「ニアーーー!どこだーーー!」
森の奥で子どもを拾い、育て始めた海賊たち。
しかし、その子どものせいで気苦労が絶えない日々が始まった。
その子どもは時々迷子になるのだ。
船の中とはいえ、モビー・ディック号はかなり広い。
子どもが迷子になるには十分な大きさだ。
大人たちがコミュニケーションを取り合いながら小さな子どもを探す。
「あ、ナミュール!居たか?!」
「こっちはいない。ラクヨウは?」
「こっちにも居なかったな。他はどうだ?」
「だめだ、見つからねぇ…。どこ行きやがった!あいつ!!」
必死に迷子にの子ども捜す姿はまさに『兄』だった。
しかし、彼らは世間から見たら《悪》。
なんといったって、海賊なのだから。
「俺、もう1度医療室を見てくる。もしかしたら戻ってきてるかもしれないからな」
「俺もいくよい」
船の長男のマルコと和服の男イゾウが医療室へと向かい扉を乱暴に開ける。
……が、子どもの姿はなかった。
「……居ないな。本当にどこに行ったんだ……?まさか、甲板に!?」
「それはねぇよい。甲板に行ったんなら見張り組が見つけてるはずだ。それにあいつはまだ上手いこと歩けないだろう?ここから甲板まで距離がある。はいはいしてたとしても誰かが見つけてるはずだよい。……つか、あのガキっ!ここに居ろって言ったのにどこほっつき歩いてんだ!!誰だ!ここのドア開けっ放しにした奴…っ!!」
怒りと心配が入り混じった声をあげるのはマルコ
「………(いや…あのっ。ちゃんと部屋にいます。というかこれ、見つかったら殺されるんじゃね?)」
「あいつなぁ…。なんか知らないが見聞色に引っかからないんだよなぁ…」
彼らは探している子どもが部屋から一歩も出ていないことに気づかなかった。
子どもは子どもで葛藤していた為に声を上げられなかった。
「……(どうしよう。この体勢いい加減辛いからみつけて欲しいんだけど、声上げるべきかな?いやでも、ここで見つかったら確実にお説教コースだろ。というかわたしも器用だな。なんでこんなところに嵌ったんだ?……あ。落ちる…。)」
彼らが探していた子どもは壁とベッドの間に挟まっていた。
少し隙間が空いていて寝返りを打ったら嵌ってしまったらしい
ーーーーポトッーーー
「「「!?」」」
何かが落ちる音が聞こえ、2人は音のした方に顔を向ける。
するとベッドの下から匍匐前進で子どもが出てきた。
子どもは大人達を見上げると『てへっ』という感じで笑った。
「………おまっ!!何してんだよい!まさか挟まってたのか!?どうやって挟まったんだ!!」
「ははははっ!器用な奴だな!」
「怪我はねぇのかよい!」
マルコが慌ててニアに近づき怪我がないか確かめる。
「マルコ、心配しすぎだ」
そんな長男の姿にイゾウは面を喰らっていた。
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「ニア、ちょっと待ってろな。」
「………」((コクコク
コック帽をかぶったリーゼントの男、サッチがロビーでニアの面倒を見ていると隊員に呼ばれたのでそう言って席を離れる。
「………(サッチさん行っちゃった。あーー。暇だなぁ。誰もいないし…、誰か遊んでくれないかなぁ。)」
2人はさっきまであやとりをしていた。
彼はその紐をテーブルに置いていった。
「……(1人あやとりでもしてようかな。…ってあれ?……とっ…届かないっ!!)」
1人で遊ぼうと机にある紐に手を伸ばすがなんせ幼い体では目一杯伸ばしても腕が届かなかった。
「……(もうすこ……あっ)」((ズルッ
もう少しで届く!と言うところでソファから落ちてしまった。
そして再び登ろうとするが……案の定、登れなかった。
「………(・・・・・。上がだめなら下だな。ここにいて誰か座ったときに気づかれなかったら確実に蹴られる)」
そうしてニアはソファの下に潜り込んだ。
「………(意外と綺麗だな。それにあったかいここ………)」((スヤァ
その後、サッチが戻ってくる
「待たせたな、ニ……あれ?ニア?」
いるはずのニアがいなくなっていて首を傾げる。
その顔色は見る見るうちに青くなっていった。
「マルコーーー!ニアが迷子だ!!」
「はぁっ?!またかよい!!」
また迷子の捜索が始まる。
だがどこを探しても見つからず、居なくなったのは昼時だったが既に日が傾いていた。
「どうしたの?みんなしてそんなに慌てて…」
「ハルタ!ちょうどいいときに帰ってきた!!ニアが迷子だ!」
「え?また?」
絵本の中の王子様のような格好のハルタと呼ばれた人は先程まで遠征に出ていて丁度帰ってきた所だった。
「……最後にニアを見たのはどこ?」
「ここだ。ロビーのソファの上に座らせて待っとけって」
サッチが彼の質問に答えると彼は「ふぅん…」と顎に手を当てて何かを考える。
「あ、俺分かったかもしれねぇよい」
「俺も多分分かった。」
ニアはよく居なくなるが言いつけを破ったことはない。
この前の迷子事件だって医療室で大人しくしてろと言われ部屋からはでていなかった。
この前のことを思い出した2人は「せーの」と、ソファを持ち上げてどかす。
彼らの思惑通りニアはソファの下にいた。
「「「居た!!!」」」
「やっぱり…」
「こいつどうやってこんなとこ入り込んだんだよい…」
ソファから落ちて登れなくなり、上がダメなら下にいよう。という結論に至り潜り込んだことを彼らは知る術もなかった。
「半日近く探したのに…こんなにあっさり……」
「悪りぃ、俺がもっと早く気づくべきだったよい」
「いや、マルコは悪くなくないか?」
「つーかこいつよくこんな狭いところで寝てやがるな」
ソファの下で丸くなって眠っているニアを見ながら口々に言うと彼女が起きる。
「ん……。あ、おはよ、にぃちゃ」
眠たそうに目を擦りながらそう言う彼女に彼らは許してしまったそう。
***********
また明くる日の昼過ぎ、みんなで干した布団を片付けていた。
ニアも彼女なりに手伝おうとしていたが隊員が「大丈夫」と諭す。
「ニアはまだ小さいから、こんな重たいもの持たなくていいぞ。俺たちに任せとけ!」
そう言うと布団を次々に仕舞う。
「おーい、ちょっと手伝ってくれ!」
「あ、わかった!ニア、ちょっと待っててくれな?」
その隊員は別の隊員に呼ばれ席を外す。
「………(布団って重たいの?…いや、敷布団は重たいか。大きいし、重いよね。甲板からみんな運んでるのにわたしだけ何もできないって歯痒いな…せめて仕舞うくらいしたい。)」
布団の入っている押し入れを見つめながら彼女はそんなことを考える。
試しに敷布団より軽いであろう毛布を畳み、押し入れの中にしまう。
彼女は小さいので自分ごと入らなければ奥まで仕舞い込めない為、布団と一緒に押し入れに入ってズルズルと毛布を引っ張る。
「あれ?ここなんで開けっ放しなんだ?……ったくよォ…。開けたら閉めろよな」
別の隊員がそこを通りかかり、襖を閉められ真っ暗になり何も見えなくなった。
出ようとしたが右も左も分からず手詰まり状態だった。
「………(閉められちゃった。どうしよう)」
どうやって出ようか考えていると外が騒がしくなる。
どうやらまたニアが消えていることに気づいたらしい。
「ったく、なんなんだあいつは!!凝りもせず!今度はどこ行きやがったよい!!」
「……マルコっていつもニアに振り回されてるよね。なんか面白い」
「うるせぇよい!言ってる暇あるならお前らも探せ!」
「はいはい。…と、言ってもなぁ……ここ、入り込めるところなく無い?」
「確かになぁ……。だが、この部屋にいるのは間違い無いだろうよい。勘だけどな!つか、この部屋にいなかったらうろちょろできねぇように縛りつけてやる!」
「いや、それはさすがに可愛そうでしょ。あの子たしかにフラッと消えること多いけど大人しいよ?」
「……(マルコさんが怒ってる大半の理由ってわたしよね…。あの人の胃に穴空いたらわたしのせいかな?)」
彼女は「ここにいるよーー。」と、知らせたいが下手に動いて頭でもぶつけたら痛いから見つけてもらうまでじっとしていることにした。
「(ふかふか〜。眠くなってきた…)」
布団が気持ちよく、眠たくなったとき押し入れの扉が勢いよく開いた。
突然の光に彼女は目を細める。
視力が戻ってくると、マルコと目が合う
彼は「見つけたぞ」と言わんばかりな雰囲気を醸し出す。
「お、前は〜!!どうやってそんなとこ入ったんだ!!」
「……マルコはよくそこを開けようと思ったな。」
誰も押入れの中にいるとは思わないだろう。長男の行動にクルー達は驚いていた。
「手ェ伸ばせ!ほら!出てこい!!」
怒りながらも手を伸ばす長男にクルー達は生暖かい目を向けていたのを彼が知ることはなかった。
子どもが素直に手を伸ばすと、マルコがその腕を掴んで引き出した。
「何をどうしたらこんな押入れの中に閉じ込められるんだよい!!迷子になるならもっとわかりやすいように迷子になれ!」
「それは…迷子っていわないよ、マルコ」
ハルタが少し呆れたように呟いた。
隊員達は船の長男が子どもに振り回されてる姿に笑いをこらえてたそうな…
海賊船は、今日も平和です