問題児+バカ一名が異世界から来るそうですよ?   作:慈信

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第五話

 

 白夜叉とのギフトゲームを終えて噴水広場から半刻ほどかかってノーネームの居住区間の門前に着いた。

 

 門を見上げると確かに旗が掲げてあっただろう名残のようなものは見える。だが、そこを潜ったらその先はまさに地獄のような光景だった。

 

 最初は観光気分で気持ちが高揚としていた飛鳥も目の前の惨状を見て言葉を失っていた。耀もこの光景に息を呑んでいた。

 

 明久も周囲を見てここまでもかとまだ見ぬ魔王に恐れを抱いた。

 

 十六夜は周囲を見て足元に転がっている土塊を手に取りそれを握ると、粉末状に崩れていった。

 

「……おい、黒ウサギ。魔王のギフトゲームがあったのは──今から何百年前の話だ?」

 

「いえ……魔王の襲来は僅か3年前の話です」

 

「そりゃ怪奇的な話だな。こんな風化しきった光景が3年前にできただと?」

 

「え? そんなにおかしなことなの?」

 

 一方魔王の力の一部を知っただけで他のことがわからない明久は首を傾げていた。

 

 十六夜は明久に説明を入れる。

 

「よく見て考えろ。ただ破壊するだけなら土が、木が、壁が……」

 

 十六夜は説明しながらそれぞれ土塊、木材、壁の一部を指先で突く。そしてそれらは一瞬でボロボロに崩壊する。

 

「……ここまで脆くなるはずがねえんだよ。人がいなくなり、少なくとも200年はたたない限りはな」

 

「じゃあ、これは魔王って奴の所為で?」

 

「さあな。例えその魔王の力が巨大だからって、どんな力がぶつかったところでこんな壊れ方……普通はありえない筈なんだがなぁ」

 

「ベランダのテーブルにティーセットがそのまま出ているわね。これじゃまるで、生活していた人間がふっと消えたみたいじゃない」

 

「……生き物の気配も全くない。警備されなくなった人家なのに獣が寄ってこないなんて」

 

「にゃ~(オマケにここの土は死んどるで~)」

 

 飛鳥や耀の感想は十六夜の説明よりも明久には重く感じた。

 

 黒ウサギは廃墟から目を逸らし、朽ちた街路を進む。

 

「……魔王とのゲームはそれほどの未知の戦いだったのでございます。彼らがこの土地を取り上げなかったのは魔王としての力の誇示と、一種の見せしめでしょう。彼らは力を持つ人間が現れると遊び心でゲームを挑み、二度と逆らえないよう屈服させます。僅かに残った仲間達もみんな心を折られ、コミュニティから、箱庭から去って行きました」

 

 黒ウサギは感情を殺した瞳で風化した街を見渡しながら言いながら進む。飛鳥も、耀も、複雑な表情で続く。

 

「魔王か──か。ハッ! いいぜいいぜいいなオイ! 想像以上に面白そうじゃねえか!」

 

 十六夜は不敵に瞳を爛々と輝かせて不敵に笑った。

 

「…………これが、魔王の力……か」

 

 明久は街を見渡しながら足元に転がっていた人形らしき物を拾い上げる。だが、それは明久の胸元まで持っていった瞬間、崩れ落ちた。

 

「…………っ!」

 

 その場で明久は足を強く打ち付けた。そして、全身を震わせていた。

 

 恐怖を感じる。まだ姿は見ていないが、この光景を見ただけでその存在感は圧倒的なものだと感じる。

 

 自分では当然足元にも及ばないだろう。この街並みを見て本能的に恐れを抱いている。しかし、胸で渦巻くのは恐怖だけじゃない。

 

「絶対に…………絶対に、ぶっ潰す!」

 

 明久は拳を震わせ、呟いた。相手から金品や土地、ギフトを奪うのが箱庭の常識だ。

 

 それは明久も理解していた。しかし、この街をこんなにした魔王は金品も土地もギフトも関係ない。ただ遊びのためだけにひとつのコミュニティを破壊し、黒ウサギ達から大切な仲間を奪っていった。

 

 明久は魔王が許せなかった。敵わないのはわかっている。だが、それでも……誰かの大切を奪う存在が許せなかった。

 

 いつか、ギフトゲームを続けて、自分にもっと力がついた時には……絶対に魔王を倒す。そう決意してみんなの後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わってノーネーム・居住区画、水門前。

 

 5人と1匹は廃墟を抜け、徐々に外観が整った空家が立ち並ぶ場所へと出てきた。

 

 5人はそのまま居住区を通り過ぎ、その先の貯水池へと進んでいった。

 

 貯水池には先客がおり、ジンと同じコミュニティの仲間らしい何人もの子供達が清掃道具をもって水路を掃除していた。

 

「あ、みなさん! 水路と貯水池の準備は整っています!」

 

「ご苦労さまですジン坊ちゃん♪ みんなも掃除を手伝っていましたか?」

 

 黒ウサギ達の帰りを察知した子供達が黒ウサギの元に群がっていった。

 

「黒ウサの姉ちゃんお帰り!」

 

「眠たいけどお掃除手伝ったよー」

 

「ねえねえ、新しい人達って誰!?」

 

「強いの!? カッコいい!?」

 

「YES! とても強くて可愛い人達ですよ! みんなに紹介するから一列に並んでくださいね!」

 

 黒ウサギが指を鳴らすと同時に子供達が動き出し、一糸乱れぬ動きで綺麗に横一列に並んだ。

 

 明久は指で子供達を数えてみたが、数は20人前後はいた。その中には猫耳、狐耳の少年少女もいたことにちょっと驚いた。

 

(マジでガキばっかだな。半分は人間以外のガキか?)

 

(じ、実際に目の当たりにすると想像以上に多いわ。これで6分の1ですって?)

 

(私、子供嫌いなのに大丈夫かな?)

 

 十六夜、飛鳥、耀はそれぞれ苦笑いだったり憂鬱な表情を浮かべていた。

 

 その横で明久が子供達を見渡しながら、

 

「あ、僕は吉井明久。これからみんなとコミュニティの仲間になるから、よろしくね」

 

 明久は子供達の目の前まで歩き、子供達と同じ目線から自己紹介をした。

 

 子供達が一斉によろしくと口を揃えて挨拶を返し、明久は微笑ましいなと笑った。

 

(アイツ……早速打ち解けてるな)

 

(そうね……これから子供関係は全部彼に任せようかしら?)

 

(……賛成)

 

 明久の子供達の輪の中に入る才能を見て感心すると同時に子供に関する面倒事を明久に押し付ける算段をたてていた3人だった。

 

「ええ、今紹介してくださった吉井明久さんの後ろの……右から順に、逆廻十六夜さん、久遠飛鳥さん、春日部耀さんです。みんなも知ってる通り、コミュニティを支えるのは力のあるギフトプレイヤー達です。ギフトゲームに参加できない者達はギフトプレイヤーを支え、励まし、時に彼らの為に身を粉にして尽くさねばなりません」

 

「あら、別にそんな必要ないわよ? もっとフランクにしてくれても」

 

「僕も……流石にそこまでしなくても」

 

「駄目です。それでは組織は成り立ちません」

 

 飛鳥と明久の言葉を黒ウサギはこれ以上ない厳しい声音で一蹴する。

 

「コミュニティはプレイヤー達がギフトゲームに参加し、彼らのもたらす恩恵で初めて生活が成り立つのでございます。これは箱庭の世界で生きてく以上、避けることができない掟。子供のうちから甘やかせば子供の将来のためになりません」

 

「……そう」

 

「だけど……僕はそんなの気にしないし、むしろ痒くなりそうだから」

 

「明久さん?」

 

「……はい」

 

 黒ウサギの気迫の篭った瞳で見られ、明久は縮こまった。

 

 まあ、コミュニティが崩壊してから3年間も子供達の面倒を見てきた者なのだ。だからこその厳しさなのだろう。

 

「ここにいるのは子供達の年長組です。ゲームには出られないものの、見ての通り獣のギフトを持っている子もおりますから、何か用事を言いつける時はこの子達を使ってくださいな。みんなも、それでいいですね?」

 

「「「「「よろしくお願いします!」」」」」

 

 20人前後の子供達が口を揃えて大声で叫んだ。

 

「ハハハハ! 元気がいいじゃねえか!」

 

「そ、そうね」

 

(……。本当にやっていけるのかな、私)

 

「うん、よろしくね」

 

 ヤハハと笑う十六夜、複雑な表情の飛鳥と耀、いつも通りの明久。

 

「さて、自己紹介も終わりましたし! それでは水樹を植えましょう! 黒ウサギが台座に根を張らせるので、十六夜さんのギフトカードから出してくれますか?」

 

「あいよ」

 

 長年水が通ってない水路だが、骨格だけは立派に残っている。

 

「大きい貯水池だね。ちょっとした湖くらいあるよ」

 

「にゃ~にゃ~、にゃにゃにゃ~。にゃにゃ、にゃ~にゃ(そやな。門を通ってからあっちこっちに水路があったけど、もしあれに全部水が通ったら壮観やろなあ。けど使ってたのは随分前の事ちゃうんか? どうなんやウサ耳の姉ちゃん)」

 

「はいな、最後に使ったのは3年前ですよ三毛猫さん。元々は龍の瞳を水珠に加工したギフトが貯水池の台座に設置してあったのですが、それも魔王に取り上げられてしまいました」

 

「黒ウサギさんも三毛猫の言葉わかるんだ」

 

「ところで、その龍の瞳だっけか? 何それカッコいい超欲しい。何処に行けば手に入る?」

 

「さて、何処でしょう。知っていても十六夜さんには教えません」

 

「言ったら確実に行くよね。僕らでも追いつけない速度で」

 

 明久の言葉にジンも苦笑しながら同意するように頷いた。

 

 十六夜に言えば最後、誰の意見も聞かずまっすぐに龍の瞳のありかへとひとっ飛びするだろう。

 

「水路も時々は整備していたのですけど、あくまで最低限です。それにこの水樹じゃまだこの貯水池と水路を全て埋めるのは不可能でしょう。ですから居住区の水路は社団して本拠の屋敷と別館に直通している水路だけを開きます。こちらはみんなで皮の水を汲んできた時に時々使っていたので問題ありません」

 

「あら、数kmも向こうの川から水を運ぶ方法なんてあるの?」

 

「はい。みんなと一緒にバケツを持って両手に持って運びました」

 

「半分くらいはコケてなくなっちゃうんだけどねー」

 

「黒ウサの姉ちゃんが箱庭の外で汲んでいいなら貯水池をいっぱいにしてくれるのになあ」

 

「……そう。大変なのね」

 

「まあ、そうじゃなければ水樹を手に入れてあんな大喜びすることはないよね」

 

 黒ウサギは貯水池の中心にある柱の台座までぴょん、と大きく跳躍した。

 

「それでは苗の紐を解いて根を張ります! 十六夜さんは屋敷への水門を開けてください!」

 

「あいよ」

 

 十六夜は貯水池に下りて水門を開ける。黒ウサギが苗の紐を解くと、根を包んでいた布から大波のような水が溢れかえり、激流となって貯水池を埋めていった。

 

「ちょ、少しはマテやゴラァ!! 流石に今日はこれ以上濡れたくねえぞオイ!」

 

 今日一日だけでも随分とずぶ濡れになった十六夜が慌てて石垣まで跳躍した。

 

 同時に水樹から流れる水が水路を埋め尽くしていく。

 

「うわお! この子は想像以上に元気です♪」

 

 水門を勢いよく潜った激流は一直線に屋敷への水路を通って満たし、月明かりによって燦然と輝きを放っていた。

 

「すごい! これなら生活以外にも水を汲めるかも!」

 

「何だ? 農作業でもするのか?」

 

「いや、こんだけ出るんならみんなに分けることもできるし……いざとなればこれを主食に──」

 

「いざというのがどんな時かは想像できませんが、少なくとも非常食のためじゃありません。というかあなたは水のみで生きるつもりですか?」

 

「え? だってこっちに来る前は大体そんな生活だったけど?」

 

 明久の私生活が非常に気になるジン達だった。十六夜だけは呵々大笑していたが。

 

「とにかく非常食とかではありません。例えば水仙卵華などの水面に自生する花のギフトを繁殖させればギフトゲームに参加せずともコミュニティの収入になります。これならみんなにもできますし」

 

「へ~……」

 

 わかっているのかいないのか微妙な感じだが、とりあえずそういうこともできるということだけ認識させればいいかとジンはため息をついた。

 

「なんかさ……今日だけですごく濃い一日だったね」

 

「ええ。でも、そうでなければ箱庭に来た甲斐がないというものよ」

 

「まあ、ただ私達のために働けってだけよりはずっといいけどね」

 

「でも楽しむにはまずは明日のギフトゲームに勝たなければ何も始まらないのだけれど」

 

「絶対勝つよ。春日部さんもいるし、久遠さんがいることだってすごい心強いもん」

 

「え、そ、そうかしら?」

 

「うん。久遠さんのギフトも素敵じゃん」

 

「……本当にそう思ってるのかしら?」

 

「え? うん」

 

 飛鳥の問いに即答する明久。この顔を見る限り嘘は言ってないのだろうことは理解できる。元より、嘘をつくほど器用な真似が出来るとは思えないが。

 

「あなたって、変わってるのね」

 

「ほえ?」

 

 飛鳥の言葉に明久は首を傾げるだけだった。

 

「それよりも、この水を使えばできることはたくさんあります」

 

「例えば? 女の子が水を使ってやるとなれば……あぁ、さっきも言ってたね」

 

「YES! お風呂です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋敷に着けば時刻は既に真夜中に達していた。月明かりのシルエットで浮き彫りになる本拠はまるでホテルのような巨大さである。

 

「遠目から見てもかなり大きいけど……近づくと一層大きいね」

 

「これだけでノーネームが過去どれだけ大きかったのかはわかるね。ところで、僕達は何処に泊まればいいのかな?」

 

「コミュニティの伝統では、ギフトゲームに参加できる者には序列を与え、上位から最上階に住むことになっております……けど、今は好きなところを使っていただいで結構でございますよ」

 

「そう。ところでそこにある別館は使っていいのかしら?」

 

 飛鳥が屋敷の脇に建つ建物を指差した。

 

「ああ、あれは子供達の館ですよ。本来は別の用途があるのですが、警備の問題でみんなここに住んでいます。飛鳥さんが120人の子供と一緒の館でよければ」

 

「遠慮するわ」

 

「まあ、そういうと──」

 

「じゃあ、僕はそっちの方がいいかな?」

 

「──思って……はい?」

 

 飛鳥の即答に頷きかけたが、途中で割ってはいった明久の言葉に一瞬呆けた。

 

「吉井君、あなた本気で100人以上の子供と一緒に住む気?」

 

「うん。流石に同じ屋根の下で歳の近い女子と一緒ってのは落ち着かないし……まあ、流石に食事の時は顔を合わせるだろうから僕は一旦──」

 

「お、おおおおお、お待ちください! それはなりません! 絶対に!」

 

「ほえ? 何で?」

 

 さっき言ったことと矛盾している黒ウサギの行動に明久は首を傾げる。

 

「な、なりません! いくら子供好きだからと言っても…………そんな一線を越えた行為など、断固許しません!」

 

「ちょっと待つんだ黒ウサギさん! 君はとんでもない勘違いをしている!」

 

 黒ウサギの言葉に間髪いれずに明久がツッコむ。同時に飛鳥と耀から冷たい視線が向けられるのを感じた。

 

「そ、そう……やけに子供と楽しげにしてると思ったら……そういうことだったのね」

 

「……ロリコン?」

 

「うわああぁぁぁぁん! 誤解だってばああぁぁぁぁ!!」

 

 ここに来て早速自分の社会的地位が危うくなってることを感じた明久はなんとか弁明しようとするとそこに十六夜が割って入る。

 

「おいおい待てよお前ら。こいつはロリコンじゃねえだろ」

 

「い、十六夜君……君は僕を──」

 

「こいつはロリコンじゃねえ。同性愛者なんだ。今日ジンに一目惚れしたらしくてな。あいつと一緒の空気じゃねえと生きていけないようになったらしい」

 

「──徹底的に陥れるだろうと思ったよ! こん畜生ぉ!!」

 

 感動しかけた思いを怒りによって一気に爆発させた。そして同時に飛鳥、耀、黒ウサギとの距離が余計遠くなったのは気の所為ではないだろう。

 

「そ、そうですか……すみません、吉井さん。そうとは知らずとんだ勘違いを!」

 

「待つんだ黒ウサギさん! 今も現在進行形で君達はとんでもない勘違いをしている!」

 

「しゅ、趣味は人それぞれなのだから……他人の私達がとやかく言うことじゃないわよね」

 

「久遠さん! お願いだから話を聞いて!」

 

「……明久、私は大丈夫だから。明久がジンの事を好きなら、友達として応援するから」

 

「応援しなくていいからああぁぁぁぁ!! ていうか本当、お願いだから弁明を! 僕に弁明の余地を!!」

 

 それから小一時間して明久はようやく黒ウサギ達の誤解を解くことができた。

 

 

 

 

 

 

「まったく……みんな酷いよ……」

 

「ご、ごめんなさい。その、本当に……」

 

「まあ、わかってくれたならいいけどさ。これが僕の学園の女子だったら一生解けなかったかもしれないし」

 

 明久はため息混じりに呟いた。もしこれが姫路や美波、その他の女子だったとしたら、明久の弁明など意味をなさなかっただろう。

 

 ちなみに黒ウサギは大浴場を掃除している最中。しばらく使われなかったのか、とんでもなく凄惨なことになっていたらしい。

 

「ハハハハ! ま、誤解が解けてよかったな!」

 

「その誤解を助長させたのは十六夜君なんだけどね」

 

 明久の睨みもヤハハと笑って意に介しなかった。

 

「にゃ~にゃにゃ(ところでお嬢……ワシも風呂に入らなアカンか?)」

 

「駄目だよ。ちゃんと三毛猫もお風呂に入らないと」

 

「……ふぅん? 話には聞いてたけど、お前本当に猫の言葉がわかるんだな」

 

「うん」

 

「ふしゃ──(オイ我、お嬢をお前呼ばわりとはどういうことや! 調子乗るとお前の寝床を毛玉だらけにするぞコラ!)」

 

「意外とやることは子供っぽいんだね」

 

「……吉井君、三毛猫の言葉わかるのかしら?」

 

「ううん。昼間も言ったけど、ただの勘。こう言ったのかなって程度」

 

「ちなみに今のはわかるかしら?」

 

「十六夜君の服を毛だらけにする……かな?」

 

「……おしい。実際は寝床を毛玉だらけにする」

 

「あ、おしいってそっちなんだ」

 

「それより駄目。そんなことを言うのは」

 

「まあまあ、三毛猫も春日部さんを思ってのことなんだから」

 

「にゃ~にゃ~(小僧、バカ面の割に話がわかるな~。感じいい猫の姉ちゃん見つけたら紹介してやるわ)」

 

「何でだろう? 僕に笑いかけてるようですごいバカにされてる気がするんだけど?」

 

「ゆ、湯殿の用意ができました! 女性様方からどうぞ!」

 

 黒ウサギが掃除を終えたようで掃除用具を手に持ったまま飛鳥と耀に呼びかけた。

 

「ありがと。先に入らせてもらうわよ、十六夜君」

 

「俺は二番風呂が好きな男だから特に問題はねえよ」

 

 女性3人はそのまま大浴場へと直行していった。

 

「ふ~……今日は色々疲れる日だったな~」

 

「ヤハハ! いいじゃねえか! これから面白くなるだろうから疲れなんか感じる暇なくなるぞ」

 

「だろうね。主に、君の趣味に振り回されることによって……」

 

 この男に振り回されればそんなことを気にする暇など全くないだろうことは想像に難くない。

 

 しばらくくつろぐと、十六夜は突然立ち上がった。

 

「さて、俺は今のうちに外の奴らと話をつけるか」

 

「へ?」

 

 十六夜が妙な事を言い残していき、明久は首を傾げていた。

 

 それから半刻ほどで十六夜がジンを連れてきて入った時に魔王をわざわざ引き寄せるような行動を重ねようという十六夜の提案に度肝を抜かれたのは余談だ。

 

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