GuPx東宝怪獣 アーディアンネクス プロトタイプ   作:TF1

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第3話 仲間/私達も協力します!

 ある日黒木はケンに話したいことがあると言われ学園艦にあるアイスクリーム店でみほ達三人と待ち合わせをしていた。しかし、呼ばれていたみほ、沙織、優花里以外にみほの友人二人がみほ達についてきてしまった。

 

 

「えっ、5人!?」

 

 

 黒木はついてきたみほの友人二人を見て驚く。

 

 

「どうしても一緒にって言うから……ごめん!」

 

 

 沙織は黒木に深く頭下げる。みほもそれにつられて頭を下げた。

 

 

「沙織と西住さん達が最近、私と五十鈴さんに隠し事をしてると思ってついてきたんだ」

 

 

 ロングヘアを白いカチューシャで止めた小柄な少女、麻子はそう答えた。

 

 

 

「わたくしもそう思ってついてきました」

 

 

 黒木以外の5人の中で背の高いロングヘアでアホ毛が目立つおしとやかな少女、華も麻子と同じ考えだった。

 

 

「黒木は華と麻子、ゆかりんと初対面だっけ?」

 

 

「あぁ、そうだ沙織」

 

 

 その沙織の言葉を聞いた3人は順番に自己紹介を始めた。

 

 

「私は冷泉麻子だ。いつも沙織が世話になってるな」

 

 

「わたくしは五十鈴華と申します」

 

 

「秋山優花里です!」

 

それを聞いた黒木も自分の名前を名乗る。

 

 

「三人ともよろしく。俺は谷堂黒木」

 

 三人にそう言うと黒木は気まずそうに頭を掻いた。

 

 

「華さんと麻子さんの事はケンさんに連絡入れときますね。多分、私の友達って言えば大丈夫だと思います」

 

 

「分かった。じゃあそろそろケンの所に行くか」

 

 

 

 そう言うと6人はアイスクリーム店の前を後にしてアパートに向けて歩き始める。

 

 

 

 

 ケンは自分の住む部屋に居た。亜美名義で契約したスマートフォンを使って、今まで自分の戦いに関連する情報を集めていた。動画サイトにあるニュース映像や信頼できるニュースサイトを片っ端から調べている。

 

 

 

「何処も謎だらけとしか書いてないな」

 

 

 それもそのはず、現れた怪獣、メガロとバラゴン。そして味方の機龍も全てこの世界では映画の中で暴れまわるいわば空想の存在、突然現実にそれが現れたらどんな人間でも謎だらけとしか答えように出来ないのだ。

 

 

「ん? なんだ、この記事」

 

 

 ケンはある記事を見つけた。その記事には今度現れるであろう怪獣をアンケートで予想する内容だった。その記事を読むと1位と2位に気になる怪獣の名前があった。

 

 

「1位がゴジラで2位がモスラか」

 

 

 その記事を読んでる途中、そのスマートフォンから着信音が鳴る、みほからの着信だ。ケンはスマートフォンを耳元へと持っていく。

 

 

「みほ、どうしたんだ?」

 

 

「あの、ケンさん。私と沙織さん、優花里さんと黒木さん以外に後2人来て良いですか? 一緒に戦車道やってる友達なんですけど……」

 

 それを聞いたケンはふと考えた。みほのその二人の友達を信用できる人間なのかを。

 

 

「みほ、その二人は信用できるか?」

 

 

「二人共しっかりしてるんで大丈夫です」

 

 

 みほのその言葉を聞いてケンは信用できる人間と判断した。なぜならみほが疑うような人間ならそこまではっきりと答えないと思ったたからだ。

 

 

「分かったその二人も来て良いぞ」

 

 

「ありがとうございます。今そっちに向かってる所です」

 

 

「あぁ、気をつけて来るんだ」

 

 

 それを言うとケンのスマートフォンの電話は切れ、再び現れる怪獣を予想する記事が画面に映しだされた。

 

 

「ここまでにするか」

 

 

 スマートフォンの画面を消す。

 するとケンは自分のバックから、みほが持っている物と同じ2つのモンスブレスを出した。両手に持つとそれに話しかける。

 

「もうすぐ君たちも信頼できるパートナーが出来る。良かったなゴジラ、モスラ」

 

 その言葉に返すかのように2つのモンスブレスから怪獣の声が聞こえた。

 

 

「angyaaaoon!」

 

「kiiin!」

 

 

 その鳴き声を聞くと両手に持ったモンスブレスをテーブルの上に置く。するとすぐにインターホンが部屋に鳴り響いた。玄関に向かい部屋のドアを開けるとそこにはみほ達6人が立っていた。

 

「やっと来たか。入っていいぞ」

 

 

 ケンは6人を自分の部屋へと招き入れた。

 

「あっ、この二人が私の友人、五十鈴華さんと冷泉麻子さんです」

 

 

 みほは手のひらを二人に指しながら紹介する。

 

「どうも」

 

「なんだかわからないが西住さんが世話になってるみたいだな」

 

「あぁ、俺は柏原ケン。よろしく」

 

 麻子と華にケンは自己紹介をすまし、7人は和室で用意された座卓の回りに敷かれた座布団に座る。

 

「それで私達に話ってなんですか?」

 

 

「まず俺がこの世界の人間じゃないことから話さないといけない」

 

 

 真顔でケンはみほ達にそう言った。みほ達は突然言われたその言葉に頭を傾げてしまう。

 

「まず、みんなはパラレルワールドって言葉は聞いたことあるか?」

 

 

「あぁ、俺は聞いたことあるよ」

 

「私もだ、この地球とは別にちがう地球があるって言う話か」

 

 麻子と黒木以外はなんの話か分からずにいた。

 

 

「つまりケンさんは私達とは違う地球からやって来たってことですか?」

 

 

 みほの質問にケンは頷く。自分がこの世界に来た理由を淡々と語り始める。ことの始まりはみほ達の世界に来る前の話から始まる。ケンはある研究所で兄の助手をしながら怪獣と共存して平和に暮らしていた。しかし突如オグレスと言う謎の存在が現れケンの兄、そして仲の良かった怪獣達を殺害。無力な自分にケンは絶望したがそのとき自分の目の前に光輝く剣が浮かぶように現れ、それを握った瞬間気づいたら赤い巨人アーディアンネクスの姿に変わっていた。ケンは戸惑いながらもオグレスと怪獣に立ち向かった。だが兄から奪った異次元移動装置を使い逃亡。それを追って自らも異世界へと旅だって行く。その怪獣の反応を見つけ、追いながらたどり着いたのがみほ達の住む世界だったのだ。

 

 

「つまりケンが赤い巨人で、街を襲う怪獣はそのオグレスってのが送り込んでるってわけだ」

 

「赤い巨人ってみぽりんが前に言ってた怪獣と戦ってる人? ニュースでたまに見るけど本当に?」

 

 黒木と沙織の二人は目の前に居る人物が赤い巨人、アーディアンネクスに変身していることに信じられなかった。

 

「別の地球ってのが想像できません」

 

「そうだよね」

 

みほと優花里はケンが宇宙から来たと考えていたが、その真実は自分達の住む地球とは別の地球と言うことを想像できないほど驚いていた。

 

「じゃあ銀色の怪獣はなんなんだ。私が休憩してるとき西住さんを吸い込んだ銀色の怪獣だ」

 

「えっ……麻子さん!?」

 

みほははっとした表情で麻子を見た。それを聞いたケンは何かを察するようにみほに話す。

 

「みほ、みんなに説明したらどうだ。機龍のこと」

 

「えっと……ケンさんと出会わなかったら銀色の怪獣、機龍に出会わなかったかもしれないんだ」

 

 みほは話した。ケンとの出会いから今までのことを、そんな話にケン以外の5人は頷きながら聞いていた。

 

「へぇ、そうだったんだ」

 

 

「みほさんがあの時教室を出てったのも、その機龍が怪獣を察知したからなんですね」

 

「でもこのモンスブレスの事が分からなくて」

 

みほはケンの顔を見ると、ケンは話を始めた。

 

 

 

「正直俺も分からないんだ。兄さんに怪獣と人間を繋ぐ道具と言うことしか聞いてないからな」

 

 ケンの憶測では兄がオグレスに対抗するために作ったのではないかと話す。ケンもてっきり怪獣を使役する道具だと思っていた。

 

「渡されたときに相棒になる存在って言ったのはそういう意味だったんですか?」

 

「俺も全部憶測で話したんだ。すまない」

 

「そうなんですか?」

 

「あぁ……うん」

 

 ケンは申し訳なさそうな顔をすると、左拳を口に当て咳払いをし本題を話す。

 

「ここで本題だ、黒木と沙織に渡したいものがあるんだ」

 

 ケンは立ち上がりリビングのテーブルに向かう。そこに置いてある2つのモンスブレスを持って和室に戻ってきた。

 

「ピンと来た方を選んでくれ」

 

2つのモンスブレスを黒木と沙織の目の前に置く。

 

 

「これって」

 

「どれも同じに見えるよ?」

 

 

 黒木と沙織にケンはその2つのモンスブレスを見せる。みほが持つモンスブレスと色も形も同じだ。

 

 

「俺はこっちだ」

 

黒木は右にあるモンスブレスを選び左手で持つ。すると黒木の脳内にある怪獣の鳴き声が響く。

 

「この鳴き声はゴジラ!?」

 

モンスブレスは光る。黒木は左手にそれを装着。

 

「じゃあ私はこれ!」

 

沙織は残った左にあるモンスブレスを選び右手に持つと怪獣の鳴き声と共に光る。沙織は右手にモンスブレスを装着した。

 

「つまり俺達もケンとみほと一緒に戦えるってことか?」

 

 

「じゃあみぽりん見たいに怪獣と一緒に?」

 

 

「そう言うことだ。よろしくな沙織、黒木、そしてモスラとゴジラ」

 

 

 二人はまじまじとモンスブレスを見つめていた。その二人をよそに麻子はタメ口である話を切り出す。

 

 

「そういえば普段ケンさんはアルバイトとかしてるのか?」

 

 

「普段はこの世界のことを調べてる」

 

 

「じゃあ、仕事とかアルバイトはしてないのか?」

 

「あぁ」

 

 

 そんなケンの話を聞いていた華はある仕事を勧めた。

 

 

「まず1日だけお仕事してみませんか?」

 

 

「どういう仕事なんだ?」

 

 

「生け花の展示会のお手伝いです。みほさん達も来ますし、どうですか?」

 

 

「分かった。やってみる」

 

 

 ケンは亜美のスネをかじって暮らしている状態だ。ケンの心のなかでは薄々と仕事を探さねばと感じていたが、なかなか行動に移せなかった。華の勧めをケンはありがたく受け取ったのだ。

 

 

 

 

 

 茨城県の南東部にある霞ヶ浦。その北浦付近にある公民館にケンと黒木は来ていた。

 

「で? なんで俺も一緒なの?」

 

「俺一人だと不安だからだ」

 

 ケンは華に誘われ、華の実家である生け花の名門、五十鈴流による展示会の準備を手伝いに来ていた。黒木もそれに巻き込まれる形でケンに連れてこられたのだ。

 

 

「黒木、このテーブル全部運ぶみたいだ」

 

 

「20個も二人で運べるかな……」

 

 普段は五十鈴流に居る奉公人の男性が一人でやっているが、腕を骨折して休んで居るとケンは華と華の母親、百合から聞いていた。

 

「2つづつ運べばすぐだろ」

 

「ケン、待ってくれ。一気に2つ持つのか?」

 

 

「じゃあ黒木は1つでいいぞ」

 

 そんな会話をしながら折り畳み式のテーブルを運んでいた。そして30分ほどで全てのテーブルを設置させた。

 

「後なにやるんだ?」

 

「展示会が終わったら会場の掃除だ」

 

「1日居ないと行けないのかよ。参ったな……」

 

 黒木の質問に真面目に答えるケン。そのケンの答えに黒木は呆れながら答えた。そんな二人の前に白い花柄模様をした着物姿の華がやってきた。

 

「ケンさんと黒木さんはそろそろ休んでてください。この後の事は展示会が終わってからですから」

 

「あぁ、分かった」

 

「それもそうだな」

 

 二人は華の言葉を受け取り会場の外へと出ていくと、そこには1台の赤茶色の戦車が止まっていた。砲搭にはピンク色の鮟鱇のマークが描かれ、戦車の下回り車台の左右にはシェルツェンと呼ばれる追加装甲が付けられていた。そこに大きく洗と言うマークが書かれていた。

 

「もしかしてこの戦車って」

 

「まさかみほ達が乗ってるやつか」

 

 その戦車、IV号戦車の砲搭の真ん中にあるキューポラから紺のジャケットを着たみほが上半身を出した。キョロキョロと辺りを見回すとケン達を見つけ手を振った。

 

「ケンさん!」

 

 戦車のキューポラから身をのりだし、そのまま外へ降りてケンの前へやって来た。

 

「みほ達も来るって聞いてたけど、こう言うことだったのか」

 

「華さんがどうしてもって言うんでちゃんと許可とってこのIV号を展示することにしたんです」

 

「そうか、凄いな」

 

 みほの話を聞くケン。するとケンは後ろから肩を叩かれる、後ろを振り替えるとそこには亜美が立っていた。

 

「ひさびさね柏原くん」

 

「蝶野さん久しぶりです。でもなんで蝶野さんがここに?」

 

「この戦車を運ぶのを手伝ったのよ」

 

 それを聞いたケンはIV号の隣に自衛隊のセミトレーラーが止まっていることに気づいた。

 

「あれ、俺だけ忘れられてない?」

 

 

 ケンが亜美やみほと会話している隣で黒木は自分が忘れられてるような気がしていた。

 

「ケンさんは西住殿と蝶野教官と親しいですから」

 

「黒木のこと忘れられても仕方ないよね?」

 

 いつの間にかに優花里と沙織が黒木の隣に立っていた。それに気づいた黒木は少し驚いている。

 

「いつの間に居たの君達?」

 

「蝶野教官がケンさんの肩を叩いた時からですよ」

 

 

 優花里の隣で沙織が二回頷き、黒木の肩を叩く。

 

「じゃあ私と湖デートってどう?」

 

「嫌、俺まだ仕事あるし……って麻子はどうしたんだ?」

 

 

「麻子なら戦車の中で寝てるよ。戦車の中だと落ち着いて寝れるんだって」

 

 

「へぇ……」

 

 そして沙織は黒木の腕を掴み湖へと行こうとしたとき、二人の脳内に怪獣の鳴き声が響いた。

 

 

「kiiiiiiiiiin!」

「 angyaaooon!」

 

 

 二人は湖の真上に黒い穴が開いてることに気づく、その穴から紫色の落雷と共に怪獣が現れた。口角にイノシシのような牙を生やしたワニ状の巨大な頭部を持ち、左右2本の蔦のような触手が生えた植物怪獣ビオランテが霞ヶ浦に降りたったのだ。

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「黒木あれ!」

 

「あれは怪獣!」

 

 

 二人の声を聞いたケンは亜美と話していたが、話すのをやめ湖の方を見る。

 

 

「やっぱりか……」

 

 そう言ったケンは再び亜美の顔を見て頭を下げる。それを見た亜美はケンの肩をポンッと叩いた

 

 

「行ってきなさい、柏原くん」

 

 ケンは無言で頷きまた頭を下げる。

 

 

「ケンさん、私も行き……」

 

「Kisyaaaan !」

 

 みほがケンと話かけようとしたとき、みほの脳内に機龍の鳴き声が響く。

 

「えっ、機龍!?」

 

「どうしたんだみほ?」

 

 

「ケンさん、機龍はまだ前回の戦いでのダメージが残ってるみたいです」

 

「分かった、みほは待機していてくれ」

 

 それを聞いたみほはケンの顔を見て小さく頷く、ケンは安心したような顔をして近くにいた黒木と沙織の方へと向かった。

 

「黒木、沙織、ぶっつけ本番だが大丈夫か?」

 

「俺は大丈夫だ!」

 

「私も大丈夫です!」

 

「分かった。行こう!」

 

 三人は近くの人気の無い湖の近く木の生い茂った場所に向かっていく。

 

「大丈夫でしょうかあの三人」

 

「大丈夫だよ優花里さん、ケンさんがついてるから」

 

 二人はケン達三人を見送る。そこに遅れて華がやって来るが、みほや優花里達の方には目がいかず湖の方に居る怪獣、ビオランテを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 湖の近くまで来たケン達三人。ケンは剣のような形をした物をかかげ、そして胸にあてて叫ぶ。

 

 

「ネクス!」

 

 黒木は左手、沙織は右手の甲にモンスブレスを装着して叫んだ。

 

「ゴジラ!」

 

「モスラ!」

 

 それぞれのモンスブレスから青い粒子と共に3列に並んだ背鰭と黒い体を持つゴジラ、そして青基調としたカラフルな羽を持つ蛾のような姿をしたモスラ、二匹の怪獣が現れる。そして1体の赤い巨人が立っていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 黒木と沙織は光に包まれ2体の怪獣に吸い込まれるように一体化する。

 

「行くぞゴジラ!」

 

「Angyaaaoon!!」

 

「行くよモスラ!」

 

「Kiiiiiiiiiin!!」

 

「ネクサァ!!」

 

 2体の怪獣と1体の巨人はビオランテに向かっていく。ビオランテもかかってこいと言わんばかりに咆哮をあげた。

 

「fuaaaaaaan!!」

 

 手始めにゴジラに向けて巨大な2つの触手を伸ばし始めた。それに気づいた黒木とゴジラはその触手を掴みそのまんま背鰭が青く発光させ、ビオランテの頭めがけて青い熱線を口内から発射する。

 

「fuaaaaaaan !?」

 

 熱線が命中し、ビオランテが怯んでいる。そのうちに沙織とモスラは背後に回りこんだ。

 

「クロスヒートレーザー!」

 

 

「Kiiiiiiiiiin !!」

 

 

 沙織は脳内に浮かんだその言葉を叫び、モスラがそれに応えるように鳴くと額の3つの器官から光線を発射した。

 

「fuaaaaaaan!?」

 

 

 その光線がビオランテの背中に命中し、また怯む。それを見たネクスは腕を胸の前で交差させ、拳を握りL字に組んだ。

 

「ネクスシウムクロス!」

 

 そう叫ぶと共にビオランテに向けて光線を発射し、ビオランテの腹部に当たり、爆発した。

 

 

「やったか!?」

 

「Angyaaooo……」

 

「嫌、まだだ!」

 

 

 ネクスの言う通り煙の中からビオランテが2本の触手を伸ばし。その触手がゴジラに巻きついた。先端部の食虫植物のような顎で首に噛みつく。

 

「Angyaaaoon ! ! 」

「この……!」

 

 黒木とゴジラは必死になって絡み付く触手を取ろうとする。それを横目で見た沙織とモスラはビオランテは体当たりしようとした。ネクスも走りながらジャンプして飛び蹴りをいれようとするが、それを察知したビオランテはゴジラを苦しめていた触手ごと粒子となり消えた。

 

 

「あっ!?」

 

「えっ!?」

 

「Kiiiiiiiiiin !?」

 

 そのままネクスとモスラはぶつかってしまう。なんとかそのまま体勢を立て直し水しぶきをあげながら着地するネクス。モスラは空中で羽を一回羽ばたかせながら体勢を立て直した。

 

「すまない……ん?」

 

 

 ネクスが頭を下げモスラと沙織に謝る。だが、背後に再び粒子から実体化したビオランテがネクスの上半身に2本の触手を巻き付けた。

 

「いつのまに!?」

 

「待ってろあんな触手、ゴジラの熱戦で燃やしてやる! 行くぞ!」

 

「Angyaaaoon!!」

 

 

 ゴジラは再び背鰭を青く光らせ熱戦を発射する。だが、またビオランテは粒子状に変化しネクスの後ろから消えた。

 

「俺の知ってるビオランテは自由にあんなことしないぞ!」

 

「Angyaaaoon ?」

 

 黒木はそう言うと、ゴジラは疑問を抱くように鳴いた。そうしてるあいだにゴジラの熱戦がネクスに近づいていく。それを見た沙織とモスラはネクスの前に入り込みバリアを張って熱戦からネクスを防御する。

 

 

「本当にすまない……」

 

「あの怪獣が悪いんですから!」

 

「Kiiiiiiiiiin!!」

 

 沙織のその言葉に賛成するかのようにモスラは鳴く。

 

「下手に光線や熱戦を撃つと回りに当たるし、肉弾戦を挑むと下手したら同士討ちになる……」

 

 

 ネクスは考えるが、その暇をもてあそぶかのようにビオランテは実体化し三人と二匹の怪獣を苦戦させていた。

 

 

 公民館の辺りは避難勧告は出された。ほとんどの人々は避難場所に向かってたが、みほ達は公民館から少し離れた場所にある公園で優花里の双眼鏡を借り、それを覗きながら交代でネクス達の戦いを見ていた。だが、粒子化してネクス達を混乱させるビオランテに驚きを隠せずにいた。

 

「みほさん、あの怪獣はケンさん達を混乱させて同士討ちさせるつもりでは?」

 

「そうかも……」

 

 華は双眼鏡をみほに渡し、みほがその双眼鏡を除いた。するとビオランテが実体化したとき、手をひろげて指を織りながら数を数え始める。そしてあることに気がついた。

 

 

「そうか! あの怪獣は粒子化した後は6秒間くはい粒子にはなれないんだ!」

 

 それに気づいたみほは亜美の方に振り向くとこう話した。

 

 

「蝶野さん。ケンさん達が戦ってる近くまでIV号で行けますか?」

 

「行けるわ。行く許可出来ないけど」

 

「そんなの分かってます! でもあのままだとケンさんや怪獣と共に戦う沙織さん達が同士討ちになると思うんです! だから……お願いします!」

 

みほの必死さをみた亜美は一つ条件を与えた。

 

「分かったわ、でも行くなら私も着いて行く条件付きね。それでも大丈夫?」

 

「大丈夫です」

 

 みほは決意を固めた顔で亜美に答えた。

 

 

「みほさん。わたくしもお供します!」

 

「西住殿に着いていきます!」

 

 

「ありがとうみんな。でも華さんは避難場所に向かってて、お母さん心配すると思うから」

 

 

「そうですか……分かりました」

 

 華にそういった後、みほは優花里方へと近づき肩を叩く。

 

「優花里さん、覚悟は出来てる?」

 

「出来てますよ! いつでも西住殿について行きます!」

 ここに来るまで華の横でベンチに座りながらうとうとしていた麻子はその話を聞くとキリッとした表情に変わる

 

「西住さん、私も行かないと駄目か?」

 

「別に強制はしないよ。優花里さんがかわりに操縦してくれると思うから」

 

 

「あぁ……でも私も覚悟は出来ている。ケンさんの話を聞いた時からな」

 

 麻子はベンチから立ち上がり、みほを見つめる。

 

「西住さん。どういう作戦で柏原くん達を助けるの?」

 

「まず私達がIV号で実体化した怪獣に空包を撃って気をそらします。そのうちにケンさん達に止めをさしてもらう作戦です。ケンさんや沙織さん達とはこのブレスレットで話し合います」

 

 右に付けたモンスブレスを亜美に見せる。

 

「じゃあ、柏原くん達の話し合いは西住さんに任せるわ」

 

「じゃあ皆さん行きましょう!」

 4人は再びIV号戦車が停めてある公民館の方へと走っていく。華はそれを見送りながら手を降った。

 

 

「くらえ!」

 

「fuaaaaaaan!!」

 

 ジャンプをしてチョップをしようとするネクスを察知したビオランテ。また粒子となり消え、ネクスの後ろで実体化する。

 

「ケン! 後ろだ!」

 

「Angyaaaaa!!」

 

 黒木とゴジラはネクスに呼び掛ける。それを聞いたネクスが後ろに振り返った瞬間にビオランテは再び粒子化して消えさる。

 

「これじゃ切りがないよ!」

「Kiiiiiiiiiin!!」

 空中からそれを見渡す沙織とモスラ。沙織とモスラは粒子化しては実体化するビオランテに手を出せないでいた。

 

「どうすれば……」

 

「ケンさん!?」

 

 みほの声がモンスブレス経由で聞こえる。耳の当たりに生えた角に手をあてた。

 

「みほどうした?」

 

「この状況からの打開策があります」

 

 みほはネクスに自分達が戦車に乗って公民館からネクス達が戦っている湖の近くに来たこと、空砲で怪獣の気をそらしネクス達が止めをさす作戦を話した。その話は黒木と沙織のモンスブレスにも聞こえている。

 

「分かったぞ、みほ」

 

 

「じゃあ、私とモスラがあの怪獣をみぽりん達の近くまで行かないようにします」

 

「俺とゴジラはケンと一緒に止めをさすぞ。ビオランテは再生能力があるはずだから火力で再生しきれないほど燃やしてやろう!」

 

「分かった、行くぞ!」

 

 話してる間もビオランテは粒子化と実体化を繰り返している。ネクス達はビオランテの攻撃を避けながら話していた。

 

「次に実体化したら空包を撃ってくれ!」

 

 

「分かりました!」

 

 みほがネクスへと返事をする。みほは麻子に戦車を止めるよう指示を出し、優花里は空包実演用に持ってきた砲弾を装填する。

 

「私が肩を蹴ったら空包を撃って」

 

「分かりました!」

 

 

 それを知らないビオランテは粒子から実体に戻る。IV号戦車のキューポラから身を出してそれを見ていたみほは優花里の肩を蹴りながら叫んだ。

 

「撃て!」

 

 大きな砲撃音が霞ヶ浦に鳴り響く。それを聞いたビオランテは辺りを見渡し再び粒子化しようとするが、空中で待機していた沙織とモスラが燐粉を出しながらビオランテの真上を飛びはじめる。

 

「さっきまでのお返し!」

「Kiiiiiiiiiin!!」

 

 雷のように稲妻を発生させながら燐粉をビオランテに降らせる。その攻撃を受けたビオランテは粒子になるどころか今まで以上に怯んでいた。

 

「良し、行くぞ黒木、ゴジラ!」

 

「OK!」

 

「Angyaaaoon!!」

 

 ネクスは両方の腕を上に真っ直ぐに持ち上げ、拳を握り締め交差させながら下ろしてくる。ゴジラは口内と背鰭が赤く光りだした。

 

「ネクス……アーディニウムバースト!」

 

「Gスパークシュート!」

 ネクスと黒木は叫ぶ。ネクスは交差していた腕を勢いよく開き胸部から黄色い光線を発射した。それに続けてゴジラは口内から赤色の熱戦を発射する。

 

「Kiiiiiiiiiin!!」

「危ない!」

 

 ビオランテに近づく二つの熱戦と光線。沙織とモスラはすぐにビオランテの真上から離れ、ゴジラとネクスの後ろに行く。そしてビオランテに熱戦と光線が命中する。

 

「Fuaaaaaaan! ?」

 

 ビオランテは全身が光、断末魔をあげて爆発した。

 

「やった!」

 

 戦車からそれを見ていたみほはキューポラに手をあてながら喜びの歓声をあげた。

 

 ビオランテが倒されたことで避難していた人々は公民館に戻ってきた。IV号とみほ達。そしてケンや黒木達も戻っていた。

 

「嫌、どうなるかと思ったな……」

 

「もう~消えるなんて反則だよね!」

 

「そうだよな!」

 

 黒木と沙織の話をその横でその話を聞くみほ、そして亜美とケン。

 

「なんとか勝てましたね」

 

「あぁ、本当になんとか勝てた感じだな……みほ」

 

「西住さんがあんな提案してなかったら今頃柏原くん達は負けてボロボロになってたかも知れないわ」

 

 そんな4人の後ろから華がケンと黒木に声をかけた。

 

「黒木さん、ケンさん、まだ私達の手伝い終わってませんよ」

 

 それ聞いたケンと黒木は慌てた表情で華の方を向く。

 

「あぁ分かってる。行くぞ黒木」

 

「あぁ……ってまだ時間あるぞ?」

 

「そうなのか?」 

 

「そうだよ!」

 

 そして二人はベンチに座り話続ける。その二人の会話を聞いていた亜美はケンが段々とこの世界に溶け込んでいることを感じていた。

 

 林の中で遠くからケン達を見ている者がいた。姿は赤い身体に黄緑色の装甲を付け、西洋騎士を想わす頭をしている。黒木と一緒に居るケンの姿を確認すると彼はこう呟いた。

 

「この世界で信頼できる仲間が出来たんだな……ケン!」

 

 

 EP3 END

 

 


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