家族の為ならどこまでも   作:実茶

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第15話 風邪の大流行

快気祝いと言う名の宴から数日、ハードなや筋トレや体力作りをする毎日が始まった。わたしも強くなりたいとは思うから必死にメニューについていった。

 

「あいつ、根性あるな」

「あぁ。だが、子どもにやらせるメニューじゃないよな、アレ。隊長たちも鬼だぜ」

「ニアを想って心を鬼にしてるんだ。そういってやるな」

 

わたしのトレーニングを見ている隊員たちが口々に何か言っている。

同情されてるきがするのは気のせいだろうか…

 

「午前はこの辺までにしとくか。休憩だニア」

 

トレーニング中は結構厳しいビスタさん。

さすがと言うかオンとオフがしっかりしてるというか…

 

「あ、あい…」

 

午前は、腕立て・腹筋・背筋・スクワットを50回くらいずつやった。回数は日を重ねるごとに増やしていくらしい。

午後からは体力作りだそうな。

…まだ時間はあるな。よし、図書室に行こう

この船なんでもあるな…無駄に広いわけじゃないんだ。

人が多いから大きいのは当たり前か

 

ーガラッ

図書室のドアを開けると柔らかい物腰で話しで笑いかけてくる片眼鏡をした薄紫色の長い髪の(ひと)が居た。

 

「イオンにぃちゃ!きょうもおべんきょうしにきたよ」

「ふふっ…。よくきたね。おいで、ニア。」

 

イオンさんは非戦闘員で、主に薬の研究をしてる。

植物に詳しくてこうして時間があるときに色々教えてもらっているのだ。

この間は花の摘み方を教えてくれた。

 

「もしだれかがかぜをひいたりけがをしたらどうすの?」

「風邪と、怪我か。そうだね……。かぜにはサンシュユがきくね」

「さんしゅ…?」

 

わたしを膝に乗せて薬草図鑑を開きながら優しく教えてくれるイオンさん…

動作1つ1つがすごい優雅。ほんとに海賊!?

 

「サンシュユ。別名、ハルコガネバナ。花は黄色くて実は赤いんだ。解熱、滋養強壮、疲労回復の効果があるんだよ。」

 

イオンさんが図鑑を指しながら言う。

 

「怪我はオトギリソウかな。出血や腫れを抑える効果があるよ。あ、でも…煎じた汁を飲むと皮膚炎を起こすから気をつけようね」

 

ほうほう…。

 

「それと、千年草と千寿草。これらは希少でかつ少々やっかいなところに生息していてね、気温が低くて湿気の多いところじゃないと生えないんだ。」

「せんねんそう、せんじゅそう」

 

なんですか、その厨二感満載な名前は

 

「千年草は風邪薬で千寿草は傷薬になるんだ。この2つは他のどんな薬よりもよく効いてね万能薬として記されてるんだ。通常の3倍の速さで病気や怪我を直してしまうんだよ。生息地はここから1番近いところでも10キロは離れてるね。サルド山の頂上付近と地下層かな…。どちらも小さな白い花とギザギザした葉が特徴的だね。」

 

3倍……!?

そんなチートアイテムがあるの!?

 

「ばしょがちがうの?みわけかたとかある?」

「千年草は花弁が上向きになっていて、千寿草は下向きなんだ。似た気候のところにあって、見た目も花弁の向きくらいしか変わらないけど一緒に生えてるわけじゃないね。千年草が頂上付近で千寿草が地下層にあるんだ。ボクも実際に取りにいったことはないんだけどね。そこに生息してるのは確かだよ」

 

イオンさんの優しい喋り方癒されるなぁ〜。

しばらくイオンさんの授業を受けているとサッチさんが図書室のドアを開けた

 

「あ、ニア。ここにいたのか!早く飯食いに来いよ!そのあと体力作りな!」

「あ、はーい」

「ふふっ。お迎えがきちゃったね。じゃあ、今日はここまでかな?また時間があるときにおいで」

「うん!ありがとう、イオンにぃちゃ!」

 

イオンさんの膝から降りて笑顔で手を振って図書室を出る。

ふうっ、さてまた修行か

がんばろっ!

 

***********

 

それからまた数日。道場でいつも通り筋トレを終えた頃…

 

「………ニア、ちょっといいか?」

 

他の人がいなくなったあとカルガンがふらふらとわたしの方に歩いてきた。

 

「カルにぃ?どうし…………っ!!カルにぃ?!カルにぃ!!」

 

わたしの前にくると脱力するように崩れ落ち、慌ててその体を受け止めた

 

「ど、どうしたの?!カルにぃ!」

 

驚いて思わず叫んでしまった。

 

「ははっ…、なんかちょっと体が怠くてよ。悪りぃんだけど、部屋まで支えてってくれねぇか?」

「…カルにぃ…あつい。それにふるえてる?まさか、かぜ?!」

「わかんねぇけど、少し休めば治るだろ」

 

…わたしが拒絶すれば早いんだろうけど、ダメだ。

そんなことしたら拒絶の力(この力)のことを全部話さなきゃいけなくなる。

ほんとうに追い込まれた時以外は使わないって決めたんだ。

どうしよう……。とりあえず、カルガンを寝かせないと!!

 

「心配かけてごめんな、ニア」

「いいっ!だいじょうぶ!そんなこときにしないで」

 

カルガンの体を支えながら道場を出るとちょうどビスタさんと出会った。

 

「…どうしたんだ?」

「ビ、スタ隊長…。えっと…」

 

カルガンはわたしの肩を借りてるからか気まずそうにビスタさんから目をそらした

 

「カルにぃ、ねむいんだって!ちょっとねかせてくる」

 

カルガンが知られたくないようだったから咄嗟に嘘をついた。

 

「・・・ニア。お前が嘘をついたりする時「にどもおなじてにはのらないよ?!」……そんな泣きそうな顔してりゃカルガンが眠たい訳じゃないってすぐわかる」

「…おみとおしでくやしい」

 

どうしても感情が顔に出てしまう!

くそぅ、ビスタさんに一回でいいから勝ってみたい!

……って、何の勝負してるんだ、わたし

 

「ははっ!よしよし。カルガンは任せろ。医療室にでも運んでくる。見たところ風邪か何かだろう」

 

ビスタさんはカルガンを軽々と担ぎ上げた。

すごっ…。その腕の筋力どうなってるの……。

心配してるように見えたのかビスタさんはわたしの頭をくしゃりと撫でるとカルガンを医療室に運んでいった。

 

***********

 

-ビスタサイド-

 

ニアの修行を始めて数日、あいつの根性と成長の早さには驚いた。

子どもには厳しすぎるだろうと自分でも思うがそんなメニューも弱音一つ吐かずに一生懸命にこなす。さすが俺たちの妹だ!

 

「……!……ルにぃ!」

 

午前の部を終えて解散したあとなかなかニアが戻ってこないから様子を見に道場に行くとニアの必死な叫び声が聞こえた

急いで見に行くとちょうど道場のドアが開き、カルガンがニアに支えられていた

 

「なにがあった?」

 

そう聞くとカルガンは気まずそうに目をそらす。

顔が少し赤いな……。それにニアのあの心配そうな表情…。熱でもあるのか?

 

「カルにぃ、ねむいんだって!ちょっとねかせてくる!」

 

ニアがそう言う。カルガンが知られたくなさそうなのを悟ったんだろう。全く…。鋭いんだか鈍いんだかわからんな、こいつは

 

「ニア、お前が嘘をついたりする時「にどもおなじてにはのらないよ?!」……そんな泣きそうな顔してりゃカルガンが眠いわけじゃないってすぐにわかる」

 

いつか使った手でニアの嘘を暴こうと思ったが2度目は引っかからなかった。そりゃそうか…。

だがその後「おみとおしでくやしい」と、しょぼくれた。

……かわいい……。けど、そんなこと言ってる場合じゃなさそうだな

ニアからカルガンを受け取ると俺はニアの頭をくしゃりと撫でて医療室へと向かった。

 

-サイドエンド-

 

***********

 

今風邪が流行っているらしくあれからも高熱で倒れる人が続出しているらしい。

…集団生活してるからこれって結構まずいんじゃない?

 

「ニア……」

 

ロビーにいるとふと後ろから呼ばれた。振り向かなくてもわかる。この声はハルタさんだ

 

「ハルに………っ!!ハルにぃちゃ!!」

 

振り向くとわたしに抱きつくようにして倒れてきた。

え、隊長まで…!?

 

「にぃちゃ!だいじょうぶ?!」

「あ、はは。情けないなぁ…。妹に心配かけるなんて…。」

「そんなこときにしない!いりょうしつはこぶからつかまって」

 

彼は「ありがとう」と真っ赤な顔で力なく笑う。

わたしはハルタさんを支えながら医療室に向かう。そこには病人が結構いた。

うわぁ…。大感染じゃん、どうしよう…。

えーっと、、、そうだ!千年草!それがあればすぐにこの騒動も収まるはず!!

でも過保護なお兄ちゃんズに相談してもきっと反対されるだろうな…

なら、みんなの目を盗んでいくしかない。だったら夜中に動くしか無い…か。

朝と昼は修行だし、常に誰かついてる。

風邪が流行してて、そっちで手一杯そうだから頑張れば抜け出せるはずだ

けど、1人じゃ抜け出せてもたどり着けないかな…?

うーん……

あっ、そうだ!!イオンさんなら…!

彼が協力してくれるならいけるかもしれない!

 

「おいおい、ハルタまで…。大丈夫かよい?」

「マルコ〜。頭痛い…」

「多熱病の類だな。ニア、ハルタを運んでくれてありがとうよい。あとは任せろ」

 

マルコさんが船医さんの手伝いしてる。この人って船医なの?副船長兼船医?それとも航海士?結構謎よね

まぁ、今はいいか

わたしはマルコさんにハルタさんを任せ部屋を出る。

部屋の前でどうやって薬を取りに行くかしばらく悩んでいると船医さんとマルコさんの会話が聞こえた。

 

「薬が足りるかわからないな…」

「そうだな。思ったより患者が多いよい。多熱病は大人がかかるとめんどくせぇんだよなぁ…。なかなか治らない上に感染力だけは高い。こりゃ参ったぜ」

 

薬が足りないかもしれない…

その瞬間、わたしの視界が歪んだ。

なんとか壁にもたれかかり倒れずに済んだが悟ってしまった

ーー感染した(うつった)ーー

 

ーーーっ!!

ただえさえ、わたしのせいで隊長たちの時間を割いてるのにこれ以上負荷はかけれない。

…行くしかない。サルド山。

今日はちょうど昼の部も終わってるし、夜までまだ時間がある。

この前の段階で10キロくらいは離れてるっていってたから今はもう少し離れてるはずだ。構うものか、場所を把握して取りに行こう。

夜のうちに行って朝までに帰ってこれば大丈夫だ、きっと。

海図…は、マルコさんの部屋だっけ?

忍び込むのは気がひけるけどやるしかない。今から日没までに準備を全部終わらせてミッション開始だ

フードを深く被り顔を隠してふらつく足元を気力で動かし、マルコさんの部屋に忍び込み海図を見る

…………ここか。距離、地形、標高全て頭に叩き込む。

船は…小船を1つ借りよう。

イオンさんならきっと協力してくれる!

あ、でもわたしの様子を見たら止めるかな?

とりあえずわたしはマルコさんの部屋を出て図書室へ向かいドアをゆっくり開けた。

 

「…くるとおもってたよ、ニア。」

 

予想していたかのように本を読みながらイオンさんが言った。

イオンさんが顔を上げわたしを見ると「おや…」と何かに気づいた。

 

「ニア、君も熱を出してるね。そんな体で薬を取りに行くつもりかい?」

 

どうやら全てお見通しらしい。

 

「わたしの、せいでみんなのじかんをたくさんとってる。わたしも…やくに、たちたいっ!」

「ふふっ。ニアはすごい子だね。いいよ、手伝ってあげる。但し、絶対に帰ってくるんだよ?戻ってこなかったらボクも怒るからね?」

「……うん。ありがとう、イオンにぃちゃ。ぜったいぶじにかえる。やくそく」

「そうだね、約束だ。ニア、君に魔法をかけよう。君はこの船を出るまで誰の視界にも入らない。そんな魔法。けど、誰かにぶつかったりすると解けてしまうから気をつけるんだよ?」

 

イオンさんが謎なことを言ったけどとりあえず頷いておく。

甲板に出るためにロビーを通るが本当に誰もわたしに気付かなかった。

イオンさん、もしかして能力者なのかな?

まぁ、それはあとででいいか

置き手紙を残し、わたしはサルド山へと向かった。




千年草とか千寿草は作者の創作の植物です。
あと作中に出てくるオリキャラとか地名の名前は一瞬の思いつきでつけてるのでご容赦を…笑

イオンさんは…ちょっと謎めいたミステリアスなキャラが欲しかっただけです、はい
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