家族の為ならどこまでも   作:実茶

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第5話 決意

「ったく…。てめぇらなぁ…。はぁ、仕方ねぇな。わかったよい、少しだけだぞ?」

 

おお!マルコさんが折れた!

言ってみるものだね!

さて…と、とりあえず道順を覚えないと。

もしもの時の逃走ルートを確保しなければ!

…わたしってほとんど逃げることしか考えてないような…

いや、逃げるのも大事だよね!逃げるが勝ちって言葉があるくらいだもの

 

「グラララ!見つかったか。それより甲板に連れてきて大丈夫かァ?マルコ。お前外に出すの心配してただろ」

「こいつらがどうしてもって言うから連れてきた」

 

甲板に出るとオヤジさんが大きな椅子に座っていた。

堂々としててカッコいい。

マルコさんが無表情でオヤジさんの質問に返したらほかのメンバーが密かに笑っていた

 

「てめぇら!言いたいことあるなら言えよい!」

 

あ、無表情が崩れた。なにこれ面白い(真顔

そんなに嫌だったかな?まーくん

 

「オヤジに言っていいのか?さっきの…っくくっ」

「だって…マルコッ……嬉しそうだったから面白くて、つい!」

 

あぁぁぁ、マルコさんの額に青筋が…

この人本当にその内胃に穴あくって!もう少しリラックスしよ??

 

「まーくん!おこる、めっ!」

 

マルコさんのほっぺたをペシッと軽くはたく

イライラはお肌の敵よ?!

…ってのは冗談であなたの胃が心配です、いや本気で

 

「「「ぶっはっ!!」」」

 

甲板にいた人たち全員に聞こえてたみたいで、みんなが大笑いし始めた

そんなに面白いこと言ってないと思うんだけどなぁ

オヤジさんもグラグラ笑い出したし…

なんなんだ、笑い上戸か!

 

「だめっ!!くくっ!もう我慢できない!あっははは!マルコに説教するとか、ニア強い!」

「不死鳥マルコもガキには弱いんだな!はははっ!」

「おまえらなぁ…。」

 

呆れ顔をした後にマルコさんも「くくっ」と笑い出した。

あ、よかったよかった。ストレスは溜めちゃいけませんよー!

え?わたしがストレスの原因だって?

……ほっとけ。(遠い目

 

「馬鹿どもはほっといて甲板を案内するよい、ニア。なんかあった時にすぐ逃げれるようにどこに何があるかを把握しとけ」

 

コクコクと首を縦に振る

なんだかんだ言って優しいな、この人。

場所の把握も大事だけど少しくらいは戦えたほうがいいよね。逃げる隙を作るにも戦術は必要になる

そしたら体力が欲しい…。

あぁもう!やることがいっぱいなのにできないのがじれったい!!

見てたらいつのまにか覚えてるとかそんな奇跡おこらないかな?!

"わかる"と"できる"は違うけど!

 

「ここが見張り台、お前はもう少し成長するまで登るなよい。確実に落ちるから……んで、こっちが武器庫。迂闊に触ると怪我するから気をつけろい。で、ここが物置。色んなものが置いてあるからあんま近づくなよ?倒れてきたら下敷きになるぞ」

 

わたしを抱いて歩きながら説明してくれるが一言言わせてもらおう。

…危険しかない!!この船、危険しかない!!

 

「…………とまぁ、こんなもんかよい。わかったか?」

 

首を縦に振る。

めちゃくちゃ危ないところでした。よし、戻ろう。一刻も早く船内へ!!

 

「よいよい。いい子だ。」

 

かすかに笑うと、片腕にわたしを抱え直し空いた方の手でくしゃりと頭を撫でる

…ツンデレ。間違いなくツンデレだこの人!

あ、眠い。急に眠気が…

子どもの体って不便!

 

「…………じゃあ、こいつ船内に戻してくるよい」

「えっ!?もう?!」

「眠そうだから寝かしてくるよい」

「あ、そうゆうこと?わかった!俺もいく!」

 

ハルタさんとマルコさんがわたしを連れて船内へと戻る。

わたしいつまでここにいられるのかなぁ…

普通に考えてわたしがこの船にいるのはおかしいよね?

オヤジさんは"白ひげ"って呼ばれてて"四皇"?っていうすごい人らしい。

そんな人の船にわたしがいるのはどう考えても場違いだよね

まだ拾われてから1年経ってないけどみんなで必死に世話してくれたり話しかけてきてくれたりするのが嬉しくて、楽しくて

この人たちが拾った責任から育ててくれてるってだけだったらどうしよう…

自立できるくらいになったらわたしここに居られなくなるのかな?

あぁくそっ!考えすぎて眠気が増した

とりあえず寝るか。

わたしはマルコさんに体を預け襲ってくる睡魔に身を任せた。

 

***********

 

-ハルタサイド-

 

「まーくん!おしょと、でちゃい!」

 

ニアのその一言でマルコが折れてニアを甲板に連れてくことになった

マルコって意外に世話好きなのかな。それとも子どもが好きなのかな?

にしても、まーくんって!!ホント可愛いなぁ、ニアは!

マルコも心なしか嬉しそうだし。ちぇー、少し羨ましい…

俺も愛称で呼んでくれる様に頼んでみようかなぁ…?

ニアが来てからほかの隊長も隊員も棘が無くなったきがするし、何よりマルコがあんなに丸くなるとは思わなかった!

連れてきてよかったとはまだ一概に言えないけど

海賊船だからね。オヤジや俺らがいるとはいえなにが起こるかわからないのがこの海だ。

何があっても守るけど最低限自分の身を守れるようになってもらわないと!

 

「グラララ!見つかったか。それより甲板に連れてきてよかったのかァ?マルコ」

「こいつらがどうしてもっていうから連れてきた」

 

マルコが必死にポーカーフェイスを取り繕ってる!!

やばい!レアだ!あんなマルコ!

 

「てめぇら、言いたいことあんなら言えよい!」

 

俺たちが密かに笑っているとポーカーフェイス崩れた。面白い

 

「まーくん!おこる、めっ!」

 

ニアがそう言ってマルコの頬を軽くはたく。

マルコが目を丸くしてニアを見た。何あの光景!写真撮りたい!!

甲板にいたクルー達は大爆笑。オヤジも笑ってる

そりゃそうだ!1番隊の隊長が子どもにたじたじなんだもん!

お腹抱えて笑ってる俺たちを無視してニアに船の配置を教え出した。そんな一気に教えても覚えられるかな?多分恥ずかしくて思考が正常に回ってないのかも。

それはそれで面白いからいいか

あれ、俺って結構鬼畜?…だって、みんなの意外な一面が見れてすっごい楽しい!

ニアが眠そうだからマルコがニアを船内に戻すって。俺も付いて行こー

ちゃんと見てるんだね、俺気づかなかった。

ニアを見るとマルコの胸にもたれて力を抜いていた。あぁー、安心しきってるなぁ

俺たち一応海賊なんだけど…。警戒心をもう少し持って貰わないと…

マルコも同じこと考えてたのか複雑な表情でニアの頭を撫でていた。

ずるい…とか思ったのは心の中にしまっておこう。

 

-サイドエンド-

 

***********

 

暗闇の中で意識が覚醒する。

ここは…どこ?

みんなは…どこ?

 

ーーー怖いーーー

 

ただ、そう思った。

終わりの見えない闇の中を1人彷徨い続ける

暗い、寒い、冷たい、寂しい

自分を守る様に自身の体を抱きしめ、その場に座り縮こまる。

暗闇の中で震えていると一瞬だけ光がさした気がした。

思わず顔を上げると遠くに星の様な光が一筋見える

誰か…いるの?

…お願い!!1人にしないで!誰か…側に

 

ーーガバッ!!ーー

 

光を掴もうとする動作で体が起き上がった。

辺りを見回すと見慣れた部屋の布団の上

今のは…夢?

居てもたっても居られず部屋を飛び出して船内を走る。

船内も明かりがついていなくてとても暗く感じた。

誰か、誰か、誰か…。

誰か…いないの?

足がもつれ、うまく走れずなんども転ぶ。摩擦で擦りむいて膝がジンジンと痛むけど、止まってる余裕なかった

1人はいやだ。わたしはこんなにも寂しがり屋だっただろうか?

この世界に来る前の記憶はあまりない。

覚えているのはごく普通の一般人として生きていたということと、自称天使とのやりとりくらいだ

親の顔も自分の名前も居たであろう友達もそこらへんは何も覚えていない。

覚えていないからこそこんなにも不安なのかもしれない…

全部夢だったらどうしよう。夢だったら届かない…!

 

「あっ…!」

 

自分の足に躓いて盛大に転ぶ。

その場に鈍い音が響き、痛みでしばらく動けなかった。

 

「…………ニア?」

 

人の声!?

バッ!と顔を上げると目の前にイゾウさんがたっていた。

いつもの格好とは違い、髪を下ろしていて肩にタオルをかけている

お風呂から上がったばかりかな?

 

「お前、こんな時間にどうし………っ!?……ニア?震えてるのか?」

 

わたしは彼が喋っている最中に彼に抱きつく

存在を確かめるかの様に腕に力を込め、彼にしがみついた

 

「ゆめ、みた。こわい」

 

言葉にすると自然と涙が出てきた。彼はそんなわたしの頭を撫でると抱き上げてロビーの電気をつけ、ソファに座るとわたしを膝の上に座らせた

 

「どんな夢を見たんだ?悪い夢ってのはな、人に話すと現実にはならないんだぜ?」

 

そんなものは迷信に過ぎない。

確証も証拠もないし、そんな論理が証明されているわけでもない

けれどわたしが落ち着くには十分すぎる言葉だった。

 

「くらい…。ひとり、さみしい。こわい」

「暗い所に1人置き去りにされる夢を見たのか?…それは怖かったな…。でも、今は暗くもないし1人でもないな?ほら、やっぱり夢は夢だ」

 

ふわっと笑いかけてくるイゾウさんにわたしは安心感を覚える。

こくん…と、一回だけ頷くとまた眠気が襲ってきた。

あぁ、わたしにとってここはこんなにも大切な居場所になってたのか。

強くならないと…彼らの隣で戦えるように…

わたしは密かに決意し、襲ってくる睡魔に身を任せた。

 

***********

 

-イゾウサイド-

 

「…こいつ、泣くんだな」

 

俺の膝の上で安心しきったように眠る少女を撫でながら呟く。

その目尻に光る水滴をそっと拭う

こいつを拾ってからこいつが泣くところを見たことがなかった。

うまく歩けずに転んでも、マルコにどれだけ叱られてもヘラっと笑っているから勝手に強いやつで怖いものなんてないんじゃないかと思っていた。

けどこの子は今「こわかった」と泣いた

 

「俺もまだまだだなぁ…」

 

なんだかんだ言ってもまだガキもいいところ。

船の上の生活だって、刀とか銃だって怖くないわけないんだ。

俺たちに余計な心配をかけないように気丈に振る舞ってるだけなのかはわからないが安心しろ

 

「1人にしないから…泣くな、ニア」

 

ニアの意外一面が見れて嬉しい反面、いつも一緒にいるのにこいつが何かを隠してることに気づけなかった不甲斐なさを噛みしめる

 

「何を隠してるか知らないが…もっと頼っていいんだぞ?」

 

俺はニアの頭を撫でながらそう言った

 

-サイドエンド-




次回は少しだけ戦闘描写が入ります
すっごい下手です(真顔
分かりにくいかと思いますので、読者様の想像にお任せいたします(苦笑い

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