「ほらニア!今日はいい天気だよ!」
「ニア、林檎剥いてきてやったよい」
…………なんか騒がしいな。
「おっ。この林檎甘いな!」
「なんでお前が食べてんだよい、イゾウ!」
「はははっ!いいじゃねぇか、すこしくらいよ!」
楽しそう。
わたしも混ぜてー!
「……ぃちゃ。……て」
元気よく『混ぜて!』と言ったつもりだったけど、声がうまく出せなかった。
「「「!!!!!」」」
「ニアっ!?目が覚めた?!」
んんんん?目が覚めた?って……わたし寝てたの?
「まーくん、はるにぃ、いーちゃん?」
なんでそんなに心配そうな顔してるんだ?
体を起こそうとするとマルコさんが人差し指でおでこを突き強制的に横にする。
いでででで!指の力強すぎかよ!
「まだねてろよい。血が足りてないから休んでろ。」
「無茶をするな、ニア。今回ほど肝を冷やしたことはないぞ。話はルーカスとカルガンから聞いた。…よく頑張ったな」
「ニア、一週間寝てたんだよ!もう起きないかと…おもっ…」
あっ!思い出した。そう言えばわたし大男と戦って刺されたわ!
そういうことか!すっごい心配かけたみたいですねごめんなさい!
というか1週間も寝てたのわたし!?よく生きてたな!!
今生きてるのは奇跡です、ほんと!!自称天使野郎の陰謀じゃないの?!ってくらいの奇跡です!
「ごめんなしゃい。」
よし、謝罪タイムは終わりっ!
「にぃちゃ!おみず、ちょーだい」
甘えてやりましょう、ええ!とことん甘えてやりますとも!
怪我の功名ってやつ。あれ?なんか使い方違う?まぁ、いいか
「…………ふっ、わかったよい。ちょっとまってろ」
マルコさんが席を立つと部屋を後にする。
「お腹空いてないか?マルコが剥いてきてくれた林檎ならあるぞ、食べるか?」
「うん」
頷くとイゾウさんがわたしの体を起こし林檎をフォークで刺すとわたしの口元に持ってくる
「じぶん、できる」
「俺がやりたいんだ。素直に甘えておけ」
…恥ずかしいけど、逆らったら殺されそうな気がするから素直にいうこと聞いておこう。
大人しく食べさせてもらうとハルタさんが身を乗り出した。
「ちょっと!イゾウずるい!!俺もやる!」
そこ張り合う所?!
「わかった、わかった!わかったから殺気を振りまくな!」
いや、これで殺気振りまくって何!?どうしたの、ハルタさん!!
イゾウさんとハルタさんが交代で林檎を食べさせてくれる。
わたしは要介護者か!
「食欲はあるみたいだな、なら大丈夫か。怪我の具合は?」
「…………ズキズキ」
「だろうな。思いっきり奴の刀が貫通してたもんな。よく生きててくれた」
イゾウさんが頭を撫でると涙腺が緩む
…すごく怖かった。
ボロボロで動かないルーカスを見たとき放心しかけた。
カルガンが背中を斬られるところを見たときかなり頭にきた。
でも恐怖で身が竦んですぐに動けなかった。
震える体をなんとか動かして力の限り戦ったけどわたしはまだ力不足だ。
「ニア……。」
ポロポロと涙が溢れる姿を見てイゾウさんとハルタさんが手を止め、食器をテーブルに置き、イゾウさんがわたしを抱きしめる
「大丈夫だ、誰も死んじゃいない。カルガンもルーカスも無事だ。お前も生きてる。だから泣くな」
「ちがう…。」
「違う?」
この想いはどうやって伝えればいいんだろうか
弱い自分が嫌いだ。子どもだからしょうがないなんて言葉で諦め切れる程簡単な問題じゃない。
こんなふうに心配と迷惑かけちゃいけないのに…
今、この時間だってそう。
隊長が2人もわたしのところにいて1人は水を取りに行ってくれている。
みんなの時間をたくさん奪ってしまっているんだ。
どうしよう、わたし…
このままここにいてもいいのかな?迷惑じゃないかな?足手まといじゃないかな?
…でも、きっとこの疑問を言ったらまたみんなに気を遣わせる。
自分で答えを見つけるしかない。
「違うって…どういうこと?」
だめだ。誤魔化さなきゃ
どうやって話を変えようか考えていると医療室のドアが開いた。
***********
-イゾウサイド-
ニアが大怪我を負って一週間近くが経つ。
なんでも船医が言うにはニアの血液型は珍しく、ストックがないらしい。輸血ができないからニアの生命力に任せる他ない。と
なんとか一命はとりとめたが目が覚めるのは時間の問題。
俺たちは血の気が引いた。海賊をやっているのだからこんなことは初めてじゃない。けれど、自分の半分も生きていないような子どもを守れなかった悔しさはなによりも大きい。
ルーカスもカルガンも同じ気持ちだったのだろう。ここずっと道場でがむしゃらに修行している。ヤケになっても身に付かない事くらい本人たちもわかっているはずだ。けれど、どうしても自分が許せないんだろうな…
近くにいながらみすみす怪我をさせて、身を挺して庇われた自分自身の弱さが
「ほらニア!今日はいい天気だよ!」
そう言ってハルタが医療室のカーテンを開ける。
ニアが目を覚ました時に俺たちが暗い顔をしていたらニアが自分を責めてしまうかもしれないからとあいつは元気に振る舞っているらしい。
ハルタもついこの間まではまだまだ子どもだったのにニアが船にのってから立派な"兄貴"なったもんだ。
「ニア、林檎剥いてきてやったよい」
マルコが部屋に入ってくると林檎の乗った皿をテーブルに置く。
未だに目が覚めないニアに対し、もう起きないのではないかという恐怖を抱く。
「……ぃちゃ。……て」
俺たちがいつものノリでバカやってると小さな呟きが聞こえ一斉にニアの方を見ると彼女は顔をこちらに向け俺たちを見ていた。
やっと目を覚ましたか!この馬鹿!!
ニアが体を起こそうとするがそれをマルコが止める。
まぁまだ寝ていないといけないだろうな。なんせ血がたりてないんだから。
俺たちが心配したことを伝えると『ごめんなしゃい』と舌足らずに謝る。
だが、すぐにコロッと表情を変え無邪気に笑った
「おみず、ちょーだい」
…そうか。こいつがいつも笑顔なのは俺たちに心配をかけないためか。
子どもの割に大人しくしているのも俺たちに出来るだけ迷惑をかけないため。
……今頃気づくとは情けない。
こんなチビに気を使わせていたのか、俺たちは
マルコも俺と同じ思いだったのか一瞬顔をしかめたがすぐに微笑みに変わり「まってろ」と部屋を出た。
…マルコが戻ってくるまで気を紛らわせてやろうと俺はあいつが剥いて来た林檎を食べさせてやることにした。
…そうだ!ニアに「あーん」ができるいいチャンスだ!!
ニアの体を起こすとフォークで林檎を刺し、彼女の口元に持っていくと恥ずかしそうに「じぶんでできる」と言ったが、こんな機会を逃すわけがないだろう!
「俺がやりたいんだ。素直に甘えておけ」
そういうと林檎をシャリっとすこしかじる。
……小動物か!可愛すぎる!!
内心でそんなことを思っているとハルタが殺気立つものだから交代でやることにした。
まったく、すこしは大人になったと思ったが……変なところで子どもっぽいな。
………そう思う俺は大人気ない…か?
傷の具合を聞くとズキズキすると言った。まぁ、思いっきり貫通してたもんな。そりゃそうだろう…。
俺が頭を撫でてやると彼女はポロポロと泣き出した。
……怖かったんだろうな。
「大丈夫だ、誰も死んじゃいない。カルガンもルーカスも無事だ。お前も生きてる。だから泣くな」
俺は彼女を抱きしめそう言うと「ちがう」と小さく呟いた。
…違う?
殺されかけて怖かった訳じゃないのか?
どう言う意味か聞こうとしたら医療室のドアが開く。
マルコが戻ってきたか。
…さっきの意味を知りたかったが…まぁ、後ででいいか
-サイドエンド-
***********
「「「ニアーーー!!!」」」
マルコさんが戻ってきて、その後ろからぞろぞろと人が入ってきた。
「グラララ!ようやく起きたか、寝坊助。心配かけやがって!」
オヤジさんが自ら?!?!
やばい、それはやばい!!
死刑?わたしもしかして死刑?!むしろ私刑?!何それこわい!!
「とーさん、おはよ!」
とりあえず挨拶!挨拶しときゃなんとかなる!…と、思いたい
「…………おはよう、寝坊助。怪我の具合はどうだ?」
「なおる、した!」
「「「治るか!!馬鹿!!」」」
あるぇ?一気に騒がしくなったなぁ…
まぁでも、このくらい騒がしい方が落ち着くなー
慣れってこわい
「まだしばらくは絶対安静だ。血をだいぶ失っている。船医として言うべきじゃないが言いたいから言う。よく生きてたな、ニア」
船医さんが真顔で言った。
それ、奇跡の生還を遂げた人に言うセリフ!?
しかも言うべきじゃないけど言いたいから言うってどんな理由?!自由か!
「ニア…。お前あの時…俺に…なにかしたか?」
あ、ルーカス!!カルガンもいる!よかった無事だった!!
「ルカにぃ、カルにぃ!けが、へいき?」
「ーーーっ!!なんで、お前は人の心配してんだ!!」
「自分の心配しとけ、バカニア!ーーーっ、」
怒られた?!なんで!?
わたしを叱りつけた時、カルガンの表情が少し歪んだ。
そういえば、背中を斬られてたような…。
わたしのせいで怪我をしたんだ。どうしよう……。
ん?そういえばわたしあの自称天使さんに何か力をもらったよな?
拒絶がどうとか言ってた気がするけどなんだったっけ?
…とりあえずやってみよう
"カルガン"の"受けた傷"を"拒絶"する!
「ーーーっ!?」
カルガンの表情が一瞬にして驚きに変わる。
……成功したのかな??
「ニア。」
ビクッ!
いつもより低い声で短く呼ばれ思わず跳ね上がってしまった。
「お前は能力者…なのか?…いや、そんなはずはない。だって赤ん坊の時からこの船にいて、隊長や俺たちがずっとそばに居て…悪魔の実がお前のところに渡るわけ…」
なんか1人で自問自答してる。
能力があるのなら能力者であってほしいと遠回しに言われている気分だ。
「なんでもない。ゆっくり休んでくれ」
そういうと、カルガンは背を向けて部屋を後にした。
その後、微妙な空気が流れたがマルコさんが持ってきた水をわたしに飲ませると「解散!」と、人払いをしてくれた。
さすが隊長。助かりました
***********
-白ひげサイド-
ニアが怪我してそろそろ一週間か。
ニアをぶっ刺したやつはニア自身が倒しちまったしそいつの仲間も殲滅しちまったし…これでニアが死んだらおれはどうしたらいいんだ?
平静を取り繕ってはいるものの正直腹わた煮えくり返ってる。
悩んでるおれの隣をマルコが横切った
その時、マルコがこそっとおれに耳打ちしたのを聞き逃しはしなかった。
『ニアが目を覚ました。』
たしかにそういった。
グラララ……!ようやく起きたか、馬鹿娘!
マルコが水を持って戻ってきた時、その後ろにはニアを心配してた馬鹿息子共が付いてきていた。
マルコがニアが目を覚ましたことを知らせたんだろうな
こんな時になんだが…カルガモみてぇだ…。
「グラララ!ようやく起きたか、寝坊助!心配かけやがって!」
おれが医療室に入り声をかけるとニアは驚いた顔をした。
「とーさん、おはよ!」
無邪気な笑顔で挨拶をする。
とーさん……
そうか、こいつにとっておれはちゃんと"父親"なんだな。
嬉しいじゃねぇか!グララララ!
「おはよう、寝坊助。体の具合はどうだ?」
「なおる、した!」
「「「治るか!馬鹿!!」」」
元気いっぱいにわかりやすい嘘つきやがったなこいつ…
おれの代わりに息子たちが叱りつける。
そりゃそんなすぐに治るわけねぇだろ
だが、ルーカスの怪我が治ったのは間違いなくこいつの仕業だろう。自覚があるかは知らないがおれは今それを聞くことはできなかった。
カルガンがニアと話し何かいいかけて止めて部屋を出た。
マルコがニアに水を飲ませると「解散だよい、ニアを休ませろ」といい遠回しに人払いをした。
そこに残ってるのは、おれとマルコとハルタとビスタとサッチとイゾウ。
比較的ニアといつも一緒にいる隊長たちだ。
グラララ、さすがマルコ。言わなくてもおれがいいたいことがわかるみてぇだなぁ!
休ませてやりたいが色々と書きたいことがありすぎる。
悪いが少し付き合ってくれな、ニア
-サイドエンド-