鎮守府外出録テイトク   作:ていん?が〜

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今回のお話は原作15、16、17話をモチーフにしています。
また、大槻不在回です。


第5話「国際」

鎮守府の提督、大槻が体調不良で寝込んだ。

それに伴い秘書艦の高雄が提督代理として指揮を執り行った。大槻が有給を取る度に代理として何度か提督業務をしたことがある高雄だが、今回は大規模作戦真っ只中とタイミングが悪い時に業務を引き継いでしまったため、何とか作戦は遂行しつつも多忙を極め、金曜日の夜を迎える頃には艦娘のほとんどが疲れでバタバタと倒れたのだった。

 

そして翌日の土曜日は休日ではあるが、溜まりに溜まった疲れにより死んだように眠る者が多い中、加賀はいつものように食べ歩きに出かけていた。

 

(………さて、どうしたものかしら)

 

だが今回の外出はいつもとは違う。通常であればどこに食べに行くか、遊びに行くかを前もって決めた上で行動するのだが、今回はノープラン。しかも加賀が今いるのは千葉県木更津。加賀にとって初めて踏み入る街のため、前情報は完全に無しである。

 

なぜ加賀はこのようなことをしたのか。原因は現在遂行中の大規模作戦にある。大規模作戦中に高雄が提督代理として入ったため激務が続き、ほとんどの艦娘に疲労が蓄積された。それは加賀も例外ではなく、疲労だけでなくストレスも溜まりに溜まり、昨日の金曜日の夜に、どこか知らない遠い場所に行きたいという思いがフッと頭に浮かんだ。そして翌日の早朝にあてもなく電車を乗り継ぎ、今に至る。

 

(時刻は7時30分…朝ご飯も食べずに飛び出したからまずは朝ご飯…と行きたいところだけど、まだ昨日の疲れが残ってるのよねぇ…。喫茶店で爽やかにトーストとコーヒーって気分じゃないし………)

 

その時、加賀の視界にある店が目に入る。

加賀の足は止まり、口角が釣り上がる。

 

(なるほど……そうね、あえて一発目で入ってみようかしら)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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10分後、加賀は露天風呂に浸かっていた。

加賀が入ったのは24時間営業のスーパー銭湯、ニコニコ花丸ランド。

ここでは10種類を超える温泉に加え、サウナ、岩盤浴とラインナップも充実している。

加賀が今入っている愉悦の湯には、筋肉痛、関節痛、打ち身、くじき、五十肩に加え、切り傷、火傷、動脈硬化から神経痛まで多岐に渡る効能がある。

そして満身創痍の身体で暖かい湯に肩まで浸かっているため、あまりの気持ちよさにより加賀はうっかり温泉の中で何度も寝かけてしまう。

強烈な眠気に襲われ、やむなく加賀は温泉から出て館内用の浴衣に着替えると直行、無料の仮眠スペースへ。

あらかじめ敷かれている敷布団に体をうずめると加賀、即爆睡。仮眠ならぬガッツリと就寝…!

 

そして4時間後、目を覚ました加賀はのそのそと館内の食堂に向かい、即座に注文する湯上がり御膳…!

 

(風呂上がりといったら何を頼むか悩みがちだけど、どうせなら頼んでみたいものよ…長年湯上がりの客を相手にしてきた店が作る湯上がり御膳を。それにいろんな温泉での湯上がり御膳を巡るのもワクワクするのよね)

 

そして間も無くして加賀の元へ湯上がり御膳が運ばれてくる。

キスやエビの天ぷらにおろしポン酢付き牛たたき、とろろ麦飯、味噌汁、漬物、柚子シャーベットのフルコース…!

早速加賀はおろしポン酢を付けて牛たたきを一切れ食べる。

 

(ん〜〜!!おろしポン酢と相まって口の中で優しく解ける…!しかもこの牛たたき二切れというのが絶妙…!多すぎず少なすぎず…ちょうどいい!)

 

その次になめこの入った長芋とろろ麦飯をすすり、合間に天ぷらにかぶりつく。口休めに味噌汁と漬物も交差させてフィニッシュに果肉入りの柚子シャーベット…!

優しい食材達は加賀の中に染み渡り、更に体力が回復…!

食事を終えるとトドメと言わんばかりにマッサージチェアに着席。そしてガッツリ1時間…!わずかに残った無意識上の疲労すらも殺し尽くす…!

 

そうして加賀がニコニコ花丸ランドを出たのは午後2時。

体力が全開した加賀はザッと街を見回してみて、次の店をどうするかを考える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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加賀の脳内。無意識下において加賀が何を食べるか悩む度、その答えを見つけるべく毎回開催される。

 

そう…!各国脳内加賀によるグルメ首脳会談が……!!

 

円形状の会議場に各国首脳加賀が着席している中、その中央で本会談を取り仕切る艦娘着の加賀長が口を開く。

 

「え〜、それでは…私が何を食べたいか、皆の意見を乞いたいのだけどその前に……ロシア加賀」

 

да(ダー)(はい)」

 

加賀長に呼ばれ立つのは、防寒コートに毛皮の帽子を被ったロシア加賀。(グルメ採用回数:6回)

 

「あなたが提案した食前の朝風呂、見事に大成功したわね」

 

Спасибо(スパシーバ)(ありがとうございます)。ロシアでは風呂やサウナで疲れを取ることが常識…!何をするにも体は資本…疲れていては美食も体が受け付けまセン。そして温泉で身体を癒した後の湯上がり御膳。これが良い…!日本食デスが、疲れた胃には優しい食べ物…!そうして体のコンディションを整えた後に揚げたてのピロシキと熱々のボルシチ、これしかありまセン……!!」

 

「ん〜……湯上がり御膳は良かったけれど、その後にピロシキって気分じゃないのよね。木更津の街を見回した限りではロシア料理店は見かけなかったし。それじゃあ中国加賀の意見を聞こうかしら」

 

熱弁するロシア加賀の意見を却下する加賀長は次に中華拳法着を着た中国加賀(グルメ採用回数:128回)に意見を乞う。

 

「ククク……私、中国加賀が推すのはみんみん中華飯店…!街を見回した時にあった…!みんみん中華飯店木更津店…!チェーン店の強みはどんな土地でもバラツキのない味の均等化、つまりハズレが無い…!となればみんみん中華飯店でも上位の美味さを誇る麻婆豆腐は間違いないネ……!!」

 

「あら、麻婆豆腐……悪くないわね」

 

「クク…ですよネ?」

 

不敵に笑いながら主張する中国加賀。周りの首脳加賀達はどよめきあう。

 

「ちょっとちょっと……また中国加賀の独断場なの?」

 

「まあでも実際、中国の安定感はすごいのよね…。」

 

中国加賀を指差しながら話し合う韓国加賀(グルメ採用回数:14回)とインドネシア加賀(グルメ採用回数:4回)。

グルメ採用回数から分かるように中国加賀は全首脳加賀の中でも第2位、と驚異の採用率を占めるのだ。安定かつ鉄板の料理意見は食べ歩きにおいて信用を勝ち取っている。

 

「それじゃあそうね…アメリカ加賀はどう思うかしら?」

 

加賀長は次にアメリカ加賀を指名する。席に足を乗せたカウガールスタイルのアメリカ加賀(グルメ採用回数:18回)は深々とテンガロンハットを被っており、表情が窺い知れないがやがてポツリと

 

「……ハンバーガー」

 

と一言だけ言う。その様子を中国加賀は馬鹿にしたように笑う。

 

「アッハハ!!口を開けばハンバーガー、ハンバーガー…!却下ヨ却下……!!毎回ハンバーガーしか言えないのカナ、アメリカ加賀は…!加賀長、これはもう決まりネ…!今回は私の麻婆豆腐ということで……!!」

 

「あいや待たれよ」

 

突如口を挟むのは刀を携えた侍風の日本加賀(グルメ採用回数:228回)。

 

「みんみん中華飯店の二件の隣にあった丼専門店、蔵ヶ原木更津店。そこの特上鰻丼はどうですかな…?」

 

「なるほど、鰻丼……それにしましょうか」

 

「な…にぃ……!?」

 

このように喧々囂々…!毎回加賀の脳内無意識下で開かれているサミットのおかげで食べ歩きにおいて外れ無し…!驚異の自己満足度を叩き出しているのである…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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次の夕飯のサミットでは日本、中国を差し置いて決まったのはブラジル式BBQのシュラスコ。提案したサッカーユニフォームを着たブラジル加賀(グルメ採用回数:9回)は陽気にボールをリフティングしながら喜びを表現。そしてその日は近くのホテルでそのまま就寝。

 

そうして迎える翌朝の日曜日。遅くに起きた加賀は終了時間ギリギリに朝食バイキングに駆け込み、そこでも脳内サミットで逐一決めながら食べるものを取っていた。

 

 

しかし日曜日の昼、事件が起きた。

 

「皆さん、大変なことが起きました…。宅急便の荷物受け取りを今夜に時間指定していたことをすっかり忘れていました。遅くとも夕方には電車に乗って帰らないといけなくなるので、この昼食が休日食べ歩きを締めくくる最後の食事となります。つまり絶対に外す事が出来ません。そこで、この昼食は全会一致。全加賀が納得したもので勝負をしたいと思います」

 

その言葉に会場中の全加賀はざわめく。

 

「それじゃあ何かいい案がある者はーーーーー」

 

「ちょっとちょっと待つネ……!!」

 

勢いよく挙手する中国加賀。

 

「いくらなんでもおかしいヨ……!!中華が朝食バイキングの一食しか入ってないなんて……!!」

 

「そう……じゃあ、例えば?」

 

「ウ……た、例えば………猫猫軒の羽根つき餃子をビールでグイッと…!これで決まりネ……!!」

 

「う〜ん……何か違うのよねぇ、却下」

 

Я ждала(ヤ ザラ)(待って)!今度こそピロシキにしまショウ!ネットで調べたら少し進んだ先に評判のロシア料理店があるみたいデ……!」

 

「ピロシキ……ピロシキねぇ………」

 

「クフフ……では加賀長、これはどうでしょう。蕎麦屋で一杯……なんてどうです?」

 

ユラリと手を挙げる日本加賀。しかし各国加賀からブーイングを受ける。

 

「ちょっとふざけないでよアンタ!!」

 

「4食中3食も日本食が取ってるんだから引っ込みなさいよ!!」

 

「まぁまぁ落ち着きなされ……加賀長は日本人なので、当然日本食がお好き。であれば…あり得ますよね…?次の食事も日本食ということは……!」

 

ニコニコと笑う日本加賀。しかしその目は肉食獣のようにギラギラと輝いている。

 

「…………いや、流石にそれはないわ」

 

「フフ…御意……!」

 

加賀長の却下に日本加賀はあっさりと掌を返した。

 

 

その後も

 

「テリーヌ…!」

 

「ドネルケバブ…!」

 

「ピッツァ…!」

 

「トムヤムクン…!」

 

フランスやトルコ、イタリアやタイなど比較的採用数の多い国に加え

 

「チョリソー…!」

 

「オープンサンド…!」

 

スペインやデンマークなどのグルメ新興国まで次々と名乗り出るも

 

 

「う〜ん……そういうのじゃないのよねぇ………」

 

 

ことごとく撃沈……!!

なかなか煮え切らない加賀長に各国加賀はイライラが募り

気づけばサミットは沸騰…!乱闘状態に……!!

 

「タコスダヨ……!!」

 

「黙れ阿呆が…!タコライスだ……!!」

 

各国加賀は掴み合いの喧嘩を始め

 

「フィッシュ&チップス…!フィッシュ&チップス…!」

 

「マグレのイギリス加賀は引っ込んでなさい……!!」

 

とてもサミットを続けられる空気ではなくなっていた。

その様子に加賀長は焦燥する。

 

(マズイわ……今の私は数ヶ月に一度訪れる空腹迷子状態…!お腹は空いているけど、自分が何を食べたいか分からない…!何を食べても不正解な気がするわ……最悪、何を食べるか決めきれないまま時間だけが過ぎて間に合わせでコンビニのパンやおにぎりですませるなんてことになりかねない……!!)

 

最悪の結末にゾッとする加賀長。

が、その時………!!!

 

「レバニラ…!」

 

「えっ…!?」

 

「レバニラならどうネ…加賀長……!」

 

加賀長が振り向いた先には険しい顔をした中国加賀。

そう、加賀の大好物でありいつどんな状態でも外すことがないワイルドカード、それがレバニラである……!!

なので食べれば間違いなく堅い……満足度7割は………!!

 

「……だけど…ここでレバニラに逃げるのは………」

 

「ハァ…!?逃げて何が悪いんダヨ!!皆もレバニラで文句無いでショ…!?」

 

それでも渋る加賀長に中国加賀は激怒…!そして相手にならないと各国加賀に同意を求める。

 

「ま、まぁ…レバニラなら………」

 

「仕方…無いよね……?」

 

渋々とだが同意する各国加賀達を見て加賀長は仕方なくレバニラに決めようとした。

その時。

 

 

「ミッシュマッシュ!」

 

 

ざわめく会場に場違いな明るい声が聞こえる。各国加賀達が声がした方を振り向くとクマのぬいぐるみを持った幼女姿の加賀が手を挙げていた。

 

「あたしの国のミッシュマッシュはどうかしら!」

 

加賀長は見たこともない加賀の出現に困惑する。

 

「えっと……あなたはどこの国の加賀なの…?」

 

「わかんない」

 

「えっ……」

 

「国はわかんないけど……ミッシュマッシュっていう料理名だけは覚えてるの。ねっ、クマちゃん!」

 

「ハッ、そんなんじゃ話にならないネ…!そもそも国も分からないガキがサミットにいること自体おかしな話ダヨ……!!」

 

鼻で笑う中国加賀だが、加賀長はミッシュマッシュという料理名にどこか引っかかる。

 

「あっ、思い出したわ…!確か前に読んだdanchuに載ってて、美味しそうだと思った記憶はあるけど、どんなものだったかは………」

 

「ハァ〜〜……全然ダメ…!ダメダメネ……!!こんなガキの戯言はほっといて早くレバニラにーーーーー」

 

 

 

「面白えじゃねえか」

 

突如中国加賀の後ろで声がした。

 

「なるほど…何を食べたいか分からん時は、何か分からん物を食べる……そういうことか……乗ったぜ嬢ちゃん」

 

ボスッと大きなテンガロンハットが幼女加賀にかぶさる。

幼女加賀が見上げるとそこにいたのはアメリカ加賀だった。

 

「なぁ、加賀長さんよぉ……面白いと思わねえか?」

 

「クマちゃんもそうしようって言ってるよ、加賀長!」

 

「………………………………」

 

加賀長はしばらくうつむき考える。

そして

 

「………ここまできたら、賭けてみますか。一か八かのミッシュマッシュに……!!」

 

着火する…!加賀の開拓精神(フロンティアスピリッツ)に……!!

 

 

そして現実世界の加賀は

 

(あっ、そういえばミッシュマッシュっていうのがあった気がするわね)

 

と、早速スマホでミッシュマッシュのことを調べると徒歩10分のところにミッシュマッシュを出す店があることが発覚…!

そして店に足を運び注文して待つこと5分。

加賀の目の前に待望のミッシュマッシュが現れる…!

 

(へぇ…これがブルガリア風スクランブルエッグ…ミッシュマッシュかぁ)

 

彩り豊かな野菜とトロトロに溶けたチーズが半熟卵の中で香るミッシュマッシュ…!

これには加賀も無事満足し完食。

同時に幼女加賀は新たにブルガリア加賀に任命され、サミット内は大団円で終わった。

そして気分良く店を出た加賀はその足で駅に向かおうとした。

 

 

 

 

 

「ありぇ…?加賀ひゃんだぁ…!」

 

 

 

ろれつが回っていないが聞き覚えのある声が加賀の背後からした。

嫌な予感がした加賀はギギギ、と振り向く。

 

そこにはベロベロに泥酔した赤城、蒼龍、飛龍の3人が肩を組んでまるで3人4脚のようにピッタリと固まっていたのだった。

 

「加賀ひゃん加賀ひゃん…ぐうじぇん会えてうりぇしいでしゅ〜!」

 

「加賀ひゃんも飲みまひょうよぉ〜!」

 

「………いや、用事があるので私はここで」

 

「え〜!加賀ひゃん受けりゅぅ〜!飛龍の龍だけにぃ〜!」

 

「………………………………」

 

くだらないギャグに青筋が浮かぶ加賀だが、酔っ払いに絡んでも何も良いことはないので足早にその場を去ろうとするが

 

「待っちぇくだしゃい加賀ひゃ〜ん!一航戦の誇りわしゅれたんでしゅかぁ〜!?」

 

「ちょっ…!?離してください……!!絡み酒する一航戦に誇りなんてありません!!」

 

「加賀ひゃんちゅめたくて泣きしょ………う゛ぶっ!!」

 

加賀の体をガッチリ捕まえていた赤城の顔色が悪くなる。

 

「えっ、嘘嘘嘘…!!やめてください!!こんなところで吐かないで……!!せめて私を離してからーーーーーー」

 

「う……う…うぼろろろろろろろろおおおおおおおお!!!!!!」

 

「赤城ひゃん吐いろろろろろろろろろろろろろ!!!!!!」

 

「ははは受けりゅろろろろろろろろろろろろ!!!!!!!」

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!」

 

加賀の抵抗も虚しく赤城はリバース…!そしてそれを見ていた蒼龍と飛龍ももらいリバースをし、木更津の通路にプチ地獄絵図が完成した。

 

そして翌日3人に一発ずつ拳骨をお見舞いした加賀は1ヶ月間3人と口をきかなかったのだった。

ちなみに荷物受け取りの方は間に合わなかった。




加賀さんと赤城さん達は仲悪くはありませんが、酔っ払っている時は関わりたくない感じです。

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