鎮守府外出録テイトク   作:ていん?が〜

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お待たせしました。
原作第9話を元にしていますが、ほとんどオリジナルです。


第7話「操縦」

金剛姉妹の地獄のお茶会の翌日。

提督、大槻は鎮守府内に設けられた自室にて布団にくるまり寝込んでいた。

 

(ぐぅ……金剛達め…!奴らと食のことで関わるのは二度とごめんだ……!!)

 

「ゲッホ…ゲホ……!!」

 

激しく咳込む大槻。先程熱を計ったところ、38.8℃とかなりの高熱があり、更に体が満足に動かさないほどしんどいため大人しく寝てるしか無かった。

 

(クソ……体が動かせるのであれば、自分で何とか出来るのだが仕方ない。しばらくは寝て少しでも体力を回復させるとするか……)

 

そう思い、目をつぶって寝る準備に入る大槻。

その時である。

 

コンコン、と自室の扉を叩く音が聞こえる。

 

(ん?なんだ、艦娘の誰かが来たのか?しかし今のワシは満足に立てない上に声も出せん…どうしたもんかなぁ)

 

扉を叩く人物に対して何もすることができない大槻は、うーんと悩みうなだれる。

すると反応が無いことに気づいたのかノックの音がドンドン、と強くなった。

 

(グオ…!音が体に響いて気持ち悪い……!!鍵はかけとらんからとりあえず入ってきてくれ!!)

 

耳を抑えながら、扉の向こうの人物が自室に入ってくるのを待つ大槻。

しかしそんな大槻の意思は届かず

 

ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!

 

扉が壊れる程けたたましくノックの嵐が降り注ぐ。

大槻は布団の中で声にならない悲鳴をあげ、ノックが止むのを弱々しく耐え忍ぶ。

 

すると突如ノックがおさまり、バン!と勢いよく扉が開かれる。

 

 

 

 

そこにいたのは練習巡洋艦の鹿島だった。

 

「いやあああああああああああああああ!!!!!!!!!提督さああああああああああああん!!!!!!!!!」

 

鹿島は一目散に大槻まで駆け寄り大槻の肩を掴むとグワングワンと揺さぶる。

 

「うわあああああああああああん!!!!!!!!でいどぐざんじなないでええええええええ!!!!!!!!」

 

涙と鼻水で顔がグチャグチャになっているにも構わず叫び続ける鹿島。

だが当の大槻は声が出せず体も動かせない程弱っている状態。そんな時に艦娘の力で強く揺さぶられたら本当に死んでしまいかねない。

 

(ガッ……今…まさに…!お前に……殺され…かねん……!!)

 

大槻は鹿島の腕に弱々しくタップして自身の生存を確認させることで何とか危機的状況を打破…!

そして枕元に偶然転がっていた紙とペンを使い自身の意思を伝える。

 

【体調が悪すぎて動くことができんのだ。それに声も出せん】

 

「あっ、だから反応が無かったんですね…!そうとは知らずに…ごめんなさい……」

 

【それはもういい。それよりも何でお前がここにいる?仕事はどうした?】

 

「はい…いつも通りお仕事をしていたら代理の高雄さんから、今のお仕事はいいから代わりに提督さんの看病をしてくるようにと言われまして……」

 

鹿島が言ったことに大槻は心の中で頭を抱えた。

大槻は鹿島のことが苦手だ。はっきり言って看病も他の艦娘にしてもらいたいところだが、直接誰かを呼べるほどの体調では無い上に鹿島にその旨を伝えたとしても鹿島がぐずって面倒なことになりかねない。

 

【そうか、ではすまんがよろしく頼む】

 

大槻は背に腹はかえられぬと、鹿島の看病を承諾。

鹿島はパァッと顔が明るくなり、「はい!練習巡洋艦鹿島!頑張ります!」とビシッと敬礼する。

 

【それじゃあ、薬局に行って解熱剤と下痢止めと頭痛薬とあと冷えピタを買ってきてくれ】

 

早速大槻は必要な品々を書いたメモを鹿島に渡す。

 

「はい!ところで提督さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()?」

 

メモの薬局という文字を指差し質問する鹿島。

大槻はその言葉に顔を歪ませるも、【やっきょく】とひらがなで書いたメモを鹿島に見せる。

 

「あっ、そうなんですね!ありがとうございます!それとその隣のこの漢字も読めないんですが、何て読むんですか?」

 

続けて鹿島は解熱剤の文字を指差す。大槻は若干嫌な予感を感じつつも、【げねつざい】とひらがなで書いて鹿島に見せる。

 

「提督さんありがとうございます!へぇー、こう読むんですね!それとそのまた隣のこの漢字は何て読むんですか?」

 

鹿島は下痢止めの文字を指差す。

 

(……………………………………)

 

大槻はゲンナリとしながら、スラスラとメモにペンを走らせる。

 

【やっきょくにいって、げねつざいとげりどめとずつうやくとひえぴたをかってきてくれ】

 

「はい、分かりました!鹿島、抜錨します!!」

 

ひらがなに書き直したメモを鹿島に渡すと、鹿島はすぐさま部屋を飛び出していった。

 

 

 

3時間後

 

薬局に行った鹿島は未だに戻ってこない。

 

(グウゥ……薬局なぞ鎮守府から10分もすれば着くだろうが…!一体何をしとるのだあのバカは……!!)

 

一向に戻ってこない鹿島にイライラする大槻。するとその時、ガチャリと部屋の扉が開かれビニール袋を持った鹿島が入ってくる。

 

「提督さん、ただいま帰港致しました!」

 

【かしま、くすりをかうだけでなぜこんなにじかんがかかったんだ?】

 

「ごめんなさい提督さん!実は薬局という名前のお店がどこにもなかったんですよ!どこを見てもドルグストレ?っていうお店しかなかったから電車を乗り継いで、東京の郊外でやっと田沼薬局っていうところを見つけたんです!お薬が売られてるところってなかなか無いんですね。あっ、これお薬です」

 

そう言って鹿島はビニール袋から買ってきた薬を出す。

 

・壺に入った謎の液体

・下剤

・頭だけの獣のミイラ

・湿布

 

「まず げねつざい なんですけど、田沼薬局のおばあちゃん(98)直伝のこの壺の中の飲み薬がすっごい効くみたいなんです!それと げりどめ はお腹のものを全部出した方がいいって言われたので、この げざい を買ってきました!そして ずつうやく は昔の中国の王様がよく頭が痛いのを治すために使っていたと言われているこのミイラをオススメされたので買ってきました!怖いけど鹿島、勉強になりました!最後に ひえぴた は漢字が読めませんでしたけど、これを貼ればなんと疲れも取れるそうです!!」

 

(………………………………………)

 

心の中で絶句する大槻。

ここまでのやり取りでお分かりかもしれないが、鹿島はとても頭が悪い。

 

出撃すれば全弾敵味方構わず誤射するだけでなく、遠征すれば燃料やボーキサイトの代わりにけん玉やケンタッキーフライドチキンを持ち帰り、開発任務を任せれば、ブリキ製の荒俣宏フィギュア(1/6サイズ)が出来上がり、建造任務を任せれば、艦娘ではなくオカマ口調のクリスタルボーイが着任することになり、間宮食堂で料理を運ぼうと皿を持った途端滑らせその料理を注文した艦娘の顔面に勢いよくぶちまけ、皿を洗えば滑らせ間宮の顔面に連続ヒットし、終いには練習巡洋艦としての授業を行えば、擬音語が9割を占める専門用語が一切出てこずかつ内容の理解できない大不評の授業が完成するなど、どこか次元の超えた仕事の出来なさに加え、頭の悪さ、要領の悪さ、知識の貧困さを兼ね備えたのがこの鹿島だ。そのため、鹿島に仕事が振られることはまず無いのだが、本人は仕事熱心のため、余計にバツが悪い。ちなみに2話「包卵」でローソンに勤務していたが、1日でクビになった。

 

(コイツ……仕事が出来ないのは分かっていたが、まさかここまでとは…!というか、この頭の悪さでどうやって練習巡洋艦になれたんだ……!!お前はどうあがいても教える側じゃないだろうが……!!)

 

頭痛の上に更に頭を抱える大槻。だが深呼吸で息を整え平静を取り戻す。

 

(しかし現状のワシでは、コイツにすがるしか方法が無い…。仕方ない……だいぶ手間はかかるが、ワシが逐一指示を出してコイツにマトモな看病をさせられるように誘導するしかない……!!)

 

大槻は腹をくくった。このまま看病を任せていたら治るどころか悪化してしまう。それなら鹿島にも理解できる指示の書いたメモを使い、鹿島がシッカリと看病できるように上手く誘導していこうというのだ。

それはさながら、金田少年がコントローラーを操縦して、鉄人28号を動かすように、大槻が鹿島を操縦してミッションをクリアせねばならない。

大槻少年と鉄人鹿島28号のハードミッションがここに幕を開けたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

看病2日目

鹿島が昨日買ってきた薬は軒並み使えなかったため、大槻は鎮守府近くのドラッグストア(鹿島はdrug storeをドルグストレと読んでいた)のアルカに薬を買い直すことと、そして薬の名称とその薬効を、更に分からなければ分かるまで店員に聞くようにと、メモ用紙に全文ひらがなで丁寧に書き記して鹿島におつかいに行かせた。

 

2時間後

鹿島がビニール袋を引っさげて満面の笑みで帰ってくる。

 

「提督さん!今度は間違わずに買ってこれました!!」

 

鹿島は袋から解熱剤、下痢止め、頭痛薬、冷えピタを取り出した。

が……!!

 

(…………………………………)

 

それらは全て子供用の薬だった。ご丁寧に冷えピタまでも幼児サイズである。

大槻は再び鹿島に買い直させるが、次はオール漢方薬だったり、その次は栄養ドリンク4種類だったりと、鹿島は間違いを繰り返し、やっと正しい薬を買ってこれたのは翌日3日目の夕方だった。

 

 

 

看病4日目

やっとこさ薬を飲んで少しマシになった大槻が鹿島に命じたのは、水を張ったバケツ一杯に筒状に丸めた新聞紙を隙間なく詰め込むというもの。

こうすることで即席の加湿器が出来上がるのだ。

 

(ふぅ…とりあえず、加湿器を作り終えたらスーパーで買わせた鍋焼きうどんを食べて寝るとするか)

 

鹿島が加湿器を作っている間、大槻は布団の下を折り曲げた後に左右も折り曲げることで布団内の空間を完全密閉した大槻ロールで体を温めながらゆっくりと待機。しばらくすると鹿島が大槻を呼びかける。

 

「提督さん!加湿器出来上がりました!」

 

満面の笑顔で出来上がった加湿器を見せつける鹿島。

だがそれは、細長く圧縮され、まるで槍のようになった新聞紙がぎっしりと詰め込まれたもので、まるで剣山のように水を張ったバケツから生えている。

 

(………惜しい…惜しいけど……そうじゃない…!)

 

結局大槻は鹿島にマンツーマンで加湿器作りを教えることになり、4回目にしてやっと正しい即席加湿器が完成したのだった。

 

 

 

 

 

 

看病5日目、これまで食事はスーパーの即席鍋焼きうどんなど調理の必要がほとんどないもので済ませてきた大槻だが、鹿島が手作りのものを作りたいとどうしても聞かないため、鍋を作らせることにした。

大槻は4話「舌外」にて比叡に辛酸を舐めさせられて以来他人に料理を作らせることに対して拒否を示していた。ましてや絶望的に仕事が出来ない鹿島なら尚更である。

しかし、大槻の操縦で鹿島も幾分かマシになってるため、大槻同伴という条件で調理を許した。

 

現在、間宮食堂の厨房の隅を借りて鹿島が鍋の前に立っている。その後ろで大槻が(大槻ロール状態ON台車)鹿島の動向を見守っている。

 

【まずはながねぎをそれぞれ4せんちできっていくんだ。せんじょうじょきんしたじょうぎがあるからそれでながさをはかるんだ】

 

「はい!」

 

【ちがう!たてにきるんじゃない!よこに4せんちずつきれ!】

 

「は、はい!」

 

【それじゃみじかすぎる!みじん切りになっとる!それにじょうぎごときるんじゃない!!】

 

「は、はいぃ!!」

 

大槻は現在他人の調理に対して疑心暗鬼になっている上に元々こだわりの強い性格のため、鹿島の少しのミスに対してもメモによる指示をガンガンとばしていく。それに対して鹿島はあたふたと試行錯誤しながらも調理を進めていく。

その様子を巨人の星の星明子のように厨房の外から見守る間宮。

 

「頑張りいや……鹿島はん頑張りいや………」

 

涙を流しながら何故か関西弁でエールを送る間宮。そんなこんなで調理が終わったのは、翌日6日目の明朝4時。完成したのは長ネギと生姜たっぷりのつみれ鍋。生姜の香りが食欲をそそる。

 

「て、提督さん!やっと…やっと完成しました!!」

 

涙を流しながら歓喜する鹿島。ピョンピョンと飛び跳ねる鹿島を見て微笑む大槻。

 

「あっ!それじゃあ早速お鍋よそおいますね!」

 

鹿島は長ネギとつみれを小皿に盛りつけ大槻に渡す。しかし大槻は小皿を受け取ろうとせず、代わりにメモを鹿島に見せる。

 

【おまえもくえ、かしま】

 

「え…?」

 

【こんなにうまそうなつみれなべをワシひとりではくいきれん。さぁ、いっしょにくうぞ】

 

「は…はいっ!ありがたくいただきます!!」

 

更に涙を流しながら自分の分もよそおう鹿島。そして長ネギとつみれを箸でつまんでパクリと食べる。

 

「ふわあ〜!しんなりとした長ネギとつみれのお肉って感じの美味しさがおつゆと相まってすっごい美味しいですぅ〜〜!!」

 

【ふふふ…わしのぶんものこしとけよ?】

 

バクバクと食べ進める鹿島を微笑みながら見つめる大槻。つみれを長ネギで挟み、口に放り込む。予想通りの美味さが大槻の体を駆け巡り安堵とともに疲れを癒していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして看病7日目、試行錯誤しながらの看病の果てに遂に大槻の熱は引き、歩けるようになった…!

 

「ふう…これなら明日から仕事に戻れる。ここまでよく頑張ってくれたな、鹿島」

 

「提督さん……提督さああああああああああああああああん!!!!!!!!!!」

 

感極まった鹿島は大槻に抱きつく。涙と鼻水で大槻のパジャマはぐしょぐしょだが、それにも構わず大槻は鹿島の頭を優しく撫でる。

 

「ごべんなざい!!ご迷惑おがげじでごべんなざああああああい!!!!!!」

 

「いいんだ……!いいんだ………!!」

 

鹿島を撫でる大槻の目からは一筋の涙が流れる。大槻には体調が治ったことよりも鹿島がマトモな仕事が出来るようになったことが嬉しくてたまらなかった。

 

 

 

 

だが大槻は気付かないフリをしていた。

 

もし鹿島がおらず、自分1人ならおよそ1日寝ていれば何とか動ける状態までは回復し、そこから自分で薬や鍋の具材を買い、調理して養生すれば2日、遅くても3日で体調を完全に回復できていたことは予想できていた。

鹿島のせいで体調不良が長引き、治すのに1週間かかったがそんなことには大槻、気付かないフリ…!考えないようにしていた……!!人間は都合の悪いことは考えないようにする生物なのである……!!

 

 

翌日、大槻と一緒にいたためか鹿島は風邪で寝込み、大槻は執務作業の合間に鹿島の看病をしたのだった。(どうしても抜けれない時は他の艦娘に看病の代理を頼んだ)




大槻と鹿島に損得勘定を抜きにした奇妙な友情が生まれました。

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