鎮守府外出録テイトク   作:ていん?が〜

3 / 16
第3話です。
このお話は原作6話を元にしています。


第3話「同調」

「ふぅ……なんとか撒けた………」

 

東京都豊島区池袋。そこに若干疲れた様子の提督大槻がいた。

 

「鹿島の奴め、大切な話があるからと来てみればスタバで延々と加賀の愚痴とか……そういうのは香取とか他の艦娘でいいだろ…!仮にもワシは上官だぞ…!友達じゃないんだぞ全く…!」

 

つい先程まで大槻は鹿島に呼び出され、スターバックスで加賀の愚痴を聞かされていた。(例:ローソンでのスイーツ爆買いなど)

内容があまりにもとめどないものでかつ何時間も続いていたため、用事を思い出したという名目で抜け出してきて今に当たる。

 

「第一、スターバックスって何だか苦手なんだよなぁ…。あそこでのコーヒーの注文の仕方など未だによく分からんし、喫茶店でゆっくり飲む方がいい」

 

「あっ、そうだ!喫茶店といえばこの近くにお気に入りの喫茶店があったんだった!グルメ通だけが知る穴場の店……シナモンたっぷりのアップルパイにロイヤルミルクティーで一服…!よし……決まりだ!」

 

そうして目当ての店に直行する大槻。

そして5分後には目的地のCafe Asakuraにたどり着き、店の扉を開ける。

 

「………む?」

 

店のカウンター席に見知った人物が座っていた。

正規空母の加賀である。

 

(加賀か……そういえばプライベートで出くわすのは初めてだな)

 

するとこちらに気付いたのか、加賀はペコリと大槻に会釈、大槻も会釈を返すと再びカウンターに向き直した。

 

(何を考えてるか分からんところがあるから仕事以外では避けとったが……まぁ、今更必要以上に歩み寄る気は無いし、向こうも干渉する気は無いみたいだから……ここは関わらずに一服、一服……)

 

加賀から数席離れたカウンター席に座る大槻。

 

「お待たせしましたー!シナモン多めのアップルパイにロイヤルミルクティーです!」

 

(そうそうシナモンをた~っぷりと、って………え?ワシまだ頼んどら――――)

 

不意に店員の声がした方を振り向く大槻は固まった。

なんと大槻が頼もうと思っていたシナモンたっぷりのアップルパイとロイヤルミルクティーが加賀の目の前に置かれていたのであった。

 

(なっ…!?コイツ、ワシのスペシャルメニューと同じものを……!まさか……グルメなのか…それなりには………)

 

呆然とする大槻をよそに、加賀はアップルパイを食べ進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後、喫茶店で一服し終えた大槻は昼食のために次の店に向かっていた。

 

(ふぅ~……美味かった。思わぬハプニングがあったが、気にしてても仕方がない…。昼は次郎系ラーメンで決まりだな)

 

そう思いながら目的のラーメン屋の扉を開ける大槻。

だが……!

 

 

店の中のカウンター席に加賀が座っていた。

 

 

(えぇ……!?またいる…!どうして……なぜ、ここに……!!)

 

呆然と立ち尽くす大槻。だが考察する間もなく店員が現れ注文を聞かれる。

 

「いらっしゃいませ~!ご注文は?」

 

「えっ…?あぁ、え~っと………」

 

(いかんいかん!落ち着け……!!)

 

「では…メン硬め、脂抜き、ヤサイニンニクマシマシで」

 

うろたえつつも何とか落ち着きを取り戻した大槻はいつもの人の良い笑顔で注文する。

その直後である。

 

「お待たせしましたぁ~!メン硬め、脂抜き、ヤサイニンニクマシマシです」

 

大槻が注文したものと全く同じ品が加賀の目の前に置かれる。

これには流石の大槻も開いた口が塞がらなかった。

 

(ま…またワシと同じメニューを………)

 

 

その後も

 

 

(おっ、新発売のホットチリペッパーバーガーかぁ…。だが今日は照り焼きビーフバーガーの気分だな)

 

偶然立ち寄ったハンバーガー屋に入れば

 

(うっ……!)

 

テーブル席に座った加賀が照り焼きビーフバーガーにかぶりついており

 

 

(気晴らしにボードゲームカフェに入るか)

 

大槻が最近はまっているボードゲームカフェに入っても

 

(んな……!?)

 

他の客とボードゲームに興じる加賀の姿があり

 

 

(そういえば今日はこの近くにワシお気に入りの焼き鳥屋の屋台が来るはず……おっ、あったあった!)

 

大槻お気に入りの焼き鳥屋の屋台の暖簾をくぐると

 

(ぐがっ……!!)

 

隣にはねぎま串と日本酒をあおる加賀が座っていた。

 

 

2人の行き先は被り…注文も被り…

全てが被りに被り続け

そして現在、大槻と加賀は示し合わせたわけでもなく、互いに距離を保ち同じ店で買ったソフトクリームを舐めながら日も暮れかけた池袋の街を歩いていた。

 

(……間違いない…この女……『()()()()()()()()()』!それも驚くべき程に……!!あと趣味も……!!)

 

ソフトクリームを舐めながら大槻は確信する。この一連で加賀が食べていたメニューは全て大槻が普段頼むものばかりなのだ。しかもメニュー表には無い頼み方まで被っているともなれば信じざるを得なかった。

 

(表情からは分かりづらいが、奴もそのことには気が付いとるはず……!)

 

だが2人は無言。互いに言葉は交わさない。

いや、交わさずともシンクロ…!

生まれる奇妙な一体感……!

シンクロナイズドスイミングのように抜群に息が合っているのだ……!!

 

そして2人は無言の中、互いに目を合わせることも無く

同じ道を歩き、そして――――――

 

 

ピタリと止まる、同じ店の前……!!

 

 

(ククク…そうそう、アップルパイにラーメン、ハンバーガー、焼き鳥と来たら次はここの海鮮丼だよなぁ~)

 

どこか満足気な顔でそう思った大槻は加賀と同時に店内に入り、加賀から数席離れたカウンター席に座る。

 

(そして、もちろん注文は―――――――)

 

「「ネギトロ丼、ネギ多めで」」

 

一言一句、タイミングも揃う注文。

 

(フッフフフ……そうそう、ここのネギトロは―――――)

 

「それと…豆板醤とウズラの卵もらえますか?」

 

(えっ……ええええぇぇぇえええっ!!!?)

 

途端、大槻は我を忘れて加賀の方を振り向く。対する加賀は涼しい顔で座ったままだ。

 

(豆板醤と……ウズラの卵だとぉ……!?同じ味覚だと思っとったのに………そんなものを乗っけようというのか……!ワシなら絶対にせん…!そんな食べ方……!)

 

そして間もなくして大槻と加賀の前に注文のネギトロ丼、そして豆板醤とウズラの卵が加賀に手渡された。

加賀はネギトロ丼の中央にウズラの卵を割り入れ、豆板醤を一すくい、二すくいとかける。

 

(………コイツとワシの舌が合うのは確か……しかし、これは………)

 

不審がる表情で加賀を見つめる大槻。だが加賀は大槻の視線を意に介さず美味しそうにネギトロ丼を食べる。

 

(グッ……美味いのか…?本当に………)

 

満足げな顔で食べ続ける加賀。

その顔を見た大槻の中に揺らぎが生じる…!

 

(頼んでみるか…?ワシも……ダメだ!やはり豆板醤はダメ……!!)

 

そんな大槻をよそに幸せそうにネギトロ丼をほおばる加賀。

 

(しかし、まぁ……分からんこともない…ウズラの卵は……うん……これだけなら合わんことは無いだろう………)

 

「ウ、ウズラの卵一つ……」

 

「はいよっ!」

 

苦難の葛藤の末、ウズラの卵を注文する大槻。そしてすぐに大槻の元にウズラの卵が来た。

そして加賀と同様にネギトロ丼の中央にウズラの卵を割り入れ、

いざ食べようと割りばしを割った、その時である!

 

 

(……えっ?)

 

大槻は一瞬何が起きているのか分からなかった。

 

 

カウンター席を滑るように横から豆板醤が登場し、大槻の目の前でピタリと止まったのだ。

 

 

豆板醤が滑り出た方を見ると、加賀が大槻を見てコクリと頷いたのだった。

瞬間、大槻は加賀の意図に気付いた。

 

(グッ……この女…『()()()()()()()()()()』!このワシに……!!)

 

それはまるでロミオとジュリエットの一幕。

 

2階のテラスにしがみつくジュリエット大槻。

ジュリエット大槻を受け止めようと手を広げ地上で待っているロミオ加賀。

 

大槻は苦悩する。加賀の舌は確かだが、もし外れた時のショックはでかい。だけど美味しそうに食べる加賀の様子に期待は持てるが、あと一歩が踏み出せず。

散々悩んだ挙句、大槻が出した答えは――――――

 

 

(ええい…!ままよ……!!)

 

豆板醤を手に取り、ネギトロ丼にかけ一口食べる大槻。

 

そしてロミオ加賀を信じて2階から飛び降りるジュリエット大槻。

 

 

 

 

(むぅ………!?)

 

大槻の中に電流が走る…!

 

(豆板醤の旨味と辛味が、マグロとウズラにいい具合に絡んで、美味さ倍付け……!!)

 

二口、三口とネギトロ丼をかきこむ箸が止まらない!

ロミオ加賀は無事にジュリエット大槻を受け止め抱擁!

そのままクルクルと回りダンスに移行、豆板醤とウズラの卵のワルツへ!

 

気付けば大槻、ネギトロ丼完食…!

加賀の方を見ると加賀はニッコリと微笑んでいた。

 

そんな加賀を見て大槻は加賀に手を差し出す。

そして加賀は差し出された手を握り返した。

 

 

提督と艦娘、上司と部下、その垣根を超えた『()()』が誕生した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が合った大槻と加賀はしばらく談笑した後に海鮮丼屋から出た。

 

「フフ…まさかあなたとこうも気が合うなんてね」

 

「あぁ、以前のワシなら考えられんかったよ。おっ、そうだ。少し行ったところに気の良い小料理屋があるんだ。2軒目はそこにしないか?」

 

「あら、私の舌を満足させられるかしら?」

 

「クク…分かっとるくせに……」

 

「フフフ……」

 

「ククク……」

 

お互いに笑いあう2人。今日は楽しい夜になりそうだ。

そんな時だった―――――――

 

 

 

「提督さんと…加賀先輩……何、してるんですか……?」

 

 

仲良く歩く2人の後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

ギョッとした2人は後ろを振り向くと

そこには練習巡洋艦の鹿島がいた。

 

「提督さん……用事って、加賀先輩と遊ぶことだったんですかぁ…?」

 

涙目になる鹿島。大槻はこの状況はマズいと感じ、必死に弁解する。

 

「い、いや…!加賀とはさっき偶然会ってだなぁ……なぁ加賀!」

 

「え、えぇ…!そうなのよ!これから飲みに行こうと――――」

 

「あっ、バカ…!」

 

大槻が制止した時には時すでに遅し。

鹿島はワナワナと震えていた。

 

「ふーん……お2人とも鹿島にそっけないのに随分と仲が良いんですねぇ………」

 

「ち、違う!誤解よ誤解…!」

 

「何が違うんですか!!嫌われ者の鹿島は帰りますのでどうぞ仲良く飲みに行ってください!!うええええええええええん!!!!!!!!」

 

感情のゲージが振り切れた鹿島は街中にも関わらず大声で泣きだした。

その泣き声に周りの通行人はなんだなんだと立ち止まり、気付けば3人の周りを野次馬達が囲んでいた。

 

呆然と立ち尽くす大槻と加賀。

2人の共通事項に新たな項目が加わった。

 

鹿島には要注意、と。




鹿島が泣いた理由は
大槻と加賀が普段鹿島に対して素っ気ない態度を取っているのに2人仲良くいる現場を目撃したため、2人から嫌われていると勘違いしたためです。
鹿島ファンの皆様ごめんなさい。

よろしければ読んだ感想をお願いします。

  • とても面白かった
  • 面白かった
  • 普通
  • つまらない
  • とてもつまらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。