もしガールズバンドのあの子がお酒を飲んだらどうなるの? 作:早宵
更新がとっても遅れました。
“ピピピピッ、ピピピピッ!”
うるさく鳴り響く携帯のアラームによって強制的に目を覚ます。寝ぼけ眼を擦りつつ、まだ思考がはっきりとしない中スマホに手を伸ばし時間を確認する。
「まだ7時か……」
ここで冷静になって考えたらわかる事だが、そもそもアラーム鳴ってる時点で起きないといけない時間なのだ。だが大量の課題を消化してやっとの思いで終わらせて寝床についたのが、日付が変わる時刻を大幅に超えた所なのであった。
まぁつまり何が言いたいかと言うと睡眠不足なのである。そして睡眠不足により思考回路が回っておらず睡眠欲がもう臨界点を突破しているこの状況。そこから導き出せる結論は…………
「あと10分だけ寝よう…」
そう、二度寝である。そしてそのまま夢の世界の深部へと旅立って行った。
そして気がつくと俺の目の前には湖が広がっていた。いや自分でも何言ってるかよくわかんないんだけども湖が目の前に見える。
俺が気づいてからすぐにざばぁという音を立てながら水の中から人が現れた。人というか女神?みたいな感じだ。
そしてその女神(仮)は俺に向かってこう言った。
「貴方が落としたのはこの金の有咲ですか?」
は?
「それともこの銀の有咲ですか?」
は??
「もしくは普通の有咲ですか?」
は???
あ、因みに有咲って言うのは同じ大学の同級生であり俺の彼女である
あとPoppin'Partyと言うガールズバンドを組んでいてキーボードを担当していたりもする。
彼女らが練習している蔵に呼ばれる事もちょくちょくあり他のメンバーの事とも面識はあるが何というか個性的な面々だと思う。
ウサギ連れてきたり、休憩時間に狂ったようにチョココロネを食べていたり、いきなり飛びついてきたり、ようやくまともだと思ったら急に三刀流ドラムをしたりともう個性の塊を凝縮した感じだ。
この中で市ヶ谷さんは逞しく生きています。言うてもキャラの濃さで言ったら他とも変わらないと思うけどな。
まぁ過労死しない程度に頑張って欲しいな。
そして本題に戻るのだが、この状況は何なのだろう。さっっっぱりわからない。でも同じような光景は童話で見た事あるような無いような…
急過ぎてどう答えていいかわからないが自分の思いついた通りの回答で良いだろう。
「普通の有咲で」
「本当によろしいですか?」
「はい。普通の有咲で」
「中々のツンデレで時々学校に来ない普通の有咲になりますけどそれで宜しいですか?」
「はぁ…それでいいです」
女神(仮)さん中々有咲の事知ってるじゃねえか…
あと普通って何だっけ。てかこうして聞くと普通って何か全く分からなくなるな。
「では普通の有咲をそちらに送りますね」
「えぇ…ありがとうございます?」
「普通の有咲をよろしくお願いしますね」
「わかりました?」
返事をした瞬間に霧が晴れて現実に引き戻される感覚とともに目が覚めた。一体この夢は何だったんだ…
そして携帯に手を伸ばし時間を確認する。
「まだ8時かぁ…もうちょっと寝ようかなぁ…」
「ちょま、何時間寝るつもりだよ!」
声のした方を向くとさっき夢に出てきた普通の有咲がいた。こいつ朝早いな。
「まだ8時だろ」
「夜のな!」
何を言っているか理解できずもう一度携帯に手を伸ばす。画面を見てみると20:29という表示になっていた。意味がわからずに数秒間、画面とにらめっこをした。
そしてまだ覚醒しきっていない脳を必死に働かせてやっと今は夜の8時29分であるという結論に至った。もうここまで来ると一周回って冷静にしかならない。
「寝坊したわぁ…」
「寝坊ってレベルじゃねーぞ」
「というか何で普通の有咲が俺の家にいるの?」
「ん?普通の有咲って何だ?」
「あー…何でもない」
まだ頭が覚醒しきっていないのか夢と現実がごちゃごちゃになっていたようだ。なんかごめんね。
「それで何でいるの?何か約束したっけ?」
「お、覚えてないのか?」
「うーん…ヒント」
「んー酒だな」
「○桜?」
「何で実況者なんだよ!」
「だったらは○おさん?」
「ようつべからも離れろぉ!!」
ツッコミ疲れたのか肩で息をしている。お疲れ様です。
「それで答えは何なの?」
「今日飲みに行くって約束した筈だろ!」
「あっ…約束したね。うん、覚えてる覚えてる」
「本当に覚えてたか?」
「オボエテタヨー」
「覚えてなかっただろ!!」
「覚えてたって」
「はぁ…まぁいいけどさ。今からどうすんだよ?」
今から外に飲みに行くという選択肢もあるが、今から行くのはあんまり気が乗らない。でもお酒は飲みたい。となると考えられるのは…
「酒とつまみなら家にあるから宅飲みでどう?」
「ん、いいぞ」
「じゃあ支度するからちょっと待ってて」
「私も手伝ってやるよ」
「ありがと」
適当に冷蔵庫にあった肉をフライパンで焼き、予め作ってあった何にでも合う秘伝のタレをかければあら簡単。お手軽な生姜焼きの完成だ。
この間に有咲はアスパラにベーコンを巻きつけてアスパラベーコン巻きを作ってくれていた。
そういえば唐突に思った事だが、アスパラベーコン巻きってこれ以上ないくらいストレートに料理名を表しているよな。5歳児に生姜焼きとか言っても理解出来ないと思うけどもアスパラベーコン巻きって言えばある程度理解出来ると思う。そう考えるとアスパラベーコン巻きって凄いな。
その後、俺も有咲もその他の料理を作り終えてテーブルに運ぼうとした時に知り合いから電話がかかって来た。
そして少し長めの電話の応対をして部屋に戻ってみると、全ての物がテーブルに配膳されていてもう食べるだけの状態になっていた。どうやら有咲が全て配膳して酒も出しておいてくれたみたいだ。
「運んどいてやったぞ」
そっぽを向いて少し不機嫌そうにしている。そんな姿も可愛い。
「ありがと、さすが有咲。やれば出来る子」
「ほ、褒めたってダメなんだからなっ!」
「ツンデレありがとうございます」
「うるせー!!」
お手本のようなツンデレを発揮してくれました。
「それじゃ食べようか」
「おう」
「「いただきます」」
自分的には割と上手く作れた気がしたが、有咲の口に合っているかどうかが少し不安になったので聞いて見る事にした。
「味付けとか大丈夫?」
「全然大丈夫、てかこの生姜焼きうめーな!」
「それ結構自信あったから良かったよ。あとそこにあるきゅうりのたたきが結構酒に合うから試してみ」
「どれどれ……ああ〜染みるわ〜」
「言ってる事がリーマンのおっさんみたいだね」
「はぁ!?誰がおっさんだ!」
貴女の事です。
「それより、あんまり酒とか飲んでこなかったけど意外といけるもんだな」
「なら良かった。でも調子に乗って飲んでると酔うよ?」
「大丈夫大丈夫」
と言いつつ早くも二杯目を飲み始めた。結構ハイペースで飲むものだから酔いが回ってるのか顔が赤くなっている。本当に大丈夫なのか少し心配になってきた。
「今日の約束反故にしてごめんね」
「良いよ別に。今こうして飲めてるからな」
「そう言ってくれると助かる」
「でもまさかこんな時間まで寝てるとは思わなかったぞ」
「いやぁ…俺もこんだけ寝たのは初めてでさ。もうここまで寝坊すると一周回って冷静になるよ」
「私はてっきりそういう病気でも患ってるのかと思って心配したよ」
「そういうのではないから大丈夫だよ。てか心配してくれてたんだね」
「はぁ!?別にしてねー!」
「嘘だぁ〜」
「嘘じゃねえ!」
思いっきり心配したって自分で言ってたけどね。まぁそう言うところが有咲の可愛い所だから見てて楽しいんだけどね。
「てかこの有咲の作ってくれたアスパラベーコンめっちゃ美味いんだけど、何か特別な物入れた?」
「特に何も入れてねーぞ」
「これほんと最高だよ。有咲は引きこもり気味だけどご飯美味しいし将来良いお嫁さんになりそうだよね」
「はぁ!?き、急に何言ってんだお前!」
「ありのまま言っただけだよ」
「ったく…そう言う事はあんま言うなよ」
「へいへい」
絶対わかってねぇ…とか言いながら酒をぐびぐびとおっさんみたいに飲む。さっきからずっと飲んでいるためか有咲の顔が大分赤くなっていくがこれは酔いなんだろうか。
「そう言えば料理してる時に電話かかって来てたけど誰からだったんだ?」
「沙綾さんからだったよ」
「沙綾からか…ってお前沙綾といつの間に仲良くなったんだ?」
「あの人とはサークル一緒だから色々話してる内にこうなってた。てか有咲今日、学校で元気なかったんだってね」
「気の所為だと思うぞ」
「でも沙綾さんがそうやって言ってたよ」
「お前沙綾に信頼おきすぎだろ」
「あの人はポピパでも常識ある方だからね」
「それでも私より沙綾に信頼を置くなよ…」
「だって沙綾さんポピパの中で一番見てて安心するもん」
「悪かったな。見てて安心しなくて」
「そういうわけでもないけど」
何となく喉が渇き、近くにあった酒に手を伸ばそうとした時に気がついた。
いつの間にか机の上には、まあまあな数の飲み干した缶や瓶が無造作に置かれている。缶の方はあまり度数が高くなかったが、瓶はある程度の度数を持っていた。それを空けて飲んだという事は酔ってる可能性が高いと言う事になる。
「有咲、大丈夫?」
「らいじょ〜ぶ」
「本当に大丈夫?」
「大丈夫らって言ってんだろ〜」
「いや全然大丈夫じゃないでしょ」
「大丈夫らっていってんだろ!」
もう口調から分かるように完全に酔っているみたいだ。有咲はこんなんになるまで飲んだ事がないからこの先どうなるか不安でしかない。
「お前なぁぁ…」
「どうしたの?」
「もっと私にかまえよぉ!!」
「はい?」
「だぁぁ!こうなったら私が言いたかった事言わせてもらうぞぉっ!」
如何やら有咲は酔ったら言いたくても言えない本音がだだ漏れになるタイプらしい。
「さっきから沙綾沙綾っていってるけど彼女はこのわたしなんだぞ!」
「そうですね…」
「ほんとにわかってるのか〜〜?」
「勿論わかってます、はい」
赤くなった頬をいっぱいに膨らませてこちらに抗議をする。
「すっかりポピパのメンバーとも馴染みやがって!わたしより仲良くなってんじゃねぇ!」
「ごめんなさい」
「香澄が抱きついてきた時こころではガッツポーズしてんだろ!」
「してました。本当にごめんなさい…」
「学校でも色んなやつとしゃべりやがって!じゅるいんだよ!!」
「それはコミュ力の問題じゃ…」
「そもそも雰囲気がよしゅぎるんだよ!!あとコミュ力も高しゅぎるんだよ!!もっと控えろ!」
「ええ…」
最早ただ言いたい放題になってきてるような気もする。
「とりあえずお水飲んで落ち着こう?」
「これはウイスキーかぁ??」
「もうそれでいいから飲んで」
酔いすぎてもう何かすら認識出来てなかったが、ひとまず水を飲ませて見たところさっきよりは大分落ち着いた。
「今の気分はどう?」
「マジでハイって感じだ」
「はぁ…何かして欲しい事ある?」
「じゃあ私に抱きつけよ」
「えぇ……」
「3回な」
「いやなんで3回?」
「お前がかしゅみにデレデレした回数分」
何で3回って正確に判断できたんだ。
「わかったよ、やるよ」
「ん」
お酒から来る酔いのせいなのかとろんとした目で俺を見つめながら両手を広げてこちらの挙動を待っている。俺はそんなに酔ってないからかなりの羞恥を感じつつ、有咲の正面から抱きつく。いや真面目に恥ずかしい。
「今日学校に来なかった事、心配したんだからな」
「心配かけちゃったね」
「わざわざ五限サボってまでここに来たんだからな」
「多分明日は行くから安心して」
「多分じゃなくて絶対こいよ。お前がいないと学校楽しく感じられないしさ」
「わかったよ」
「じゃああと2回分の抱きつき権を使って聞きたい事があるんだけど」
「何?」
「色々コミュ障だったり重かったりするかもしれないけどそれでも私でいいのか?」
「全部ひっくるめた有咲が俺は好きだよ」
「そっか、ならよかったよ!」
何百万もする凄い絵画なんかよりも価値のある、最高の笑顔をして有咲はそう答えた。その後、ちょっと駄弁っていたら眠くなったのか目を擦ったりしていたのでそのままお開きにして、二人とも寝る事にした。
そして次の日───
「有咲〜もう10時だよ〜」
「もうちょい寝させて…って何でこの時間!?二限間に合わねえぞ!」
「何回揺すったりしても起きなかった有咲が悪い」
「ぐっ…ごめん」
「いいよ。そういえば昨日の事覚えてる?」
「昨日……あっ……」
「酔った有咲も好きだよ」
「昨日の事は忘れろぉ!!」
結局、二限どころか三限にも間に合わなかった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
5ヶ月も空きましたね…本当に申し訳ございません。これからはもう少し更新頻度上げていきたいと思います。
この場を借りて評価を下さった、宮ノ村さん、テト・ストラトスさん、希望光さん、猿もんてさん、空中楼閣さん、思春期を殺した少年の翼さん、ムーンフォースさん、にゃるさーさん、みゃーねこさん、ゴリおさん、るかzzzzさん、☆麒麟☆さん、Amesupiさん、酒狐仁さん、いかだらさん、はげもとさん、絆…ネクサスさん、休憩さん、ボルンガさんありがとうございました!めちゃくちゃ嬉しいかったです!!