずの川内が立っていた。
「これぞ忍法、竜の爪。超高速で走り抜けた時の衝撃があんたに襲いかかったってわけ。そしてコレを見な」
川内はケラケラと笑いながらその手にある物を掴んでいる。
それを見た瞬間、長門は驚愕した。
「なっ!それは私のグッチの財布!?」
「これぞ忍法、竜の爪の真骨頂!」
「ただのスリじゃねーか!!」
「どれどれ……うっわw250円しか入ってない(笑)」
「バッ…!たまたまおろしてないだけだし!!演習終わったらおろしに行く予定だし!!」
この後、長門は財布を物色する川内を追いかけ回すが、川内はうっかり長門の財布を海に落としてしまう。
その腹いせに長門は川内の財布を海に投げ捨て、2人は両艦隊の艦娘達に止められるまで取っ組み合いの喧嘩をし続けたのだった。
見つかった2人の財布は海水で濡れてダメになっていました。
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