けものフレンズR ~Rebirth~   作:悠希とふ

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アニメーション作品、けものフレンズ2の二次創作である『けものフレンズR』を元にした三次創作です。


1話 りばーす  【Aパート】

ここ数年で一際大きい地震の起こった日。

ジャパリパーク内、とある地方の老朽化した研究所、その天上の一部が大きな音を立て落下した。

施設の崩壊はそれだけでは止まらない、壁や機材、あらゆる物が元ある形を失っていった。

 

崩壊が一段落し、静けさを取り戻した研究所。

相次ぐ崩落の影響か、一つのポッドの扉が音を立て開かれた。

 

ポッドの中に居たのは一人の少女であった。

年恰好は十をいくつか過ぎたといったところだろうか。

先程の地震でぶつけたのか、しきりに頭を押さえている。

 

「痛たーーーーー・・・・・・・」

我に返り、黙り込む少女。

 

「ここは・・・・・・どこ?」

 

「というかわたしは・・・誰??」

 

怪訝な顔をして首を傾げている。

どうやら少女は記憶を失っているらしい。

 

ふと、少女は自身の傍らに置かれている物に気付く。

斜めがけの肩掛けかばん、それに緑と黄色、2色からなる表紙の付いたスケッチブック。

何故だかそれらを見ていると、妙な親しみを感じてしまう自分に気付く。

 

「わたしの・・・なのかな・・」

 

疑問は次から次へ湧いてくるが、

とにかくここにじっとしてるわけにもいかない。

そう思い、恐る恐るポッドの外に顔を出してみる。

 

研究所の中は薄暗く、瓦礫があちらこちらに転がっていた。

 

意を決し、

少女はかばんに腕を通し、スケッチブックをしっかり両手に抱き締める。

崩落から時間を経ていない、まだ埃っぽい施設の中を、おっかなびっくり歩み始めた。

目指すのは、暗闇の中、かすかに刺し込む光の方へ。

 

光の場所まで辿り着いた少女はそこが扉である事に気付く。

取っ手に手をかけ後ろに引くと、扉はいとも簡単に開いた。

 

突然、少女は光に包まれる。

目の前には溢れんばかりの陽の光、そして見渡す限りの草原が広がった。

少女の口から思わず言葉が漏れる。

 

「綺麗・・・・・」

 

 

少女は歩いている。

行く先は分からない。

とにかくただ歩いている。

目に入って来るのは、行けども行けども代わり映えのしない草原だったが、

暖かな日差し、吹き抜ける風は心地よく、不安な気持ちは遠のいていた。

 

しばらくすると、遠くに何かが見えてくる。

 

「あれは・・・なんだろう」

 

ぼんやりとだが遠くに小さな建造物が確認できた。

ようやく現れた目印、少女の歩調が速くなる。

 

近付くにつれ分かってきたのは、建物自体はそこまで大きいものでなく、

そうした物がいくつか集まっている場所という事だった。

 

建物もその周りも、辺り一帯が綺麗に手入れされている。

しかし、それとは裏腹に生き物の気配は不思議と希薄だった。

誰も居ないのか。少女が思ったその時、ひとつの建物の扉が開く。

 

「どなたですか?」

 

出てきたのは頭に大きな耳のある、髪も服装も灰色の少女であった。

 

「あ、こんにちは!」

 

「こんにちは。何か御用ですか」

 

「えと、えと」

少女は突然の事態に戸惑い、うまく反応できない。

 

「・・・あなた・・見かけない顔ですが、何のフレンズです?」

灰色の少女は訝しげに尋ねた。

 

「フレ・・ンズ?」

 

「・・・・?」

(変わった子ですね。それに、今迄に嗅いだ事のない不思議な匂い。

知っているどのフレンズとも違う。・・・・もしかして!)

 

「あなた!ひょっとして、ヒト・・ですか!?」

尻尾を大きく振りながら白い少女は興奮した様子で身を乗り出す。

 

「ふえっ、今度はヒト!? ・・・ごめんなさい。ソレも分からない」

 

「・・・そうですか」

打って変わってしょんぼりとする灰色の少女。

尻尾も一緒にうなだれている。

 

二人の間に沈黙が流れる。

 

その時、気まずい時間を終わらせるように、大きく間の抜けた音が辺りに鳴り響いた。

 

キュルルルルル・・・・・

 

音の出所はスケッチブックの少女のお腹からだった。

 

灰色の少女は微笑みながら

「お腹は・・すいてるみたいですね」

 

「それは・・・そう・・みたい・・」

よほど恥ずかしかったのか、赤面し、俯いたまま肯定する。

 

スケッチブックの少女は、

招かれた家の中、振舞われたジャパリまんを頬張りながら説明した。

自分が今しがた目覚めた事、そして記憶を失ってしまった事。

 

灰色の少女は興味深そうに話に耳を傾けている。

家の主、灰色の少女は、名をイエイヌと言い、

ヒトの社会の中で、共に生活する動物。の「フレンズ」だった。

 

「フレンズというのは、動物がサンドスターの影響でヒトとそっくりな姿に変化したもの。

 なんです」

 

「ふぇーー。すっごいね。じゃあ、もしかして、

 わたしもそのフレンズなのかな」

 

「そう・・だと思います。でもあなたのようなフレンズを見た事はないのですよね」

 

「じゃあ・・、もしかしたらヒトかも!」

 

「・・かもしれません。私はヒトを見た事がないので自信はありませんが」

 

「うーーーん・・・そっかぁ」

少女は腕を組み、目を瞑り考え込む。

 

「・・・その・・、もしよかったら、記憶が戻るまで、ここで私と暮らしませんか」

 

「うーーーん・・えっ!?・・・うーーーん・・・」

一瞬反応し、また考え込む少女。

 

「何か・・問題が?」

 

「そう言ってくれるのはとっても嬉しい・・んだけど、今は早く自分が誰なのか思い出したい・・。

手がかりといってもこれしかないんだけどね」

目線を写し、掴もうとしたスケッチブック。ページが開くのに気付く。

 

「ん?なんだこれ」

驚きつつページをめくり始める少女。

 

 

「それは・・もしかして、絵というものではないでしょうか」

 

「絵・・。そうなのかな。たぶん風景を描き残したものなんだと思う」

 

ここに描かれた場所に、自分を思い出す手がかりがあるかもしれない。

もしかたしたら自分を知ってる誰かだってみつかるかもしれない。

希薄だった手がかりが一転、大きな存在感を持つ。

 

「この絵の場所を探してみる。そしたら何か分かるかもしれないから」

 

「そうですか・・・。引き留めてしまってごめんなさい」

 

「ううん、気にしないで。嬉しかったから」

 

「その絵の場所が、早くみつかるといいですね」

 

「うん!ありがとう」

 

少女はイエイヌの家を後にする。

実は近い所にあったスケッチブックという新たな手掛かりを携えて。

 

【 Bパートへつづく 】


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