しかし私は未だにE-2で資材不足と即大破により泣かされています。
太平洋海底のとある基地。そこには複数の鬼・姫級の上位深海棲艦達が集まっていた。
「……ショクン、エンロ ハルバル ヨク アツマッテ クレタ」
口を開いたのは深海日棲姫。神事の格衣を身につけ、真っ白な仮面のような顔をした上位深海棲艦である。
「コタビ ハ ココ タイヘイヨウ ニテ ダイキボ ジュウリン ヲ オコナウ。ソレ ニ トモナイ 『
深海日棲姫の言葉に興奮しざわめく深海棲艦達。
「フフ…マァ、マテ。ソウ セカスナ。ダガ ショウカイ ノ マエ ニ ココ ニ イル ナンニン カ ハ コウ オモッテル ノデ ハ ナイカ?『
深海日棲姫のその一言に歓喜ムードだった基地は静まり返ってしまう。
「タシカ 二 ソウダ。ワタシ モ ウデ ノ アル ホウ ダッタガ ヤツラ 二 カエリウチ 二 サレテシマッタ。オモイダス タビ 二 ハラワタ ガ ニエクリタツ」
「ワタシ モ コノ サクセン ノ マエ ハ フアン 二 オモッテイタ。ダガ……クク…『
深海日棲姫の目元が歪む。
「キノウ ヤツ ヲ ムカエ 二 イッタ トキ オドロイタ ヨ。ナニセ 『
突如指名された戦艦棲姫は不機嫌そうに顔を歪める。
「……コンナコト クチ ニハ シタクナイケド シニモノグルイデ ニゲル スキ ヲ ミツケル カ………ジケツ ノ ドチラカ ダワ」
「ソウ…!フツウ ナラバ 50 タイ 1 ノ ジョウキョウ デ タタカオウ トハ オモワナイ…!コノ ワタシ デ サエ カクレテ ミテル シカ デキナカッタノダ……!!」
怒りのあまり仮面のような顔を歪ませる深海日棲姫。しかしそこで港湾棲姫の後ろに隠れていた北方棲姫がおどおどしながら口を挟む。
「ジャ、ジャア…アナタ ハ ソノコ ト ニゲカエッテキタ ノ…?」
「……モシ ワタシ ダッタラ ソウ シタ ダロウ」
「ダガ ソレ ハ イッシュン ダッタ……!!」
深海日棲姫はクワッと目を見開く。
「ヤツ ガ シタガエル ギソウ ガ カンムス ドモ ヲ タタキツブシ ソシテ クライツクシタ…!モノ ノ サンプン デ カンムス ドモ ハ ゼンメツ シタ ノ ダヨ…!」
「カズ ノ ボウリョク ハ オソロシイ……ダガ アットウテキ ナ コタイ ノ ボウリョク ノ マエ ニハ ム ニ ヒトシイ…!サナガラ クジラ ニ イドム イワシ ノ ムレ ノ ヨウニ……!!」
「……オット シャベリスギタナ。デハ ソロソロ ショウカイ スルトーーーー」
「アノ…シンカイ ニッセイキ。チョット イイカシラ…?」
「……ナンダ、ジュウジュン セイキ。アト ニ シテ クレナイカ?」
突如遮る重巡棲姫に眉をひそめる深海日棲姫。
「ゴメンナサイ、スコシ キ ニ ナッタ ノ ダケド……ソノコ ノ ギソウ ッテ クジラ ノ カタチ ヲ シテタリ シナイ カシラ…?」
「ホウ…ナンダ、スデニ シッテタ ノカ。ダガ ショウカイ ノ マエニ バラス ノハ スコシ イタダケ ナイゾ?」
「エエト、ソウジャナクテ………ウシロ、ミテクレル?」
重巡棲姫が指差すので、深海日棲姫は仕方がなく後ろを振り向く。
そこには巨大な白鯨の艤装が静かに佇んでおり、その様子はまさに圧巻とも言えるものだった。
が、しかし………
「………ハ?」
白鯨の艤装はあれど、肝心の本体がどこにも見当たらない。
「ワタシ タチ ガ ココ ニ キタトキ ニハ モウ イタ ノヨネ」
「……ナゼ オマエ タチ ハ キヅイテ イナガラ ナニ モ イワナカッタ ノダ…?」
「イヤ……ソウイウ クジラ ナンダナ ッテ オモッテテ………」
「ソンナ ワケ アルカ…!バカドモ ガ……!!イッタイ ドコ ニ イッタ ンダ!!『
深海日棲姫の怒号が基地中に響く。
主人に置いていかれた白鯨の艤装はその様子を悲しそうに見つめるばかりだった。
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東京都杉並区西荻窪。
古書店やアンティーク雑貨店が並ぶこの街を『
太平洋深海棲姫は深海日棲姫に連れられた先の基地で待機するように言われたが、お腹が空いたため白鯨の艤装を置いて基地を抜け出しフラフラと当てもなく彷徨った結果、西荻窪に着いたのだった。
今の彼女は艤装を外しただけなのだが、幸いにも戦艦棲姫同様の完全な人型であるため、怪しまれることなく街をぶらついていた。
だがそれでも彼女の格好は、白髪のショートボブに加え、白のカクテルハットにケープ、両脇が空いたブラウスという独創的かつ露出の高いものであるため別の意味で目を引いていた。
しかし彼女はそんなことには目もくれず、堂々と歩く。今の彼女は何かガッツリとしたものを食べたい気分だ。食べ飽きてる魚ではなく、ジューシーな肉を欲している。故に肉を求めて当てもなく歩いていると、前方から揚げ物の良い香りが漂ってくる。香りにつられて進んでいき、そしてたどり着いた先はカツ丼専門店『かつ澤』。太平洋深海棲姫はそのまま店の引き戸をガララ、と開けた。
「いらっしゃいませー!お一人様ですね!テーブル席までどうぞ!!」
太平洋深海棲姫を迎えたのは活気のある女性店員。店員は特に怪しむこともなく彼女をテーブル席まで案内する。
そしてメニューを広げ、ジッと見据えるとすぐに店員を手招きして呼んだ。
「はい!ご注文は何になさいますか?」
太平洋深海棲姫は店員に耳打ちをして注文を伝える。
その途端、店員の顔は見る見るうちに青ざめていった。
「お…お客様……本当に『
店員の一言に店中の人間がざわめき、一斉に太平洋深海棲姫の方を振り向く。
だが彼女はそんなことも気にせず、コクリと頷く。
「か…かしこまりました…!大盛り入ります……!!」
注文の受理がなされた瞬間、まるでボクシングのチャンピオンベルト防衛線が始まるかのようにざわめきが一気に歓声へと変わる。
「すみませんお客様、別のお客様が大盛りを注文されましたのでーーーーー」
「えぇ、分かってます。全ての注文をストップして大盛りを優先……そういうルールですからね」
「ありがとうございます!」
先程の店員は太平洋深海棲姫の隣のテーブル席の客から了承をもらうと急いで厨房へと引っ込む。
(ふふ…懐かしいですね。私も分からずに大盛りを注文した時のことを思い出しますね)
思い出に浸りながら太平洋深海棲姫の隣の客、正規空母の赤城はお冷やをグビリと飲む。
(しかしあの方……どことなく深海棲艦に似てるような…でも艤装をつけてませんし、見たこともありません。なにより深海棲艦が大規模作戦真っ只中に東京でご飯を食べにくるはずがありませんから、私の勘違いですね)
赤城の疑いは強まることなくそのまま霧散した。
そして大盛りの注文が入ってから20分後。
太平洋深海棲姫の前に置かれたのは、大盛りなど生易しく思えるレベルの『
洗面器サイズの丼には山脈のように盛られた米が当たり前のように丼からはみ出ており、その上には成人サイズのサンダルよりも巨大なトンカツが3枚も乗せられている。言うなれば大食い大会で目にするようなモンスターサイズであった。
(ふふ…これぞ、かつ澤の大盛りカツ丼…!なぜ2段階も3段階もすっとばしたサイズなのかと思うのでしょう?この店ではね……並盛りから下に刻んでるんですよ…サイズを…!並盛りで他店の超特盛り、小盛りで特盛り、レディースサイズでようやく並盛りレベルになるんです……!!)
そして目の前に置かれたモンスターカツ丼をただただジッと見据える太平洋深海棲姫の元に店員がカメラを持って現れた。
「あのぉ〜…大盛り挑戦者には撮影をお願いしてるんですが、後ほどいいですか?」
そう声をかけてきた店員に太平洋深海棲姫が不思議そうに首を傾げた時、ある写真が目に飛び込んだ。
それはガタイの良いラガーマン3人が3分の1まで残った大盛りカツ丼を前に苦しそうに腹を抱え
【T京大ラグビー部敗退…!かつ澤さんやばいっす!主将K藤】
と書かれた写真が店の壁に飾られていた。
(うふふ……後悔してるでしょう?私も知らずに初めて頼んだ時は泣かされました。えぇ、涙を流しながら残してしまいましたよ。だけどね、その時の失敗があるからこそ今の私があるんです。そう…一航戦赤城のルーツはかつ澤にあると言っても過言ではありません……!!)
懐かしむようにカツ丼レディースサイズをかきこむ赤城。そして飾り付けられた写真達を見る。T京ラグビー部の写真の横には、苦し紛れの作り笑顔の赤城が空になった丼をカメラに見せ
【I航戦の誇りは失われません!I航戦A城】
と書かれた写真が飾られていた。(挑戦4回目)
(ふふふふ……顔には出ていませんが、あなたは今絶望に陥っている。泣きたい気持ちでしょう?一応この店ではメニューにはありませんが、頼めばマヨネーズや七味といった調味料が出てきます。それらを駆使して騙し騙し食べるテクニックもありますが………あなたには教えません!!親切心であなたに教えてもそれは甘えにしかなりません…!自分で頼んだのなら自分でカタをつけるのが筋…!失敗してもその涙を…悔しさをバネに強くなってください……!!)
しばらくモンスターカツ丼を無表情で見つめていた太平洋深海棲姫だったが、再び店員を手招きで呼びつけ耳打ちをする。
「はい………えっ、はい…かしこまりました、少々お待ちください」
店員は少し驚いた顔をしながら厨房に向かっていく。それを不思議そうに見つめる赤城。
(うん?何かを頼んだのですか…?もしかして味変のための調味料の存在に早くも気づいたのですか…!だとすれば少しはやるようですね…!)
そして1分後、店員は太平洋深海棲姫の元に戻り、あるものを渡した。
それはなんと………お た ま だった…!
それを見た赤城にある予感がよぎる。
(なっ…!?まさかこの子……そのおたまで、食べようというの…!大盛りカツ丼を……!!)
赤城の予想通り、太平洋深海棲姫は早速手渡されたおたまを使い、ショベルカーのように豪快にすくいあげる…!カツの氷山は一気に削り取られ、代わりにおたまにカツの小山が形成される…!そしてそのまま太平洋深海棲姫はカツの小山を一気に口の中に放り込む…!モグモグとハムスターのように頬張るとすぐさまカツの氷山を削り、それをまた口に放り込む…!それはまるで鯨が海水ごと餌の魚を丸呑みする様…!これには流石の赤城もあんぐりと口を開けたまま呆然…!
(な…なんてことなの……この子…ものの数分で3分の1を食べ終えた……!!マズいわ…!このままあっさりと完食されたらかつ澤初の大盛り女性完食者の座が奪われてしまう……!!それだけは絶対に阻止しないと……!!)
レディースカツ丼を食べる手も止まり、涼しい顔で大盛りカツ丼を食べ進める太平洋深海棲姫を親の仇のように凝視する赤城。
すると突如、太平洋深海棲姫の手が止まり不意に立ち上がる。
(なっ…!?何をする気……!!)
思わず身構える赤城。太平洋深海棲姫は悠々と赤城を横切り、店の奥のトイレの扉を開け、中に入った。
(あっ…なんだ……お手洗いに出かけただけですか…。)
ホッとする赤城。しかしそれも束の間。長くても10数分もすれば太平洋深海棲姫は戻ってくる。そうなればあっという間に大盛りカツ丼は食い尽くされ、かつ澤初代クイーン(自称)の座が奪われてしまう。一体どうすればと思いつめた時、赤城に電流が走る…!
(そうだ……彼女が完食出来ないように妨害すればいいじゃありませんか…!いつも携帯している特製強力下剤を彼女の大盛りカツ丼に混ぜてあげれば私の勝ち…!以前アイオワさんと大食い対決した時にはこの下剤のおかげで彼女は3時間トイレから出ることが出来ずに私の勝利が成された…!これで一航戦の誇りを守ってみせます……!!)
赤城はすぐさまカバンの中から下剤の小瓶を取り出すと、隣のテーブルの大盛りカツ丼に垂らそうとした、が……!!
「お客さん……あんた、何してるんでい?」
小瓶を持った手はかつ澤店主、大宮蔵之介(58)に掴まれすんでのところで下剤…カツ丼に届かず…!同時に赤城、かつ澤を出禁……!!
出禁になった腹いせに赤城は後輩の蒼龍と飛龍を呼びつけ、昼間から居酒屋をはしご…!その翌日に泥酔したまま渡った千葉県木更津で加賀と出くわすことになるのだが、詳しくは第5話「国際」を参照……!!
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太平洋のどこかにある深海棲艦達の基地。
そこに太平洋深海棲姫が爪楊枝で食いカスを取りながら帰ってきた。
「キサマ……イマ マデ ドコ デ アブラ ヲ ウッテ イタ?」
顔中に青筋が浮かび、怒りのあまり何本か血管が切れた深海日棲姫が彼女を出迎える。しかし太平洋深海棲姫は意にも介さず近くにいた重巡棲姫に耳打ちをすると、深海日棲姫をすり抜けスタスタと歩いていく。
「アノ……ショクゴ ノ オヒルネ スル ッテ ………」
「キキキキキキキサマアアアアアアア!!!!!フザケテンジャブゲェッ!?」
激怒した深海日棲姫が殴りかかろうとするも太平洋深海棲姫のワンパンで呆気なく吹っ飛ばされ大破してしまった。
そして太平洋深海棲姫が起きるまでの6時間、侵略作戦は彼女無しで進めないといけなかったため大分苦戦したのだった。
オマケその1「かつ澤の大盛りカツ丼を完食した太平洋深海棲姫の写真+α」
【美味しかったです。また来ます。TSS姫】←空の丼の隣に無表情でダブルピースをする太平洋深海棲姫
その写真の数枚隣には
【I航戦の誇り…ここで失うわけには…!I航戦A城】←3分の2も残ったカツ丼の前でマジ泣きする赤城(挑戦1回目)
【え?これホントにズルやイカサマとかしてないですか??I航戦A城】←吐きそうな顔で半分も残ったカツ丼を指差す赤城(挑戦2回目)
【なんなん?なあ?これマジなんなん??I航戦A城】←3分の1まで減ったカツ丼を差し置いて虚ろな目でカメラにガンを飛ばす赤城(挑戦3回目)
さらにその写真から数十枚隣には
【この大盛りノーカンで…!O槻KO…!】←半分以上残ったカツ丼を前に吐きそうな提督大槻
オマケその2「挑戦4回目にしてやっと、かつ澤大盛りカツ丼を完食した後の赤城」
暁「赤城さんおかえりなさい!って、どうしたの!?何だか苦しそう、大丈bーーー」
赤城「近づくなっ!!」
暁「ひっ!?」
赤城「今の……ぉぇ…私に…触ったら……うっぷ………どうなっても……知りませんよ………!!」ギロッ
暁「な…なんなのよぉ……」グスッ
響「
今度こそ終わり。
赤城さんファンの皆様ごめんなさい。
次くらいに元々予定していた大槻看病回が来ます。
よろしければ読んだ感想をお願いします。
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