家族の為ならどこまでも   作:実茶

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第19話 拒絶の力

わたしは観念して自分の力についてオヤジさんたちに話すことにした。

これで恐ろしいものを見るような目をされたらこの楽しい生活もここで終わりにしようと思う。

自分の両手を見ながら静かに語り出す。

 

「このちからはね…"けがをなおす"ちからじゃないの。"あらゆるものごとをきょぜつする"ちからなの」

 

そういうと、わたしを後ろから拘束しているハルタさんが「拒絶?」と呟く。

手を軽く握り膝に置くと頷いて続ける。

 

「そう、きょぜつ。きょぜつってひていとおなじでしょ?わたしがひていしたことはすべてなかったことになるの。けどね、じぶんにかんしてはあんまりひていできないの。なんでかはわからないけど」

 

いや、本当は知ってるけどね。あの自称天使がそう設定したからだよ

ほんっっとふざけんな。次うことがあったら殴ってやりたい

それだけでオヤジさんはわたしが言わんとすることを察したらしい。

目を見開いた後に難しい顔をした。

 

「おいおいおい…そりゃあ……なんの冗談だ?いや、冗談なわけねぇか…。そんな爆弾(ちから)をお前は1人でずっと抱えてたのか?」

「オヤジ?どういう事だ?」

 

わたしが言いたいことを全部察したのはオヤジさんだけのようだった。

イゾウさんもハルタさんも言ってる意味がわからないらしい

うん、まぁそうだろうね。むしろ理解したオヤジさんが凄いよ

 

「ちょっとまってろ、イゾウ、ハルタ。…ニア、お前がそれに気づいたのはいつだ?」

「カルにぃとルカにぃのけがをとりのぞいたあと。かくしょうもしょうこもなかったけど、かくしんした」

「そんな前から…」

 

オヤジさんは1つため息をつくとイゾウさんとハルタさんに説明した。

 

「つまりな、こいつの力とやらは対象に起こった事実を否定するってことだ。ニアはあの時、カルガンやルーカスの怪我を"治した"んじゃない。怪我をしたという事実を"否定"したんだ。ありとあらゆる物事を()()()()()()()()()。そんな力だってことだ」

 

オヤジさんがそういうと2人は顔色を変えた。

驚愕する2人にわたしは顔を俯ける。

やっぱり不気味だよね、こんな力…

 

「………それってまさか!し…「イゾウ!」…っ」

「それ以上は言うな、ニアが1番よくわかってる。だからこそ俺らに黙ってたんだろうよ」

「……なんで、言わなかったの?ニア。その事!!気づいてたのに、なんで言わなかったの!?相談くらいしてくれてもよかったじゃないか!そんなに俺たちが信用なかった!?」

「落ち着けハルタ!……お前がニアの立場だったら言えるか?」

「……言えない…と、思う」

「だろう?ニアを責めるのはお門違いだ」

「うん……。ごめん、ニア」

 

…恐れるどころか本気で心配してくれたことにわたしが驚く。

ハルタさんがわたしを抱く腕に力を込める。まるで「何があっても離さない」とでもいう様に…

まさか言わなかったことに対して怒られるとは思ってなかった

わたしは謝るハルタさんに首を横に振り気にしてないアピールをする。

そこでオヤジさんが話を続けた。

 

「ニア、自分はあまり否定できないってどういうことだ?」

「そのまんまだよ。じぶんにかんしてはあんまりこのちからをつかえないの。じぶんいがいにおこったできごとははけがでもびょうきでもなんでもきょぜつできるけどね、じぶんにかんしてはかんかくきのうをきょぜつするくらいしかできないんだ。」

「感覚機能……。それはつまり、痛覚とかのことか?」

 

頷くとオヤジさんは考え込み、しばらく悩んだ末口を開いた。

 

「…イゾウ、ハルタ。マルコたちにも後で言っておく。ニアに覇気を教えろ。」

「それは!もう少し大きくなってからって…」

「そのつもりだったが、状況が変わった…。習得できるできないは別として覇気について教えておけ。知ってるだけでも違うだろう」

 

覇気…。あ、そうだ!1番聞きたかったことが

 

「ね、はおうしょくってなに?」

「「「!?!?」」」

「あのね、せんねんそうをとりにいったときかいぐんしょうこうたちにあったの。わたしをまいごかとおもったのか、ほごしようとしてきたからつい『どけ!』っていっちゃったの。そしたらほとんどがきぜつして、だれかがはおうしょくのはきって。」

 

そう言うとイゾウさんが「もってるのか…」と、呟いた。

持ってる?って、どう言うこと?全ての人間に存在する力じゃないの?

 

「覇気はね、大きく分けて3種類あるんだよ。1つが武装色。これは体の周りに見えない鎧を作り出すような覇気。武器に纏わせることもできるんだよ。もう1つが見聞色。相手の気配をより強く感じることができる覇気だ。視界に入らない敵の数や位置を知ったり、敵の動きを予想できるんだ」

 

ハルタさんが説明する。

すると別な方から声が飛んできた。

 

「そして、数百万人に1人しか身につけられないと言われている覇王色。これは相手を威圧する覇気だ。コントロールできないと敵味方関係なしに威圧しちまうから多用するのはお勧めしないよい。まぁ、この船で使えるのはオヤジだけだけどな」

「「マ、マルコ!?いつからいたんだ?!!」」

 

イゾウさんとハルタさんが見事なハモりでマルコさんに問いかける。

わたしもそう思う。部屋に入ってるし、ご丁寧にドアは閉まってるし…。ビスタさんの時もそうだったな、知らない間にスッと入ってきてたよなー。

 

「…………さっきだよい。ニアが拒絶云々言ってたあたりからだ。やっぱニアの様子が気になってな。見にきたら結構ヤバイ話してたから黙ってたんだよい」

 

いや、それほぼ最初からじゃない?!なんなの、貴方のその妹センサー!!イオンさんじゃないんだから気配消さないで?!

 

「は?!じゃあ最初から全部聞いてたのか?!」

「マルコのニアに対するその危機管理能力はなんなの?!」

「お前はニアのことになるとイオンみたいな力を発揮するな!」

 

わたしの心の声を全て代弁してくださってありがとうございます!

 

「ビスタの時もそうだったが俺そんなに気配消してるかよい?…それよりニア、お前自分の力をわかっててなんで今回は使わなかった?カルガンが風邪引いた時にその事実を否定しちまえば早かったんじゃねぇのかよい?」

「…ほんとはね、ずっとはなすつもりなかったの。このことをしられたらこわがられるとおもったから、はなすゆうきがでなかったの。そうとうなきけんがないかぎりぜったいつかわないってきめてた。しられるわけにはいかなかったの。だから、やくそうをとりにいったの。しんぱいかけてごめんなさい」

「ん。それで正解」

 

マルコさんが俯いてるわたしの頭を撫でた。

思わず顔を上げるとマルコさんもイゾウさんもハルタさんもオヤジさんも複雑な表情をしていたけど、どこか安心したように微笑んでいた。

 

「ちゃんとわかってるようで安心したよい。迂闊に使っていいような力じゃねぇな、そりゃ。ただ、高熱で雨の中1人で10キロ以上離れたとこに行ったのは感心しねぇよい」

「全くだ。だが、説教の時間は半分にしてやろう」

「することには変わりないんだね」

 

お説教タイムは必須なんですねイゾウさん…

けどなんだろ、すごく軽くなった。

 

「グラララ…。よく話してくれた。ありがとうな、ニア。どれだけの葛藤と恐怖があったことだろうか。無邪気な笑顔の裏にそれだけの想いを隠してたんだな、気づいてやれなくて済まなかった」

 

恐れられるかと、罵られるかと思ってた。けど、この人たちは「話してくれてありがとう」と、「気づいてやれなくて済まなかった」と言った。

壁を作ってたのは、わたしだけだったんだ。

なら、わたしのやることは1つだ。この人たちについていく。

彼らがわたしの名前を呼んでくれる限り!

 

***********

 

-白ひげサイド-

 

風邪が流行りだして数日、バカ娘が相当な無茶してくれたおかげで騒動はすぐに収まった。だが、当の本人が高熱を出して寝込んじまった。いや、高熱で無茶したんだっけか?自分をもっと大事にしろよ…

おまけに過労と睡眠不足らしい。なにやってんだか、あいつは

おれや隊長、隊員たちの目を盗んでよくそこまでできたもんだ。逆に感心するぜ

 

「オヤジ、ニアが起きたよい」

 

マルコが甲板に来るなりそういった。あいつはどうして無茶ばかりするんだ。まさかイオンの力を借りて船から出るとは思わなかった。

自分は守られてばかりじゃいけないと焦ってたのか?

あいつが寝てた3日間、いろんな奴らから話を聞いて何があったのか大体察した。

自分がおれの船にいるのはおかしいんじゃないかってずっと悩んでたみたいだなぁ…。

聞かねぇとなにも言ってくれないくせにこっちのことは知りたがる。

ニアが1番恐れてるのはニア自身らしい。この前はなんとなく聞きづらくて辞めたが、聞いてみるか。あいつの力のこと。

ニアが居る部屋の近くに行くとハルタとイゾウとニアの話し声が聞こえた。

 

「ね、はきってなに?」

 

ニアがそう言う。

どこかで聞いたのか、おれらがたまに使ってるから疑問に思ったのか…。もう少しゆっくり教えたかったんだけどなぁ

大きすぎる力は身を滅ぼす。こいつは才能に溢れているから今の小さいうちに教えすぎるのはよくねぇと思ってわざと遅らせてたんだが…こりゃ、限界だな

腹括って教えるか、その代わりお前のことも教えてもらうぜ?

 

「覇気ってのはな全ての人間に存在する力のことだ。気配とか気合いとかそんな感じに近いが、その力を引き出すのは簡単なことじゃねぇ」

「「オヤジ?!」」

 

おれが入るとイゾウとハルタが驚きの声をあげた。

 

「グラララ…。お前はベッドの上が好きなのか?あんまり親に心配かけるもんじゃねぇよ。無茶しやがる娘だな」

 

そう言った後におれは部屋の中に入り近くの椅子に腰掛けた。

ニアの力について聞くと少し悩むそぶりを見せ、自分の両手を見ながらポツリと語り出した。

ニアが言うには"自分が否定したことは全てなかったことになる"らしい。

それはつまり…死んだ人間ですらその事実を否定すれば死ななかったことになる。ということだと、おれは悟った。

それがどうやら正解だったみたいで、ニアが俯く

おいおい、そんな都合のいい力があっていいのか?

いや、だからこそこいつはそれを隠してたのか…

おまけにそれが悪魔の実の能力じゃないときた。

そりゃだれにも言えるわけねぇよなぁ…。1人でずっと悩んでたのか

ハルタとイゾウは分からなかったみたいだ。おれが少しヒントをやるとようやく悟ったみたいで顔色を変えた。

 

「それってまさか…!し…「イゾウ!」…っ」

 

言葉にしたらいけねぇよ。ニア自身がそれを1番恐れてやがるんだから

だが自分に関してあまり否定ができないと言ったな。

それはどういう意味かと聞くと驚くべき回答が返ってきた。

 

「そのまんまだよ。じぶんにかんしてはあんまりこのちからをつかえないの。じぶんいがいにおこったできごとははけがでもびょうきでもなんでもきょぜつできるけどね、じぶんにかんしてはかんかくきのうをきょぜつするくらいしかできないんだ。」

「感覚機能…。つまり痛覚とかのことか?」

 

そう聞くと頷く。

自身の痛覚を否定できる……だと?!

なんて危ねぇ力だ。

例えるならおれの全力の能力を正面で何にも守られずモロにくらっても何にも感じねぇって事だろう!?

んな力ホイホイ使ってたら……こいつ、いつか死ぬんじゃねぇか?

やっぱり覇気については教えたほうがよさそうだ。情けねぇが守りきれる自信がねぇ…。

 

「ね、はおうしょくってなに?」

 

どうやら山で海軍将校と出会って邪魔だったから思わず叫んだらほぼ全員が気絶したらしい。

覇王色まで持ってんのか、こいつ

…おれ達はとんでもない爆弾を拾っちまったみたいだな…

いや、拾ったのがおれ達だからまだ良かったのかもしれねぇ

こいつを最初に見つけたのが欲に塗れた賊どもだったと考えるとゾッとするぜ…。

そんなことを考えてるとハルタがニアに覇気について説明し出した。

そしたらマルコがいつのまにか部屋にいて話に入ってきた。

…こいつ、ニアに何かあるとき大体近くにいるよなぁ

マルコが「今回その力を使わなかったのはなぜか」と聞いた。

そりゃそうだ。自分の力を理解してるなら危険を犯してまで千年草を取りに行く必要もなかっただろう

そしたらニアは「はなすつもりはなかったの」と、「しられるわけには、いかなかったの」と言った。

よくわかってるな。なら少しは安心だ

だが、無茶ばかりするのは勘弁して欲しいぜ…

ニア、お前もおれの家族だ。変な遠慮はするんじゃねぇよ

 

-サイドエンド-

 

***********

 

それから数日

わたしの体も回復し、再び修行やらなんやらの日々が始まった。また自分の体を酷使して倒れるようなことがあったら今度は縛り付けるからな、とイゾウさんに釘を刺され、マルコさんがそれに便乗し縄を用意するところををハルタさんとビスタさんが面白そうに見ていた。

縛り付けるの確定なの?!いうこと聞かずに無茶しすぎたせい!?

 

「ふふっ、相変わらず過保護ですね。隊長方…」

「「「イオン!?!?」」」

 

道場で稽古をしてるとイオンさんが来た。

この人、図書室以外で見るの初めてかも!!

 

「お前が図書室から出てくるなんて珍しいじゃねぇかよい」

「あぁ、何かあったのか?」

 

マルコさん達がいうと、片手を口元に当てふふっと笑う。

ほんと、優雅だなぁ

 

「いえ、元気なニアの姿を見に来ただけですよ。最近図書室に来ないから寂しくて」

「あ、ご、ごめん、イオンにぃちゃ!またおべんきょうしにいくね!」

「気にしなくていいよ、ニア。あ、そうだ、今度こっそり抜け出してお散歩にでも行こう。たまには外の空気吸いたいでしょう?」

「「それを俺たちの前で堂々と言うな!!」」

 

あの騒動以来お兄ちゃんズがわたしから片時も離れなくなった。急用ができた時もバトンタッチするかのように誰かきてから去っていく。必ず隊長が1人は側にいるようになり、前よりもわたしが1人でいる時間がなくなった気がする。

まぁ、そのおかげでティーチが近づいてくることもなくなったからいいんだけど…

 

「ふふっ。そんなに心配しなくても…ボクは忠告しにきただけですよ。あんまり制限しすぎると窮屈に感じられちゃいますよ?ってね、まぁ…ニアはその辺り鈍いから大丈夫かもしれませんが。では、ボクはこれで」

 

踵を返しイオンさんは戻っていった。

…よし、こんど図書室行こう。イオンさんに癒されに行こう、そうしよう

 

「…ったく、イオンはイオンで油断できねぇ奴だよい。俺らもニアを閉じこめたいわけじゃねぇっての」

「そうだな。それはそうとニア、そろそろ武器を持ってみるか?あ、それとも素手で戦いたいか?」

「全部教えればいいんじゃない?ニアのことだからすぐ覚えるよ」

 

ハルタさん鬼畜!!

ハードル上がってない?!わたしまだ5歳くらいなんだけど!!

何をさせたいの?!この人たち!!

 

「それもそうか。頑張れよ、ニア!」

 

いや、誰か少しは反対しろよ!!

くそぅ…もう、どうにでもなれ…

こうなりゃヤケだ!!やってやる!!

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