家族の為ならどこまでも   作:実茶

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第17話 本音

-マルコサイド-

 

思ったよりも風邪の感染力が強く高熱でうなされる隊員たちが続出した。

集団生活してるからな、流行するのは少しくらい仕方ねぇと思うが…

ここまで拡大するとさすがにお手上げってもんだよい

 

「マルコ〜。ニアは大丈夫?」

 

ハルタが熱で顔を真っ赤にしてニアの心配をする。

自分がニアにもたれかかったからうつしてたらどうしよう…と思ってるらしい

 

「あー、はいはい。ニアの様子も見てきてやるからお前は自分の風邪を治すことに専念しろよい」

「あ、はは…。ごめんごめん。ありがと、マルコ」

 

ったく、世話の焼ける兄弟達だよい。

えーっと、ニアの部屋は……

 

「おい、これって隊長に言った方が…」

「いや、ニアのイタズラかもしれないぞ?」

「あいつがこんなタチの悪いイタズラするかよ!」

「イタズラだと思いたいのはわかるが、それはニアを船で見つけてから言ってくれ」

 

ロビーでは元気な隊員たちが一枚の紙を見ながら騒いでいた。

 

「おい、お前ら…どうしたんだよい?」

「「「ま、マルコ隊長!!??」」」

 

彼らはサッと紙を背後に隠し驚いた声を上げる。…隠されると気になるじゃねぇかよい

 

「何を隠した?」

「な、なんでもないで……「すこしふねをあけます。あさまでにはもどってきます。ニア」……ビ、ビスタ隊長!?」

 

「なんだ?これは…」

「なんだよい、それは」

 

ビスタが隊員たちの後ろから歩いてきて紙を取り上げ書かれた内容を読見上げた。

……船をあけます…?だと?!

 

「なんの冗談だ?まさかこの雨の中1人でどこかに行ったというのか?」

「…その紙を見つけたのはどのくらい前だよい?」

 

俺たちの声のトーンが下がったのだろう。別に彼らに怒ってるわけじゃないが隊員たちが震え上がっていた。

 

「ひっ!え、えっと、さ、3時間くらい前だ!それで今他の隊員たちが船内を探してるんだけど見つからなくて…。」

 

グシャッ

ビスタが紙を握りつぶす。なにかを考えてるようだった。

 

「マルコ」

 

短く俺を呼んだ。俺も多分同じことを考えてるだろうよい

 

「おーい、マルコ!ビスタ!さっき隊員が騒いでて何事か聞いたらニアがいないって!」

 

サッチが騒ぎを聞いて走って俺らのところにきた。

 

「サッチか。ちょうどいいよい、お前もこい!」

「え?はっ?どこに?!つかマルコ!痛いぞ!骨折れるだろ!!」

 

サッチが来たからついでにこいつも連れて行こうと腕を掴むとサッチが抗議するがそんな簡単に骨は折れねェよい

 

「「イオンのところだ!!」」

 

こんなことできるのはイオンしかいねぇよい

あいつなら()()()()()()()()()行動するなんて事、息を吸うほどに簡単だ。

俺らの気迫に隊員たちが腰を抜かしていたのを謝るのはまた今度だよい。

 

バン!

図書室のドアを乱暴に開けるとイオンは優雅に本を読んでいた。

 

「おや、マルコ隊長じゃないですか。それにビスタ隊長にサッチ隊長まで…。そんな乱暴に開けるとドアが泣きますよ?…どうしたんですか?こんな夜中に。」

 

・・・ドアが泣くってなんだ。ドアって泣くのかよい?

…はっ!こいつと話してるとこいつのペースに乗せられるんだよな…。

そんな場合じゃないってのに…

 

「白々しい言い方はよせ。俺たちが何の用なのかわかってるだろう?ニアはどこだ?」

「ニア…?まだ帰ってませんか…」

 

そう言って懐から取り出した懐中時計を見る。

「ふむ…」と何か考えてるようだった。

………いちいち動きが綺麗なんだよな、こいつ…。

 

「そろそろ半日経ちますね。たしかにさすがに心配かな…」

 

半日が経つ?

あいつがこの船を出て半日も経ってるのか!?

やっぱりこいつの仕業か!半日もニアがいないことに気づかねェなんてこいつの能力は侮れねェよい

 

「半日だと!?…おい!!ニアはどこにいるんだ!!無事なんだろうな?!」

 

ビスタがイオンの胸ぐらを掴み叫んだ。イオンは焦る様子もなく落ち着いて言った。

 

「ニアならサルド山に行っています。…ボクに絶対無事に帰るって約束したんです。必ず戻ってきますよ」

 

サルド山だと!?何キロあると思ってんだ!!

 

「ちょっと待て!サルド山だと!?こんな時間にこの雨の中、1人でそこまで行ったっていうのか!?ふざけるのも大概にしろ!一体何キロあると思ってんだ!!子どもが行ける距離じゃねェだろ!!」

 

そう言うと、イオンの雰囲気が変わった。彼から微弱ながら殺気が漂う

俺は思わず戦闘の態勢に入り、いつでも反撃できるように準備した

イオンはビスタの手を払い服の形を整える。

乱暴な動作なのにやっぱり優雅だ。

 

「何もふざけていませんよ。ねぇ…?隊長方。あなた達いい加減その中途半端な優しさがあの子を苦しめてる事に気づいたらどうですか?」

「「「何?」」」

 

俺とビスタと……サッチもその言葉に反応した。

 

「いい機会ですね、あの子はきっとこれからも言わないだろうからボクから言ってあげます。ニアはあなた達が思ってるほど強くありませんよ?目立ってはいけない存在だということも、得体の知れない存在だということも、1番よく分かってるのはあの子自身です。普段は無邪気に笑ってますけど本当は自分自身の得体の知れなさが怖くていつも隠れて震えているんですよ?自分の力が怖いって泣いているんです。それなのに、強くあろうとするあの子を閉じ込めて縛るように行動を制限するあなた方の方が残酷ってものじゃないですか?それが優しさだと思ってるんですか?ふふふっ…ふざけるな?こちらの台詞ですね」

 

こいつほんっっとにキレると怖ェな!!

目の笑ってない笑顔と丁寧な口調でさらっと暴言吐きやがるから掴めねぇぜ…

 

「ボクだってこんな状況でニアを1人行かせるのは心配だと思いましたよ?でもきっと他の誰に言っても反対されるだろうからボクの所に来たんでしょうね。自分も熱を出して真っ赤な顔で泣きそうに……あんな健気にお願いされたら断れませんよ。あぁ、けど…雨が降ってきたのだけは予想外でしたね。ちょっとまずいかな?」

 

ニアが…自分からイオンに頼みに行ったのか。

薬草を取りに行きたいから協力してほしいって……

まさか俺と船医が話してたこと聞いてたのか?!

……だとしたら余計な心配かけちまったのかもな

ん??ちょっとまて、こいつ前半なんていった?!

 

「お前今、なんて言った!?」

「雨が降ってきたのだけは予想外でしたね…と。」

「その前だ!自分も熱を出して真っ赤な顔で…って言ったか?!」

「言いましたよ?」

「言いましたよ?って…!何でそんなのんびりしてんだ!!それって、ニアも発症してるってことか!?」

「そうですね。あの様子だと確実にかかってます。結構重度じゃないでしょうか?無茶だとは思いましたけど、止めても無駄だな、と」

「いやいやいやいや!!そこは止めろよい!!途中までいい話だったのに!結構重度じゃないでしょうか…じゃねぇだろ!!お前って本当調子狂うな!!」

 

騒ぎを聞きつけイゾウが走ってきた。

 

「おい!ニアはどこだ、イオン!」

「これはこれは、今度はイゾウ隊長ですか。皆さん、ニアが()()()いなくなったことを真っ先にボクのせいにするのはどうかと思いますよ?」

 

イオンが心外だと言いたげな表情を浮かべるがお前の能力を知ってる奴なら誰だってお前を疑うよい!!

 

「「「俺らに気付かれずにニアを外に出せるのはお前しかいないからだ(よい)!!!」」」

 

みんな同じことを思っていたみたいで俺らの言葉がかぶる。

 

「そこは仲良くハモるんですね…。まぁ、ボクも心配ですし…いいでしょう。ニアはサルド山の山頂付近にいますよ。何事もなくたどり着けたのなら…ですが。この雨です、下手したら土砂崩れに巻き込まれてる可能性も考えられます。迎えに行くのならどうぞお気をつけて」

「…わかった。ビスタ、イゾウ、サッチ。先に向かってくれよい。俺はもう少しこいつと話をする。他の奴らもはけろ!」

 

俺は近くに居た隊長達に先に行くよう促すと騒ぎを聞きつけて集まってきた隊員を含めて人払いをする。

静かになったところでイオンを睨みつけた。

 

「何を考えてるんだよい、イオン。お前はニアをどうしたかったんだ?」

 

1600人程度いるんだ。

何人かはニアをよく思ってない奴がいても不思議じゃない

あいつは確かに無邪気で可愛くて裏表がなくていい子だが、だからこそみんなに可愛がられている

それをよく思わない奴がいてもおかしくないんだ。

後でしっかりその辺調査しとかねぇとな。

 

「言っておきますけど、この船にニアを虐めてる人はいないから安心してくださいね。」

 

俺が思ってることを読み取ったかのように先手を打つ。

はぁ……。ほんと、こいつだけは敵に回したくねぇよい

 

「何を考えてるか…ですか。…ニアが図書室(ここ)に来るようになってからボクも楽しくなりましたよ?みんな本なんて読まないから図書室に誰も来ませんからね。でも、あの子は時間があるといつもきてくれたんです。笑顔で「きょうもおべんきょうしにきたよ!」って…」

 

あの笑顔で頼られたらそりゃ張り切るな。

気持ちはわかるから何にもいえねぇよい

 

「けど、あの無邪気な笑顔が時折陰るんです。顔は笑ってるんだけれど、どこか嘘っぽい笑顔をする時がある事に気づいたんです。はじめは聞いても理由を教えてくれませんでした。「きのせいじゃない?」っていつも誤魔化されました。」

 

よく見てるんだなこいつ。

疑って悪いことしたよい

 

「隊長達にも誰にも言わないから教えてほしいって根気よくお願いしたら、ある日泣き出してしまったんです。自分が怖いって…。みんなは普通に接してくれるけどほんとにここが自分の居場所なのか時々わからなくなるって。そう、言うんです」

 

それはニアが絶対俺らには言わないようなこと。

余計な心配をかけないように疑問を全部飲み込んでいたらしい。

 

「自分の存在が隊長やオヤジさんの時間をたくさん取ってしまってる。もっとやりたいこともあると思うのに自分の世話をしなきゃいけないからできないのかと思うと苦しくなるって、そう言っていました。自分は邪魔な存在で拾った責任から育ててくれるだけなんじゃないかって…。弱い自分がきらいだ、弱いならいない方がいいんじゃないかって…。そうやっていつも自分を責めてたんですよ。」

 

なんだよい、それ…。

溜め込みすぎだろ。つか、それ以前に考えすぎだろ、あのバカ!見つけたら説教だ!!

 

「だから今回の我儘を聞いてあげたんです。ニアだってやればできるって自信に繋がればいいなと思って。まぁ、予想外なことが重なりすぎてお手上げですけどね。」

 

イオンが両手を軽く上げて首を軽く横に振る。

その眼差しから殺意は消え、いつもの優しい柔らかな笑みを浮かべた。

こいつもこいつでニアのことを想ってたんだな。

 

「あ、これボクが言ったって内緒ですよ?ニアとの約束、破ったことになっちゃいます」

 

イオンが口角を上げ、人差し指を口元で立てる。

だから動きがいちいち優雅なんだよい…。

 

「………わかったよい。まぁ、なんつーか、悪かったな。」

「ふふっ、いいんですよ。誤解されるような事をしたのはボクですからね」

 

柔らかい笑顔に見送られて俺も図書室を出ると甲板に向かった。

雨はすでに上がっていて、探しに行くにはちょうど良かった。

…無事でいろよい、ニア!

能力で鳥の姿になり一直線にサルド山に向かった。

 

-サイドエンド-

 

************

 

「だから、その体で俺の目を盗もうったって不可能だから!大人しく寝てろ!」

「くそ〜。またしっぱい。」

 

脱走を試みること30回目、見事に捕まりました

 

「なんたってそんな逃げ出そうとするの!そんなに俺といるのが嫌なの!?泣くぞ!?」

「そのくらいのことでなかないの。わたしかえりたい、みんなのとこに」

「あらら。それ、どこまで本音?」

 

…大将なだけあると言うべきかなんで気づくんだ馬鹿野郎と言うべきか…。

風邪なんて引くもんじゃない。体が弱ってると心まで弱くなる。

せっかく気丈な娘で通ってるのに、ここで弱音を吐くわけにはいかない

 

「答えねぇの?それって心から帰りたいって思ってないってことでいいのか?」

「ちがうっ!」

「あらら。そんな風に声を荒げるなんてらしくないじゃないの」

「うるっ…さい!」

 

涙が溢れてくる。だめだ…こいつは敵で、弱味を握らせるわけにはいかない。

ただでさえ迷惑かけてるって言うのにわたしがこれ以上足引っ張るわけにはいかないんだ!

 

「うーん、そうだなぁ。じゃあ俺今から丸太になるわ」

「・・・は?」

「だから丸太になる。丸太相手になら何言ってもいいでしょ?あ、別にお前の弱味を握ろうとかじゃねぇぞ?そんな泣きそうな顔してりゃ誰だって手を差し伸べたくなるに決まってるじゃないの。」

 

敵に気を使われた

どんな顔してるんだろ、今…

というか、丸太に話しかけるってそれただの危ない人じゃない?

…けど、わたしは限界だった。

 

「わたしっ……、ひろわれてそだてられて、たくさんあいじょうもらってきた!けどっ、わたしのせいでみんなのじかんをたくさんうばってる…!もっとみんなにはやりたいことやってほしいのにいつもだれかわたしのそばにいる!それがすごく、くるしいっ!」

 

堰を切ったように思いが溢れ出す

 

「あいされてるの、すごくわかる!でもっ、ほんとはじゃまなんじゃないかってときどきおもうの!わたしがいなきゃ、みんなもっとじゆうにできたんじゃないかって!かいぞくは、じゆう、なんでしょ!?なのに、わたしのそんざいにふりまわされて、やりたいことやれないって、いやだ!」

 

自分でもなにをいってるかわからなくなってきた。

頭がぐるぐるしてくらくらして、今わたしは地面に立っているのかすらわからない。

 

「じぶんがこわいの!じぶんのそんざいが…ちからが、こわいの!きっとみんなもそうおもってる!えたいのしれないそんざいだって!でも、やさしくしてくれるからっ、わたしも、かえしたいの!みんなの、やくにたちたいっ!」

「「「ニア………」」」

「あっ…」

 

ビスタさんとサッチさんとイゾウさんの声が聞こえた気がした。

気のせいだろう。熱のせいで幻聴が聞こえたんだ、きっと。

青雉が「やべっ」といいたげな声を出したけどわたしは気にせずに続けた。

 

「わたしが、あしをひっぱるわけには、いかないのっ!とーさんは、よんこうっていうすごいひとで、たいちょうたちも、たいいんたちもみんなつよいからっ、わたしも、つよくならなきゃいけないの!いつまでもまもられてたら、きっといつかみすてられる!だから…ひとりでもできるんだって!わたしもたたかえるんだってしょうめいしなきゃ、だめなの!」

「ニアちゃん、ストップ!!丸太に話するのはそこまでにして!!」

 

青雉がなんか焦ってる。けど、わたしは止まらなかった。

首を横に振ると涙が散る。

 

「よわかったら、だめなの!だからわたしはつよくあるべきだって、そう…いいきかせてっ…。よわねは、はいちゃ、だめなんだって!…ほんとは、こわいっ!たたかうのも、きずつけるのも、うしなうのも!けど、ぜんぶのみこんで、つよくなきゃだめなんだっ!」

「ニアちゃん、わかったから!!俺の話聞いて!?わりかし俺の命が危ない!」

 

ポロポロと涙が落ちる。

 

「よわいじぶんがきらい!よわいままなら…、つよくないなら、わたしなんて…わたしなんて!いないほうがいいんだっ!!」

「「「ニアッ!!!」」」

「ーーーーっ!!!?」

 

ビスタさんとサッチさんとイゾウさんが抱きついてきた。

え、あれ?幻聴じゃなかったの?!本物?!

 

「あちゃー…」

 

青雉さんが片手を顔に当て「しまった」と言うような表情をする。

 

「おい、青雉…。これはどう言う状況だ…?」

 

イゾウさんがすっごい怒ってる?!!

あ、だから焦ってたの?!青雉さん!

なんだろ、3人が来てすごい落ち着いたんだけど…

心細かったのかな?

 

「……に、にぃちゃ??なんで、ここ…」

「話は後だ、とりあえず出るぞ。サッチ、ニアのパーカーを持ってこい」

「あっ、きんちゃく…」

「ん?あのオレンジのやつか?あ、そういや薬草がどうのってイオンが言ってたな。サッチ、それも頼む」

「ほいほい」

 

ビスタさんがわたしを抱き上げて、サッチさんがパーカーと巾着を持つ。

イゾウさんが銃を抜いて青雉を警戒している。

…なにこの連携プレイ

 

「あらら…。シスコンのお兄ちゃんは怖いなぁ。まぁいいや。別に俺なにもする気ないから。お迎え来たんならもういいな、気をつけて帰んな、ニアちゃん。丸太は何も覚えてないから安心しなさいな」

 

青雉は戦意がないことを示すためか無防備に座り、そう言った。

…くそ、なんでそんな優しいんだよお前!

彼らは青雉を警戒をしながらも岩場を出る

外に出ると眩しい光がさした。もう日が昇ってたんだ…。

あぁ、また心配かけたな…。わたしっていつも空回りしてないだろうか…。

けど、この人たちが近くにいるだけで安心する。

わたしはビスタさんに体を預けて眠りについた。




書溜めが切れたので更新ペース落ちるかもです
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