気がついたら真っ白な空間にいた。
……ここ、すっごい見覚えあるんだけど、どうしよう
『お久しぶりですね!えーっと今は、ニアさんって呼ぶべきですか?』
「あ、じしょうてんしさん。ひさしぶり」
『自称天使さん!?酷いっ!わたくし本物ですって!!ちゃーんと転生できてたでしょ??あなたのその可愛らしい容姿もわたくしからのプレゼントですよ!?』
「そのおかげでじんせいハードモードだよ!うまれたしゅんかんにすてられるっていうとんでもないはじまりかただったけどね!!」
『それはごめんなさい!でもでも、身体能力とかは高いでしょう!?それで許して!ね?ねっ!?』
本当に威厳もクソもないなこの天使
「まぁいいよ、おわったことだし。それで、なんでまたここに?わたししんだの?」
『許してくれるんですか!ありがとうございます!』
「しつもんにこたえて!?」
『あ、はい。えっと…死んでませんよ?死にかけてはいますけど…』
死にかけてるんだ。
まぁ当然といや当然かな。
「ふーん。じゃあわたしここでおしまい??にどめのじんせいしゅうりょうのおしらせ?」
『いやいやいや!!まだ死ぬには早いですよ!!あなた転生して何年目ですか!?10年経ってないでしょう?!そんな最短記録更新しなくていいんですよ!?』
最短記録って……
いちいち記録つけてるのかな?何十万年といろんな世界管理してる奴が一人一人の転生者の生きてた年数記録してるとか暇人かよ。
そんな暇あるならガタが来てる輪廻の輪とかいうの直せよ。
「じゃあわたしはどうすればいいの?」
『今はあなたの意識だけがこちらに来てる状態なのでもう少ししたら体に引き戻されますよ』
あぁ、なるほど。
暫くしたら体に意識が引き戻されるってわけね。
『さてさて、どうですか?2度目の人生は。楽しいですか?』
「………うん。」
『どうしたんですか?』
「わたしね、いっしょうけんめいいきてたつもりなの。すごいひとたちにひろわれてそのあしひっぱらないようにどりょくして。しんぱいかけないようにきじょうにふるまって……。でもぜんぶからまわりしてるきがするの。どうしよう…、わたし…このままでいいのかな?」
『………大丈夫ですよ。ずっと見てきたけれどあの過保護な兄達はあなたが思ってる以上にあなたのことを大事にしてます。本人達にきいてみたらどうですか?』
本人達に……。
本当はずっと聞きたかったけど彼らの本音を聞くのが怖くてずっと我慢していた。
「こわいの。どうおもわれてるのかがこわくてききたくてもきけないの。……ほんとのわたしはとてもおくびょうなんだよ。ちっともつよくなんてないの」
『それでも強くいようと頑張るあなたは素敵だと思いますよ』
「そうかな…。もうここでおわってもいいきがするの」
『いやいや!まだまだ死ぬのは早いですよ?あ!じゃあもう1個異能つけちゃいますか?』
「いらない…」
『即答で振られちゃいました。そんな落ち込み気味のあなたに!魔法をプレゼント!テッテレテッテッテ〜♪おめでとうございます!』
「はなしきいて!?だいたい!ひとばなれしたちからもってるっていうのにまたじんがいてきなちからてにいれてどうするの!?こんどこそいばしょがなくなっちゃうよ!」
『もう少し、自分に自信を持ったらどうですか?彼らはあなたの思ってる以上にあなたを大事にしてますよ?あなたはもっと自分を曝け出していいんですよ?それに、ここで終わってしまっては面白く無いでしょう?あなたも彼らに言いたいことがたくさんあるはず。…まだこれからですよ、さぁ、頑張ってくださいね』
「もしかしてげきれいのつもりだったの!?わっっかりにくいんだよ!!」
そう叫ぶと同時にわたしの体が浮上し、どこかへと引っ張られていった
***********
ーマルコサイドー
突然船を襲ってきた敵船。
一人一人は大したことないがなんせ数が多い。取りこぼして何人かが船内に侵入する。
…まぁ、中にも何人か配置してあるからよっぽど大丈夫だとは思うが、心配なのは
あいつは簡単に危険に飛び込むからこっちも気が気じゃない
「おい、野郎ども!!撤退だ!この船には化け物がいる!!逃げるぞ!」
船内に入ってった奴らが出てきたと思ったらそう叫び全員が蜘蛛の子を散らす様に逃げ出した。
「化け物……?そんなやついたかよい?」
「…居ないだろう。とりあえず中に入ってみよう」
俺とビスタとイゾウで船内に入ると焦った様子でニアに駆けよるルーカスとロキアス
医療室へと走るカルガン。そして背中をバッサリ斬られて平然と立っているニアがいた。
しかも変色してる。…毒かよい?
…だいたい察した。このバカ、また無茶しやがったな。
ニアが奥へと行こうとするとロキアスが「怪我人は大人しくしてろ!」と叱りつける。ごもっともだよい
「だって、みつからないうちにいかないとまたおこられちゃう」
そう頬を膨らませながら抗議する。
俺らが同時に「誰にだ?」と聞くと、「やべっ」と言いたそうな雰囲気を出した。
ほんとにいつか無理が祟って死ぬんじゃねぇか?
…俺らより先に死なせてたまるかよい。
ビスタが異能を解けと言うと途端に倒れる
使うなって言ってんのにいつになったらわかるんだよい…
ビスタがニアを医療室に運ぶと、ルーカスが話しかけてきた
「マルコ隊長…。ニアは…ニア、だよな?」
「あ?どう言う意味だよい」
「…あいつな、ロキアスを庇ったんだ。……殺やれそうになったロキアスを庇って斬られた後、人が変わったように雰囲気が変わって……敵の首を…一斉に刎ねたんだ…!あのっ…ニアが!!」
…人が変わったように雰囲気が変わった?
まさかあいつらが言ってた化け物って…ニアのことか?
「俺……っ!こ…怖かった!ニアじゃない気がして……あの冷たい目で敵を睨みつけたニアは…ニアの姿をした別の何かな気がして、すげぇ怖かった!俺に向けられたわけでもないのにあいつの殺気に俺も震えちまったんだ!」
「無機質な人形っつーか……心をどこかに置いてきたような顔してたな。オレもビビった。けどニアはニアだぜ?今度はオレのせいで怪我させちまった…悪いことしたな」
「…ロキアス、おま「まぁ、ニアのことだ!すぐに元気になるさ!」…お前は!!なんたっていつもそう、おちゃらけるんだ!!」
ルーカスとロキアスが喧嘩を始めた。
…無機質な、人形…ね。
あいつはどうやら俺らがまだ知らない一面を持ってるみたいだな。
なんにせよ、どうしてくれようか。あの娘
ーサイドエンドー
***********
意識が戻り、ゆっくりと目を開け起き上がる
と、背中に激痛が走った
痛みに顔を歪めながらも部屋を見渡した
誰もいない…か。暗い部屋の中で自分の両手を見る
「はははっ…またやっちゃった。あきれられたかな」
自分でも驚くほどの乾いた笑いが漏れた。片手で前髪を搔きあげ自嘲する
「いつも、うまくいかない…」
銀色の髪にオッドアイなんて普通に考えたらありえない。本当に"異端"なんだ、わたしは。
「このすがたも、このちからもふつうじゃない。けど…ここのひとはふつうにせっしてくれる。だからここにいるんでしょ?」
今度は膝を抱えて縮こまる。
すると涙が溢れてきた。零れないように必死に我慢する。
「ないたらだめ。みんなはやさしいけど…そのやさしさにあまえすぎたらだめなんだ。じりつしなきゃ…。やくにたたなきゃ…みんなのやくにたつようなことしなきゃ。」
そうだ。何もできない奴なんて必要ない。
仲間1人守れないのならわたしみたいな子どもがこの船にいていいわけないんだ。
「なかまを…かぞくをまもるんだってきめたじゃないか。ひろわれたいのちなんだからここのひとたちのためにつかうって。……このていどでへこたれちゃだめだ。……っ……あれ?……なみだが……」
流すまいと我慢していた涙が頬を伝う。
泣いてることを自覚するとポロポロと零れ落ち止まらなくなる
それを隠すように拭い嗚咽を殺して自分に言い聞かせる
「なくな。ないたらだめだ。ここはかいぞくせんだよ?よわいじぶんはみせたらだめ。…わたしはつよくなきゃいけないの。みんなにしんぱいかけないように…つよいわたしでいなきゃいけない…。だいじょうぶ。わたしは……だいじょうぶ」
自己暗示するかのように何度も何度も『大丈夫』と繰り返す。
言葉には力があって時にそれが言霊となるからそれを信じて言葉を紡ぐ。
だから大丈夫と言えば大丈夫になるんだ。
「よしっ、だいじょうぶ!…さて、みんなはぶじかな?」
しばらく繰り返し落ち着くと布団をでる。部屋を出ようと鍵を開け扉を引くと『バンッ!』と言う音とともに扉が閉まる。
何が起きたか一瞬わからず放心するとわたしの腰に腕が回された。誰かの手が開けた鍵を閉める。
わたしの後ろに……誰かいる?
「…いい加減にしろよい、お前。……言い逃げは許さねぇぞ。何が大丈夫なのかきっちり説明してもらおうか」
・・・マ、マルコさん!?
や、やばい!今の聞かれてたとしたら……どうしよう!
怒られるじゃ多分済まない!
に、逃げなきゃ!!
そう思って咄嗟に体を捻り彼の腕から逃れようとするが彼はわたしの行動が分かっていたかのように簡単に捕まえ、扉とは反対方向に放り投げる。
「おっと……。怪我のせいか力が乗ってないぞ?それで俺に抗うとはいい度胸じゃねぇかよい。イゾウ、ハルタ!パス」
「オーライ」
「ほいっ……と。はい捕まえた」
イゾウさん!?ハルタさん!!?
えっ!!この人たちどこにいたの!?
混乱してる間に2人に片側ずつ腕を拘束される。
……やりたくないけど……ごめん!!
わたしは片方ずつ蹴りで散らそうと腰を捻る。……が、その前に鞘が足首に置かれ押さえつけられる
「まだ抵抗するか。中々の根性だが……これだけの隊長から逃げ切れると思ってるのか?」
ビスタさん?!嘘……!
驚いていると背後から頭に手が置かれて撫でられる。
「はははははっ!ここまでしないと捕まえられないってのもすげぇな!!」
サッチさんまで!!?えっ、待って……
まさかこのメンバーにさっきの独り言聞かれてたの!?
「今のがお前の本音かよい。ったく……そんな1人で抱えることないだろ。俺たちに心配かけないようなお前の振る舞いが逆に心配かけてるってこともっと知っといたほうがいいぞ」
どう言うこと!?
えっ!わたし元気で笑顔絶やさずにいたよね?!心配させる要素あった?!
「…まぁなぁ…。俺たちは騙せるだろうが……イオンは騙せない。なぁ?イオン」
「ふふっ。あんまり妹に手荒なことしたくないけど……少しお仕置きが必要かな、ニア?」
イオンさんまでいたの!?
というかめちゃくちゃ怖いんですけど!!いつか見た冷たい乾いた笑顔じゃなくていつものような優しい微笑みなのにすっごく怖い!!
「1人なら誰の目も気にせず本音が言えるでしょう?ボクの能力を甘く見たらだめだよ?この部屋に……誰がいた?」
「だれも、いなかった…」
「ふふっ。でしょう?……意地悪でこんなことしたんじゃないよ?…ボク達はね、君の本音が聞きたかったんだ。君はいつも思いを閉じ込めてしまうから…。君がボクらの役に立ちたいように、ボクらも君の力になりたいんだよ」
つまりイオンさんが能力でみんなを隠してたってことか。
だからこの部屋にだれもいないように思ったんだ。
それで、マルコさんがわたしに触れたから突然現れたかのように思えたのか
……見えないって恐ろしい。
次から念のために覇気使って周りを確認してから行動しよう
次は無いと思いたいけど……
「拾われた命だから俺たちの為に使うって?お前ずっとそんな思いでいたのか?お前の人生なんだからお前の好きに生きればいいじゃないか。何を遠慮する事がある」
「だいたい、役に立ちたいっていうけど、俺らがニアに『役に立て』なんて言ったことある?もしそんなこと言った奴いるなら教えてくれない?1発殴りに行くから」
「1発と言わず、この部屋にいる奴ら全員分でいいだろう。そんなこと言う奴がこの船にいるならな」
怖い!
顔は笑ってるのにめちゃくちゃ物理解決しようとしてる…!
初めの頃は『いい人すぎるだろ、本当に海賊かよこの人達』とか思ってたけど…やっぱ海賊だ!この人達!!
「だれからも…いわれてない。…で、でもっ!」
「でも?」
ずっと閉じ込めてきたことだ。
こんなこと言ったらどう思われるのか怖くて言えずにいた。
でも…本当は聞きたかった。わたしも…みんなの本音を知りたかった
「しろひげかいぞくだんって、すごいかいぞくなんでしょ?!あんまりそとでたことないからよくしらないけど…せかいでゆうめいなかいぞくなんでしょ!?わたしみたいなこどもがいてもいいの!!?ぎんいろのかみにオッドアイで……のうりょくしゃでもないのにとくべつなちからがつかえる…。どこからどうみても『ふつう』からかけはなれてる!それにくわえてこどもだよ!?まだふたけたにもいってない…やくたたずなこどもが…ここにいて、いいの!?」
あぁ……言ってしまった。
ずっと隠してたわたしの"想い"
「みんな、なにかのスペシャリストじゃないか!マルコにぃちゃはこうかいしで、いりょうにもたけてて…サッチにぃちゃはりょうりがじょうずでたたかいだってつよい!!ビスタにぃちゃとハルタにぃちゃは、けんがつよくて、たいおうりょくもたかいし、あたまもいいでしょ!?イゾウにぃちゃはしゃげきがとくいでどんなまとにだってかんぺきにあてれるし、イオンにぃちゃはものしりでわたしにたくさんのことおしえてくれた!!……なんのとりえもないわたしがむじょうけんであいされていいわけない!…だからっ……やくにたたなきゃ…いけないの…っ!!」
涙が溢れ声が震える。
呆れられたら…見放されたらどうしよう。
数秒だったかもしれないが流れた沈黙がとても長いように感じた
「お前……それ本気で言ってんのか?」
「ほんきだよ?」
「………どうしよう、俺。兄貴として自信なくなってきた」
「安心しろハルタ。俺もだ」
・・・・・はい?
えっ!?何!!?急に何?!
「…悪いニア。俺たちが悪かった。」
なんでいきなり謝るの!?
何故か落ち込み出した隊長達を横目にイオンさんが笑い出す
「ふふっ…ふふふっ……そういうことか…!ふふふっ!」
何故いきなり爆笑?!というかイオンさんがそんなに笑うところ初めて見るんだけど
「イオン!笑ってねぇでなんとかしてくれよい!俺たち相当なダメージ受けだぞ今!」
そんな傷つけること言ったっけ?!
全部自虐だったと思うんだけど!
「あのねニア。ふふふっ…!君、色々と難しく考えすぎだよ!あと、自己評価低すぎない?君は君が思ってる以上に出来る子だよ?マルコ隊長が航海士だからどうしたの?ニアは航海術を教わってないだけで、教えてもらえばすぐに君だってこの海の気候がわかるようになるよ。サッチ隊長が料理上手なのは当たり前でしょう?この船のコックなんだから。ビスタ隊長とハルタ隊長は剣が強いのも、イゾウ隊長の射撃の腕がいいのも当然のことさ。隊長やってるくらいだもの。」
「たいいんだって…みんなすごいよ」
「そりゃあ…各隊ごとにその道を極めた人たちがいるんだからみんな出来るのは当然のことだよ?それに、ボクが物知りなのだって普通のことさ。こんな性格してるから警戒されにくいし、この能力もあるから軍の地方の基地に忍び込んでちょっと機密情報を盗むことなんて訳ないよ。本が好きだからいろんな本を読んで知識を増やしていったんだ。誰も1日で得た力じゃない。みんな努力してるんだ。…何もおかしな事じゃないだろう?」
…おかしな事じゃないけど、地方の基地にちょっと忍び込んで機密情報盗むって……イオンさん以外できないよね
というか、『ちょっと』で機密情報って盗めるものなんだ
「おかしくない…けど…」
「けど、なんだい?さっきも言ったでしょう?ニアは自己評価が低すぎるんだよ。誰も傲れなんて言ってないけどもう少し自分に自信を持ちなよ。じゃないとシスコン隊長ズが立ち直れなくなるよ?」
シスコン隊長ズ?!なにそれ新しい!!
「ここで俺らに振るか!?」
「言いたいことは自分で伝えなきゃですよ?たーいちょ?」
「イオンに茶化されると腹立つな!!」
イオンさん、意外とお茶目なんですね。
「あのなぁ…お前、自分が天才だってもうちょっと知っとけ?紙に覇気纏わせただけで鉄みたいな斬れ味出して、スプーンで海王類刻んで…赤髪とか鷹の目とかに物怖じしないどころか喧嘩始めるような肝っ玉の座った奴そうそういねぇぞ?」
「むしろいるの?逆に!」
「お前がこの船にのってからみんな変わったんだぞ?マルコなんて『なにが起きたお前!』って言いたくなるほど優しくなったんだ」
「うるせぇよい!」
「ほら、こんなツンデレじゃなかったんだぞ?こいつ。もっとトゲトゲしててサッチと喧嘩ばっかしてたんだ。なのに今はどうだ?随分と丸くなった」
「おい!俺をからかうのもその辺にしとけよい!…はぁ。あとな、お前まだ二桁にもいってないだろう?その歳で覇気を使える奴はそうそういないぞ。それにイオンが物知りでそれを教えてもらったんだろ?ならお前なりに活かせばいいだろうが。お前はお前なんだから、誰かの真似しようとしなくていいんだよい」
……わたしは…わたし。
「あと!1番言い返したかったこと返すぞ!?お前がなんのとりえもないだと?!取り柄しかないだろ!!可愛いし!可愛いし!!可愛いし!!!」
それボケてるの、本気なの!?どういう反応返せばいいの!!?
「……一回黙りましょうか、サッチ隊長?」
「はい。ごめんなさい」
「「「イオンが怒った…」」」
どこでもボケを忘れないあたりこの人たちすごいな。
「無条件で愛されちゃいけないって言ったな。……家族を愛するのに理由が必要か?」
ーーーーーっ!!!
…そうだ。……そうだったんだ
わたしも…「家族」として愛されていたんだ。
わたしだって優しいみんなが好きなんだ。そこに論理的な理由なんて…ないじゃないか
「……うぇ……。うっ……」
「我慢するなニア…もういい。泣きたいなら泣け。受け止めてやる」
「溜めてるもの全部吐き出せよい」
いつのまにかみんなの拘束が解けていた。けれどもう逃げ出す気にはなれなかった。
わたしは目の前にいるマルコさんの所へとふらふら行くと彼の服を掴む
彼が頭を撫でると喉の奥から熱いものが込み上げてきた。
「ごめんなさい…ごめんなさい……っ!!」
口を開くと出てきた言葉は謝罪。
勝手な思い込みでみんなのこと誤解してたんだ…。
その後に思い切り泣いた。多分結構響いてるだろうなと思ったけど声を殺すことができずに悲鳴のような泣き声をあげる。
その後のことは曖昧にしか覚えいなかったが、ただ温もりに包まれていたような温もりが残っていた。
***********
ーマルコサイドー
「はぁーーー…。寝たか。しっかし、こいつ今までよくこれだけの思いを吐き出さずにいたな」
我慢強いなんてもんじゃねぇだろ。子どもがこんなに我慢できるものなのか?
「はははっ!そうだな。それよりもイオン。こいつが色んなこと我慢してるって、お前よく気付いたな」
「なんとなくでしたけどね。…この子は昔のボクによく似ているから…。嫌われたくなくて、誰かに見て欲しくて…愛して欲しくて…心を隠して自分を演じる。常に笑顔で明るく振る舞えばみんな見てくれる。そう思っているんじゃないかな?…と、思ったんですよ。そんなことしなくてもみんなちゃんと見てくれてるのに。」
「そういやイオンもここに入ったばっかの頃は荒れてたよなぁ」
「ふふっ。昔のことを掘り返さないでくれませんか?」
「ごめんなさい」
「はははっ!お前ほんとなんで隊員やってんだよい」
「その方が自由だからですよ?」
俺たちが談笑してるとハルタが呟く。
「いいなー、マルコ。場所変わってよ」
「なんだ、ハルタ?寂しいのか?」
「ニア、ちゃんとそこにいるよね?」
「ん?あぁ」
その表情は憂いに満ちていた。
「サッチさ、ニアが修行中に鷹の目に突き飛ばされて木に全身打ち付けて地面に落ちた時のこと覚えてる?」
「……あぁ、あの時のことか。覚えてるぜ?」
「俺、怖かったんだ。…あの時の鷹の目を睨みつけてたニアが……凄く、怖かった。」
ハルタがそういうとサッチが俺にしがみついて寝ているニアを見て険しい表情を浮かべる
「あぁ……そうだな。」
2人を見て俺はさっきロキアス達が言っていたことを思いだした。
「無機質な…人形の様な目」
「「!?!?」」
俺がポソっと呟くと驚いた表情を浮かべた。
「マルコ知ってるの!?」
「いや、見たことはねぇよい。さっきロキアスとルーカスがそう言ってた。」
「…そう。……俺、もうあんなニア見たくないんだ。ただ、怖かった。ニアが居なくなった気がして…」
「ハルタ…」
「と、言うわけで場所かわろうか、マルコ?」
「どういうわけだ…」
すごい恐ろしい笑顔になったぞこいつ。
しかしなぁ……ニアの奴、俺の服掴んで離さねぇんだが
嬉しいが、今それを言葉にしたらハルタに殺されそうな…
ハルタがベッドの上に乗ると傷に触れないようにそっとニアを後ろから抱き寄せる。
「そういえば毒受けたんだよね?大丈夫なの?」
「あぁ、なんとか抜いた。船医が『これだけの出血と致死量の毒でなんで生きてるんだ!?いや、死んでほしくはないが!!』とか、文句言いながら手当てしたよい。」
「なんだそりゃ」
俺たちは顔を見合わせて笑い、ハルタを除いた全員が部屋を後にした。
-サイドエンド-