「それにしても。この辺の道は結構入り組んでいますね~」
「そうだね。油断したらすぐ迷っちゃいそう。・・よっと」
ともえが地面の小さな亀裂を飛び越え、垣根から姿を出したその時、
右から猛スピードで接近してくる物体があった。
「うおおおおおおお!!!!!どけーーーー!!!」
「!?」
ガチィィィィィン!!
為す術もなく声の主と正面から激突するともえ。
互いの額が快音を打ち鳴らした。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
顔を抑えて左右に転げまわるフレンズらしき存在。
頭部に付いた羽根から察するに、おそらく鳥類のフレンズのようだ。
「・・・・・・・・・・・・・」
対するともえは膝から崩れ落ち、白目をむいて天を仰いでいる。
気のせいだろうか、口から昇る煙が見える。
「お、お前ら!突然飛び出して来たらあぶないじゃねーーか!!」
辺りを転げ回っていたフレンズはやっとの事で立ち上がりこう告げた。
あまりの事に狼狽えていたイエイヌだったが、思いがけない一方的な抗議を受け、
溜まらず言い返す。
「そ、そっちこそ、そんなに速く走っていたら危ないでしょう!」
「なに~~!!」
「なんです!!」
二人の言い争いが激しさを増そうという時、横から茶々が入れられる。
「あ~~、またゴマスリが揉め事起こしてる~~」
「いけないんだ~~」
声の主は、こちらも鳥類だろうか。
全身が黒に染まったフレンズの二人組だ。
「うるせー!今は取り込み中だ!」
「まーーた懲りずにケンカしてんのあんた達」
騒ぎを聞きつけたのか新たなフレンズがまた一人。
「うぇ~~んチーター。ロードランナーがいじめる~~」
「いじめる~~」
「はいはい」
チーターと呼ばれたフレンズに泣きつく二人組。
こっそり振り向き二人同時にあっかんべ。
「くっ!チーター。すぐにアンタのスピードを超えてやるからな。
今に見てろ!!」
ともえと衝突したフレンズは捨て台詞を残して、
瞬く間に走り去ってしまった。
「あぁ面白かった。わたし達も行こ。カンちゃん」
「フフフフ。そうだね。カケちゃん」
「じゃあね~~チーター」
ひとしきりからかって満足したのか楽しそうに去って行く二人組。
さっきまでの騒ぎが嘘のように、辺りに静寂が戻ってきた。
「やれやれ・・。あなた達、大丈夫?・・・そうじゃないわね」
「ハ・・ハイ」
イエイヌの隣でともえは、未だに白目で空を仰いでいる。
「ところで、あなた達この辺じゃ見かけない顔ね」
その言葉でやっと我に返ったともえ、額を抑えながら応える。
「うん。わたし達ね、ここに描かれてる場所を探して旅をしてるの」
そう言ってスケッチブックを開いて見せる。
「ふーん随分変わった事してるのね。どれどれ」
ページをめくり眺めるチーター。
「・・・うーん、ちょっとどれも・・・知らないわね」
「そっか~。残念」
「ん~~、まあ、一応アイツにも聞いてみるか。ちょっと付いて来て」
・
・
・
三人は道すがら、お互いに自己紹介をしながら歩いていた。
「さっき私達が出会った方。確か・・ゴマスリ・・さんでしたか?」
「あ~、またあの子達が変な事言ってたのね。
ゴマスリってのはあの子達が付けた渾名。ったく、どこでそんな言葉覚えてくるんだか。
走っていった子、あの子の名前はG・ロードランナーよ」
「すっごいスピードだったね~」
「まあね。私ほどじゃないけれど」
「えぇ!?」
チーターの発言に驚く二人。
「チーターさんもそんなにお速いんですか!?」
「まあ一応ね。この辺では一番速いって事になるかな」
どこか得意気に答えるチーターに遠くの方から待ったがかけられた。
「それは聞き捨てならんな~~!!」
「そうだぞ!界隈最速はプロングホーン様に決まってるじゃねーか」
先程ロードランナーと紹介されたフレンズも一緒のようだった。
「ハァ?何言ってんの。実際に私の方が速いじゃない!」
「それは短い距離に限った話だろう?そうでなければ私の方が最速だ!」
「そうだそうだ。距離を区切るだなんてスケールがちっせぇよなぁ。
笑っちまうぜ!」
「ハイハイ・・もうそれでいいわよ。
まあどっかの誰かさんにはどっちとも勝ってるけどね」
小声で付け足すチーター。
「ぐぅ!?くっそ~~!!もう一度特訓のやり直しだ!!
今に見てろ!!」
ついさっきと同じように再び走り去るロードランナー。
「はっはっは。青春よな~~」
「どこがじゃ・・」
今まで何度も繰り返されてきたのだろうか、どこか慣れたような彼女らのやり取りを、ともえとイエイヌはぽかーんと眺めている。
「それよりチーター。後ろに居られるお二人は誰かな?」
「あぁ、そうだった。この子達がちょっと聞きたい事があるみたいなの よ」
ともえとイエイヌは自己紹介の後、
プロングホーンと呼ばれたフレンズにもスケッチブックを見せる。
「おぉ。ここに描かれている景色なら似た所を知っているかもしれん」
とあるページに反応するプロングホーン。
「ホント!?」
「うむ。だが、ここからはちと遠いのでな。明日になったら途中まで案内しよう。今日はここに泊まっていくと良い」
「やったー。ありがとう!」
「いやいや、なんという事はないよ。はっはっは」
「よかったわね。じゃあ私はこれで」
「うん、チーターもありがとう!」
・
・
・
プロングホーンの住処から少し離れた場所、ともえは鼻歌交じりで風景を描いている。
イエイヌは傍らでそれを眺めている。
「手がかりがみつかりそうで、よかったですねともえ」
「うん!大きな前進だよ」
その時、二人の会話を遮って、誰かの悲鳴が響き渡った。
「キャーーーーーーーーッ」
「あの声は・・」
悲鳴はどこか聞き覚えのある声をしていた。
「行こう!イエイヌ」
「ハイッ」
【Bパートへ続く】