家族の為ならどこまでも   作:実茶

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第18話 拷問?いいえ、尋問です

-イゾウサイド-

 

マルコに指示され、サッチとビスタと一足先にサルド山に向かった。

雨は上がっていたから探しやすかったがなんせ山は広い。

どこにいるかなんて見当もつかなかった。とりあえず山頂付近まで登ったがどこにもいない。

…ん?土砂が不自然に凍ってる…?

 

「おい、これって青雉の仕業じゃねぇの?」

「可能性はあるな」

 

サッチとビスタがいう。

ニアはもしかしたら青雉と接触した可能性が出てきたな。

くそっ、どこだ、ニア!

少し奥まで行くと岩影に穴場があった。

 

「ーーー!!…が、くるしいっ!」

 

この声…

まさか!!

 

「おい、ニアの声じゃないか?!」

「あぁ、あの舌足らずな可愛い喋り方はニアだ!」

 

サッチ…気持ちはわかるが雰囲気ぶち壊しだな

俺たちは岩穴の中に入ると、青雉とニアが話していた。

青雉は片腕を地面につけ横になってニアの話を聞いてる。

ニアは立っていて、手に力を入れているのか拳を握っている。

 

「あいされてるの、すごくわかる!でもっ、ほんとはじゃまなんじゃないかってときどきおもうの!わたしがいなきゃ、みんなもっとじゆうにできたんじゃないかって!かいぞくは、じゆう、なんでしょ!?なのに、わたしのそんざいにふりまわされて、やりたいことやれないって、いやだ!」

 

……その叫びは俺たちには絶対に言わないような弱音(こと)

なんで青雉に…いや、多分あいつが催促したんだろうな。

詳しいことはあとで聞き出そう

 

「絶対俺らにはいわねぇのに」

「青雉が催促したんだろうよ。ニアは熱があるんだろう?体が弱ってると心まで弱くなるっていうしな」

 

俺らはニアの普段は聞かない本音を聞き、思わず名を呼んだ。

けど、ニアは気付かなかったみたいだ。

気付かなかったのか、気づいてるんだけど余裕がないのか…

青雉が俺らに気づき、ニアを止めようとするがニアは止まらなかった。そんなにも溜め込んでいたのか…

 

「よわいじぶんがきらい!よわいままなら、つよくないなら、わたしなんて…わたしなんて!いないほうがいいんだっ!!」

 

ーーーーーっ!!

なんてことを言うんだ!

そんなわけないだろうっ!!

 

「「「ニアッ!!」」」

 

その言葉に俺らは思わず飛び出しニアに抱きついた。

ニアは驚いたような顔をしたあと安堵したように全身の力を抜いた。

 

「これはどう言う状況だ?」

 

俺が銃を抜いて青雉を警戒すると「別に何もしねぇよ」と無防備に座り直した

その行動で、嘘じゃないと思った俺たちはニアを連れて外へと出た。

ニアが外の光に照らされ目を細める。悲しそうな顔をした後ビスタの胸に体を預けて眠りについた。

ビスタがニアを抱え直すと顔をしかめる。

 

「…かなり熱いな。こんな熱でよくここまできたもんだ」

「無茶するなぁ…ほんと」

 

俺たちが下山してると青い鳥がこっちに向かってきた。

…マルコか

青い鳥が人の形になる

 

「ニアッ!…いたのかよい、無事か?」

「あぁ、寝てるだけだ。」

 

ニアの額に手をあてると「熱っ!」と驚いた声をあげた。

 

「………思ったよりも熱が高いな。こんな体でよくここまできたもんだよい。ある意味感心するぜ…。ったく、どれだけ俺らの寿命縮めりゃ気がすむんだよい」

 

と、いいつつも無事だったことにホッとしてるマルコ。

またマルコは鳥の姿になり一足先に船に戻っていった。オヤジに報告に行ったんだろう。

さて、俺らも帰るか、モビー・ディック号(俺たちの家)に。

 

ーサイドエンドー

 

***********

 

目を覚ますとベッドの上だった。

 

「こ、こは…」

「モビーの医療室だ。」

 

誰に言ったわけでもない呟きに返事が返ってきて顔を動かすとイゾウさんが隣に座っていた。

 

「ようやく起きたか、ニア。」

「イ、イゾウにぃ…」

 

すっごい怒ってる気がする。勝手に行動したのがまずかったかな?いや、でも苦しんでるみんなを放って置けなかったし、なにより役にたちたかったし…

 

「お前の採ってきた薬のおかげで風邪引きどもはほとんど回復したぞ。よかったな」

 

あ、ほんと?それはよかった。

わたしにもできたんだ。…いや、結局助けてもらっちゃったか

1人じゃできなかった…

 

「…なのに当の本人が寝込んじゃ意味ないだろう?お前、3日眠ってたんだぞ?今はもう大丈夫みたいだがお前を見つけて船に連れて帰ったすぐの自分の容体聞きたいか?」

 

3日も寝てたの?!

容体?

ただ熱が高かったってだけじゃないの?

 

「過労に睡眠不足、おまけに40度近くの高熱だ。そんな状態で無理して雨に打たれて…馬鹿なのか?お前は」

 

初めてイゾウさんに罵られた!!

 

「よくもまぁ、この船にいながら誰にも気付かれずにそこまで体を弱らせたな。ある意味感心するぞ。」

 

本気で怒ってる。………けど、なんだか嬉しい

怒られて嬉しいってわたしも相当おかしいのかな

 

「何を笑ってるんだ?俺は怒ってるんだぞ?」

「…うん。それが、すごくうれしい」

「怒られるのが嬉しいのか?変な奴だな」

 

そうやって言われるとドMみたいだな

 

「わたしはこどもで、まだなにもできないけど…みんなといたいの。だからしつぼうされないようにがんばってきた。それでもいつか…いつかみはなされるんじゃないかってきっとこころのどこかでおもってた。」

 

自分を守るために心に壁を作って傷を最小限にするために…

 

「だからね、そういうふうにおこってもらえて、うれしいの。にぃちゃ、しんぱいかけてごめんなさい。さがしにきてくれてありがとう!」

 

そう言っていつものように笑うと、イゾウさんの表情が変わった。

悲しそうな顔をするとわたしを抱きしめる。

 

「馬鹿っ!子どもだから何だと言うんだ!お前だって…家族じゃないか!二度とこんな無茶するな!いや、これが2回目か。なら3度目はないぞ?次やったら縛り付けるからな!」

 

まさかの束縛宣言!?

縛りつけるってどこに!!?

 

「イゾウ、それは…」

「犯罪だよ」

「海賊だから犯罪とか今更だろい」

「そういう問題じゃない気がするが」

 

イゾウさんの言葉にみんな微妙な顔しながら部屋に入る。

 

「あ、おはよう。にぃちゃ」

「おはよう、寝坊助。体の具合はどうだよい?」

 

マルコさんがわたしのほうにくるとイゾウさんが場所を譲った。

 

「うーん、あたまいたいのとだるいのはなおったよ」

 

そういうとマルコさんはわたしの額に手をあてた

 

「熱もだいぶ引いたかよい…。千年草恐るべし。すごい効き目だよい。だがまだ微熱があるな。今日は休んどけ」

 

額から手を離して、背を向けた。

 

「ん?わたし、もううごけるよ?だいじょうぶ!」

 

思わず布団をどけてベッドから降りようとすると、マルコさんがこっちに向き直し両手で拳を作ってこめかみあたりをぐりぐりした。

意外子どもっぽいことするな、このひと

 

「や す ん ど け!」

「いたい!」

 

痛くないけど痛いと言っておく。

 

「そうだな、治ったと言い張るならまずは12時間コースの説教でも…「おやすみなさい!」…おやすみ。ちゃんと回復させろよ」

 

くそう、ビスタさんに勝てない!!

12時間て何!?拷問に近いでしょそれ!!

 

「ニア、素直!!」

「まぁ、どうせ起きたら質問攻めだ。」

「そうだな、洗いざらい吐いてもらうぞ」

 

悪役のセリフなのに悪く見えないのが悔しい!!

5人がわたしを寝かせるために部屋を出ようとする。

……えっ、全員行っちゃうの?ど、どうしよう

せめて寝るまで誰か側にいて欲しい

 

「ま、まって!」

「「「「「ん?」」」」」

「あ、の…な、なんでもない!おやすみなさい!」

 

こんなことで引き止めたらダメだよね。我慢我慢

自分のせいでこの人達の時間を取ってるのにわたしのわがままでこの人たちを困らせちゃだめだ。

 

「「「・・・・。」」」

 

いつものように笑って誤魔化すとすごい微妙な顔された。

なんで!?

 

「今日、非番のやついるかよい?」

「あ、俺非番だよ!」

「俺もだ。」

「じゃあ、ハルタ、イゾウ…ニアを頼んだぜ?」

「俺たちはまた後でな」

 

なにその隊長ズのコミュニケーションの早さ

ハルタさんとイゾウさんが残り、他は今度こそ部屋を後にした。

 

「あ、そういえばハルにぃ。びょうきよくなったの?」

「うん!ニアの薬のおかげでね!」

「そっか…よかった」

「あはは、ごめんね?やっぱうつしてたね」

 

うつされたのかかかったのか知らないけど無茶したのわたしだし、ハルタさんが謝ることじゃないよね…

 

「いいの!わたしのじこせきにんだから!」

「まーたそうやって自分が悪いみたいに言う。ニア、お前はもっと俺らに甘えるべきだよ」

「…あ、あい。」

 

甘える…って言われてもなぁ

もう十分すぎるくらい甘えてる気がするんだけど…

あれ、そういえばなんでイゾウさんたちはわたしの場所がわかったんだろ

 

「ね、イゾウにぃ?なんでばしょわかったの?」

「イオンから聞きだした」

「イ、イオンにぃから!?どうしてイオンにぃがしってるって…」

「あぁ、お前は知らないのか。イオンは能力者だ。視覚に関する情報を自在に操作する能力が使える。自分や対象の物を見えなくすることくらいあいつなら息を吸うほどに簡単なことだ。だから、船員が誰1人気付かないで目立つニアを船の外に出すなんて芸当できるのはあいつしかない」

 

イオンさんが言ってた魔法ってその事か!

やっぱりあの人能力者なんだ!!というか謎多すぎでしょ、イオンさん!なんてミステリアスなお方!

 

「…さて、今度は俺の質問に答えてもらおう」

 

ニヤリと効果音がつきそうなほどのあくどい笑みを浮かべる。

なんか、危険な気がする!

に、逃げる…か?

 

「よいしょっ。よしっ、イゾウ!確保完了!」

「!?!?」

 

ハルタさんがわたしを膝の上に乗せ、後ろから抱きしめるようにして拘束した。

…い、いつのまに!!?

 

「は、ハルにぃ?」

「ん?なーに?ニア。素直に答えてね?」

 

ハルタさんの笑顔もこわい!!

お説教タイム!?私刑!?

 

「なんで熱が出たことを言わなかった?」

「こ、これいじょう、めいわくかけたくなかったの」

「…いつ、誰が、お前に迷惑だと言った?」

「いわれてない、けど、なんとなく、そう…」

「……じゃあ、次。1人で薬を取りに行こうなんて無謀なことを考えた理由は?」

「くすり、とりにいくくらいなら、ひとりでできる。と、おもって」

「高熱ででもか?」

「うっ…」

 

並べられるとわたしほんとにしでかしてるなぁ

そりゃみなさん怒りますわ。わたしでも同じことやられたら怒る

 

「青雉にあんなこと言ったのは?」

「まるたになるっていうから…せきがきれたの」

「あの野郎、コロス…」

 

あ、イゾウさんの殺意が…

 

「ねぇ、ニア。なんで過労と睡眠不足になったのかな?」

 

ハルタさんが地味にこわい!!その!笑顔が!痛い!!

そして、背後からの圧力!!腰に回ってる手に地味に力入ってる!!その気になったら絞め殺されそう…。

 

「ハ、ハルにぃ…」

「ん?なーに?」

「ハルタ、怒る気持ちはわかるがお前今強烈にこわいぞ。俺が見ててもニアに同情するくらいには恐ろしい笑顔をしている」

「え、酷くない!?」

 

あ、戻った。自覚なしですかそうですか

 

「うーん、そんなにむりしてないよ?ちゃんとねてるし、やすんでるからじぶんでもわかんない」

 

稽古の時間以外は勉強してるか手合わせ見てるか拒絶の力のコントロールしてるかこっそり特訓してるかくらいだからなぁ

あれ、結構ハード?

だって、寝てる時間が惜しいんだよ!!

 

「…1日の平均睡眠時間は?」

「さ……ななじかん…」

「なんで言い直した。正直に」

「………………さんじかんくらい」

「「足りるわけないな(ね)」」

 

ハモられた。

くそぅ…。こんな尋問、勝てるわけない!

 

「ニア、お前は頭が良く回る。そのせいかは知らんがなんでも難しく考えすぎなんだ。俺たちは好きでお前と一緒にいるんだぞ。だから俺らの時間を奪ってるなんて思うな。全部杞憂だ、このバカ」

「君を拾ったのは俺とサッチで、船に乗せてもいいって言ってくれたのはオヤジで、主にマルコがニア探し回って、みんなで戦うためのイロハを教えて…ニアがあんな大怪我2度としないように俺らも頑張るんだって誓って。どの辺が迷惑かけてるって?俺らは好きでニアの世話してるの!だからもっと頼ってよね!平気そうな顔してたらわかんないだろ?」

 

この船にのってから毎回のように思うことがある。

海賊って…賊って何!?仲間だからって、家族だからってこんなに優しいの?!みなさん賊の意味知ってる?!

「傷つけること、損なうこと、また、わるもの」だよ?!

どこらへんが悪者?!悪者とは!!

悪者の定義を教えてください!

 

「お前青……あの丸太に言ってたな。"強くないなら、わたしなんていない方がいい"って。……ごめんな、そんな風に思わせてたことに気づいてやれなくてよ」

「どうしてにぃちゃがあやまるの?」

「思えば当然のことなんだ。ニア、お前は聡明な子だ。だからこの船のことを大体理解してるんだろ?オヤジは四皇で俺たちはその隊長で…自分が場違いだってずっと思ってたんじゃないのか?」

 

言い当てられてわたしは俯く。

 

「そうだよなぁ。自分みたいな子どもが俺たちに混ざってここにいていいのかって悩むのはごく普通のことなのにな…。お前の笑顔にすっかり騙されたぜ。我慢しなくていいんだ、言いたいことは言え。それが家族ってもんだろ?」

 

イゾウさんが頭を撫でながらわたしの本心を次々と言い当てる。

この人実はエスパーだろ!!

 

「返事は?」

「…うん。ありがとう、にぃちゃ」

「よろしい。じゃあもう寝ろ。1人じゃ寝れないって言うなら寝るまで側にいてやる」

 

妹に甘すぎませんか?シスコンのお兄ちゃんてすごい!

あ、でもちょっとまって。聞きたいことが…

 

「うん、けどそのまえに…。にぃちゃ、"はき"ってなに?」

「覇気ってのはな全ての人間に存在する力のことだ。気配とか気合いとかそんな感じに近いが、その力を引き出すのは簡単なことじゃねぇ」

「「オヤジ!?」」

 

わたしの質問に答えたのはオヤジさんだった。マルコさん達からわたしが起きたってきいて様子を見にきたらしい

 

「グラララ…。お前はベッドの上が好きなのか?あんまり親に心配かけるもんじゃねぇよ。無茶しやがる娘だな」

 

そういうと、オヤジさんは部屋の中に入り腰をかけた

 

「前も思ったがお前はその小さい体に何を抱え込んでるんだ?お前が寝てる3日間、マルコたちから大体の話は聞いた。お前、自分の力とやらがなんなのかもう気づいてるだろ」

 

これは、逃げれないな。

絶対話したくなかったけど…

もとよりわたし嘘下手だし、仕方ない。か。

多分話さないとわたしも本当にみんなを信用しきれない。知られるのが、恐れられるのがこわくてきっと無意識に自分を隠してる。

吉と出るか凶と出るか…試してみるか。

 

「わかった。はなすよ…。」

 

みんなのわたしへ向けるその目が変わらないことを願う。

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