更新速度は……期待しないで下さい(汗)。忘れた頃に更新してると思います。
では本編どうぞ。
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『頑張パワフルズ』は万年最下位のお荷物球団。投壊、貧打、拙守と逆三拍子揃い踏みのダメチーム……という認識は今は昔の話である。近年、このパワフルズがレボリューション・リーグ(以下レ・リーグ)で古豪復活の狼煙を上げた。
長いスパンを掛けて整備された投手陣はエースの
打線も一昔前に比べたら随分厚みを増したと言っても良い。以前は
しかし、それももはや過去の話。去年の半ばから当時三年目の
小波実は高校時代までは投手だった。豪速球を武器にパワフル高校のエースに君臨し、甲子園春夏連覇に導く活躍が評価されて頑張パワフルズにドラフト二位指名でプロの世界に入ったが、抜群の身体能力を買われプロ入り直後に外野へとコンバートされた。
一年目、二年目と一軍出場は無し。三年目の球宴明けから一軍に昇格すると、持ち前のフルスイングで勝利に貢献。残念ながら規定打席には届かなかったが打率.315、16本塁打と後半戦だけでこの数字、レギュラーを確定させるには充分過ぎる成績を残した。
そして四年目となった今季は開幕から三番に定着し自慢の打棒が爆発。三番小波、四番福家のクリーンアップコンビを形成しチームを約二十年振りのリーグ優勝へと導いた。惜しくも日本一とはならなかったが実は最終的に打率.338 31本 109打点の成績を残す。打率と打点はチーム最多でありシーズンMVPを受賞するなど大きな飛躍を遂げた。
そして現在プロ野球はシーズンオフ、所謂ストーブリーグの最中である。各球団はドラフトやFAなど戦力を整えている頃であった。
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…祖父には無理を言って野球を続ける事は出来た。だが結果を出す事はおろか、結果を出す機会すらも与えられなかった。こんな事は今までの野球人生で一度も無い。
そう危機感を募らせているのは聖タチバナ学園の女子野球部に所属していて、水色の頭髪がトレードマークの
彼女の武器は大きく沈むスクリューと、それを打者がバットを出したくなるポイントに投げ込む絶妙な制球力。特にスクリューは変化量もさる事ながらプロのレベルと言われる程キレがある。それ程の逸材だから夏の甲子園で旋風を巻き起こしていてもおかしくは無い筈であった……
しかしそれを甲子園ではおろか、公式戦の場でも披露する事は叶わなかった。噂では左肘の故障や極度のスランプなど様々な憶測が飛び交ったが、真相はそのどれでもない。
本当の理由は試合に出場出来るだけの人数が揃わなかったからなのだ。みずきが所属する聖タチバナ学園女子野球部のメンバーを見てみると……
投手はみずきを入れても僅か二人。そして野手はファースト、サード、ショート、外野はセンターのみと部員が決定的に不足しているのは誰がどう見ても明らか。遊びで野球をする程度なら最低でも投手と打者の二人が揃っていれば出来ない事はない。……相当しんどいが。
しかし遊びとは違う部活動ともなると、人数が不足していては練習試合すらままならない。入学して早々にぶち当たったこの問題を解決するにはみずき達の力ではどうする事も出来ず、まさに八方塞がりであった。短い期間で部員を集めて夏の大会までに間に合わせるなんて話は所詮絵空事に過ぎず、現実ではそう上手く事が運ぶ筈が無い。
故にみずき達女子野球部員は一年間を犠牲にして学校の内外問わず勧誘活動をしていた。少なくとも来年の地区大会までには試合に出場出来るだけの人数はどうにか集めておきたい。
変な噂が立つのは避けたいので基本的に相手の立場になって話す事が多い。その為か即答で断られる事が多く、今の所大きな成果は得られてはいない。この日も同様に悉く断られ、みずきの呼び掛けに賛同する者は一人も居なかった。明日こそは…と気持ちを奮い立たせて家路に向けて歩く。
…気が付くと河川敷に出ていた。河川敷では中学生と思われる野球少年達が練習試合を行っていた。みずきは息抜きにとその試合を観戦する事に。…チームメイトには収穫は無かったと言い訳をしておこう。野球に人一倍熱心な一人の同級生から小言を喰らうかも知れないが事実なんだからしょうがない。
試合はどうやら最終回のようで、赤い帽子の『赤とんぼ中学』が1対0でリードしている。丁度チェンジになって赤い帽子が最終回の守りへと入る。マウンドには恐らく少女と思われる投手が上がる。
みずきも投手というだけあって投球には結構うるさい。良い投手というのはキャッチボール一つだけで大体の能力が解ると言う。
この投手は足腰の使い方が上手い。踏み込んだ時に右足から左足へと移動する重心に従う形で右腕を真上から降り下ろす。下半身主導のオーバースローから放たれるストレートは球質が重く、且つ縦回転のスピンが掛かる為打者の手元で伸びてくる……所謂キレが良く手元でホップするストレートを投げる事が出来る。
…ッテイヤイヤチョットマテ。投球術を褒める以前にとてつもなく重大な事実を見落としていたではないか!
みずき「(あのピッチャー女の子!?)」
黒い髪の毛を後ろで束ねた女性の投手は一瞬みずきと目が合ったがすぐに視線をホームベースへと戻し、元気の良い掛け声と共に最終回の攻防が始まった。女性の投手は一人目の打者に一球目を投じる。
ズバァーーーーーーーーン!!
みずき「……!!」
みずきの驚きはこれで終わりではなかった。実際に打者と対戦している様子を見ると、明らかに普通ではないストレートがマウンド上から投げ降ろされていた。
何と言ってもストレートのスピードが中学生レベルを完全に越えている。体格が一回りも二回りも違う男の選手がストレートに手も足も出ない。バッタバッタと空振りを奪う様は見ていて爽快な気分になる。
一人目、二人目と連続三振に切って取り、あっという間にツーアウトランナー無しという状況になった。
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「ボール、フォア!」
みずき「……」
…と思ったらそこから三者連続の四死球であれよあれよとツーアウトフルベース。ランナー無しからのデッドボールを皮切りにその後二者連続でストレートのフォアボールで塁は全て埋まった。監督や捕手からしてみれば胃の痛む展開だが、みずき自身は単なる観客に過ぎないので「色々とキャラの濃い投手だなぁ~」と暢気な事を考えている。
とは言え流石にこの状況では投手も少なからず動揺はしているんだろうなと思っていたのだが……
??「ひじり~、次ストレート行くよぉ~♪」
??「なぁー!?ちょ…ちょっとタイム!!」
捕手が慌てて審判にタイムを掛けマウンドへと駆け寄る。試合中、最終回、二死、満塁という状況にも関わらず、この大ピンチを招いた張本人は大して慌ててもない声で有ろう事か次の打者に球種を宣告した。これを見た捕手は遠く離れたみずきにも届く声量で暴挙に出た投手を咎めに掛かる。……この投手は果たして抑える気があるんだろうか?
……というより、よくよく見たら捕手も女性ではないか。
??「お前という奴は何を考えてるんだ!!試合中だという事を分かっているのか!?」
??「だって聖フォークしか要求してこないから、ストレートのサイン忘れたのかなぁ~って」
??「そんな訳あるか!!」
野球経験者…もしくは野球中継を見た事がある者ならば分かると思うが、普通マウンド上で投手と捕手が何らかのやり取りをする場合は口元をミットで隠して小声で行うもの。だがこの二人は口元を隠すどころか大声でサインの確認とも取れるやり取りを平気で行っている。
??「ここは1点もやる訳にはいかない。だからお前にフォークを要求したんだ」
??「…いっつも思うけど、聖って難しく考え過ぎじゃない?別にいつも通りにしてれば良いし、気負う必要なんて無いと思うよ。
第一、私のストレートがそんな簡単に打たれる訳無いじゃん」
??「それはストライクゾーンに
とにかく、ド真ん中でも良いから腕を思いっ切り振って投げろよ」
??「はいは~い」
ようやくサインの確認(?)作業が終わり、捕手はホームへと戻っていった。勿論今までのやり取りも全てみずきの耳に届いている。投手はマウンドを少し馴らした後、振りかぶって初球のボールを投じた。
のだが……
??「あっゴメン、すっぽ抜けたぁ(笑)」
??「なぁーーーーーーッ!!」
捕手が要求したコースは右打者の内角低め。ところが実際に放たれたボールは外角のかなり高め。つまりこれは完全な逆玉である。百歩譲ってストライクゾーンの中に入っていればまだ良かったが、ボールはバッターボックスを大きく外れる大暴投となった。
しかも捕球までの距離が長く、捕手が目一杯手を伸ばした所で到底届く筈が無い。みずきもこれはワイルドピッチで一点は確実。
……そう思っていた。
バシィーーーーーーーーーン!!
だからこそ捕手が後逸せずキャッチャーミットにボールが収まっている事にみずきは驚きを隠せなかった。このファインプレーを偶然の一言で済ます事は勿論出来ないが、かといって野球の技術どうこうで説明出来る問題でもない。この捕手のみが持つ何か特別な能力が備わっているとしたら……
みずきは迷わなかった。この試合が終わったら早速あのバッテリーを我が聖タチバナ野球部にスカウトしよう。
◇
結局この大ファインプレーで相手に傾きかけた流れを引き戻した赤とんぼ中学は最後の打者も三振に切って取り、1対0で勝利した。土手で観戦していたみずきは立ち上がり、勝利の余韻もそこそこに帰り支度をする先程のバッテリーに一声掛ける。
みずき「そこの2人~、ちょっと良い?」
??「?」
??「…なんですかぁ?」
突然の呼び掛けに一人は怪訝そうな顔をし、もう一人は一瞬キョトンとしながらも言葉を返した。現在のみずきの格好は聖タチバナの学生服を着ているので二人からしてみると、ギャルに絡まれたと思っているかも知れない。
みずき「アンタ達の試合をそこの土手で見てたけど、2人共中々やるじゃない。名前何て言うの?」
優「熱血弾丸娘こと
聖「……
みずき「私は橘みずき。アンタ達と同じで野球をやってるわよ」
優「マジっすか!?…てっきりただのビ○チかとーー」
みずき「誰がビ○チだ!!」(殴)
優「グヘェ!!」
聖「…今のは優が悪いぞ」
初対面のみずきを相手に要らん事を口走った優を、これまた初対面のみずきは先輩として容赦無く鉄拳をお見舞いする。僅か一年違いと言えど体育会系に身を置く者同士である以上、いずれ後輩になるであろう者には早い内から
大袈裟に拳骨喰らった部分をさする優は一先ず放っておくとして、みずきはたった今行われた優の自己紹介に違和感を覚えた。今コイツは小波って言わなかったっけ?
って事はもしかしてコイツは……
みずき「小波って事は、ひょっとしてパワフルズの小波実って……」
優「小波実は私のお兄ちゃんですよ♪」
小波実と言えば五年前の甲子園であのあかつき大学付属高校を抑えて弱小と言われたパワフル高校を甲子園春夏連覇に導いた立役者だ。プロ入り後に外野手に転向したが、要所で活躍する様は投手だった頃から何も変わってはいない。同じ野球というスポーツで戦う者として、みずきがその名を知らない筈が無い。
そしてその妹がこの小波優。男子顔負けの快速球も兄貴の遺伝と考えればあの投球も納得である。優の正体が分かった所でこれ以上回りくどい方法は不要とみずきは優と聖を呼び止めた理由を告げる。
みずき「アンタ達って進路とかって決めてるの?」
聖「…具体的にはまだだ」
みずき「ふーん……んで、アンタ(優)は?」
優「今の所あかつきと帝王実業の2校からオファーが。あ~でも、どっちも県外だし家から遠いからあんまり……」
みずき「…え"っ、帝王から!?」
帝王実業の名を聞いて露骨に顔を
それに纏わる話はまた今度するとして、どうやら優の話を聞く限り自宅はこの辺の近所にあるようだ。練習に費やす時間を多く取りたいのか単に通学が面倒くさいのかは分からないが、優は自宅から通える高校への進学を所望している。
そうと解ればみずきが取るべき行動は一つ。
みずき「だったらウチの高校に来ない?聖タチバナ学園って所だけど」
優「場所はどの辺ですか?」
みずき「ここからだと歩いて10分って所かな」
優「良いですね~。じゃあそこにしまーす」
みずき「アンタ(聖)はどうするの?」
聖「…優がそこで良いって言うなら私も構わないぞ」
こうして小波優と六道聖は聖タチバナ学園への進学が決まった。目指すは当然甲子園で優勝する事。
『女性選手だけで甲子園を制す』という未だ前例の無い目標に向けて聖タチバナ女子野球部の戦いは始まった。
次はタチバナの選手、人物を紹介する予定です。
予め断っておきますが、宇津、原、大京は出ません。期待していた方々、申し訳ない……